日本のモバイルゲームが海外進出するためには? カナダのアルケミック・ドリームに聞く | GameBusiness.jp

日本のモバイルゲームが海外進出するためには? カナダのアルケミック・ドリームに聞く

カナダに拠点を置く、アルケミック・ドリームが日本への本格参入を目指して、25日にデベロッパー向けのセミナーを開催します。同社はユーザーサポートからローカライズまで、ゲームメーカーが海外進出するに当たって必要なサービスの全てを提供することを目的として、数

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カナダに拠点を置く、アルケミック・ドリームが日本への本格参入を目指して、25日にデベロッパー向けのセミナーを開催します。同社はユーザーサポートからローカライズまで、ゲームメーカーが海外進出するに当たって必要なサービスの全てを提供することを目的として、数多くのゲーム向けにサービスを提供しました。日本上陸を前に同社のフレデリック・アレンス執行責任者(Chief Process Officer)にお話を聞きました。

■プロフィール
フレデリック・アレンスは、2007年から現在まで7年間でアルケミック・ドリームに勤務。フランス人のアレンスは、アルケミック・ドリームに入社するため、アルケミック・ドリームの本社がある、ケベック州Shawinigan 市に移転しましたが、ゲーム - 特にMMO ‒ が大好きであり、自分の趣味を仕事にできることが最高と思い、喜んでヨーロッパからカナダへ移ったという。最初は、『Lord of the Rings Online』 及び『Dungeons &Dragons Online』 等のMMO でのゲーム・マスター事業(ゲームの世界内でのユーザー・サポート)を担当し、現在、執行責任社として 、世界中のデベロッパーと協力し顧客のゲームが海外へ進出できるようサポートの業務。大手MMO から小さいインディーゲームを100以上をサポートしてきたという。

―――まず、アルケミック・ドリームの概要を聞かせてください

アルケミック・ドリームは、ゲームが大好きなメンバーによって設立され、世界中の一流ゲームメーカーに対して多様なユーザーサポートサービスを提供している会社です。本社はカナダにあります。幸運な事に世界で最も大きなMMOから、小さなスタートアップが開発した作品まで多くのゲームに携わる事ができました。現在はソーシャルゲームやモバイルゲームの勃興に合わせて、これらの市場にも注力しています。

―――具体的にはどのようなサービスを提供されているのでしょうか?

ユーザーサポートからローカライズまで、ゲームメーカーが海外市場に進出する上で必要なサービスを全て提供しています。全てのサービスの目的は一つで「ユーザー体験を改善すること」です。どの国のユーザーも、その開発者がゲームの近くに居ると感じられるようなサービスを提供することを目指しています。一般的なユーザーサポートも必要となりますが、一方で自殺予告対応や青少年保護など複雑かつ緊急性の高い問題にも対応するべく専門家を育ててきました。残念ながら、同様のサービスは世界中で必要とされています。

―――御社ではどのくらいの国や言語に対応できるのでしょうか?

おおよそ40ヶ国語に対応可能です。依頼が多いのは7、8ヶ国語ですが、年々新しい言語が重要になってきていますね。多くのお客さんが南米に対応するためスペイン語を求めるようになってきましたし、東ヨーロッパの言語のリクエストも増えています。あるユービーアイソフトのゲームは現在、我々の会社で31ヶ国語への対応を行なっています。日本の皆さんにもこれだけやるべきとオススメしているわけではありませんが(笑)。

―――ローカライズにはどの程度の人数規模と日数がかかるものでしょうか?

ゲームのローカライズに必要な時間はゲームによって千差万別です。冗談はとても短くとも、文章として長いマニュアル的なコンテンツよりも大きな手間を必要とします。モバイルゲームであれば翻訳に要する日数は減るかもしれませんが、ユーザーに最高の体験を届けるための品質管理(QA)には同じような手間が必要です。

―――日本語から直接、多様な言語に翻訳できるものでしょうか? それとも一度英語に翻訳する必要があるのでしょうか?

まずは日本語から英語に翻訳する事が多いです。それは、お客様から英語の翻訳テキストを提供いただく場合が多いからです。社内に英語へのローカライズチームを持っているお客様も多く、補完するような形でお仕事をするケースも多くなっています。

―――ローカライズ時のワークフローは、開発会社<=>販売会社<=>御社<=>翻訳者という、伝統的なフローでしょうか? それとも何か工夫があるものでしょうか?

アルケミック・ドリームとしては開発元とのフィードバックほど重要なものは無いと考えています。多くの場合、開発元のローカライズプロデューサーと直接連絡を取る体制を整えて、色々な質問や相談に対して素早く対応できるようにしてもらっています。よりコミュニケーションを密に、頻繁にすることが良い品質のローカライズをする秘訣だと思います。

―――どうしてアルケミック・ドリームのサービスはこれだけ多くの企業に採用されてきたのでしょうか?

秘訣があるとすれば、非常にフレキシブルに対応してきたことではないでしょうか? ゲームはどれも異なりますし、会社によっても異なるニーズがあります。アルケミック・ドリームでは、そのニーズに合わせてフレキシブルにサービスを組み立てることができます。また、私たちはユーザーサポートを"コスト"ではなく、収益を拡大する為の施策だと考えています。ユーザーサポートは行わざるを得ない"負担"であるかのように見做されるケースが多いのですが、私たちのサービスを提供することによって、ユーザーはゲーム体験を最大限に楽しむことができるようになり、満足度を高めることによってユーザーの離脱を防ぎ、ユーザー数を増やすことに繋がるのです。それが多くの企業に支持されてきた秘訣ではないでしょうか。ユーザー数を増やすということはどのようなゲームにとっても最重要の問題ですから。

―――今回、日本でセミナーを行う狙いを教えてください

今回、アルケミック・ドリームの中心メンバーが来日するのは、まず、どんどん増えている日本のお客様と直接の交流を深めたいということです。それから、まだ出会えていない多くのモバイルデベロッパーの方にお会いしたいということです。モバイル、ソーシャルゲームはゲーム制作や販売手法に大きな革新をもたらしましたが、このセミナーでは海外進出の方法についても大きな革新をもたらしたということです。伝統的な開発モデルが進化したのと同様に、伝統的な――かつリスクの高い――オフィスを設置して現地で人材を雇う、といった海外進出のモデルも進化しているということを皆さんにお伝えしたいと思っています。

―――日本のモバイルゲーム市場についてどのように捉えられていますか?

日本のモバイルゲーム市場は非常に興味深いものです。信じられないほど短期間に大きなイノベーションを起こし、急速な成長を遂げています。今でも進化している途上ですし、誰も来年の姿を想像できないでしょう。外国人の私にとっては、日米のモバイルゲーム市場が同じような段階にあるにも関わらず、余り国境を超えられていないというのは面白い現象です。これはお手伝いできる余地があると思います。また、日本では市場で活躍している会社の多くが、インキュベーターを設立するなど、イノベーションの促進に力を入れている点が素晴らしいですね。私たちもそうした取り組みに情熱を感じています。

―――日本のモバイルゲームが海外進出するためには何が必要でしょうか?

海外進出のためには素晴らしいローカライズは不可欠ですが、海外進出というのは大きなプロセスだという理解はもっと重要です。素晴らしいローカライズだけでも、素晴らしいマーケティングだけでも駄目です。海外でのサクセス・ストーリーへの道は非常に細かく、重要なパーツが混在しているプロセスであり、私たちもそのプロセスを今も研究している段階です。全体像はいまだ解明されていませんが、私たちはコミュニティマネジメントに力を注いでいます。進むべき道が分からない時もあるかもしれません、しかしそうした場合、最も重要なのはユーザーの声に耳を傾けることだと信じています。

―――幾つかの日本企業がモバイルゲームで海外進出していますが、どのような印象でしょうか?

海外進出で苦戦しているところもありますが、勇気を出して飛び込んだゲームメーカーには敬意の念を持っています。素晴らしいヒットを出したところもありますし、行けそうに見えながらもヒットできなかったゲームもありますが、先ほども申し上げた通り、成功するための方程式は私たちも含めてまだ研究中ですから。一つ申し上げることがあるとすると、「海外進出」=「英語化」では必ずしもないということです。別の言語で成功するようなチャンスが見逃されているケースがあるのでは、と感じるケースもあります。

―――苦戦するゲームメーカーにアルケミック・ドリームが支援できるのはどういう点でしょうか?

全ての会社に当てはまるのは、大きなコストをかける前に、アルケミック・ドリームと連携して海外でのテストを実施させて欲しい、ということです。(大きなローカライズを行わなかった)「ポケットモンスター」が海外でも爆発的なヒットして以降、"海外"のテイストを理解できるという誤りが生まれてしまったのではないかと感じます。日本人の目線でユーザーを予測するのではなく、アルケミック・ドリームにローカライズを依頼し、ユーザーの生の声を集めるようなテストを実施させて下さい。それが成功裏に終われば大きな投資をすれば良いですし、そうでなければ投資を避ければ良いのです。出してみて失敗をしてブランドが傷ついたり悪評が広がることも防げます。

―――もし日本で既に御社のサービスを利用されているゲームメーカーがあれば教えていただけますか?

パートナーさんは徐々に増えている段階ですが、Wizcorpやgumiは2月25日のセミナーにも協力していただけることになっています。

―――ローカライズやカルチャライズは今後、どのように進化していくでしょうか?

パートナーとの連携を深め、完成したゲームをローカライズするのではなく、開発プロセスの早い段階からローカライズについても検討を行い、キックオフから海外ユーザーの思考を考慮して開発を行う、"ローカライズ・レッディー(Localize Ready)"のゲーム作りを行うことが多くなっていくのではないでしょうか。日本のメーカーも全て、ユーザーによい体験を届けようという姿勢を持っていますので、今後も非常に良い協力関係が築けるのではないかと思います。

―――最後に日本のデベロッパーにメッセージをください

私たちは海外に進出するためのバリアをどんどん壊していっています。ゲーム業界は日々進化を続けています。既に社内に強力なローカライズチームを持っているかもしれませんし、あるいは、まだ海外進出をするような段階ではないと考えられる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、進化の早い業界です。セミナーへの出席が何かしら将来、役に立つ日も来るのではないかと思います。10年前に、MMOのユーザーサポートサービスを提供し始めた時、まさか将来東京でセミナーを行うような日が来るとは想像できませんでした。ですから皆さんにも今は想像し得ないような未来が待っているはずなのです。


■セミナー概要
名称::アルケミック・ドリーム:日本ゲームメーカーの海外進出のパートナー
日時: 2013年2月25日(月)14時〜19時

■スケジュール
14:00 開場
14:30-15:30 Alchemic Dreamプレゼンテーション (前半)
15:30-16:00 コーヒー・ブレーク
16:00-17:00 Alchemic Dreamプレゼンテーション (後半)
17:00-19:00 懇親会

会場: カナダ大使館 (住所:〒107-8503東京都港区赤坂 7-3-38)
主催:Alchemic Dream(アルケミック・ドリーム)
協力: カナダ大使館、 Wizcorp Inc.、 カナダ ケベック州 Shawinigan 市
内容: セミナー/懇親会
対象: モバイルゲームのデベロッパー及びパブリッシャー
参加費: 無料 (要事前登録)
同時通訳が付きます。

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《土本学》

メディア大好き人間です 土本学

1984年5月、山口県生まれ。幼稚園からプログラムを書きはじめ、楽しさに没頭。フリーソフトを何本か制作。その後、インターネットにどっぷりハマり、幾つかのサイトを立ち上げる。高校時代に立ち上げたゲーム情報サイト「インサイド」を株式会社IRIコマース&テクノロジー(現イード)に売却し、入社する。ゲームやアニメ等のメディア運営、クロスワードアプリ開発、サイト立ち上げ、サイト買収等に携わり、現在はメディア事業の統括。

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