PCゲームにおける日本と海外の違い・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第16回 | GameBusiness.jp

PCゲームにおける日本と海外の違い・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第16回

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日本国内において家庭用ゲーム機に比べてPCゲームがマイノリティであることはまず間違いないでしょう。扱いにくいマウスとキーボードによる操作、専門知識の必要性、インストールの手間…。一方、ラインをつなぐだけで誰でも使えて、専用の使いやすいコントローラーがあり、ただソフトを挿入すればすぐにプレイできる家庭用ゲーム機がメジャーな地位にいることは当然のことのように思えます。

しかし、PCゲームアライアンスによると、昨年一年間で世界のPCゲーム市場は20%もの急成長を遂げ、その規模は162億ドルにも膨れ上がっています。低迷を続ける日本のPCゲーム市場に対して、世界でPCがゲームプラットフォームとして売り上げを伸ばし続けているのは、なぜなのでしょうか。

■日本におけるPCゲーム 過去と現在

まず、日本のPCゲームがなぜマイナーな存在になったのかを考えてみましょう。日本でも1980年代頃、PCゲームの黄金期とも言える時代がありました。コンピュータの黎明期、ソフト開発は常に欧米のコンピュータが主導権を握っており、日本人には扱いにくいものばかりでした。しかし、1982年にNECが漢字表記を可能とした6ビットコンピュータを発表したことで、様々な日本製PCゲームをより開発しやすい環境が整うようになり、次々と作品が量産されました。

一方、1983年、ゲームの歴史に大きな革命が起こります。任天堂がファミリーコンピューターを発表したのです。当時としては、革命的にすばらしいグラフィック、低価格での魅力的なゲーム、コストパフォーマンスなど、あらゆる面でPCではとても太刀打ちできないものでした。

しかしながら、PCの進化は家庭用ゲーム機のそれと違い、常に留まることはありません。常時たやすくアップデートは繰り返され、ファミコンよりも美しいグラフィックのPCゲームが登場するようになりました。この時代、多くの名作PCゲームが生まれ、ゲームを遊ぶハードのひとつの選択肢としてPCゲームは当たり前に存在していました。

国産PCゲームの黄金期の終焉は、Windows 95の普及によって訪れます。再び欧米ベースのコンピュータプラットフォームが浸透してしまったのです。日本のゲーム開発者たちはそうした欧米のコンピュータプラットフォームで開発を続けるか、「スーパーマリオブラザーズ」や「ドラゴンクエスト」などきらめくようなキラータイトルの登場ですでに成熟していた家庭用ゲーム市場へ転換するか、選択せざるを得ないようになったのです。そして、彼らの大部分は後者を選ぶことになりました。残されたほんの一握りのPCゲーム開発者たちは、家庭用ゲーム機には出すことのできないソフトの開発をせざるを得なくなりました。それは、プレイに膨大なデータベースを必要とする極めてマニアックな軍事戦略ゲームやアダルトコンテンツなどです。

そうして、日本においてPCゲームは「家庭用」ゲーム機というハードに相対するようにマニア性を強めていくようになりました。いつしかPCゲームがマニア向け、あるいは海外ゲーム専用、さらには成人コンテンツのためのものという認識が固定化し、また開発者はその消費者ニーズに応えざるを得なくなってしまったのです。そして、その流れは今現在でも続いています。

■世界でのPCゲーム成長の理由

次に、海外におけるPCゲームの現状を見てみましょう。先に述べたように、世界のPCゲーム市場は急成長を遂げています。アメリカ、イギリス、ドイツといったすでに市場の成熟した国々のけん引はもちろんのこと、さらに中国が大躍進を遂げました。実に、中国だけで4.8億ドルもの市場を形成しているのです。

その理由は、新しい収益モデルの普及にありました。世界一の人口を誇る中国は、おそらくいかなる産業においても魅力的な市場だと考えられているでしょう。しかし、ゲーム業界においては長らく海賊版が大きな問題となっており、中国ではゲームは売れにくいとされていました。そこで、欧米諸国の販売元はパッケージ販売ではなく、新しい収益モデルを普及させることにしたのです。それが、プレイ期間やアイテム等を適時購入するPCオンラインゲームであり、PCゲーム市場を開拓することに成功しました。

また、かねてより欧米諸国ではデジタル配信の普及が進んでおり、PCゲーム市場の拡大に大きく寄与しています。直接ダウンロードすることでマージンをカットできるため、販売元の関心を惹いたことはもちろんですが、インディーズ開発者らが大きな関心を寄せました。というのも、開発者自身がゲームを販売できるようになったからです。このデジタル配信を追い風に欧米のインディーズゲームは一気に躍進し、市場拡大にもつながったわけです。

また、Facebookゲームやフラッシュゲームなど無料コンテンツの台頭が挙げられます。多くのゲーマーはカジュアルに無料のブラウザゲームやフラッシュゲームをオンラインでプレイするようになりました。販売店はこの流れに適応し、ゲームを有料でプレイさせるのではなく、そのゲームを広告媒体として利用し、スポンサーから収益を得るといったこれまでにない収益モデルを構築しています。
さらに、PCゲームは新しいゲームの制作スタイルも生み出しています。例えばFarmvilleを製作しているZyngaのような企業では、成功の保証もなしに百万ドルもの資金をかけてゲームをつくるのではなく、低コストで次々と、まるでホットケーキでも作るかのように簡単にゲームを発表し、プレイヤーがゲームを受け入れるかどうかをオンライン配信で確認しながらたくさんのエンターテイメント体験を量産しています。

つまり、世界では従来のゲーム販売にはなかった型破りなビジネスモデルがPCゲームを舞台に生まれているというわけです。

■これからの日本のPCゲームの行く末は

PCが本来担っていた役割を代替できるスマートフォンやタブレット端末、インターネット接続が可能なゲームハードなどがより安価で入手することができるようになり、日本の一般家庭におけるPCの役割は減少の一途にあります。今後、国内PCゲーム復権はかなり厳しいものであるのは否めません。しかしながら、そのチャンスは確かに存在していると思います。

ひとつは日本にあった新しいビジネスモデルの創出です。海外の事例で述べたように、パッケージ販売という従来のモデルから脱却し、ユーザー、そして開発者のニーズに合わせた販売モデルを創出することで、家庭用ゲーム機との差別化を図ることが出来るでしょう。携帯ゲームで実行されたような新しいエンターテイメントのスタイル、新しいビジネスモデルがPCゲーム市場でも創出されれば、活気づくのではないかと思います。

そしてもうひとつは「キラータイトル」です。世界中に熱狂的なファンを持ち、市場をリードする「Warcraft」や「Starcraft」、「Wicher」などの優れたPCゲームが世界には存在しています。これらの作品を楽しむゲームファンたちが、今のところは少数かもしれませんが日本にも存在しています。しかしながら、「キラータイトル」たりえるこれらの作品すべてが、良質な日本語版で楽しめるようにはなっていません。

この、入手制限があることこそが今日の日本におけるPCゲーム最大の壁ではないでしょうか。このままでは、日本のPCゲームは限られたユーザーへと向かわざるを得ず、ますます出口のない迷い道へと入り込んでしまいます。優れた作品の良質なローカライズ化が進み、気軽に手に入れられるようになれば、日本のPCゲームにも新たな活路がきっと見えてくることでしょう。
《イバイ・アメストイ》

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