公立高校の部活動で初めてe-Sportsを採用!破壊的な教育改革を目指す福翔高校 谷本昇校長の熱き想い | GameBusiness.jp

公立高校の部活動で初めてe-Sportsを採用!破壊的な教育改革を目指す福翔高校 谷本昇校長の熱き想い

公立高校では初めて、部活動にe-Sportsを導入した福岡県の福翔高校。なぜe-Sportsは部活動たり得たのか?谷本昇校長へのインタビューで、e-Sports導入の経緯や、教育改革にかける想いを伺いました。

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日本の学校教育が新たなステージに突入した――。

2018年12月、福岡県・福岡市立福翔高校は公立高校として初めて、部活動へのe-Sports導入※を決定しました。同校の谷本昇校長は「うちは教育としてe-Sportsをやっています」と話しています。谷本氏によれば教育×e-Sportsは進学実績や主体性の向上等、望外の相乗効果を生み出しているということです。
※名称はコンピューター部eスポーツ。既存のコンピューター部の活動の半分をe-Sportsに取り組む時間に充てている。現在、活動中のゲームタイトルは『リーグ・オブ・レジェンド』『ウイニングイレブン』)

福翔高校の変革はe-Sportsの導入だけでは無く、従来の学校教育の常識を覆す破壊的な取り組みに溢れていました。なぜ日本の公立高校としては初めて部活動にe-Sportsを導入したのでしょうか?谷本校長と主幹教諭である手島政則氏へのインタビューを通してその背景に迫ります。




新たな文化としてのゲームを正しく“教育する”


――部活動へのe-Sports導入には様々な障壁があったように思います。教育と遊びの境界が論点になると思いますが、その点はどのようにクリアされたのでしょうか?

谷本校長(以下、敬称略)難しいことは特になかったですね。ゲームをすることで、コミュニケーションやチームワーク等の力が身につくのは明らかで、通常のスポーツとは何も違いはありません。

――内部の反対意見は無く、導入が進んだのでしょうか?

谷本半数近くは消極的な意見がありました。しかし、新しい事には賛否両論があって然るべきだと考えています。新しいことに対して、満場一致になるのは気持ち悪いことです。

ただ、子どもたちが活き活きとe-Sportsとしてゲームをプレイしている姿を目の当たりにすると、周りの大人たちは納得せざるを得ません。ゲームは性別や身体の不自由関係なくチームを組むことができる、こんなに良いスポーツは他にありませんよ。

ゲームを批判する方々の意見は、依存性に対する指摘がほとんど。それは依存になりやすい環境や依存に至るまでのプロセスに問題があるだけです。ゲームが教育に紐づかないという考えはもう古い。趣味としてゲームが好きなのであれば、勉強との時間配分を身につけてもらうのも大事な教育です。

――「学校だからこそ負の側面も教育することができる」校長が以前、ゲームが及ぼす健康被害に対してお答えされたことです。学校では、生徒をテクノロジーから遠ざけることでリスク回避しようとする教育が多い印象ですが、福翔高校では正面からリスクと向き合う取り組みをされています。

谷本生徒をリスクから遠ざけるだけでは、根本的な解決になりません。今の時代、子どもたちはスマホを使って、大人が関与出来ない状況下でゲームをしています。遠ざけるのでは無く、リスクも含めて教育するのが我々の役目だと思うのです。スマホもゲームも我々の時代には無かったリスクですが、現代では重要な情報モラル教育として施す必要があります。

また日本の文化を生徒に教えるのも学校の大事な役目であり、e-Sportsを新しいスポーツ文化として学校が教育するのは当然ではないでしょうか?

※写真左:手島教諭、写真右:谷本校長

大人の価値観を押し付けてはダメ


――今後、e-Sports等の先進的な活動をきっかけに、生徒さんへの進路提案が多様になっていく可能性はあるのでしょうか。現状、高等学校が強みとする進路サポートは大学、専門学校への進学が主であることが多いです。

谷本選択肢は広がると思います。例えば、プロゲーマーだけではなくゲーム開発者としての進路も支援できるでしょう。我々は環境とチャンスを用意するだけで良いのです。その中で、どのような価値観を見出すかは生徒次第。決して大人の価値観を押し付けてはいけません

――価値観の押し付けに関して、指導者は自分の理解が及ばない領域に指導対象を踏み込ませない傾向にあります。これは指導者側の教えたい欲が邪魔をしているのでしょうか。

谷本その通りです。主体性の教育において教え過ぎは良くありません。手取り足取り教えてしまうと、主体性が育たなくなります。

手島教諭(以下、敬称略)見ていて「あっ失敗する!」と思っても、大人は見守ることが重要です。失敗も重要な経験、失敗する前に止めてしまうのは良くありません。

谷本教えすぎない、指示しすぎない、与えすぎない。先生は生徒の失敗を自分の管理不足だと捉えてしまうのが、大きな間違いですね。

――どうして、谷本校長は時代に合わせた考えを持つことが出来ているのでしょうか?

谷本時代が異なると、教え方も変わるのが当然だと思っているからですかね。我々の世代(1959年生まれ)は、同じ方向を向き、同じ価値観を押し付けられて来ましたこれからの世代に対して、同じことをしてはならないのです

――世間では「日本は未だに軍隊の訓練を踏襲した集団教育をしている」と指摘されることもあります。

谷本戦後は日本の復興のためにその教育方法が適切でしたが、今は違います。これからは多様な価値観の中で生き抜いていくための、主体性を育む教育をしないといけません。


教科書の勉強だけでは通用しない


――主体性を重んじる教育の1つとして、e-Sportsに着目されたきっかけは何だったのでしょうか。

谷本去年の9月にテレビ番組でe-Sportsの特集を見たのがきっかけです。アメリカの大学で行われている取り組みを知り、ゾクゾクとした感覚がありましたね。これは本校でもやろう!と思い、9月末に立案して11月にゲーミングPCが届き活動がスタートしました。

コーチとして、N高等学校の生徒さんに指導して頂いたこともあるのですが、17歳が17歳に対して指導している光景を見て、これは素晴らしいことだと確信しました。

――年齢関係なくノウハウの共有が行われるのは、実社会の実態にも近いですね。谷本校長自身の民間企業における経験や考え方も影響しているのでしょうか?

谷本教科書で学んだ内容だけでは、実社会で通用しないことがたくさんありますよね。そういう意味では、民間企業で営業や企画の実務経験があったことは影響していると思います。

――お話を伺っていて、谷本校長は企業時代から様々なチャレンジをされてきたのだと感じました。

谷本そうですね。チャレンジと共に失敗もたくさんしてきました。自分に芯があれば、失敗も恐くありません。

手島校長は民間企業でチャレンジすることを当然にされてきた方ですが、学校現場は教員一筋の方が多いので特に学ぶことが多いです。

谷本大丈夫ですよ。どんなことでも大体、上手くいくんだから!学校はとても閉鎖的で、まずは悪しき前例踏襲の呪縛を解くところから改革はスタートしました。

教員は、生徒の将来を預かっている責任感からか保守的になる傾向にあります。多様化が進む社会に合わせて学校教育も変わる必要がある中、その保守的な考え方は相性が悪かったのです。

先ほども少しお話しましたが、明治時代と同じ教育制度が今も上手くいくとは思えません。時代に合わせて変化していくことこそが、真の意味で生徒のためになります。

これまでは“耐える力”が求められたのですが、実社会においては自分に合わない環境から離脱する判断の方が重要ですこれからは勇気を出して“逃げる力”を身につけることが重要だと考えています

我慢強いのは良い事ですが、それで自分が潰れてしまっては何も意味がありません。本当に主体性があって、1度きりの人生だと思えば「この会社は辞めよう」等の判断も出来るはずです。


重要なのはスピード、生徒は3年で卒業してしまう


――9月下旬での立案から11月施行は驚異的な展開スピードに思えます。e-Sportsに限らず、福翔高校では新しい事への対応が速いですよね。

谷本私はとにかくスピードを重要視しています。それは民間企業の頃からの感覚かもしれません。他校では施行に1年近く掛かる施策でも、本校ではすぐに実施します。

それは、生徒たちの在学期間が3年しかないからです。会議ばかりして時間だけが過ぎるのを看過できません。また、学校は予算が年度区切りである都合上、早くとも年度初めからの施行になることが多いですが、それでは遅すぎます。すぐに施行しないと子どもたちは卒業してしまうんです。

――多くの学校で新しい取り組みが行われにくいのは何故なのでしょうか。

手島学校は会議の段階で完璧な計画を求めてしまう傾向にあります。「途中で想定外の事態になったらどうするんですか?」という意見が出てきて、頓挫することが多いです。

谷本上手くいくかどうかなんて、やってみないと分かりません。最初から最適解求めるより、実行しながら修正かけていくのが我々のやり方です。


キャリア教育


――福翔高校の素晴らしい変化は、谷本校長の強い意志と生徒への愛情が原動力になっていると感じました。キャリア教育(※仕事をする意義を学ぶことに重きを置いた教育。例えば生徒が会社を訪問し、仕事を行う様子を観察することで学びを得る)など前衛的な取り組みが多いのも納得です。

手島キャリア教育に関しては文科省から表彰をしていただきました。こういった新しい領域には理解が無いとできないのですが、本校では先々を考えて取り組んでいます。eスポーツ部発足以前から、様々なことに挑戦してきたので、e-Sportsはその取り組みの1つに過ぎないのかもしれません。

――新しい取り組みが対外的な数字にも良い影響が出ていると聞きます。どのような実績が出ているのか、具体的に教えてください。

谷本実績として、この10年で5倍の難関大学の合格実績の伸びがありました。ガラパゴス的進化を遂げた学校だという印象を周囲から持たれているようです。新しい取り組みだけでなく、対外的な数字が良いことも注目されている理由だと思います。特に高校卒業後は、正解の無いものを探し続けることになりますから。

さらに新しい取り組みの1つとして、本校ではキャリア教育を生徒たちに施しています。

――他校がそのような教育に取り組めない理由はどこにあるのでしょう。一般的な数値目標は、進学率やセンター試験の点数であるため、それ以外の指標に目を向けられないのが理由なのでしょうか。

谷本それは大きな要因だと思います。他の取り組みをする余裕が無いのだと思います。でもキャリア教育が一番大事。生徒たちに、自分がどうして毎日勉強しているのかという疑問に立ち返って考えさせることが、結果として自主的に勉学に向かわせる動機になるんです。

長年かけて生き残るために変化を遂げてきた結果ですね。以前から”没頭する力”は重要だと思っていましたし、これから必要なのは更に2つ、情報発信力と変化対応力です。

※文科省から表彰されたキャリア教育の取り組み

熱すぎる谷本校長のTwitter


――かねてから谷本校長は情報発信の重要性についてはよくお話されていますが、ご自身もTwitterで生徒たちへのエールを送る発信が多いですよね。部活動の大会にも実際に足を運んでいて、とても楽しんでいる印象を受けました。

谷本普通は観に行きますよ!現地で応援することしか、私に出来ることはありませんので。私が学生の頃、先生が試合を見に来てくれてとても嬉しかったのを覚えています。保護者に混ざって声上げて応援してるのが校長先生だった時はとても嬉しかった。

――校長個人の言葉として熱狂やメッセージをSNSで伝えているのは珍しいですよね。学校公式の広報アカウントから発信を行う高校は増えてきましたが、個人アカウントで発信されているのは稀です。

谷本もちろん誤った発信をすると数多くのお叱りは受けますが、それでも子どもたちの活躍や学校の事を発信したいんです。学校の情報って外からは意外と分からなかったりしますし、中学生たちにも福翔高校の事を知ってもらう機会にもなります。

子どもたちにも積極的に情報発信するように指導しています。「声に出すと周りの人たちが協力してくれるから」と。

――教員個人がSNSで発信することの影響についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?個々で発信することにリスクに感じる教員の方は多いように思えます。

谷本そこまでリスクを背負ってやる必要は無いと考えています。ただ先生たちもTwitterで間違いを犯したら、その都度学んで修正していく。そういう姿を生徒たちには見て欲しいんです。


自分で判断できる人間を育てる


――キャリア教育や部活動、学校行事、全てにおいて本質的な教育をしている印象を受けました。とても個性的な先生方がおられる学校なので、自ずと個性的な生徒さんが育ちそうですね。

谷本みんなにはもっと弾けて欲しいと思っています。体育祭の内容や準備も、生徒たちが自分たちで決めてやっていますので。やらされるのでは無く、自主的にやって燃え尽きてもらうことが重要なんです。

――最後に、福翔高校が今後さらにどう変わっていくのか教えてください。

谷本私は、自分で判断して行動できる人間を育てたいんです。東日本大震災のときに釜石市の奇跡がありました。あの町の人たちが大勢助かったのは奇跡だけではなく必然でした。防災教育で、自分で判断して行動できるように学んでいたからです。

他の都市で犠牲者が多く出てしまったのは、グラウンドで点呼を取るなど形式的な避難だったから。釜石市では1人1人が自分の判断で逃げるように教育、中学生以上の市民には小さな子どもがいたら一緒につれて逃げるよう指導していました。

そして本質的なところでは、昭和教育の真逆を突き詰めたいです。昭和の日本は同じ考えの人間を量産することで戦後を乗り越えました。これからの時代は、その真逆をしなければなりません。指示を待つのでは無く、何事も自分事に感じて率先者になってもらいたいです。

厳しい言い方をすれば、この先はそういう素養がないと生きていくことが出来ません。学校では学び得なかった想定外のことがたくさん起こる社会が待っています。多様な考えの人が増えるとそれだけ板挟みになる機会も増え、情報を取捨選択し、自分で判断して生き抜いていく必要があります。

――本日はありがとうございました。お話を伺っていて、福翔高校に素晴らしい変化をもたらしているのは方法論ではなく、情熱なのだと強く感じました。

谷本こちらこそありがとうございました。福翔高校の校訓は「熱・意気・力」です。恐いくらいの情熱を持って、大きな夢に向かって挑戦することが一番大切です。情熱さえ持っていれば、夢半ばで敗れたとしても絶対に成長に繋がります。これからも、e-Sportsだけでは無く他のマインドスポーツもどんどん教育に取り入れていきますよ。

《OGA@Game*Spark》

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