ゲームは引きこもりや、社会から弾き出された人々を救えるのか?その可能性と挑戦【CEDEC 2019】 | GameBusiness.jp

ゲームは引きこもりや、社会から弾き出された人々を救えるのか?その可能性と挑戦【CEDEC 2019】

ゲームのテーマに教育や医療、社会問題の解決などを設定したシリアスゲームといった、エンターテインメント以外に利用した試みがあります。ビデオゲームによって社会問題とどうかかわっていけるか、どう社会を良くしていくかがCEDEC 2019のセッションで語られました。

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ゲームは引きこもりや、社会から弾き出された人々を救えるのか?その可能性と挑戦【CEDEC 2019】
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ゲームには教育や医療、社会問題の解決などを設定したシリアスゲームや、ゲームデザインを現実社会のさまざまなものに利用するゲーミフィケーションといった、エンターテインメント以外にそのデザインや機能を利用した試みがあります。

2019年9月4日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」では、そんなシリアスゲームの取り組みの現在を語るセッション「出来らあっ!!」「え!?ゲーム開発で社会貢献を!?」が行われました。ゲーム・フォー・イット代表取締役である後藤誠氏と、おなかソフト代表取締役の伊藤周氏が登壇し、ゲームによって、より良い社会をいかにして実現することが可能なのかが語られました。

疑似体験を通して、よりよい世界を作る


 
まず、後藤氏は「ゲーム開発×何かよいこと」でよりよい社会に変えていけるのではないか、という強い理想について語りました。

後藤氏は自身がゲームによって救われた経験を振り返ります。もともといじめがきっかけで、人前で話せなくなり、劣等感にさいなまれていたそうです。そんな状況を救ってくれたのがゲームとプログラミングだったのです。後藤氏は自分が救われたように「遊びだけではない、役に立つゲームが作りたい」と熱弁しました。

長らくそう考えていたとき、10年前にCEDECでシリアスゲームの存在を知ります。後藤氏は社会貢献できるゲームジャンルとはこれだと気づき、自らもシリアスゲームを作るために、2018年に会社を設立しました。ところが厳しい経営の現実に直面するのです。


転機となったのは、ソーシャルビジネスグランプリ2018でファイナリストに残ったことでした。ここで数々の賞を獲得し、支援金を獲得して縁が広がっていったのです。


後藤氏は「世の中の役に立つゲーム」を提唱します。ゲームが得意としているものは疑似体験であり、ゲームプレイを通して体験できることから何かできないか?と考えました。

そこでゲームの題材としたのは生活習慣病の問題です。後藤氏自身も習慣病を患っており、「疑似体験を通して自覚できればいい」とゲームデザインを進めていきます。しかし禍々しい内容だったために周囲からの評価は低く、後藤氏はいったん方向を転換して、同じコンセプトでかわいらしいタワーディフェンスゲームへと作り直したそうです。

後藤氏は「ゲームの疑似体験によって、世界を変えられる」と宣言します。「今後も専門家ととコラボし、疑似体験を通してゲームならではの担える分野がある」と展望を語りました。

ゲームによって社会問題に取り組む



対照的に伊藤氏は現実的な取り組みとして、Unityを使った社会貢献について講演しました。伊藤氏は常々ゲームも社会貢献したほうがいいと考えていたところを、普段からシリアスゲームに取り組んでいる後藤氏に誘われ、今回のセッションに参加したそうです。


ではどのような形でビデオゲームによる社会貢献を実現しているのでしょうか?伊藤氏は社会から弾かれてしまったり、また弾かれる可能性が高い状況にいる人々の事例を紹介します。

たとえば何らかの理由で社会への参加を断たれた引きこもりや、一人親のため、どうしても子どもに教育のための時間を割けない問題があり、結果就職が難しくなってしまうという例を挙げられました。さらに児童養護施設の子どもたちがどうなるのかの事例も解説。「施設の子どもたちは、高校卒業と同時に施設を出なくてはならないんです。高校までに100万円を貯めて卒業しなくてはならないので、一般家庭に比べるとハードなんですね」と説明しました。

こうした状況に置かれた人々は、今日を生きるのもやっとで、せっかく授かった子どもたちも満足な教育や給与を得られず、同じようなキャリアになるという、いわゆる負の連鎖になることを指摘します。伊藤氏は「そうした人たちがゲーム開発を通じて、負の連鎖を断ち切ることができないだろうか?」と考えました。


伊藤氏は「ゲーム業界は負の連鎖を断ち切るのに向いている」といいます。理由はシンプルにゲーム開発者の年収は高いからだと説明しました。グラフを提示し、普通の職業の年収より高いことを指摘します。

さらにゲーム開発は早いうちにスタートするのが、断然有利であることも語られました。たとえば不登校や引きこもりになってしまった子がいるとして、学校にいってない分をゲーム開発の勉強に充てるのも意味があるといいます。

そしてゲーム開発はとっつきやすく「子どもはゲームを遊ぶのは好きですよね。ゲーム作りをしようよっていうとやりたくなる」と伊藤氏は述べます。「ふつうの大人がゲーム開発をできないなかで、子どもがそれをできるというのは、子どもにとって大人を負かすようなカタルシスもあるんです」と、その価値を語りました。

では実際に、困難な状況にある人にどのようなことをしているのでしょうか?伊藤氏は「スマホはあるがPCを持たない子向けに、Unityを学習できる場所」を提供しようということで「恵比寿Unity部」を作りました。

恵比寿Unity部は来た人が自主学習できる場所になっています。伊藤氏は直接は教えず、「ひよこ本」、「ネコ本」という簡単な教科書を渡して学習してもらう方針を取っているそうです。「分からないなら教える、公文式みたいな感じ」だと説明しました。

「恵比寿Unity部は何か事情がある中高生が対象なんです。お金のある人はプログラミング塾にいけますが、ぼくらはそうではない、あぶれてしまった人を助けたい。」と伊藤氏はスタンスを語ります。

恵比寿Unity部で大事にしているのは、来た人たちとの関わり方です。「内向的な子もおおいので、無暗に明るくふるまうようにはしないようしています。プログラミング教室にたまにいる、妙に明るい人のコミュニケーションはやらないようにしています。」と伊藤氏は間違った松岡修造氏のようになることを避けることを注意しているそうです。

「恵比寿Unity部は「部活」といっているので、週一回息抜きできる居場所を作ってあげたい。Unityを覚えた子が、後から来た子に技術を教えてあげるような関係を作りたい」と伊藤氏は展望を話していました。「基本的に来たい時に来て良い、誰でも来る者拒まずさる者追わずなんです」

人生を立て直す手伝いをする



実際に恵比寿Unity部に来た人たちも紹介されました。児童養護施設出身で、ブラック企業で消耗させられていたAさんは、退職後、再就職もうまくいかない辛い時期が続いたそうです。そこで恵比寿Unity部に来てを勉強を重ねました。

伊藤氏はAさんに「Oculus VR用のものを作ってもらっていた」そうです。その後、Aさんは企業にインターンとして就職がきまったとのことです。

引きこもりだったBさんの例では、自分から動き出した尊さがわかります。家族から無気力だと見られていたBさんが、自分からUnityをやりたいと言い、恵比寿Unity部に来たそうです。勉強ののち、なんとGoogle playにアプリを出したそうで、家族も驚いたといいます。

母子家庭の親子が恵比寿Unity部に来た例もありました。C親子は最初、子どもだけUnityを勉強させる予定だったそうです。ですが伊藤氏は「親子一緒に来てやってもらったらどうか?」と提案。「下の子が絵が上手く、お母さんがプログラムを覚えることで、親子でゲーム開発ができたらいいのではないかと考えたそうです。伊藤氏は「誰かの人生を立て直すのは大変であり、価値がある」と試みを振り返りました

最後に伊藤氏は、色々な企業でも「Unity部」をやりませんか?と提案します。「お金ではなく、知識と時間と場所があれば大丈夫」で、時間もつきっきりでやらず、困ったときだけ教えてあげるスタンスでよいため、ハイコストではないと説明しました。

「空いている会議室はないか、そこを週に数時間だけ貸し出せばいい」と提案し、そこで時間を過ごし、Unityを学習した子は今後の人材獲得にも役立つと言います。「その子にしても、お世話になった会社につきたいですよね」とまとめました。伊藤氏の講演は、社会貢献する意識の一方で、どのように利点があり、各企業も取り組む価値があるかもピックアップしながら、セッションをまとめました。

伊藤氏は最後に各企業に社会貢献に関しての連絡を募っていた。
《葛西 祝》

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