「桃鉄」コンテンツは誰のものか・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第43回 | GameBusiness.jp

「桃鉄」コンテンツは誰のものか・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第43回

E3を見学してきました。雰囲気は当時とあまり変わっていないよう思いました。あのころの賑やかさとはやや異なるものの、欧米を中心にしたリアルCGゲームに世の中のトレンドが変化したこと、VRへの期待感がテンションを保っているようでした。

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「桃鉄」コンテンツは誰のものか・・・黒川文雄「エンタメ創世記」第43回
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実に13年ぶりに、E3を見学してきました。雰囲気は当時とあまり変わっていないよう思いました。おそらく次世代機ゲーム導入時期を過ぎたこともあり、あのころの賑やかさとはやや異なるものの、欧米を中心にしたリアルCGゲームに世の中のトレンドが変化したこと、VRへの期待感がテンションを保っているようでした。

さて、既に1か月ほど前のことですが、ネット上を騒がせた「桃鉄」シリーズの開発と継続を望むゲーム開発者「さくまあきら」さんと、コナミデジタルエンタテイメントの公式発表における『温度差』と『認識』の違いの件を取り上げてみます。

さくまさんは6月2日に個人ツイッターで「コナミから何の連絡もない。こんな調子でずっとほったらかされた。ここに桃太郎電鉄は、正式に終了します。すべてコナミの**(個人名)が握り潰しました。」とコメントをしました。

このツイートがネット上でどんどん拡散し、さくま氏に同情的なコメントが多く寄せられました。

以前(確か2011年頃)にもこの「個人名」の人のこと挙げてツイートしていましたので、ここ数年、「桃鉄」のコンテンツの取り扱いに関しては変化がなかったのでしょう。

一方の当事者のコナミ側も6月3日に、「同シリーズは、多くのファンの皆様からご支持頂いていると共に、弊社も長年かけて育ててきた大切なタイトルですので、今後も続けて参りたいと思っております。次回作をどのような形で提供できるかについては、さくまあきら氏と話し合いを続けておりますが、残念ながらまだ結論が出ておりません」という声明を企業公式サイトで発表しました。

でも、「長年育ててきたのはハドソンだし、コナミじゃないだろう・・・・」、「今後も続けて参りたいと思っております」と書きながらもまったく見えてこない現状に小炎上し、さくまさんはもちろんのこと、ゲームファンからは疑問の声や指摘が相次ぎました。

時すでに遅しということでしょうか。おそらくハドソンがコナミに救済されたときか、その前に、この辺のコンテンツの在り方や権利の持ちようをしっかりと話し合っておくべきだったんじゃないかと思います。でも、その余裕も、その考えも当時のハドソンにはなかったのかもしれません。「ヒット作品だから、(コナミ傘下になっても)またリリースできる」という感じの認識かもしれません。

私も正式にメールでさくまさんに取材を申し入れましたが、残念ながら・・・

「せっかくお申し出いただきましたが、いま現在はこの件での取材を考えておりません。話せる段階になりましたら、さくまがツイートするなり、サイトで書くなりすると思います。」

・・・という返信を奥様からいただきました。

とは言え、さくまさんも当時はハドソンから受託業務としてシリーズ全般の監督を受けていたのではないでしょうか。おそらく、想像ですが、さくまさんがコンテンツの権利や商標権を持っているということではなさそうです。ただし権利買取りの提案は行っていた模様で、それに対してのコナミからの回答が無かったということでしょう。

実はこういうケースはよくあります。有名なクリエイターさんが自分では代表作と言っても過去に所属して会社の作品だったり、受託として開発ディレクション費用や企画費用をもらって、それでOKということになっているケースは散見できます。今はスマートフォンのコンテンツでも同じような条件や権利的なものも増えています。

今回のさくまさんとコナミの件は、コンテンツに関わる人や組織にとっては大きな事案です。コンテンツに関わる人たちの未来のためにもツイッターだけではなく、公の場でその解決をしていただきたいと思っているのは私だけではないでしょう。

ゲームは開発者のものであり、最終的な権利所属は資金を出し開発を許可したパブリッシャー(法人)のものであることは間違いありません。しかし、そのゲームを遊んでくれるゲームファンの存在を忘れてはいけないと思います。


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■著者紹介

黒川文雄

くろかわ・ふみお 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHNjapanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。黒川塾主宰。「ANA747 FOREVER」(映像作品)「アルテイル」「円環のパンデミカ」「モンケン」「鬼畜教師(仮)」他コンテンツプロデュース作多数。



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《黒川文雄》

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