日本ゲーム産業の沿革から見るローカライズの実態・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第4回 | GameBusiness.jp

日本ゲーム産業の沿革から見るローカライズの実態・・・イバイ・アメストイ「ゲームウォーズ 海外VS日本」第4回

プレイステーション3が3Dに対応され、来年は3DSが発売されるなど、ゲーム機は時代を反映して常に進化を遂げている。

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プレイステーション3が3Dに対応され、来年は3DSが発売されるなど、ゲーム機は時代を反映して常に進化を遂げている。

1983年任天堂よりファミリーコンピュータ(通称ファミコン)が日本国内で販売されて以降、海外に於いても日本のゲーム産業は常にトップの地位を歩んでいた。 それに伴い日本の様々なゲームタイトルが海外に於いてもトップの地位を確保してきた。

しかし、ここ最近日本のゲームタイトルは海外のゲームタイトルの勢いに圧され気味である。 海外ゲームの日本語ローカライズが益々加速化する中、日本ゲームの海外向ローカライズの低迷が目立つ。ローカライズを語る前に簡潔に日本におけるゲームの歴史を簡単に説明しよう。

1970年代、インベーダーゲームが大ブームを巻き起こし、ゲーム機(アーケードゲーム)が普及し始め、やがてゲームはソフト交換型へと進化していく。

1980年代、ゲームの質の低下いわゆる「アタリショック」が起こる。日本ではファミコンが発売される。

また、1989年には携帯型ゲーム機であるゲームボーイを発売。爆発的人気を得る。

1990年代、ファミコンの後期型である、スーパーファミコンが登場。SCEからはこれまでのソフトと違い、CD-ROMを使用するPlaystationを開発。ゲームは2Dから3Dへと進化していく。また、90年代後半に入ると、コンシューマに限らず、海外にてオンラインゲームが徐々にシェアを集めていく。

2000年代、SCEからPlaystation2が発売される。ドリームキャストやゲームキューブなど高性能ゲーム機の抗争化が進む。そんな中、マイクロソフトからXBOXが開発される。 携帯ゲーム機としてPSPやDSが開発され、爆発的人気を得る。従来のゲームだけというコンセプトを離脱し、音楽や映像など様々なコンテンツを盛り込んだ事が人気爆発の大きな要因。

現在、任天堂WiiやSCEのPlaystaytion3など、オンラインを介してゲーム以外に映画や音楽など、様々なエンターテイメントの類でゲーム機が活躍。更に、Playstation3が3D映像に対応し、任天堂でも2011年、3DS発売予定等、ゲーム機の進化は留まるところを知らない。

ゲーム産業の歴史を見ると、日本のゲームが海外ゲームに後れを取っている訳では決してない。むしろ、常に世界のゲーム産業においてトップを歩み続けている。

高い開発力(技術力、制作力、創作性など)がある為、いわゆる独自の進化を遂げた日本のゲーム産業がなぜ、世界に取り残されるようになったのか?

やはり、そこにはゲームローカライズ問題の重要性が関与してくる。 多くの人が「ゲームローカライズ=表示されるテキストなどの翻訳」と単純に考えているのではないだろうか? ゲームローカライズとは単にターゲット言語へ訳する作業ではなく、その国、地域の文化や習慣、人々の考えや言葉の捉え方、ニュアンスなど様々な要素を配慮し、行われるいわゆるカルチャライズまで行われるものである。

ゲームローカライズだが大きく分けて2つの方法がある。 「完全お任せ型」と「部分的抽出型」の二つである。

「完全お任せ型」のメリットとして、翻訳者側が思った通りにローカライズが可能なところにある。ただし、これは翻訳ノウハウ以外にも高い開発能力が求められる。

そして「部分的抽出型」は少ない開発力で済むメリットがあるが、翻訳側の思い通りに開発が進まないというデメリットがある。

思い通りに開発が進まないとは、翻訳した言語を組み込む人が、その言語を理解していないため、システムに組み込んだ際、めちゃくちゃになってしまい、再チェックを幾度と繰り返すはめになる。 たとえ、校正が終了しても、どこに間違いが隠れているのか分からない。このようなやり取りに莫大な時間と労力を費やすことになる。

現在、ゲームローカライズの殆どは後者の方法を取っている。 これだけ見ると、あたかも前者の方が断然良いように思われる。 だが、「完全お任せ型」だと開発元の命と言っても過言ではないシステムを公開するわけだから知的財産を守ろうとする場合どうしても後者の方法を取るようになる。

そして、ゲームローカライズとは単なる翻訳作業ではなくその国、地域の人々にゲームを合わせるものであるように、ゲームに表示される地図やアイコンなども其々変更される場合も少なくない。

また、日本人の特徴として「慎重」であることも日本のゲームが海外に進出しきれない大きな要因ではないだろうか? 勿論、海外にゲームを出す場合、ターゲットとなる市場の調査は必要不可欠であり慎重であることはとても良いことである。

しかし、日本の企業は少々腰が重いような気もする。素晴らしいゲームを開発しているのだから、もっと自信を持ってアピールしても良いはずだ。

実に良いゲームタイトルを開発しても、市場がそれを求めていなければ、その開発は無駄に終わる。 徹底した市場調査とローカライズは日本のゲームが海外市場にて成功を収めるために必要不可欠な要素であるが、それすら始めず日本国内で留まったまま、満足するのは如何なものだろうか。

また、例え日本で売れないゲームであっても海外では爆発的人気を得ることもある。ゲームの特色が日本人に合っていなくても、海外では受け入れられるケースも多いからだ。 「日本で人気がある=海外でも人気がある」という公式は決して成り立たず、常に例外があることを念頭におくべきである。

何度も言うが、ローカライズは非常に重要で不可欠な作業である。ローカライズを軽視する限り、発展は望み難い。

ローカライズに極力費用をかけたくない心情も分からないわけではない。しかし「部分的抽出型」でローカライズを行うにしても開発初期段階よりローカライズに携わることで、無駄な時間と労力(繰り返しチェックの減少などによる)の削減が可能になりローカライズ費用を抑えることが可能だ。

知恵と工夫のローカライズで日本のゲームが世界で羽ばたくことを期待している。
《イバイ・アメストイ》

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