ゲームの中のAIと外のAI…スクウェア・エニックス三宅陽一郎氏らが解説【シーグラフアジア2018】 | GameBusiness.jp

ゲームの中のAIと外のAI…スクウェア・エニックス三宅陽一郎氏らが解説【シーグラフアジア2018】

12月4日より7日まで、東京国際フォーラムにおいてコンピュータグラフィックスの国際会議『SIGGRAPH 2018 ASIA TOKYO』が開催されています。ここではスクウェア・エニックスのゲームAIに関する講演をレポートします。

ゲーム開発 人工知能(AI)
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12月4日より7日まで、東京国際フォーラムにおいてコンピュータグラフィックスの国際会議「シーグラフアジア2018」が開催されています。ゲームAI開発の第一人者であるスクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏による「Game AI techniques from algorithmic approach to machine learning」と題した講演をレポートします。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー、三宅陽一郎氏。日本におけるゲームAI開発の第一人者。著書多数、GDCなど海外での講演も多い。

三宅氏は『ファイナルファンタジーXV』のAI設計にも携わりました。

デジタルゲームにはAIが組み込まれているのが現在では常識となっていますが、このAIも今は3種類、“メタAI”、“キャラクターAI”、“ナビゲーションAI”に分類されます。

過去の“スクリプトAI”は行動がいわゆる命令で構成されるもので、ゲームが複雑になるとその分追加のプログラムが必要になりました。一方現在のオートノミーAIは、AIが自分で地形や状況を判断して行動することができるAIを指します。例えば、あらかじめ設定された地形データを参照する(地形を自分で判断することは現在では困難なため)ことで最適な移動ルートを考えることができるようになります。

オートノミーAIには知識を与え、それと現在の状況を踏まえて判断する力、そしてそれを判断して行動に移せることが必要となります。

現在のゲームではメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの組み合わせがそのままゲーム体験となります。そしてこれら3つのAIはそれぞれ独立して動作する必要があります。

メタAIの元祖、といえそうなのが『ゼビウス』です。このゲームでは敵の出現がパターンになっており、地上のゾルバク(レーダー施設)を破壊することでテーブルを巻き戻す、という仕組みがありました。簡素なものですが、定義としては間違っていないでしょう。

現在のメタAIは敵の出現だけではなく、ストーリー・体験の創造まで踏み込んだものとなっています。その先駆けとなったのが『Left 4 Dead』(Valve)。このゲームではAIディレクターと呼ばれるメタAIがゲーム進行に応じて敵キャラクターの出現をコントロールする仕様が搭載されています。



『Left 4 Dead』のAIディレクターは敵を矢継ぎ早に出すのではなく、緩急をつける、ということを考えて敵を出現させます。また、プレイヤーの目に見えるところに新たなキャラクターを出現させない、などのルールが設けられています。

ファイナルファンタジーXV』ではノクティスの体力は低くなった時の救援命令をキャラクターAIではなくメタAIで行っています。その理由として3人が一度に反応するのはあまり格好がよくないから、という判断です。

まとめとして現在のゲームではシーンの状況をフィードバックしてゲーム体験に影響を与えるメタAIの採用が増えてきている、と三宅氏。

デジタルゲームでのAIのディシジョンメイクモデルも解説されました。

ルールベースのAIがもっとも原始的なゲームAIです。『FFXV』のベヒーモスはキャラの動きそのものがルールに沿ったものとなっています。

ビヘイビアベースAIは命令に階層があり、状況に優先度をつけてふるまうものです。『HALO』シリーズなどで使われています。

タスクベースのAI。大きな命令を実行するために再分化された小さい命令を実行するAIです。『KILLZONE 2』ではスカッドベースのAIキャラクターが用意され、トップダウン形式でタスクをこなしていきます。

『F.E.A.R.』ではあるタスクが実行不能だった時に(あらかじめ用意された)別の手段を使ってタスクを実行する、というところが話題になりました。

ユーティリティベースのAIはアクションに数値を持たせて理想的な数値を目指すような行動をとるAIです。『シムズ』シリーズなどに使われています。

シミュレーションベースのAIは、加速・減速が自由にできるAIの挙動が理想的なものになるように操作をします。この例では『Forza Motorsport』シリーズの“Drivatar”が有名です。


続いて“ゲームの外部に存在するAI”となる「ペリフェラルAI」について、テクノロジー推進部の眞鍋和子氏が登壇。ペリフェラルAIとは、開発をサポートするAI、たとえばステージを生成したり、QA・品質管理をサポートしたり、入力を補助するものなどが挙げられます。これらのAIは今後、データマイニングやビジュアライゼーションがこれを後押しするだろうと考えられています。

QAにデータを使う例として、デバッグや、仕様に沿ったプレイができるかなどの検証が挙げられます。

近年では多くの会社がQAにAIを使用する実例をGDCやCEDECなどで発表しています。使用例としては壁抜けバグの検知や、バランスを壊す組み合わせの発見などです。

グリムノーツ』のペリフェラルAIはゲームバランスを壊すパーティの組み合わせを見つけるために使用されています。こちらはCEDEC 2018において眞鍋さんが講演を行っています。

龍が如く』シリーズではスタッフが帰った後にボットを走らせて壁抜けなどが起こらないかをチェックしています。近年ではゲームがちゃんと動作するかを調べるためにパスを指定してあたかもプレイヤーのように動かすAIもデバッグ用に開発されたそうです。こちらはセガの技術ブログに詳しい内容が公開されています。また『HORIZON: ZERO DAWN』などでも同様のアプローチが取られています。

今後、ペリフェラルAIはビッグデータの活用による機械学習を導入することでその能力が加速すると考えられる、と眞鍋氏は語りました。

三宅氏からの追加説明として「遺伝的アルゴリズム」の話が登場し、その中では旧エニックス発売の『アストロノーカ』が題材となりました。本作はムームーの森川幸人氏が開発したタイトルで、同氏は『がんばれ森川君2号』『くまうた』などでAIを活用したゲームを制作する、三宅氏同様ゲームAIの第一人者の一人で、現在は日本初のゲームAI専門会社を謳うモリカトロンを立ち上げています。

今までのゲームAIはキャラクターの挙動が多く言われていましたが、今後はゲームがより複雑化することで面白さをより引き立てる役割を担うのがゲームAIの新たな役割と感じました。今後のゲームAIの発展は注目すべきポイントといえるでしょう。
《岩井省吾》

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