KLabの技術力の秘訣は・・・「ソーシャル、日本の挑戦者たち」第20回 KLab後編 | GameBusiness.jp

KLabの技術力の秘訣は・・・「ソーシャル、日本の挑戦者たち」第20回 KLab後編

KLab編の最終回は開発チームを率いる、取締役第2開発部部長の天羽公平氏に開発面のお話を伺いました。技術力の高さでは定評のある同社。どのような取り組みがなされているのでしょうか。

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KLab編の最終回は開発チームを率いる、取締役第2開発部部長の天羽公平氏に開発面のお話を伺いました。技術力の高さでは定評のある同社。どのような取り組みがなされているのでしょうか。



―――ソーシャル開発チームの開発環境を教えてください。

一般的なLAMPですね。多少変わっているかなと思うところは、弊社では大規模・高負荷対応のサーバーソリューションDSAS(ディーサス)というものがあるんですけど、これを使っているという強みがありますね。PHPではsymfonyというフレームワークを使っていて、その中のおいしいところはそのままに、コア部分は自分たちの必要な処理だけを行う様に全部自前で書き換えた軽量フレームワークで開発しています。PHPの様に学習コストが低かったりメンテナーを確保し易い言語で、ソーシャルアプリのような高負荷サイトを運用するためにはこういった技術を重宝しています。

ちなみに余談ですが、ソースコード編集には、Eclipceの様なIDEよりもVimやEmacsを使っている人が多いです(笑)。

※LAMP(OS=Linux、サーバー=Apache、データベース=MySQL、プログラム言語=PHP)

―――PHPを選択された理由はありますか?

以前はJavaで開発していたんですけど、日々の仕様の変更とかに迅速に対応したいということで、LL(Lightweight Language=軽量プログラミング言語)に挑戦したいと思いPHPを選択しました。

結果としては結構気に入っていますね。特にソーシャルでは短いサイクルで仕様が変わったり機能追加したりとかするので、そこに対していかに迅速に対応できるかが非常に重要になってきます。そういう意味でPHPは今上手く回っているのかなと思います。

―――RubyやPythonといった多言語での開発は考えたりしていないのですか?

考えていないですね。ただ、サービスに落とし込むのを迅速に対応できて、かつメンバーがみんなメンテナンスできるのであれば、他の言語でもいいと思います。むやみに新しい言語に挑戦したいというのは考えていなくて、自分たちがやりたいと思っているものの本質に対してどういう道具がいいのかという部分で考えています。乗り換えたらオーバーヘッドもありますし道具を増やすことが本質ではないと考えています。その辺りを考慮した上でいいものがあればもちろん乗り換えますけど、今は特に困っていないですね。

ただし、全てPHPで開発しているわけではなく、一部のエンジンやPHPの拡張モジュール等ではCやC++、Python等も利用していますよ。

―――開発チームの中で、メンバー間のスキルアップに向けて何かやっていることがあれば教えてください。

技術プレゼン大会という形式で、1回に7〜8人がプレゼンする形で勉強会をやっています。一般的に勉強会って読書輪講とか講義を聴いている人のためのものだと思うんですけど、我々の場合は完全に逆で、発信する人自体が成長すればそれでいいんですよ。聴いてる人の成長は一切考慮に入れていません。勿論成長すればいいなというのはありますけど、それを目的とはしていません。

従来の勉強会では、その内容に対して聴いている人の興味・スキルがまちまちな中でやっているので、誰一人として成長しないことが起こりえます。でも、発信する人に関しては絶対に成長すると思っています。ですから技術プレゼン大会のように7〜8人が発信すると少なくともその7〜8人は成長するし、プラスアルファで聴いている人も成長するかもしれないということでこのスタイルをとっています。

―――では、社外での取り組みなどはやっていますか?

社外とも勉強会はやっています。これも社内勉強会の考え方の延長で、結局は技術プレゼン大会みたいな形で運用しています。月一くらいで開催していますね。

―――エンジニアの方が、KLab社ならではの得られるもの、やりがいはどういったものだと思いますか?

まず、我々はどういうエンジニアであるべきかというところから言いますと、今はソーシャルアプリ開発にLAMPを使っていますけど、PHPができますとかそういうことが本質ではなくて、しっかり技術の基礎ができること。また、非常に短いサイクルでミッションが変化していくので、その変化と共に必要な技術が変化した場合にそれに対してどれだけ早く順応できるかがすごく重要になってくると思います。

KLabはビジョンとして「IT業界で一番わくわくできて、1番成長して、1番収益を上げる」というものを掲げているんですけども、その中で投資なくして飛躍はありえないと思っているので、今やっている事業で得た収益を新規事業や研究開発に再投資するという方針でやっています。こういう方針でやってきたので、今では確固たる技術力も有していますし、基礎の部分に向き合い、ミッションがいろいろ変化してきたことにも対応してきましたので、基礎と適応力は培われてきたと考えています。こういうベースがあるので、これからジョインしてくる人たちにも技術の基礎や適応力を得るチャンスはあると思います。

ですから、LAMPでの開発におけるプロになりたいという人が欲しいわけではありません。どういった技術が必要になっても、楽しく前向きに適応・活躍できるような人と一緒にやりたいなと思っています。また、その様に育成できる環境があります。

―――開発のメンバーの方が企画に入っている企業も多いですが、開発サイドの方と企画プロデュース職の方の関わり方というのはどういった形になっていますか?

これは結構人によるところがありますね。会社としては企画から仕様に落とし込むというところもできるようになりたいと考えて取り組んではいますけど、それぞれの志向性もありますし推進はしていますが、現在トライアル中といったところです。

森田:プロジェクトによって結構カラーが違っていて、最新のプロジェクトだと企画が1人しかいなかったりもしました。開発の人がパラメータやゲームバランスの部分も一緒にやってくれていて、そこは企画・開発が混然一体としてやっていましたね。弊社のように古い会社だと以前からのカルチャーをやや引きずっている部分もあるので、いきなり企画も開発も一緒にやれと言ってもなかなか難しいものがあります。そこは徐々に慣れさせながらといった感じですね。体質自体は変化しつつあると思いますよ。

―――1つのアプリを制作・開発するにあたってメンバーの構成はどういったものになっているのですか?

いろんな角度から言えるんですけど、例えば新規タイトルで尚且つ新しいデバイス・プラットフォームというところと、プラットフォームだけ変えてデバイスは一緒のところは違いますからね。モバゲーからmixiに横展開するのだったらもちろん1人ですし、構成はまちまちですね。

大体ですが、新規はエンジニアが4〜5人で1、2か月で開発します。ただ、新しいデバイスとなると技術調査から入りますので、もう少しコストがかかってしまいますね。

森田:全体合わせては大体10人くらいのチームで組んでいます。結構他社さんの話を聞いていると3、4人というところも多いので衝撃を受けますね。うちだとプロジェクトマネジメントしながら割ときっちりやっているので、プロデューサーとディレクターがいて、開発PMがいてエンジニアは開発PMの下につき、企画のディレクターの下にプランナー、クリエイティブディレクター、デザイナーがついてといった形です。結構大がかりに見えちゃうやり方をしていますけど、逆に少人数のチームでアプリが作れるのがすごく不思議で、ご教授いただきたいくらいです。ただ実際コアメンバーで言えば、開発4、5人と企画2、3人くらいになるのかなとは思います。基本的に内製なので、外注できるような部分も自分たちでやることで、作業人数が増えているんじゃないでしょうか。

天羽:ソーシャルができてまだ1年くらいという中で、どんどんプラットフォームも増えてきましたし、対応デバイスも増えてきたので、まだまだ下手な部分があります。これからどんどん上手くなっていきたいですね。その中で他社さんの話を聞くと上手されているという話を聞きますので、その辺りは勉強していこうと考えています。

森田:その辺もケースバイケースなのかなという気もしていて、例えばスーパープロデューサーとスーパーエンジニアの組み合わせだったら少人数でもできるけど、組織化していった時に全てのラインで再現できるかというと現実的にはハードルが高いなと感じるんですよ。だから割と真面目にプロジェクトマネジメントをして、企画でもレビュー体制をしっかり敷いた上で作るのが良いと、現時点では結論付けていますね。

ただ、だからと言ってスピード感を損なっているわけではないです。管理体制をしっかりした上で最速でやっているので、他社さんと比べてスピードが遅いかというとそんなこともなくて、むしろ早い方かなと思いますね。

―――なるほど、体制の部分でも他社とは結構違いがあるようですね。

あとは先ほども言ったように、我々は飛躍するために投資しているんですけども、他社さんには負けないくらい投資しているのかなと思っています。多種多様なプラットフォーム、や、マルチデバイスに展開していくところにかなり幅広く投資してきたので、これからの巻き返しには乞うご期待!といったところですね。ガラケー向けのサービスに専念しているような他社さんだと、今後スマートフォンやPCに対応していくのに、我々がオーバーヘッドかかったように他社さんもかかると思います。その辺りは先行投資できているんじゃないかなと思っていますね。

―――企業として歴史がある点も強みになっていますよね。

森田:基本的に我々の方針としては、しっかり組織化しながら継続的に質の高いものをリリースしていくことを目指しています。また、人材育成の面でも他に負けないくらいのいい人を育てていこうと考えています。ベンチャーっぽいマインドを持ちつつも10年の歴史がある企業なので、そこを上手く融合させながら成長していきたいですね。

ソーシャルで出てきたベンチャー企業は歴史が浅い会社さんが多いので、僕らが経験してきた、人数が増えた時にマネジメントレイヤーが足りなくて現場が混乱し、品質がばらばらになってしまうということを、今後、経験されるんじゃないかなと思うんですよ。我々は初めからボトルネックになることをある程度分かった上でやっているので、一見他社さんに比べると身重に思えるんですけど、今後1年2年経った時にだいぶ結果として変わってくるかなという確信を持ってやっています。

―――非常に強いメッセージですね!

開発体制に関してもう一点言わせてください。企画の部分とも似ているんですけども、プロジェクトの担当エンジニアに全てを丸投げしているわけではないんです。担当エンジニアが実装はするんですけど、それとは別に、プロジェクトを横断的に技術支援をするアーキテクトという部隊があります。ここが設計・レビューの段階から入りまして、アーキテクトレビューを経て担当メンバーが実装し、その後必要に応じてパフォーマンスチューニング等の支援を行うという流れでやってるんですよ。横断的に見るアーキテクトという部隊が、技術的なTipsを持っている部隊で、そこからいろいろ技術を吸収することができます。いい感じに役割分担ができていて、育成面でもいい感じに回っていると思います。

森田:うちは結構仕組化が好きな会社なので(笑)。仕組化というのは、最初は一部のキーマンにナレッジを集中させてそこから啓蒙していくという活動が必要ですけど、一回軌道に乗ると、あとは自然に技術・企画・Tips・ノウハウがみんなに伝播されていきます。今は最初なので、企画も開発も一部のキーマンがみんなに啓蒙しながらやっていますけど、もう1年もしたら変わると思っています。

天羽:他社さんの話を聞いていると任せることによって成長するというのをよく聞きますけど、それには全く同感なんですが、ただ単純に任せるだけじゃなくて、任せた側の責任というのもあると思っています。任せるところは任せるけれど、フォローもちゃんとするという形でやっていますね。

森田:品質へのこだわりもありますね。これは徹底していて、アプリ自体にも、開発・企画の部分でも、ムラは出ないようにしています。KLabの名前で出る以上は、恥ずかしくないものを出さないといけません。経営陣からのお墨付きを得た上で出しているので、今の体制でやってる以上は、極端に変なものを出すことは考えにくいかなと思います。変なものが出たときは、会社自体がイケてなくなった時かなと(笑)そういう意味では、経営陣は言い訳がきかないフルコミットでやっていますね。

―――経営陣も実際に現場に入ることで当事者意識の高まりもありますよね。

森田:そうですね。ソーシャルアプリの事業は、1タイトルリリースして、当たったら月1億円、年間数億円という世界なので、現場に任せて経営陣が見ていないというのは、個人的な感覚としてはありえないんですよね。コンテンツビジネスやBtoCビジネスの中でそういうマインドはあってはいけないと思っていて、お客さんに向けて商品を作っている以上は全員含めて納得のできる商品を出すべきだと思いますね。

―――社風などで周りからはこう思われがちだけど実は違うよ!という部分はあったりしますか?

思われているよりは結構勢いや活気なんかはあると思います。特にソーシャル部隊は活気がありますね。全部自分次第というか、チャンスをどんどん勝ち得ていくような人が活躍できる会社です。アウトプットや自己発信ができる人をキャッチアップできるマネジメントの体制がありますからね。

森田:1から10まで指示を出すのではなくて、新人も含めて、自分で創意工夫をしながら仕事をしていいよ、という与え方をするんですけど、そこができる人は本当に早くステップアップしていけますし、逆に言われたことしかできないと、ちょっとうちとは合わないかもしれないですね。入社して3、4年で役員や部門長まで駆け上がっていくような人も1人じゃないですし、本当に力のある人はどんどん取り上げられる会社だと思っています。

―――ありがとうございました。
《八反田智和》

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