ここ数年の生成AI(以下、AI)の進歩は目覚ましく、AIがゲームを攻略したという話題を耳にすることも増えてきました。
そうしたニュースに刺激を受けた筆者は、自分もAIによるゲーム攻略に挑戦できないかと考え、無謀にも深く考えずに実行に移しました。普段使用しているAIを使い、ハードコア歴史ストラテジー『Victoria 3』を攻略しようというのです。
その挑戦は……成功しました。それも意外なほどあっさりと。徳川幕府の舵取りを任されたAIは、黒船来航、戊辰戦争といった激動の幕末を生き抜き、目標としていた明治維新を見事に成し遂げたのです。
そこで本稿では、筆者がAIにゲームを攻略させた方法と、その一部始終を紹介します。実際のプレイは記事冒頭に掲載した映像も併せてご覧ください。

高すぎる目標
『Victoria 3』は近代の全世界を舞台にしたグランドストラテジーゲームです。習得が難しいと言われるParadox Interactive作品(いわゆる「パラドゲー」)の一つで、パラドゲーの中でも特に難度が高いことで知られています。利益集団の利害を調整しながら法律を改正していく政治要素。需要と供給を計算しながら生産を拡大していく経済要素。さらに、外交や軍事といった要素が複雑に絡み合い、一筋縄では攻略できません。
そんな本作で日本人プレイヤーが一度は挑戦するのが明治維新です。ゲームが開始される1836年は天保の大飢饉の真っ只中で、その後も幕末の困難な政局の舵取りが待ち構えています。初心者プレイヤーが日本を明治維新に導くのは難しく、正直なところ筆者も当初はAIに攻略できるとは思っていませんでした。
PCを自在に操るAI
今回の挑戦で使用したAIは、Anthropic社のClaude Opus 5.5です。このAIには「コンピューター使用(computer use)」と呼ばれる機能があり、PCの操作をAIに一任できます。あたかも人間が操作しているかのように、AIが画面を見ながらマウスやキーボードを操作してゲームをプレイできるのです。

PCの操作をAIに明け渡すのは怖いと感じる人もいるでしょう。筆者も同感です。AIが勝手にディスクの中をのぞき見たり、人間と同じ権限でブラウザを操作したりするなど、考えただけでもゾッとします。
しかし、幸いにも筆者の場合は普段使用しているメインPCが別にあり、AIに操作を任せたPCには重要なデータが入っていませんでした。さらに、この機能は操作を許可する対象をアプリ単位で指定できるため、今回は『Victoria 3』以外の操作を一切許可しませんでした。
人工知能3原則
AIへの指示(プロンプト)は意識してシンプルにしました。基本方針として指示したのは次の3項目だけです。AIはこの指示を元にノウハウを蓄積し、ツールを整備して、独力でゲームのプレイ方法を学んでいきました。
ノウハウの蓄積
ノウハウを蓄積する仕組みを構築し、ゲームの操作方法や攻略方法をプレイ中に常時アップデートしてください。同じ失敗は極力繰り返さず、プレイの効率は随時改善し続けてください。
コストの効率化
高コストなComputer Useだけに頼らず、プレイを効率化するツールを積極的に自作して活用してください。低コストなサブエージェントに移譲できる作業は極力移譲してください。
自律的な学習
ゲームの操作方法や攻略方法は試行錯誤を通じて自律的に学習してください。インターネット上の情報を利用しても構いませんが、それだけで攻略できるほど甘いゲームではありません。

ウォームアップ
さらに、本番前の予行演習として、ゲームのチュートリアルを通じてAIにノウハウを蓄積させました。
『Victoria 3』にはゲームをプレイしながら基本的な操作方法や攻略方法を学べるチュートリアルモードが用意されています。初心者向きの国家とされるベルギーでAIにチュートリアルをプレイさせたところ、30個以上ある小目標をことごとくクリアしてしまいました。
ユーザーインターフェースの操作にも迷いがなく、分からないことがあればツールチップの説明を読んで判断材料を補強。戦略的判断が必要な場面でも初心者とは思えない的確さで決定を下し、時々とんでもないミスをして窮地に陥っても、致命傷になる前にことごとく立て直してしまいます。

想定外だったのは、AIがゲーム内のファイルを読んでルールやイベントを把握しようとしたことです。Modやチートコマンドは禁止していましたが、まさかゲーム内のファイルを直接分析するとは思いませんでした。しかし、これは一部の人間プレイヤーも使用している攻略法なので、今回は大目に見ることにしました。









