ゲーム開発は大変だけど楽しい!アークシステムワークス『GUILTY GEAR』開発チームが学生に語る | GameBusiness.jp

ゲーム開発は大変だけど楽しい!アークシステムワークス『GUILTY GEAR』開発チームが学生に語る

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アークシステムワークスとヒューマンアカデミーは、『GUILTY GEAR』シリーズ開発者によるスペシャルセミナーを開催しました。本講演では、ゲーム業界への就職・転職を目指す人に向け、同社の2D対戦格闘ゲーム『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』の企画立ち上げからアーケード版の開発の流れや開発秘話が紹介されました。

登壇者は『GUILTY GEAR Xrd』開発チーム「TEAM RED」から、ゼネラルディレクター石渡氏、制作ディレクター山中氏、統括バトルディレクター関根氏、プランナー片野氏です。参加者は同シリーズの熱心なファンも多数おり、講演は終始盛り上がりを見せていました。

■登壇者

・石渡太輔 ゼネラルディレクター シリーズ第一作『ギルティギア』から制作に携わる、ギルティギアシリーズの生みの親。キャラクターデザインや楽曲制作なども自ら手掛けており、その才能は多岐に渡る。

・山中丈嗣 制作ディレクター 石渡氏と共に立ち上げから携わっていたコアメンバー。本作においてはプロジェクト全体の企画と進行管理に従事。また、作品の世界設定やシナリオも担当。過去にはブレイブルーシリーズにおいてもディレクターを務めた。

・関根一利 統括バトルディレクター ゲーム雑誌のライターという経歴を経てアークシステムワークスに入社。現在では「統括バトルディレクター」として自社格闘ゲームのバトルプランナーの総責任者として尽力している。

・片野旭 プランナー 開発の傍ら、公式イベントの実況や解説も行う。現在はプランナーとして本作の制作に携わっている。

石渡太輔氏山中丈嗣氏
関根一利氏片野旭氏


『GUILTY GEAR』とは?
1998年に初代プレイステーションで発売された2D対戦格闘ゲームです。独自の世界観とキャラクターを持ち、洗練されたグラフィックと高い爽快感やスピード感が味わえる、アークシステムワークスの看板タイトルシリーズになります。様々なハードでバージョンアップや新作タイトルが提供されており、途中『GUILTY GEAR 2 OVERTURE』ではアクションとストラテジーという格闘ゲームから離れた作品も発売。そして昨年夏、2D対戦格闘ゲームの新作として『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』がアーケード版として稼働し、同年12月にはPS4/PS3版もリリースされました。


講演は石渡氏、山中氏を中心に企画立ち上げの話からスタート。本作のプロジェクトは2011年2月頃から開始されましたが、その際次のような方針が掲げられました。

・2D対戦格闘に立ち戻る。
・リソースはすべて一新し、完全新作にする。
・ビジュアル面のインパクトを鑑みて、映像的な革新は必須。
・8年間進んでいなかったストーリーを進める。

当時、2008年に稼働したアークシステムワークスのもう一つの看板、『BLAZBLUE』シリーズが人気を集めていた時期であり、かつ同シリーズにおいて手描きのキャラクターでの作画を既に限界まで挑戦していたこと、次世代機で解像度が上がれば更にクオリティの高い作画が求められるというハードルの高さがあったとのこと。こうした事情もあり、今作では初の3Dで制作するという大目標が決定しました。

しかし、シリーズファンは手描きアニメを望んでいる、手描きの絵柄には自分たちも愛着があり日本人らしい絵作りで海外にも訴求したい──という考えの元、考えられたのが「3Dのリアルタイムレンダリングで手描きアニメを再現する」というコンセプトでした。同氏らは、『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』に何が必要かという点に立ち戻り、次のような企画提案書を経営陣に提出しました。

・映像的な革新:リアルタイムレンダリングの3Dでジャパニメーションを再現したい。

・ゲーム性:シリーズのプレイ感覚は維持し、『GULTY GEAR』らしさは損なわない。格闘ゲームとして面白いことを前提に、720p or 1080p/60fpsで安定した動作が必須。



経営陣からは、ゲームのロードマップ、納期、品質、予算、次回作に繋がるシステムの構築や人材の育成、すでに人気となっている『BLAZEBLUE』との住み分けなどが要望として挙げられました。こうした過程を経て、まずシリーズとして最も大きな試みとなる絵作りについて、完成のイメージをしやすいコンセプトムービーが制作されました。こちらの映像は門外不出の内容ですが、会場限定で披露!ユーモア溢れる物語展開とバトルシーンに来場者たちは食い入るように画面を見つめていました。

■プリプロダクションの制作

コンセプトムービーで映像のイメージを伝えることに成功した次のステップは、プリプロダクションの制作です。プリプロダクションとは、ゲームの核となる部分を試作するというもの。今作においては、完成形に近いビジュアルを作成し、キャラクター1体分を格闘ゲームとして遊ばせることが目標になりました。しかし、開発過程において様々な問題が発生しました。

・画面比率の変更について
旧作は画面比率が「4:3」でしたが、時代に合わせプレイ感覚を変えずに「16:9」にする必要がありました。

・コリジョンの調整
格闘ゲームにおいて映像が2Dから3Dに変更になった場合、一番問題になるのが「コリジョン」と呼ばれる「攻撃の判定」と「喰らいの判定」です。2D作品を見た目はそのままに3Dに落としこむと不具合がたくさん発生します。例えば、2D格闘ゲームにおいて最も大事な画面端での攻防と連続技に関して、3D空間ではカメラとの距離によって歪みが発生してしまい、描画される映像が変わることで見た目とアタリ判定が変わってしまうのです。そこで、発生する歪みを補正し、従来の2D対戦格闘の感覚を再現しました。

・ゲームのベースエンジンについて
アークシステムワークスには今作の要求仕様に耐えうる3Dのゲームエンジンがなく、かつ社内で開発する事は非常にハードルが高いことから社外のミドルウェアエンジンである「UNREAL ENGINE3」を採用。選定に当たっては経験者のヒアリングや試用版のテストが行われたそうです。外部のエンジンの採用には、経営陣から、社内に技術の蓄積がされないことや、ライセンス費用が高いのではないかという懸念が示されましたが、スケジュール的に3D化を実現する為の唯一の方策として説得を行ったそうです。

こうした試行錯誤の結果、格闘ゲームの体裁は整っていくものの、映像から3D臭さはなかなか抜けなかったそうです。そうするうち、当初の期限を迎え経営陣に対するプレゼンテーションを行ったものの、クオリティに懸念が示されました。チームでは「泣きの一手」ということで、なんとか3ヶ月間の開発期間延長を得ます。

■どうしたら3D臭さをなくして2Dアニメらしく見せることができるのか?

チームでは3Dで2Dアニメを実現するために更なる研究開発を進めていきます。そこで行われたのは次のような手段です。



・カスタムトゥーンシェーダー:手描きアニメのテイストを実現するために、独自開発のトゥーンシェーダーを導入。

・ボーンスケールアニメーション:瞬間的に手足を拡大縮小するなど、視認性を向上しつつ打撃のインパクトを強調するようなウソをあえて付くことで、アニメ的な強調表現を実現。

・キャラクターモーション:アニメのような動きを表現するため、フルフレームではなくコマごとにタメの時間を調整する独自のモーション制御を行いました。表現に磨きをかけるため残像も3Dポリゴンによる立体で再現しています。

・背景デザイン:3Dは寄っても、カメラが回りこむように動かしても崩れないという演出的な効果があるので、360度どこにカメラが向いても違和感がない広大な背景を制作。

・エフェクト:アニメ的な次世代エフェクトを表現するために、従来のエフェクト(砂埃など)を3D化して360度からのカメラアングルに対応。



・ポストエフェクト:アニメでは描かれた絵に撮影処理を施しているので、アニメらしい表現に磨きをかけるためゲームでもエフェクトを加えています。



こうした積み重ねの結果、2012年8月の第二期プリプロダクションが完成し、プレゼンも成功。量産プロダクションが開始されました。アーケード版完成までの約1年、急ピッチでプロジェクト全体の計画が始動。2013年5月に開催されるアークシステムワークス25周年イベント「ARC SYSTEM WORKS FESTIVAL」での制作発表が新たな目標として設定されました。

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■格闘システムの開発は「追加ではなく拡張」というコンセプト

絵作りには先が見えたものの、一番大事な格闘ゲームの仕様が固まっていませんでした。この辺りで統括バトルディレクターの関根氏、プランナーの片野氏がチームに加入。格闘ゲームの骨組みを制作することになります。今作におけるコンセプトは「追加ではなく拡張」。複雑化を続けてきたシリーズの格闘システムを、原点に立ち戻りつつも自由度を犠牲にしないように、システムを増やさず元々あるもの中から新しい遊びを提供する方向で検討を重ねます。その結果、新規ユーザーもにも魅力を理解しつつも入りやすくさせるため、従来持っていたテンポを一度リセットしより遊びやすい方法について模索していきます。



ここからは関根氏、片野氏にバトンタッチされました。同氏らは、1つ行動に色んな意味を含められるかを追求していきます。具体的には、『GULTY GEAR』シリーズの特徴である「ロマンキャンセル」というシステム──これは攻撃を相手に当てた瞬間にボタンを押すと瞬時に次のアクションが可能になるというものです。従来のプレイ感覚を損ねないようにどこまで自由度を増やせるか考えた結果、「ロマンキャンセル」に自分だけが早く動けて相手が遅くなるというスローモーションシステムを導入することになりした。参考になったのは映画などのスローモーション演出です。ただ、本シリーズは格闘ゲームの中でもスピードが速く、「ロマンキャンセル」がそこに拍車をかけたシステムだったので、演出面と新しさに加え必殺技を出しやすくする工夫などボタンを押した時のレスポンスの良さを工夫することで打開を図っていきます。

様々な工夫を経て、いよいよ「ARC SYSTEM WORKS FESTIVAL」でデビュートレイラーが公開されました。



■ロケーションテストと家庭用ゲーム機への移植

ロケーションテストとは、開発中のバージョンを特定のゲームセンターでプレイヤーに遊んでもらうイベントです。今作の稼働前のロケーションテストでは、セガ秋葉原1号店を1フロア貸しきって行うなど大規模に全3回開催されました。そして2014年2月20日、『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』のアーケード版が全国一斉稼働。2014年12月4日には、家庭用ゲーム機向けのPS4/PS3版も発売になりました。

以上のように『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』は、構想からアーケード版のリリースまで約3年、家庭用ゲーム版までは約4年という年月を費やしたプロジェクトとなりました。

■質疑応答

最後に参加者から質疑応答も行われました。



―――『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』では、過去シリーズに比べてキャラクターのセリフやストーリーが理解しやすくなったと感じたのですが、これは意識されたのですか?

石渡:各キャラクターの勝利メッセージは、キャラクターの個性を全面に出すために公用語じゃないものを使うことが多いですが、ストーリーモードはできるだけストレスのない見せ方にするために、分かりにくい言い回しや固有名詞を避けたり、話のテンポが悪くならないようなセリフの選び方をしました。

山中:石渡とシナリオをどうするか相談した際、「ゲームのシナリオを書くのではなく、アニメの脚本を書く意識でやってくれ」と言われました。アニメでは多くを語らず、ストーリーの行間を読ませるというのを意識して作られているので、本作においてもそうした演出をしていきたいと。当時の話で印象に残っているのが、映画「風の谷のナウシカ」のユパが登場するシーンで、兵士が上官に「あの男がユパです」と言う場面があるのですが、その一言だけで視聴者にユパの凄みや強さを理解させる──そういう脚本を作ってくれと言われました。

石渡:映像が3Dになり細かな演技が可能になったというのも理解のしやすさに繋がったと思います。

―――『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』のキャラクターやステージは、原点回帰という観点から作られていたのでしょうか?

石渡:原点回帰というより、ギルティギアらしさを残りつつ新しくアレンジしようとすることが多かったです。ソルの服装ひとつとっても、従来のイメージを損なわないままやりたい。と同時に、従来から遊んでくださったみなさんが、少しにやりとしてもらえるような演出も随所に入れました。

―――ゲームのBGMはどうやって生まれるのでしょうか?

山中:まず、ゲームの進行によってどんな曲が必要か予算と兼ね合いを見ながら決定します。

石渡:各キャラクターのテーマなら、それぞれが置かれているドラマの中での人生背景を音に落とし込みつつ、すでに自分が作っている曲との差別化を図りながらギターを片手にパソコンの前で作っています。その後、MIDIで音源を制作し、アレンジャーが譜面に起こして不具合を直し、演奏者がスタジオで演奏して最終調整をして完成します。

―――家庭用ゲーム版の開発で苦労した点、注力した点を教えてください

石渡:新しく追加になった大きな要素は、ネットワークで対戦できる環境を作ることや、ストーリーモードなどの新モードを追加することです。アーケード版の完成見込みがでないと本格的に着手できず、特にストーリーモードは初めての試みが多かったので実際に出来上がったものを見てみないと手応えがつかめずに苦労しました。また、『GULTY GEAR Xrd -SIGN-』は格闘ゲームを触ったことがない人やシリーズを触ったことがない人向けにチュートリアルモードやミッションモードを設計し、実装するのはシリーズ初だったので力も入れたし時間もかかりました。

山中:家庭用版は全スタッフ参加しての企画スタートは2014年の1月末からで、10月ぐらいにはマスターアップしました。

―――ゲーム業界で働いていて良かったこと、辛かったことについて教えてください。

石渡:好きで入った道なので、好きなことをずっとやっていられるのは幸せですね。ゲームやアニメは日本の文化として誇れるコンテンツだと思っています。加えて、遊びに関してはボーダレスで表現できるメッセージ性に富んでいる優れたコンテンツあり、純粋に楽しませるために制作に携われるというは誇らしいことだと思っています。

山中:好きなことを、モチベーションの高いスタッフと一緒に作成して、こういった機会などを通じてユーザーの方からの感想もいただけて、やっぱり最高ですよね。

―――学生時代にやっておくべきことは?

山中:とにかくなんでもやりましょう──この一言につきます。ゲーム作りたいなら企画書を書いてネットで調べれば作れる。制作物は1つの実績であり熱意であり、それはしっかり伝わると思うのでまずは自分の物を作って欲しい。作ることで楽しさと辛さが分かると思います。

石渡:僕の具体的な例で言えば、「どうやって音楽を作れるようになったんですか?」という質問を受けるのですが、音楽が作れるようになったのではなく音楽を作っただけで、音楽作れるようになったから始めたのではありません。じゃあどうやって作れるようになったのかと言うと、結果が積み重なっただけだと思っています。そうして試行錯誤を繰り返しながら作っていった結果、作らせてもらえる土壌が生まれました。やればできるようになってくるし、どんどん良くなっていくので、とにかく気になったことを片っ端からやっていくのが重要かなと思います。

関根:僕は日常的になんでもゲームを取り込むというのをやっていました。面白かった映画、おいしかったご飯をどうやってゲームに取り込むかみたいな感じで考えます。ネタ探しをしていると、色々なことに気がつくので、アンテナを広げていくと結果的に面白そうなことに繋がるのでオススメです。

片野:ゲームに限らないことですが、自分の周りにゲームに関わっている仕事をしている人を探しまくって、なるべく多くの人から意見を聞くと良いかなと思います。

―――それでは、最後に石渡ゼネラルディレクターから一言お願いします。

石渡:短い時間でしたが、私も楽しみながらお話できました。ゲームを作るのは大変なのですが、それ以上の楽しさがあるので続けられています。本日はどうもありがとうございました。

《GameBusiness.jp》

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