6月11日、SpaceXは新規株式公開(IPO)を行い、米NASDAQで取引を開始しました。そして初日の終値が160.9ドルとなり、同社の時価総額は一気に2兆1000億ドルに達しました。
SpaceX株はIPO価格を11%上回る150ドルで取引を開始し、一時は30%に達する場面もありました。そして、初日の取引を終えた時点で、イーロン・マスク氏は資産額が1800億ドル以上も増加して1兆ドルを超え、世界初の「トリリオネア(兆万長者?)」になりました。これは台湾やスウェーデン、シンガポールなどの国内総生産(GDP)を超える額であり、まさにケタ違いの大富豪です。なお、SpaceXにつられる格好でテスラも株価が上昇しており、同日の取引終了時点で2%高の1株あたり約406ドルとなっています。
SpaceXは現在、米国のすべての宇宙ロケット打ち上げの約82%を担っており、これは世界の商業宇宙市場のほぼ半分にもなります。ただし、同社のロケット打ち上げの多くは、同社の衛星ブロードバンド事業Starlink用の衛星の打ち上げであり、Starlinkが現在のSpaceXの収益の大部分を生み出しているとされます。

また、SpaceXは2025年に約49億ドルの損失を出しており、2026年度も第1四半期だけで数十億ドルを消費しています。この損失は主にAIデータセンター建設などへの支出が占めており、仮にいまのペースでの支出が続けば、同社はIPOで調達した資金を2年半で失うとThe Vergeは伝えています。
SpaceXはIPOによって今後、一般の株主を持つことになりまます。ただ、それによって将来的にマスク氏がSpaceXにおける権力を脅かされることはほとんどなさそうです。同氏は一般には売られることがない議決権株式の大半を保有しています。これにより、SpaceXは証券取引所の基準における「支配下企業」となり、独立した立場からの監督を義務付ける規則が適用されません。また、マスク氏は今後、取締役会のメンバーを自由に選任できるため、取締役会によって自身が現在の地位から解任される可能性もなくなります。
さらに、SpaceXがカリフォルニア州から移転したテキサス州では、株主が同社の株式の3%以上を保有していない限り、「派生訴訟」を起こすことができません。仮にSpaceXの企業価値を2兆ドルとした場合、株主は600億ドル相当以上の同社株を持たなければ、その権利を行使できないとTechCrunchなどは報じています。
米国の株式市場では今年、SpaceXに続いてOpenAIやAntropicといったAI大手による「メガIPO」が計画されており、しばらくは景気の良い話が続きそうです。ただしReutersなどは、この流れを産業革命期の鉄道投資になぞらえる専門家の声を伝える一方で、金融危機以降の低金利や、AI企業に対する非現実的とも言える期待感の大きさなどによって膨らんだバブルが、ピークを迎える年になるという、別の専門家の意見も伝えています。
ちなみにCNBCによると、世界長者番付でマスク氏に続く富豪たちの資産額は、第2位のラリー・ペイジ氏(Google共同創業者)で推定2950億ドル、第3位以下は2000億ドルにも満たず、2位~5位までの資産額を合計しても、膨れに膨れたイーロン・マスク氏の資産額には満たないとのことです。
われわれ庶民にとって気になるのは、マスク氏がその莫大な資産を将来的にどうするのだろうというところです。実は、マスク氏はマイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏らが立ち上げた、生前または死後に個人資産の半分以上を慈善事業に寄付することを誓う「The Giving Pledge(寄付誓約宣言)」に、2012年に署名しています。ただ、マスク氏は将来的な目標を掲げたり、顧客に向けてなにか約束をしたりしても、(特にテスラなどでは)多くの場合でそれらを忘れ去ってきました。この署名だけは、そうではないことを願わずにはいられません。
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