自分をゲームにするクリエイター・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第4回 | GameBusiness.jp

自分をゲームにするクリエイター・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第4回

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毎日の食生活を、しりとりにして過ごしている人物がいます。
口にした食品名の最後の文字が、次に食べるモノの最初の文字になっていなくてはいけません。「しりとり食生活」と彼は呼んでいます。
  • 毎日の食生活を、しりとりにして過ごしている人物がいます。
口にした食品名の最後の文字が、次に食べるモノの最初の文字になっていなくてはいけません。「しりとり食生活」と彼は呼んでいます。
  • 毎日の食生活を、しりとりにして過ごしている人物がいます。
口にした食品名の最後の文字が、次に食べるモノの最初の文字になっていなくてはいけません。「しりとり食生活」と彼は呼んでいます。
毎日の食生活を、しりとりにして過ごしている人物がいます。
口にした食品名の最後の文字が、次に食べるモノの最初の文字になっていなくてはいけません。「しりとり食生活」と彼は呼んでいます。

ルールは実際のしりとりに準じます。
同じもの2回食べてしまうとゲームオーバーです。
「ん」で終わるものを食べてはいけません。

この時点で賢明な読者の方は、「しりとり食生活」の過酷さに気づくでしょう。
「ごはん」と「パン」を食べられないのです。
「ラーメン」も「うどん」もダメです。

すると、どういう食生活になるか?

[ぼんじり]→[りんご]→[ごぼうそば]→[バンバンジーサラダ]→[ダイジェスティブチョコビス]→[スープカリー]→[リーフパイ]→[いかめし]→[しょうがあめ]→[めかじき]→[キャラメルラテ]→「てりやきチキンピザ]→[ザーサイ]→[いもけんぴ]→[ピュレグミ]を食べて暮らすことになります。ただし、生命に危険があるので、しりとりに関係なく[水]だけは特例で飲んでよいことになっています。

そんな生活をする人物とは、後藤裕之氏。
Twitterのアカウントは@gotohiro314です。

プロフィールにも書かれている通り、ことばのパズル『もじぴったん』のゲームデザイナーです。

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私は「ゲームの未来を語る」の連載をはじめてから、無性に彼と会いたくなりました。後藤裕之なる稀有な存在は、忘れそうになったゲームづくりの原点を思い出させてくれます。そして、ゲームの未来を切りひらく才能の持ち主、との思いも抱くのです。

彼のTwitterでの発言はユニークです。
ゲームの未来をきっと彼は……などと、難しく考えなくても単純におもしろい。
私は彼のつぶやきを楽しみにしているフォロワーでもあります。

一度、特別企画として『新婚さん〜』と『アタック25』の司会を交換して放送してほしいな。夜の夫婦生活の話題になると児玉さんが「アタックチャンス!」、解答者が誤答すると三枝さんがイスから転げ落ちる、とか。

「ツ」の字が笑顔に見えるって、今はじめて気付きました。「シ」よりも「ツ」の方が笑顔っぽいですね。

「菅」か「管」か分からなくなったら、「菅さんスゲー!」と覚えるといい。「スゲ(菅)」で変換する。

iTunesの「最後に再生した日」の項目って面白いな。僕が最も長く聴いていない曲は、7年間に聴いた『埼玉オリンピック音頭』だと分かった。

なぞかけにハマってる子に、「おみくじ売り場の巫女さんとかけまして、大容量のハードディスクととく。そのこころは?」「テラ(寺)バイトです」というメールを送信した直後、巫女さんがいるのは寺じゃなくて神社だということに気付き、ドヤ顔から赤面に変わったなう。


話は前後しますが、彼は「しりとり食生活」の前に、今年の7月から「タケノコ生活」をしていました。

音楽CDやゲームソフトを売って食費を稼ぐ。
と、同時に部屋もきれいに片づいていく。
それが「タケノコ生活」です。

タケノコ生活の初日。今日はとりあえずブックオフに売って、一週間分の食費をゲットした。この調子で、部屋のスペースも広げていきたい。


と宣言。

タケノコ生活47日目。BLTサンドを作って食べた。ただしBLTは、「B→バター」「L→レタス」「T→タマゴ」。

タケノコ生活51日目。なんか食欲が無かったので、一日断食した。

中古ソフト屋に売ろうと思いつつ、なぜかいつまでも手元に残しちゃうゲームってあるよね。うちにある、DSの『このクイズ野郎っ!!』『漢字の渡り鳥』とかが、まさにそう。なんだろう、この捨てきれない気持ち。

タケノコ生活63日目。のりを買った。白米にのり乗せて、しょう油かけて食べた。

以上が「タケノコ生活」の様子です。話は、さらにさかのぼります。彼は、逸話多き人物です。

後藤裕之氏は大学在学中だった1995年、円周率暗唱42,195桁の世界記録(当時)を樹立。ギネスブックにも掲載されています(写真参照)。そして、今年6月に「乾杯を同時にする人数」のギネス更新を、イベント会社の人たちとともに企画。場所は明治神宮球場です。今までの2万6000人の記録を越えて、2万8000人が乾杯をし、見事に達成しました。

横浜市神奈川区から、九州の博多まで、ママチャリ(自転車)に乗って夏休み旅行。しかも、その行程では「豚骨ラーメンしか食べない」ルールをつくっていました。関東では珍しくない豚骨ラーメン店、西日本に行くと多くなる豚骨ラーメン店ですが、名古屋から大阪までは自転車で走る街道で一店舗も豚骨ラーメン店がなかったそうで、この間は断食をしたそうです。

「タケノコ生活」をしている頃です。私が「会って食事しない?」と誘うと、快諾してくれました。彼の自宅近くのレストランで、こんな話をしました。

平林 後藤くんって、自分のことを天才って思っている? オレはモーツアルトやダリに似たものを感じるんだけど。
後藤 天才という意識はないです。天才って、人よりも高いところにいるイメージじゃないですか。上ではなくて横、横にどうやってずれるか? については意識してますね。
平林 横?
後藤 ええ……マラソンってスタートすると、自然と第一集団、第二集団のように分かれますよね。ボクは特に孤独が好きではないのですが、そのどの集団にも属さない『ひとり』でいることに快感を覚えるタイプなんです。
平林 集団……今のゲームの世界でいえば3Dとか?
後藤 そうです。ボクは3Dというのは、本当は小さなグループだと思っているんですけれども、人が群がり過ぎている感じがします。
平林 後藤くんが興味があるのは、技術ではない。遊びを考えるうえでの原理的なこと。たとえば確率については、いつも考えているよね。
後藤 確率、順列、組み合わせは、子どもの頃から一番好きな勉強でした。
平林 Twitterで見たんだけど、『田舎チョキ(親指と人差し指を立てるチョキ)というのがあるが、5本指のうち2本を立てる組み合わせは10通りある。そのうち、「親指と薬指」のチョキは最も難しい。ていうか、無理』ってあったでしょ。アレ、大好き。
後藤 よく見ていますね(笑)。
平林 だって、田舎チョキで読み手の心をつかんで、10通りある……これでオチかなと思わせておき、『親指と薬指は無理』という数学的ではないオチが、さらに用意されている。傑作だと思った。
後藤 意識していませんでした。
平林 あと、『うまい棒の“めんたい味”4本と“やさいサラダ味”6本を食べる順番は何通りあるか、計算しなさい。正解は210通りです』というのもあった。
後藤 (手元のメモにその計算式を素早く書いて……)この答えが210です。ボクはうまい棒が好きで、無人島に行くなら5万本くらい持っていきたいです。
平林 そういう話じゃないんだけど(笑)……あと、やはり感性が研ぎ澄まされていると思うのは、言葉について。
後藤 はい。『もじぴったん』は、確か公称13万語になっていますが、本当は14万語弱くらい、自分で単語の解説文を書いたんです。広辞苑で約25万語、中学生が使う辞書で5万語です。言葉のゲームをつくっていましたから、言葉について考えるのは習性になっています。
平林 梨園の妻って、耳で聞くと離縁の妻にも聞こえて、縁起が悪いね……のツイートも覚えている。確かに、と思った(笑)。自分の中では勝手に“後藤流合わせ技”と呼んでいるんだけど、言葉×確率で思い出すツイートはこんなのがある。

子供の性別が「♂♂♀♀」なら「兄弟姉妹」と呼ぶのは正しい。「♂♀♂♂」でも、長女は姉でも妹でもあるので、「兄弟姉妹」は間違いではない。しかし「♂♂♂♀」や「♀♂♂♂」の場合、「兄弟姉妹」と呼ぶのはおかしい。「兄弟妹」「姉兄弟」などと呼ぶべき。…という屁理屈を言ってみるなう。

「よく当たりが出る宝くじ売り場で買えば、当たる確率が高い」「たくさん当たりが出ている売り場は、もう当たりが出にくい」、両方とも確率を無視したトンデモ理論だけど、前者を信じる人が圧倒的に多い気がする。幸運にあやかりたい、と考える人が多いのだろう。

「エンターテインメント」を「エンタメ」と最初に略した人の造語センスは素晴らしい。「エンタテ」「エンテイ」「エンテメ」「エタテメ」とか略されても良かったはずなのに、なんと語呂がいいことか。その中でも「エンタテ」は良さげだけど、「円建て」とカブるしね。

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平林 確率と言葉と……あと、クイズに音楽も詳しい。
後藤 はい。大学時代はクイズ研究会に所属していました。音楽も好きでイントロクイズに出場もしましたし、今では問題をつくる側の仕事もさせてもらっています。
平林 楽しそうだね。
後藤 ゲーム業界以外の人と仕事するのは、タメになりますし、とてもいい刺激になっています。
平林 急に話は大きくなるけど、ゲームとは何かを再定義してくれる人を時代は求めていると思うんだ。ゲームづくりよりも、ゲームをする意味づくり……が大事な時代って感覚かな。すると直感で、今の状態の後藤くんに期待してしまう。
後藤 ありがとうございます。よく『続編をつくらされるから』を理由に会社を辞める人がいますよね。ボクもそう思われたかもしれませんが、違います。バンダイナムコゲームズ在籍中は、もっといい『もじぴったん』をつくらせていただいていると思って働いていました。でも、独立を覚悟したのは、家庭用ゲームソフトだけがゲームではない。なんでもいいから遊びをつくりたいという気持ちが強くなったのです。
平林 遊び……
後藤 ルールやゴールがなくても、こうして会話していることが遊びですし、タケノコ生活も遊び、ボクの苦手な英語の勉強も、遊びだと思うんです。
平林 確かに遊びの定義は広い。技術の進歩って人に幸福をもたらす反面、定義を狭くさせてしまう不幸ってあるよね。
後藤 ゲームの定義がそうですよね。どんどん先鋭化していく感じがします。
平林 ゲームは『オリンピックゲーム』というくらいで、競技の意味もある。あやとりもゲームだし、将棋もゲームだけど、今、誰かに電話して『オレ、ゲーム欲しいんだ』と言ったら、たいていの人は『コンピュータゲーム』を連想すると思う。
後藤 そうでしょうね。角度や考え方を変えたら、みんなゲーム=遊びになるのですが……。
平林 それ、名言かも(笑)。
後藤 ボクが個人的にやってみたいゲームがあります。バリウム検診の機械を使ったゲーム。『右回りに2回転して』『うつぶせになってから左向いて』……命令通りに動くと、スピードアップしていく。そんな、アトラクションがあったら遊びたい。
平林 いろんなアイデアが出てくるね。……では問題、ここに湯呑茶碗があります。アドリブで遊びを考えてください。
後藤 (表情が真顔になって即座に、しかも早口で)茶碗すべてにサイコロを入れて、その合計数を当てるゲーム、似通った茶碗を100個用意してマトリョーシカ人形のように大きいものに小さいものを詰め込んでいくゲーム、寿司屋の茶碗のように魚へんの漢字が書いてあって、それをカメラで写すと実際の魚があらわれるARゲーム……すいません。
平林 何が?
後藤 こういうことを言われると、頭の中にはバッーといろいろなアイデアが思い浮かぶんですが、それを表現する言葉がついてこないんです。
平林 だから、これもTwitterで見たんだけど『仕様書を作る。自分さえ読めればいいので、超なぐり書き』なんだ。
後藤 よく、今日は何もすることがないなと思ったら、ひとりブレストをやるんです。どんなネタでも、数百のアイデアが浮かびますけど、ストックするのは手書きが中心です。
平林 アイデアが貯まりすぎている?
後藤 会社をやめてから、今までは、アイデアを貯める期間でした。そろそろ、そのアイデアを吐き出して、カタチにしていきたいですね。


こうして私たちの会話は、尽きることなく続きました。

テレビゲームをはじめて遊んだ頃の感想を思い出してください。
「こんなにおもしろいことを考えられる人って、きっと凄い人に違いない」。
「その人の頭の中味は、どうなっているんだろう?」。
画面の向こう側にある見えない才能について、純粋な好奇心と尊敬の念を抱いたことはないでしょうか。私もそのうちのひとりです。

ですが、いわゆる有名ゲームクリエイターたちは、(上場)企業の制約から常識的なコメントしかできなくなり、インタビューする側も固定ファンのために「前作との違いはなんですか?」といった定形の質問をせざるをえません。ゲーム業界関係者たちは、それが最善の行為ではないとわかっていながら、このパターンから、なかなか抜け出せないでいます。

業界や企業からの縛りがなくなった、今の後藤裕之氏は、発想することの自由、発言することの自由を得ました。その引き換えに「タケノコ生活」や「しりとり食生活」という縛りを自分にかけて、人間ゲームに挑戦しています。

私は彼に尋ねました。

平林 会社を辞めて不安になっている人は、いっぱいいる。でも、こんなに楽しそうにしているっていうことは、後藤くんは楽観主義者なのかな?
後藤 (少し考えて)……普通の楽観主義者ではないと思います。不安や不満があっても楽観的に考えられる人はたくさんいて、それこそマラソンでいえば、ひとつの集団ができていると思うんです。ボクの場合は……その集団から離れた、マゾヒストの楽観主義者ではないでしょうか。あえて辛いことやって、自分がどこまでできるかを挑戦して楽しんでいるんです。


わかった。今のゲーム業界がなんとなく重苦しいのは、サディスティックな悲観主義者が多いからかな? と咄嗟にひらめいた言葉を、私はあえて口にしませんでした。

愉快な才能の持ち主との尽きぬことのない会話のゲームを、バッドエンディングにしたくなかったからです。

その後、後藤氏の「電車に乗っているオジサンが堀北真希に似ていた」という話から「もしも、○○が、だったら……」の発想法について、私たちは話し合うことになりました。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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