ゲーム研究の時代・・・「ゲーム・アカデミクス」第1回 | GameBusiness.jp

ゲーム研究の時代・・・「ゲーム・アカデミクス」第1回

ゲーム産業の発展に合わせて、ゲームを学問として捉える動きも広がっています。主に産業としてのゲームに焦点を合わせてきたGameBusiness.jpですが、日本デジタルゲーム学会(DiGRA)のメンバーのご協力で「ゲーム・アカデミクス」という新たな連載をスタートすることに

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ゲーム産業の発展に合わせて、ゲームを学問として捉える動きも広がっています。主に産業としてのゲームに焦点を合わせてきたGameBusiness.jpですが、日本デジタルゲーム学会(DiGRA)のメンバーのご協力で「ゲーム・アカデミクス」という新たな連載をスタートすることになりました。第一回は山口浩氏が導入としてゲーム研究の概略を語ります。

山口 浩
駒澤大学GMS学部准教授
日本デジタルゲーム学会

今ではそれほどでもないかもしれませんが、少し前までは、「デジタルゲームを研究」というと、「ゲームを研究?」という反応を受けることがありました。ゲームは「不真面目」なもので、まじめな研究の対象ではないというニュアンスでしょうか。確かに、一部の例外を除けば、ゲームが学術研究の対象という認知が広まってきたのは、少なくとも日本ではそれほど昔のことではないかもしれません。

しかし、デジタルゲームは必然的にコンピュータ技術を利用するものですし、その水準も、ハード、ソフトともに、一般向けとしては最先端に近いものが数多く含まれています。少なくとも、ゲームを創りだすという行為は、もともと研究の「現場」に近いところにあったわけです。

また、いまやゲームは、若い世代を中心に幅広く普及した娯楽コンテンツとして、大衆文化の大きな一角を占めるようになりました。

考えてみれば、現代では比較的高尚な、いってみればハイカルチャーに近い領域のものとしてとらえられることも多い歌舞伎や浮世絵など、あるいは当然のように学術研究の対象としてとらえられている瓦版や黄表紙等も、生まれた当初は文化的価値の低い単なる大衆娯楽として扱われ、ときには社会の風紀を乱す害毒として弾圧されたりしたこともありました。それが今、学術研究の対象となっているのは、長い時間を経て定着し、あるいは幅広く普及したからです。

新たに生まれたコンテンツは、ある程度の時間が経過するにつれ、あるいは普及が進むにつれ、私たちにとって重要な存在となってきます。存在感が大きくなれば、研究の対象となるのはむしろ当然といえるでしょう。比較的新しく登場したコンテンツである映画や新聞、放送番組なども、同様の理由で、今は学術研究の対象となっています。その意味で、ゲームが研究対象となるのは、別に珍しいことでも何でもないわけです。

現在では、ゲームをその名に含む学会も複数立ち上がっており、またなんらかのかたちでゲームをその研究テーマとする学会は決して少なくありません。ゲームそのものやその作られ方のみならず、ゲームビジネスの手法やゲームが社会や人間にもたらすさまざまな影響など、ゲームをめぐる研究領域はどんどん広がっています。

この連載は、こうした流れをふまえ、ゲーム研究者からの情報発信を増やしていこうという動きの一環です。日本デジタルゲーム学会、およびコンテンツ文化史学会のメンバーが交代で、ゲームやその周辺領域に関する研究の動向等をお伝えしていきます。さまざまな分野の研究者がいますので、多彩な内容になるのではと期待しています。

私の所属する日本デジタルゲーム学会(DiGRA Japan)は、2006年に設立されました。「DiGRA」とは、デジタルゲームの国際学会である「Digital Games Research Association」の略称です。日本デジタルゲーム学会は、独立した学会であると同時に、このDiGRAの日本支部という性格を兼ねています。

ゲーム研究といっても、その裾野はとても広く、多くの学術分野にまたがっています。日本デジタルゲーム学会は、「日本国内におけるデジタルゲーム研究の発展及び普及啓蒙」を目的として掲げており、いわゆる文系、理系の別にかかわらず、多様なバックグラウンドを持つ研究者や学生が参加しています。

また、ゲームの多くがビジネスとして提供されていることから、産業界の視点も重要です。本学会にはゲームやその周辺業界の企業人も会員として参加しており、学術研究の成果に触れたりするだけでなく、さまざまな研究会活動などを活発に行い、より実務に近い知識やノウハウの共有などを行っています。産業界の人々と接することは、学術研究者にとっても有益な機会であり、こうした多様な人々の交流から、新たな知見が生まれることが期待されます。本コラムでも、そうした成果をご紹介できるかもしれません。

では、次回以降、よろしくお願いいたします。
《山口浩》

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