電書ってなんだ? 米光一成氏の新しいチャレンジ・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第7回 | GameBusiness.jp

電書ってなんだ? 米光一成氏の新しいチャレンジ・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第7回

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不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
  • 不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。
不朽の名作パズルゲーム『ぷよぷよ』の作者、現在は立命館大学映像学部教授でもある米光一成氏。「電書部」を設立し、12月5日に行われた文学フリマにも参加しました。「電書部」は有名なブースとなり、行列が途絶えないほどの盛況ぶりでした。



電書部」とは何かは後述するとして、私は米光氏との偶然の会話から、電子書籍について学ぶこと多かった一年でした。

きっかけは5月の深夜の出来事。場所は東京都杉並区阿佐ヶ谷です。

阿佐ヶ谷ロフトAで「夜のゲーム大学」というイベントをやった。講座風エンタテインメントなイベント。米光は、そこで電書フリマの構想を話したのだった。イベントが終わった後、ゲームアナリストの平林久和さんが「電書フリマの考え方、すごく正しい。ぼくも参加させてください」と言ってくれた。

ぼくが、電書フリマの成功を確信した瞬間だ。なにしろ平林久和さんは『ゲームの大學』の著者であり、『ゲームの大學』は、ぼくがゲームデザイナーとして悩んでいたときの指針となった本だからだ。平林さんの分析と予測の鋭さといったらなかった。妄信して猛進してしまいそうなパワーがあるのだ。

ぼくにとってある種のバイブルである本を記した本人が「すごく正しい」と言ってくれたのだ。これほど心強いものはない。

(2010年5月18日 電子書籍部ブログ「電書部つうしん」より)


と、ありがたいことを書いてもらっております。

私は、昔から電子書籍に注目していました。
関心の芽生えは、社会人になりたての頃、「ハイパーテキスト」の概念を知った頃にさかのぼります。

MITメディアラボの所長、ニコラス・ネグロポンテ氏が言った「アトムからビットへ」。
すべての物理的なメディアは、ビット情報になっていく。

これは私が社会を観察するときの軸となる考え方です。
中吊り広告は、いつ、ビット情報になるのだろう? などと想像しながら、日々、東京都内を移動しています。

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去年からの動向で言えば、アマゾン・キンドルの第二世代が発売されたのが、09年10月。そののちiPadも発表されて、日本では電子書籍が一気にブームになりました。

ブームってどんなブーム?
ビジネスのブームです。

ハードメーカーは電子書籍リーダーを開発しようとしています。クレジットカード会社は、新しい少額決済の分野として、電子書籍の市場を狙っています。印刷会社は、出版物が電子化された際の権利を主張する準備をしています。そして、大手出版社は業界団体をつくって、統一フォーマットを策定しようとするなど、2010年の前半は電子書籍の旋風が吹き荒れていました。

人一倍、電子書籍に関心のある自分なのに、昔から注目してきた動向なのに、心に火がつきません。ところが上記のイベントで米光氏の「デジタルな電子書籍を、アナログでリアルな対面で販売してみたい」という発言を聞いた瞬間に、カラダが反応したのです。

コレだ!

講義が終わるなり、米光氏の近くに駆け寄り、参加表明をして仲間に入れてもらうことにしたのです。

なぜ、私はカラダが反応したのでしょう?
「正しい」と思ったのでしょう?

電子書籍ビジネスは、空騒ぎするばかりで本質から、かけ離れていると感じていました。日本の出版市場は低迷しているとはいえ、2兆円弱あります。現在の電子書籍市場は、調査機関にもよりますが、500億円から700億円程度。まだまだ、ニッチな市場なのです。しかも、現行の電子書籍市場のうちの5割、7割、8割……これまた諸説紛々なのですが、エロいコンテンツが多いとされています。利用端末は、いわゆるガラケー。

実業界が期待する「電子書籍市場の花盛り」は、ほど遠いと思っていたのです。ですが、「アトムからビットへ」は大きな文明の潮流で、いずれ、電子書籍は社会に浸透していく。それも想像できる未来像。

私の心の中には電子書籍に対して、醒めた視点と、熱い思いが混在していました。

そんなときに、です。フォーマットや端末にこだわらずに「とにかく電子書籍をつくる」。販売方法が多種多様ならば、「筆者が対面で売る」。

この方法は、「善は急げ」と「急いては事を仕損じる」のバランスを見事に調和させた、最高に理知的な問題解決法だと思ったのです。そして、行動力にも敬意を表したくなる思いがしました。

阿佐ヶ谷の夜以降、私はさっそく活動しました。
「あつかましい文章教室」と題した原稿を書きました。
原稿の枚数にして、約40枚。
普通の新書が約200枚の原稿だとすると、紙の出版では発行できない分量です。
それが出版できるのが電子書籍の良いところです。

でも、物足りないと思う読者がいるに違いないと思い、オーディオブックのおまけをつけました。オーディオブックと言っても、ICレコーダーに録音したMP3の音声ファイルを作成しただけのことです。

さて、対面販売する日がやってきました。
世界初の電書フリマ開催。
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仕組みはこうです。

販売所にはPCがあります。
そこに欲しい電子書籍の番号を選択し、メールアドレスを入力します。
すると、指定アドレスにPCでも、iPhoneでも、iPadでも、キンドルでも読めるファイルが届きます。これだけ。

電書フリマを7月17日に行ったら、1日(実質約6時間)で70種類の電子書籍が、5206冊も売れたのです。



販売現場に立ちあって、頭ではわかっていることが、観念ではなく実体験として理解できました。

電子書籍に在庫はいらないといいますが、本当に在庫はいりません。
電子書籍に売り切れはないといいますが、本当に売り切れません。
5206冊はサーバーに格納されているから、在庫を持たず、売り切れることもなく、販売できたのです。

また、電子書籍は持ち帰る際に重い荷物を持たなくてもよい。本棚のスペースを物理的に埋めてしまうことがないから、まとめ買いをする。とも、いわれてきました。

なるほどその通りで、1冊だけ買う人はまずいません。
ほとんどの電子書籍を100円で販売しているので、10冊選んで1000円の買い物をするお客様が多い、という現象を目の当たりにしました。

しかし、予想外のこともありました。
米光氏が周到に販売実験をやってみてわかったことですが、対面販売をしても何か手持ちぶさたなのです。

電子書籍を売るというは空気を売るようなもの。
現金を支払ったあとに何ももらえない、というのは場に白けた雰囲気が漂うのです。

この問題を解決してくれたのは、一枚の紙でした。
ダウンロード後のサポートや、問い合わせ先などを書いた紙という物体を「お買い上げ、ありがとうございました」と言いながらお客様に渡すことによって、何かを購入した満足感がえられる。そんな発見もありました。

こうした販売ノウハウがたまり、著名な作家も含めて「電書部」には著者があつまり、バックボーンを支えてくれる技術班がいます。5月に発表した「電書部」は、来年にまた飛躍しようとしています。

12月5日。文学フリマの開催日。
今年一年を振り返って、以下のようなインタビューをしました。

平林: まず愚問からです(笑)。「電書部」は想像以上の成功だと思いますか?

米光: ボク自身がビックリ。電書の時代がやってくるという長期的なビジョンはあったんです。でもゴールに着くまでの道筋は見えない。そんな状態でのスタート。ところが、書く人、システムをつくる人、買ってくれる人が集まってくれ、こんなに早く物事が回転するとは思っていませんでした。

平林: ところで、電子書籍ではなく電書と呼ぶわけは?

米光: 理由は3つです。書籍と電書は違うものにしたかった。電子書籍と呼ぶと、今の書籍の敵が出現したようなイメージになる。そこで「紙の本はなくなる」という、わけのわからない方向に話しは進んでしまいがちになる。

平林: ふたつ目は?

米光: 電子書籍というと、その将来像を狭めてしまいそうなのも、ボクが望む姿ではない。平林さんもいいこと言っていたじゃないですか。「究極の電書はカーナビだ」って。電子になることによって、位置情報や双方向性を取り込んだ装置やサービスが生まれてくる。本のカタチにとらわれたくないので、書籍と呼びたくなかったのです。

平林: 私もゲームと同じで、電子書籍の定義を広くとらえればとらえるほど、新しいアイデアが生まれてくると考えます。

米光: あと、言葉として避けたいと考えたのが「籍」の文字なんです。移籍・学籍・鬼籍・戸籍・国籍・在籍・除籍・船籍・僧籍・地籍・党籍・入籍・版籍・復籍・本籍。「籍」には帰属をはっきりとさせるための公式文書のような意味があって、電子でできることの自由が感じられない。

平林: うわー、グッと来る。重い字ですね。「籍」。

米光: 電書ならば、なんでもありのイメージが湧きそうですよね。実際につくって販売しましたけど、30万字以上に及ぶSkypeチャットのログだって電書になります。セミナーがあったら、その議事録を帰り道に読んでもらう即興のような電書があってもいい。

平林: だから、電子書籍ではなく電書。ただの略称ではなく、知恵が詰まったネーミング。ところで、歌人の佐々木あららさんが、対面販売よりも、もっとアナログなことをはじめましたね。日本全国を旅しながら売っていく「電書行商」。

米光: おもしろいアイデアです。一日約50冊のペースで売れているそうです。Twitterでその様子がわかりますので、ぜひフォローしてほしいですね。
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平林: ところで、今年はある意味で『ぷよぷよ』の当たり年。テレビCMでも、『ぷよぷよ』が遊べますと連日放映されてました。

米光: そうですか、うちにテレビがないから知りません。

平林: テレビがないことは知ってますが、CMも見ていない?

米光: はい。ホントは『コール・オブ・デューティー』を遊べよ、という話しなんですが(笑)、今、ゲームをやるのは、PCとニンテンドーDSとPSPとiPhoneです。

平林: 「米光さんはゲームをつくらないんですか?」と質問されません?

米光: 自分にとって電書づくりはゲームです。つくっていて楽しいし、これから歴史をつくっていくんだ、という希望があってワクワクします。黎明期だからこそ味わえる興奮は、昔、ゲーム業界に飛び込んだころの感覚に似ています。

平林: 昔、松浦雅也さんが『パラッパラッパー』をつくったとき、音楽を止めるんですか? と訊かれるのが好きではなかった、とうかがったことを思い出しました。彼が率いていたバンド「サイズ」も、『パラッパラッパー』も、音が何かとシンクロナイズすることを目指している。その表現手段が、音楽になったり、ゲームになったりするだけだと。

米光: 世間の人は表現するメディアの種類を見ます。でも、ボクらはつくりたいものが先立って、その時々によってメディアを選択しているだけなんですけどね。

例によって、電書、ゲームのことについて話し出すと止まらなくなります。
最後に、私が印象が残ったチャットメッセージ、今年のナンバーワンをご紹介しましょう。

某日。米光氏と食事をしました。
そのときに、言いました。

「私の仮説ですけど、菊池寛。彼は電書部の先駆けだったように思うんです。明治の初期、高額だった印刷機が大正時代になると、裕福な個人ならば入手できるようになった。それで『文藝春秋』を創刊したのではないか?」


その2日後です。
Skypeチャットに米光氏から、こんなメッセージが入っていました。

食事しながら、電書の話になったとき、平林さんが「菊池寛だ」と叫んだのは、とても愉快でした。それで、すこし菊池寛について知ろうと思って本を探していたのですが、その前にネット上の「菊池寛アーカイブ」というサイトを見つけました。


最初からぐっと惹きつけられました。
ボクが「夜のゲーム大学4」で言った気持ちと見事にシンクロして、驚きです。引用します。

『文藝春秋』創刊の辞

私は頼まれて物を云うことに飽いた。自分で、考えていることを、読者や編集者に気兼なしに、自由な心持で云って見たい。友人にも私と同感の人々が多いだろう。又、私が知っている若い人達には、物が云いたくて、ウズゝしている人が多い。一には、自分のため、一には他のため、この小雑誌を出すことにした。

『文藝春秋』創刊号編集後記

もとより、気まぐれに出した雑誌だから、何等の定見もない。原稿が、集らなくなったら、来月にも廃すかも知れない。また、雑誌も売れ景気もよかったら、拡大して、創作ものせ、堂々たる文藝雑誌にするかも知れない。


端末の開発競争も、フォーマットの主導権争いとも別次元のところにいる。
米光一成という感性で察知し、論理で裏づける才人。
でも、家にテレビがない『ぷよぷよ』の作者が、菊池寛の心と通じ合って電子出版の世界に波紋を広げていることが、私には痛快に思えてしかたありません。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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