【CEDEC 2010】『ICO』の上田文人氏が語るゲームにおけるキャラクターとアニメーション | GameBusiness.jp

【CEDEC 2010】『ICO』の上田文人氏が語るゲームにおけるキャラクターとアニメーション

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アニメ界の重鎮・大塚康生氏と『ICO』『ワンダと巨像』などを世に送り出した上田文人氏との対談が、CEDEC 2010の特別招待セッションで実現しました。
  • アニメ界の重鎮・大塚康生氏と『ICO』『ワンダと巨像』などを世に送り出した上田文人氏との対談が、CEDEC 2010の特別招待セッションで実現しました。
  • アニメ界の重鎮・大塚康生氏と『ICO』『ワンダと巨像』などを世に送り出した上田文人氏との対談が、CEDEC 2010の特別招待セッションで実現しました。
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アニメ界の重鎮・大塚康生氏と『ICO』『ワンダと巨像』などを世に送り出した上田文人氏との対談が、CEDEC 2010の特別招待セッションで実現しました。

大塚康生氏(左)、上田文人氏(右)


大塚氏は日本アニメの黎明期から、『白蛇伝』をはじめ『太陽の王子 ホルスの大冒険』『未来少年コナン』『ルパン三世』など数々の名作アニメにおいて作画や作画監督を担当。

一方の上田文人氏は、光と影が印象的なゲームで根強いファンを持つディレクター。現在は『人喰いの大鷲トリコ』(PS3)を開発中です。

また、司会を務める細田伸明氏も数々のアニメ製作に携わった経験を持ち、現在は株式会社バンダイナムコゲームスの社長室に所属しています。

■演技におけるリアルさとは

細田氏: 今回のセッションは「もっと上手になりたい」ということを切り口に、動かす力いわば「アニメる力」を、もっとゲーム側に引き込めればというところから始まっています。

演技におけるリアルさと、実働することのリアルさとがあり、海外では実働するリアルさが採用されています。一方日本のアニメでは、道具が不便だった時代からリミテッド・アニメーションのような工夫をし「演技におけるリアルさ」を採用してました。ゲームがそうした先人たちのノウハウを学ぶことは重要なのではないでしょうか。

私自身、大塚さんとは『未来少年コナン』でご一緒させていただきました。その後、会社を移って今はゲームメーカーにいますが、「なぜアニメーションのノウハウが、CGやゲームに入ってこないのかな」と感じています。

上田さんはアニメの経験がまったくないところから始められたと聞きましたが。

上田氏:僕は1970年生まれなので、大塚さんが東映動画で作られたアニメをリアルタイムで観てはいないのですが、故郷の関西では夏休みにリバイバルでアニメが放映されていまして、『白蛇伝』や『わんぱく王子の大蛇退治』に触れてきました。そのときから他のTVアニメとは違うもの、ディテールの細かさを感じてはいました。

そして、ゲーム業界に入ってから、大塚さんの著書『作画汗まみれ』に出会いました。ゲーム業界でアニメーターはどうしても軽視される傾向にありますが、その本を読んだことでアニメーターって素晴らしい職業なんだと思うようになりました。僕の作品を見てもらうとわかるんですが、大塚さんには多大な影響を受けています。

細田氏: かつて大塚さんから「誰が絵のどこを見ているか考えながら描け」と教わりましたが、大塚さんは具体的に描くことよりも、感じさせるというか、演技力に重きを置かれていますね。それはやはり経験から来ていると思うんです。大塚さんはもともと麻薬Gメンだったんですよね。

大塚氏:厚生省の麻薬取締の部署にいました。昭和26年当時、東京都で暮らすには食糧切符が必要でした。食糧切符がないとレストランに行っても食べさせてもらえないんです。

私は漫画の仕事をやりたかったんですが、故郷の山口県から上京するためには食糧切符をもらわなければならない。そこで厚生省の試験を受けたら受かったんです。配属されたのが関東甲信越地区の麻薬取締部というところ。そこで4、5年麻薬官の補助をしました。ですから麻薬取締「官」ではないんです。取締の書類を作ったり、捕まえた人の指紋を採ったりする仕事です。

昭和32年に東映動画ができました。当時、ソ連の『せむしの仔馬』といったアニメ映画を観て、繊細ですごいなぁ美しいなぁと思っていましたから、すぐ試験を受けに行ったんです。課題は「少年が槌(つち。ハンマーのこと)を持ち上げて振り下ろすまでの絵を、6枚で描く」というものでした。

僕は最初、少年の両腕だけが動く絵を描けばいいと思っていましたが、聞けば「鎚はやっと持ち上がるくらいに重い」と。

そこで足を片方を踏み出したほうが力が入るだろう、「よいしょ」と持ち上げるには槌を持つ位置を変えたほうがいいだろう、まず肩があがって腕があがるだろう、そうしたことを想像しながら描いたんです。それが正解でした。「明日から練習に来なさい」と言われたんです。

これはあとで知ったんですが、「作動原理」というんです。物が動くには動くための原理がある。僕はそれを自然に身につけていたんです。

というのも子供の頃から蒸気機関車が好きなんですが、蒸気機関車は非常にアナログでシリンダーがピストンが押して動き出すのが外から見えるわけです。それを観察していた経験があって、力が作用すると人間の核の部分がどう動くかを知っていました。

そういうところから入ったので、「動いてこそアニメーションだ」と考えています。

「綺麗な絵を描きたい」というところから入ったわけではないので、東映での11年間は火を吐く大蛇ですとか大なまずみたいなものばかりを描いていました。

のちに東京ムービーに移って『ムーミン』を担当し、次に『ルパン三世』をやると、東映から電話がかかってくるんです。「ムーミンみたいなかわいらしいものが描けたのか!」「峰不二子が描けるなら、なんで描かなかったの!」って。

■大塚さんに課題を見てもらおう

細田氏: 大塚さんは今、アニメ塾を開かれていると聞きます。そこでの試験内容について話していただけると、皆さんの参考になるんじゃないかと思いますが。

大塚氏:いま、みんな絵は上手です。僕の時代なんかより遙かに。女の子の絵なんかは特に綺麗に描くんですよ。ただ、動かすほうに興味があるという人が減ってきています。たとえば先ほどのように重い物を持ち上げて振り下ろす絵。これなんかは2枚でできちゃうんですが、そういうことができないんです。そもそも今はセルの枚数が1話でだいたい4000枚。『ルパン三世』では600枚くらい使っていましたから。2000枚の差はものすごく大きいです。CGならセルの枚数は関係ないわけですよね。

上田氏:実は先ほどの試験の話は、以前から知っていました。それをマネしたというわけではないですが、僕のチームでも実技テストというのをやっています。限られた時間のなかで「こういう動きを作ってください」と課題を出しています。

今回は僕自身が課題と同じ3時間で作った動画を見ていただきます。お題は「キャラがバーベルを持ち上げる」というものです。早い人は3時間で持ち上げて下ろすところまで作ってしまいます。遅い人だとバーベルをつかんだところで終わってしまうんですが。

細田氏:(動画を見ながら)ポイントはやはり「重さ」ですか?

上田氏:そうですね。アニメーションは、いかにそのキャラクターになり切れるかということだと思うので、たとえ本物のバーベルを持ち上げたことがなくても、自分だったらどうするかということを考えます。
あとは時間制限があるので、自分のできること、やり方を見つけられるかというというところですね。

大塚氏:これを3時間で。CGというのはすごいと感じますね。欲を言えば、持ち上げたときに「タメ」というか、力の入れどころ。「うーん」と持ち上げるところがあれば。

『未来少年コナン』では大きな石なんかを持ち上げる場面が多かったですね。宮崎駿さんの設計でもあったんでしょうけど、ああいう「タメと放出」のタイミングの面白さを昔の人はすぐにおぼえたんです。3時間でこれができるなら、どんどん学んだほうがいいですね。

綺麗な絵は描けるけどダメ、という人はいるんです。バレリーナは5歳くらいから始めるといいますが、演技を想像する力を持つ人は何人もいないと思います。そうしたことは課題の出し方でわかります。

東映時代、「太ったおじさんが飛び込み台から飛び込む絵を描け」という課題がありました。そのとき私は試験官で、相手は(アニメーション監督の)杉井ギサブローでした。彼はおじさんが飛び込み台から下を覗いたのち立ち上がって、飛び込み台を降りていく絵を描きました。降りきったところで水面に足をつけるんです。

みんな「『飛び込む絵を描け』と言ってるのに」と落とそうとしたんですけど、面白いから理由を聞いてみようとなった。すると「僕はすごい高所恐怖症で、描いてるうちにこうなった」と言うんです。それは一種の素質ですよ。素直さが出てるんです。だから採用になりました。以後そういう試験方法が確立しましたよ。

上田氏:そのお話、僕自身がアニメーターだったらうれしいんですが、ゲームのディレクションをする立場から言うと、複雑ですね……(笑)。

■キャラクターが演技する

細田氏: キャラクターの演技について上田さんはどのようにお考えですか。

上田氏:やはりキャラクターになりきることが重要だと思います。アニメーターの性格は、アニメーションの動きに出るんじゃないかと考えています。ですから、そのアニメーターがどれだけいいネタを持っているかが影響するんじゃないかと。

「キャラクターの立ちポーズを作ってください」って言ったときに、肩で息をしているだけのものがあがってくることがありますが、そこで終わるのはすごくもったいないと思うんです。それはアニメーターではなく、ただ(モデルを)動かしているだけの人。

細田氏: 大塚さんのキャラクターはいろんなポーズをしていますね。それはキャラクターを作るときに必要だということですか?

大塚氏:立ち絵でも、ただ立ってるだけではロボットみたいですよね。人をインスパイアするには自分がそれだけのものを持たなければなりませんから、『ルパン三世』のキャラクター表では、キャラクターがいろんなポーズをとっているようにしました。それだけの効果はありましたよ。原画がリラックスした絵になったんです。みなさんは気づかないかも知れませんが、『ルパン三世』では皆、リラックスしたポーズをしています。

細田氏: 私の友人のアニメーターは「漫画をキャラクターをそのまま使うと動かしにくいが、大塚さんの描いたキャラクターはものすごく芝居をさせやすい」と言っていました。漫画を動かすにあたり、そういう違いってあるのでしょうか。

大塚氏:東映では11年間原画を描きましたが、動かすためには360度見える顔にする必要があって、そのことが常に頭にありました。

『ルパン三世』のとき、原作のモンキー・パンチ氏とホテルにこもって一緒に絵を描いたんです。そこでモンキーさんにこんな風に(ルパンを斜め後方から見た)絵を描いてくれって言ったら描けない。漫画の人はそういう顔を描く必要がないんですよね。

綺麗な顔を描く漫画家さんでも、目のアップを描いてくださいっていったらできない。それも描く必要がりませんから。

アニメで動かすためには、360度くるっとまわっても大丈夫なのを絵を設計しなきゃならなかったんで、「じゃ、僕が描いていいですか?」となるんです。

細田氏: 上田さんには動かしやすいプロポーションというものがありますか?

上田氏:動きのわかりやすいプロポーションがいいですね。周りにゴチャゴチャ付けてしまったり、身体に対して手足が短かかったりすると、アクションの大きさが伝わりません。

ゲームで馬が走っている絵を描くとします。本物の馬は、本当に細かいところまで動いていますが、それをCGで再現するのは難しい。そこまでの情報量は出せないんで、必要以上に変な部分を振動させてみることもあります。

大塚さんのおっしゃっているのは、セルアニメの記号化だったり簡略化だったりデフォルメだったりだと思うんですが、CGはその段階にまで到達できていません。

一方で、現実に比べると情報量が少ないので、情報を付加している。僕らが精一杯できることは現実と同じくらいの情報量をグラフィックに入れて、それによってリアリティをあげることです。

■『人喰いの大鷲トリコ』を観よう

細田氏: ではここで上田さんの作品を観て、大塚さんに意見をいただきましょう。



上田氏:(映像を観ながら)まず2001年に作った『ICO』です。その次のタイトルが『ワンダと巨像』。これは巨大なモンスターと戦うものです。そして今作っている『人喰いの大鷲トリコ』。この作品では現実に存在する情報量を最優先していますが、情報量そのままを入れるのはどうしても無理ですね。

細田氏: いかがですか、大塚さん。

大塚氏:いやぁすごいですね。コンピュータでこんなことができるんですね!ただ、僕がルネッサンス以降の、外郭、輪郭のない絵よりは、日本の浮き世絵のように線の中に色が塗ってあるほうが好きなもんですから……。あまりリアルなほうへ走っちゃいけないような気がするんですよ。

上田氏:(笑)

大塚氏:ただ、止めの効果は出してるんですね。アメリカのアニメを観ると、いつも不安になるんです。のべつ動くから。かつてアメリカで上映した日本のアニメ映画に、「湖のそばで、青年が湖面を眺め物思いにふける」という場面がありました。水面のセルが動くだけで、結構長いんです。

するとアメリカの観客は皆、(故障したのかと)映写機のほうを振り返ったといいます。アメリカの映画は全部動かしちゃいますからね。

日本の人は動いていないときに自分のイメージを重ね合わせ、思い描くんです。そういうところはおぼえていてほしいですね。アメリカとは異なる日本の文化です。お客様が思い入れを持っていて、素直に物を見てくれるというのかな。

アメリカのお客様はドライですから。すぐ映写機のほうを見ちゃう(笑)。日本人は悪いところも見習ってしまうので、『鉄腕アトム』なんかは動きがメチャクチャです。鉄橋をぶんまわしてスコーンと投げちゃう。重そうに持って「くわーっ」とやればいいんだけども。ああいうのは一生懸命やるからいいんであって、簡単に投げちゃ面白くない。

細田氏: 日本の場合は行間を読みますからね。今は世界に日本のアニメが進出していってるわけで、そういう文化も徐々に共有化されていくでしょうね。

大塚氏:それはあるでしょうね。

細田氏: ゲームの場合は今のような話をどうやってゲームに落とし込むかですね。

上田氏:あるロボットが10万馬力であるとした場合、ゲームでそれを設定するのはすごく簡単です。ただ、たくさんの制約のなかでそこに説得力を持たせ、見ているお客さんに「確かにこいつは10万馬力を持っているな」と思わせるのは大変です。それがアニメーターの仕事なのかなと思います。空想に説得力を持たせるのは、やはりアニメーションでしょうね。

ちなみに大塚さん、優秀なアニメーターを見つける方法ってありますか? 音楽でいう絶対音感みたいなものを持っているとか。

大塚氏:僕の経験では、うまい人は子供の頃からうまいです。20歳すぎて学校に入って始めても間に合わない気がしています。20歳のとき球団に入団したって、野球選手にはなれないのと一緒です。

適応力を限定するのはよくないけれど、「絵がうまくなりますよ」ってあまり宣伝しちゃいけません。それでアニメーターになれるかも知れませんが、うまい人にはなれません。いつも言うんです。アニメーションの才能がある人を見つけるのは、砂場に埋もれた小さなダイヤモンドを見つけるより難しいと。

上田氏:「育てる」というよりは「発掘する」という感覚ですね。僕もまったくそう思います。
《土井大輔》

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