既存ワークフローに繋ぎ込むだけで仮想世界がより創造しやすくなる―NVIDIAがオープンプラットフォーム「Omniverse」で思い描くビジョン【SIGGRAPH Asia 2021】 | GameBusiness.jp

既存ワークフローに繋ぎ込むだけで仮想世界がより創造しやすくなる―NVIDIAがオープンプラットフォーム「Omniverse」で思い描くビジョン【SIGGRAPH Asia 2021】

国際会議&展示会「SIGGRAPH Asia 2021」より、NVIDIAによるセッション「Omniverse Enterprise 最新情報と開発者向け情報」のレポートをお届けします。

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既存ワークフローに繋ぎ込むだけで仮想世界がより創造しやすくなる―NVIDIAがオープンプラットフォーム「Omniverse」で思い描くビジョン【SIGGRAPH Asia 2021】
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2021年12月14日~17日、東京国際フォーラムとオンラインでCGとインタラクティブ技術に関する国際会議&展示会「SIGGRAPH(シーグラフ)Asia 2021」が開催されました。本稿では、NVIDIAによるセッション「Omniverse Enterprise 最新情報と開発者向け情報」のレポートをお届けします。

Omniverse Enterpriseの概要と最新情報

まずはNVIDIAのプロフェッショナル ビジュアライゼーション ビジネスデベロップメントマネージャーの高橋想氏が登壇し、Omniverse Enterpriseの概要と最新情報の紹介が行われました。

NVIDIAが提供する「Omniverse Enterprise」は、仮想空間の創造と接続のためのオープンプラットフォームです。さまざまな環境で別々のシステムを使い、それぞれのファイルフォーマットで3Dモデルを手がけるデザイナーやクリエイターたちがひとつの空間にアクセスすることを可能にするプラットフォームで、同一空間上で世界中のデザイナーがコラボレーションできること、シミュレーションを行えることを大きな強みとしています。

それを可能にしているのが、異なるファイルフォーマットを統一的に扱うための独自フォーマット「Universal Scene Description(USD)」です。Connectorと呼称されるプラグインでUSDに変換すれば、異なるソフトウェアで作成されているシーンデータをリアルタイムで同期しながら扱えます。

USDに変換されたデータはNUCLEUSサーバーにアップロードされ、複数のユーザーがOmniverseを通してそこにアクセスすることで同一のデータを共有できます。そのデータには物理演算、質感、パストレーシングのほか、AIを使った機能などさまざまな物理条件を適用できるので、シミュレーションも容易に行えます。

また、今後の見通しとしては、そこでレンダリングしたデータをWORKSTATIONやAR/VRにも対応させていくほか、Webブラウザへの出力対応も予定されています。

セッションでは、NUCLEUSサーバー上にあるひとつのデータに複数のデザイナーがアクセスし、思い思いのソフトウェアで行っている編集がリアルタイムで反映されていく動画が紹介されました。

従来であれば、それぞれのシーンをエクスポートし、ひとつのソフトウェアにインポートして結合しなければならなかったところをリアルタイムで同期できるので、デザインレビューにかける時間の大幅な短縮が期待されます。

次に、対応ソフトウェアが紹介されました。製品版では3DS MAXMAYAUnreal Engineが双方向Connectorに対応。上記のようなリアルタイムでの同期が可能です。そしてREVITRhinocerosSketchUpが一方向に対応しています。これらはOmniverseへの反映はリアルタイムで行われますが、Omniverse側での変更は各ソフトウェアにリアルタイム反映はあれません。対応ソフトウェアは今後も随時拡充予定で、まずは建築業界を見据え、今後は製造業界などでの活用も見込んでいます。

◆Omniverse導入で享受できるメリット
  • コスト、ムダの削減:同時進行のワークフローによる冗長性を削減
  • 既存のインフラストラクチャの価値上昇:互換性がなかったソフトやシステムを活用できる
  • 創造性と生産性を最大化:機会損失を減らし最大限の反復が可能
  • 生産までの時間を短縮:チームの生産性を最大化する

Omniverseの動作にはRTX GPUが必要で、具体的には「NVIDIA RTX A4000」以上のモデルが推奨されています。そこがクリアできれば、ラップトップ、デスクトップ、データセンター、オンプレミス、クラウドなど、いかなる環境でも導入できると強調されました。

また、小規模なローカルワークグループなどのほか、GPUサーバーを立てた大規模な仮想化ワークグループにも対応しているので、サーバーで処理を行って各ユーザーのマシンに届ける体勢を整えればユーザー側にGPUが搭載されておらずともOmniverseを活用できるとも紹介されました。

さらに、実際のコラボ事例をまじえた活用案が紹介されました。近年はコロナ禍の影響もあり、巨大なスクリーンに映した美麗な背景映像と実物の被写体を同時に撮影するバーチャルプロダクションが盛んになってきていますが、そこにOmniverseの環境が導入されれば、監督の指示や要望に合わせて現場で即座にデータを修正できます。

製造業の分野では、仮想空間上でさまざまなロボットや環境、工場のデータなどを再現してシミュレーションを実行することでラインの最適化を図ったり、導入を検討している新しい設備の確認などで活用されていると語られました。

Omniverse Enterpriseの開発者向け情報

次に同社エンジニアの梅澤孝司氏が登壇し、開発者向けの情報が紹介されました。Omniverseは元々、全世界に存在する開発チームや、さまざまなSDKを繋ぐ社内向けソリューションとして制作されました。

前身となるHolodeckはGTC 2017で発表され、GTC 2019でOmniverseとして発表。2020年からのオープンβテストを経て、2021年11月にOmniverse Enterpriseとしてリリースされました。

梅澤氏はここで、「Omniverseは既存の製品やワークフローを置き換えたり、競合するためのものではありません」と言及。むしろ、それらを強化・拡張するためのオープンプラットフォームなので、これからも開発者の皆さんと一緒に作り上げていきたいとあらためて強調しました。

開発者へのライセンスは無償提供され、サポートはパブリックフォーラム、トレーニングビデオ、コミュニティが提供されるほか、梅澤氏のようなチームの人間が適宜対応するとのことです。NUCLEUSサーバーと、提供されるすべてのConnectorも使用可能となります。

また、Kit SDKベースで開発されたものは自身で販売できるほか、ゆくゆくは現在準備が進められているOmniverse Community Exchangeでの公開にも対応します。

開発者に向けたさらなる強みとしては、モジュール式プラットフォームなので細かな変更や修正を行っても他のモジュールに影響を与えずに済むこと、Pythonベース、グラフベースの開発なので、開発チームを持たないスタートアップ企業などでもコードをほとんど使用せずに開発できるよう設計されていること、NVIDIAのコアテクノロジーを組込済みなので、コスト削減につながることなどが挙げられました。

Pythonベースの機能拡張・Extensionは200以上用意されており、そのすべてのソースを自由に見られるほか、自身で新たなExtensionを用意してさらに機能を拡張できることも大きな強みとして紹介されました。

社外エンジニアから見たOmniverse Enterprise

最後に、フリーランスで活動するエンジニアの吉阪豊氏が登壇しました。吉阪氏は元業務用システム開発エンジニアで、国産DCCツールの開発に20年携わってきた経歴を持っており、Omniverseを2021年の初頭から触り続けてきての所感を紹介しました。

まず吉阪氏は、開発で頻繁に触れるであろうツールを紹介しました。筆頭はOmniverse Createで、USDデータを用いたシーンの組み立てや照明の設定・調整、シミュレーション、レンダリングなどをインタラクティブに行うアプリです。

さらに、いわゆるプラグインやアドオンにあたるExtension、Ominiverse CreateとOmniverse Kitで構成されるOmniverseアプリ、マテリアルをカスタマイズする際に使用するMDL、Connectorの名が挙げられました。Extensionは前述のようにPythonベースですので、活用するならPythonの知識も求められます。

次に、GTC 2021の講演で頻出した「USDとOmniverseの関係は、HTMLとWebサイトのようなものである」という表現の補足が説明されました。

OmniverseはNucleusサーバー上にある特定のUSDデータや、ネットワーク上の特定のUSDデータに複数の端末からのアクセスを可能にします。この構図は、OmniverseがいわばWebブラウザで、USDがネット上にあるサイト(HTML)だと考えると分かりやすい、と補足しました。Webブラウザが各サイトにあるテキストや画像を表示し、ダウンロードできるように、USDデータに含まれるシーンやアセットなどの3Dデータを表示し、ダウンロードもできるのがOmniverseというというわけです。

吉阪氏は「この構図は、Omniverseが非常にスケーラブルであることを意味します。USDこそがOmniverseのコアになっている部分で、Omniverse自体はそれを視覚化しているに過ぎないとも言えます」と補足しました。

そして、USDの主な機能として「参照(Reference)」、「レイヤー(Layer)」、「切り替え(Variant)」の3つが紹介されました。「参照」はUSDデータから別のUSDデータを参照できるPointInstancer機能のことで、単一の木の3Dモデルを参照し、それを点群で配置できることが実演されました。

レイヤー構造を備えているので、一見ひとつのデータのように見えても地面とアセットを別々のUSDとして管理することも可能になっています。吉阪氏は、「これはアセットの規模が大きくなるほど便利になる」と語りました。

また、複数の形状をひとつのUSDでスイッチできる機能を備えています。講演では3種類の椅子をUIで次々に切り替える様子が実演され、一例としてモックの形状をプロトタイプで用意して、最終的なルックを切り替えながら詰めていく活用法が紹介されました。

Extensionによる機能拡張は「Physicsのマニュアルが特に充実しているので、ここから学習するのが入りやすいと思う」と吉阪氏。メニューバーからHelpPhysics Scripting ManualHow Toとたどっていくのが入り口として最適で、最初は数多く用意されているサンプルやデモシーンのソースを追っていくことが推奨されました。

講演冒頭でも言及された、モデリングしている最中の状態がOmniverse上にリアルタイムで反映されるライブシンク機能については「デモンストレーションには適しているが、実作業時に頻繁に更新されるのは逆に(気にしなくてよいところまで)目に付いてしまうかもしれない」と言及。吉阪氏個人としては、ある程度作業が進んだら反映する形にした方が実作業には適しているのではないかとしました。

ConnectorはC++で実装されており、「ほとんどUSD SDKと同じで、そこにOmniverseとの同期処理を追加している」とのこと。Omniverseランチャー・Exchange内のConnect SampleをインストールするとUSDのSDKとConnectorのサンプルが用意されているので、それを適宜改造して使うのが早いだろうと語りました。

吉阪氏は最後に「スクリプト、Extension、Connector、すべてにおいてUSDが根底にあるので。USDへの深い知識が必須となります。これはピクサー社のサイトに詳しいので「USD Pixar」で検索すればヒットする「USD Home」を読み込むが早いでしょう」とし、講演をまとめました。

《蚩尤》

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