成熟する日本のゲーム開発者コミュニティ・・・CEDECとDiGRA JAPANとIGDA日本、3者の方向性と役割の違いをキーマン三人が語る | GameBusiness.jp

成熟する日本のゲーム開発者コミュニティ・・・CEDECとDiGRA JAPANとIGDA日本、3者の方向性と役割の違いをキーマン三人が語る

長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ

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長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
  • 長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
  • 長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
  • 長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
  • 長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
  • 長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そ
長く閉鎖的で横の繋がりに欠けると言われてきた日本のゲーム業界ですが、ここ数年で大きく状況が変化してきました。今やウェブ/ソーシャルゲーム業界を含めれば、毎週さまざまなセミナーや勉強会が開催されています。その中でも歴史が古い団体がCEDEC、DiGRA JAPAN、そしてIGDA日本です。

しかし、それだけに関係者や活動内容が重複している部分もあるため、一見すると違いがわかりにくい面もあります。そこで三団体すべてに在籍し、重要な役割を担っているスクウェア・エニックスの三宅陽一郎氏の呼びかけで、キーマン三人による鼎談が行われることになりました。

もっとも話はそれだけに留まらず、さまざまなトピックに飛び火し・・・。三者三様の価値観が見え隠れする、ユニークな業界鼎談をお楽しみください。

■知ってるようで知らない三団体の成り立ち

―――今日はよろしくお願いします。はじめにお三方の自己紹介をお願いします。

斎藤: コンピューターエンターテイメントデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)委員長でバンダイナムコスタジオの斎藤直宏です。

遠藤: 日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)で研究委員会の委員長をつとめている、モバイルゲームスタジオの遠藤雅伸です。CEDECでも運営委員会のメンバーで、ゲームデザイン部門の担当をしています。

小野: 国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)の代表で、ゲームジャーナリストの小野憲史です。DiGRA JAPANでもゲームメディア研究会でお手伝いをしています。

―――ありがとうございます。最後になりましたが、司会をつとめますスクウェア・エニックスの三宅陽一郎です。 CEDECではアドバイザリーボードの一員、DiGRA JAPANでは研究委員会のメンバー、IGDA日本でもAI専門部会の世話人を務めています。

三団体は近年、非常にアクティブに活動されている一方で、外部から違いが見えにくいという指摘をいただく機会も増えてきました。そこで本日は各団体の特徴や方向性の違いなどについて、多くの方に知ってもらうために、鼎談を企画させていただきました。

でははじめに、成立の古い順から、団体の成り立ちについて教えてください。

斎藤: 実はCEDECがこの中では、一番古いんですよね。といっても僕も途中から運営に参加したので、設立当初のことは詳しくないんですが。

第1回目のCEDECは1999年に東京ゲームショウで開催されました。当時は家庭用ゲーム機だとドリームキャストがローンチした頃で、WindowsやDirectXなど、欧米圏を中心にゲーム開発技術が飛躍的に向上していき、GDCを中心に技術の交流も進んでいました。その一方で日本のゲーム業界は会社単位で技術がクロースドになっていて、現場の開発者としてはフラストレーションが高まっていました。

そこで日本でも技術の交流と、コミュニティの形成のために、カンファレンスを開催しないと駄目だよね、という問題意識で始まったと伺っています。

―――斎藤さんは、いつからCEDECの運営に係わられたんですか?

斎藤: 最初は一介の聴講者として、2002年から参加しました。その後、東大でDiGRA 2007と同時開催されたCEDEC2007に、パネラーとして参加しました。その翌年、CEDEC2008から運営に参加しています。当時はビジュアルアートのまとめ役で、翌年のCEDEC2009でビジュアルアートとゲームデザインのまとめ役を担当しました。ただ、両方を兼務するのは大変だし、ゲームデザインは僕の専門でもないので、2010年から遠藤さんにゲームデザインのまとめ役をお願いすることになりました。

―――では次に、IGDA日本の小野さんにお願いします。

小野: IGDA日本はアメリカに本部を持つIGDAの日本支部として、2002年からスタートしています。もともと前代表(現:副代表)の新清士が2000年、GDCに自費参加して感銘を受け、2002年に東京でGDC報告会を開催したことから、活動がスタートしました。僕も新に誘われて2003年からGDCに参加しています。もっとも当時はIGDA東京と言っていましたね。これがIGDA日本と名称を変えたのが2004年です。2011年に僕が第二代目の代表となり、年内目標でNPOの登記申請を進めています。

―――CEDECでも協力をされていますね。

小野: はい。CEDECでは2002年からラウンドテーブルがスタートしましたが、モデレータとして協力して欲しいと言われて、2003年から新が参加しました。当時はゲーム業界が閉鎖的で、ラウンドテーブルの数を増やしたいが、適任者がいなかったんですね。そこで僕にも声がかかりまして、2004年から参加しています。

このほか、新や副代表の板垣貴幸が、CEDECの運営に直接協力させていただいた時期もあります(現:CEDECアラムナイ)。春のGDC報告会と、秋のCEDEC協力は、IGDA日本の中でも大きなイベントとして、現在まで続いています。

―――最後にDiGRA JAPANについてお願いします。

遠藤: DiGRA JAPANには当初、日本のゲーム研究の場を作ることと、国際学会のDiGRAを日本で開催するための受け皿を作りたいという、大きく二つの目的があって。2006年に東京大学の馬場章先生が提唱されて、それを契機に設立されました。さまざまな方のご尽力を経て、2007年にはDiGRAの東京大会を東京大学で開催したんだよね。

小野: ちょうどCEDEC2007も東大で同時開催されて、盛り上がりましたね。

遠藤: そうそう。ただ、当初は学会誌を発行することと、ゲームの講演会を公開講座という形で行うことが中心で、学会としての研究活動自体は、必ずしも活発ではなかったんだ。それが2010年にはじめて年次総会を開催し、2011年4月に「日本学術会議協力学術研究団体」の指定も受けて、やっと学会らしくなってきたなと。今年夏には東京で夏期研究発表大会も開催したし、今後も夏に東京で研究大会、冬に各都市で年次大会を開催していく予定です。

―――遠藤さんは設立時から理事として参加されていますね。

遠藤: そうですね。第2期(2008年-)からDiGRA JAPANに編集委員会、広報委員会、研究委員会という3つの委員会ができて、その中の研究委員会委員長になりました。編集委員会は学会誌の編集、広報委員会はウェブページなどの運営、研究委員会は研究大会などの運営や推進を担当していて。特に京都で開催された2011年次大会から、学会の性格が一層明確になり、おもしろい研究内容がどんどん見られるようになってきたんだよね。

■プロ、研究者、そして「ゲーム開発者」というアイデンティティ
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―――ありがとうございます。では、もう少しかみくだいて、各団体の活動内容や対象者についてご説明願えますでしょうか。今度はDiGRA JAPANからお願いします。

遠藤: DiGRA JAPANは学会なので、主たる対象者はデジタルゲームを研究する研究者。それも、できるだけ多くの研究者に門戸を開いて、他の学会では、なかなか論文を発表する機会のない研究者の受け皿になることを目的としています。

たとえば、これまでもデジタルゲームの研究は情報処理学会や日本シミュレーション&ゲーミング学会などがあったけど、これらは自然科学的な領域が対象だったんだよね。しかし、DiGRA JAPANでは自然科学だけでなく、ゲームを文化・現象面で捉えるなど、社会科学的な領域にまで拡大して捉えています。他にもゲームの領域が広がるにつれて、メディアアートなども対象になってきた。

また研究活動・論文投稿だけでなく、 これまで日本のゲーム業界に何が起きたか、きちんと記録していくことも、大きな目的に掲げているんだよ。「それに何の意味があるの?」じゃなくて、ちゃんと文書化して、後の研究者が引用可能な状態にして、積み上げていくことが大事。過去にも公開講座で高橋名人の「名人」としての活動記録や、小島監督や桜井政博さんのゲームデザイン哲学などを話してもらったりしました。

斎藤: CEDECはCESAという業界団体が、業界の発展のために主催しているので、主たる対象者はプロのゲーム開発者ですね。プロがプロのために情報を発信して、コミュニケーションを図る場です。もっとも、ここでいう開発者とは、単にディベロッパーだけでなく、パブリッシャーも含めた、広い意味での業界関係者として捉えています。だからゲームを作るだけじゃなくて、ゲームの情報を発信したり、販売したり、ビジネスとして会社を経営したり、といった講演も対象です。また講演者や参加者は「企業」の看板を背負って参加されているのが特徴です。

小野: IGDA日本が対象とするのは、より広い意味での「開発者」ですね。また、もともと草の根の活動から始まっているので、企業ではなくて、開発者個人を対象としています。そのためプロもアマチュアも研究者も学生も、自分たちが「ゲーム開発者である」と自覚すれば、すべて対象者です。これは日本だけでなく、IGDA全体で共有されている概念です。

またNPOというのは、もともと「社会的ニーズがあるが、さまざまな理由で、誰も実行できないこと」を行うことに存在意義があります。そのため活動もセミナーやイベントだけに留まりません。たとえばCEDECでラウンドテーブルのモデレータや、DiGRA JAPANで運営ボランティアが不足していれば、参加して手伝ったりしています。僕もDiGRA JAPANの公開講座では、何度かお手伝いさせていただきました。

斎藤: まずは、そこからなんだ。

―――団体ごとにメンバーが帰属しているというよりは、それぞれの場があって、そこにいろんな人が、いろんな形で係わっているというイメージでしょうか。

遠藤: そうですね。けっきょく「場」ありきですから。

小野: 一人の人間には、いろんな社会的な「顔」があります。そのため各団体に、いろんな形でかかわるというのは、自然な流れだと思います。

斎藤: 三宅さんも三団体すべてで活動されていますよね。他にもコアメンバーがけっこう重複しているところがあります。

■徐々に広がってきた各団体のミッション

―――確かに人が重複しているところはありますが、一方で各団体のコンセプトやミッションは違いますよね。それぞれの団体のミッションについて、「これまで」と「これから」について教えてください。

斎藤: ゲームの定義がどんどん変わってきているし、ゲームにもさまざまな技術が用いられていますよね。なのでゲームがゲームに閉じこまらずに、広い視野を持ち続ける限り、さまざまな産業の技術が集まってくるはずです。そこでさまざまなコミュニティが生まれて、ひるがえって新しいエンタテインメントが生まれると良いなあと思います。

だからアニメーションだったり、CGだったり、メディアアートだったり、それから最近では出版も大きいですね。そういった分野と、どんどん混ざっていく感じです。その中でも先ほど話したように、プロの専門家が話すので、そこで知見や人材が混ざっていって欲しいと思います。

小野: IGDA日本を立ち上げたのは新なので、僕が勝手なことを言うと誤解を招きかねないんですが、発足当初は「何かスカっとする、おもしろいことをしたい」という思いが、みんなの中で強かったのではないかと思います。それが活動を継続していく中で、本当に自分たちがやりたいことは何かを、改めて考えるようになってきました。

また先ほど斎藤さんが言われたように、ゲームの定義が広がっていく中で、シリアスゲームやゲーミフィケーション、それから福島GameJamのように、さまざまな形で社会にゲームが貢献できるようになってきました。今年から公立中学校の技術家庭科でプログラミングが必修科目にもなりましたよね。こんな風に、これからゲームが産業を超えて、より一般社会に溶け込んでいきます。そんな中で、もっと自分たちも役に立てることがあるんじゃないか、最近はそんな風に考えるようになりました。

―――どちらの団体も、ゲームの定義が拡大していく中で、もともとのミッションも広がりを見せてきたということですね。

小野: そうですね。いま話を伺っていて思ったのは、それをCEDECは産業界であり、プロのサイドから見ている。一方でIGDA日本は草の根的に、一人のゲーム開発者という視点から見ているのかな、という印象を受けました。

遠藤: IGDA日本はまた、勉強会や情報共有といった活動が非常に熱心だよね。GDC報告会などは、たぶんCEDECでもDiGRA JAPANでもできない。

―――同じように、ゲームの定義の広がりがDiGRA JAPANに与えた影響はありますか?

遠藤: 海外と違って、日本では大学に「ゲーム学部」がほとんどないんですよ。だからゲームを学術として研究したい研究者は、まず自分たちが所属する研究領域があって、そこを足場にゲーム研究に切り込んでいくのが主流。その時、研究者が何にゲームをアプライしていくのかというのが、ゲーミフィケーションを含めて、どんどん広がっているよね。そういう意味ではいろんなものが、どんどん出てきているかな。

たとえば夏期研究大会でおもしろかった講演に、芝浦工業大学の小山友介先生による「ソーシャルゲームの行動経済学的解釈」というのがあった。1つのゲームタイトルから売上を最大化するための方法に関して述べたものなんだけど、あんまりおもしろかったんでブログに書いたくらい。これなどはDiGRA JAPANならではの講演かなと思うよ。

―――学会というとゲーム開発者からは敷居が高いように感じますが・・・。

遠藤: DiGRA JAPANはどちらかというと、産業界に開かれた学会という意味合いが強いので、研究者以外でも、普通に参加してもらって全然OKです。一方、これまで発表の場が全然なかった研究者でも、DiGRA JAPANなら発表できるということで、わざわざ来てくれるようになってきた。

特に京都で開催した2011年度の年次大会で、急にレベルが上がったんだよ。最初の講演でいきなり「科学のルールをゲームに:創造科学アドベンチャーゲームの開発研究」という講演があった。あれは、既存のシリアスゲームの批評的な意味合いも含まれていて、その時に「こういうのが出てこないと駄目だ」と思ったんだ。

小野: 東京大学大学院の浅見智子さんの講演ですね。天動説と地動説の議論をテーマにした「それでも地球は回る」というシリアスゲームを自分で開発し、それをもとに調査を行われて、論文にまとめられました。

遠藤: そうそう。彼女自身、もともとプロのゲーム開発者で、それが一度大学院に移ってシリアスゲームの研究をしたという背景があるんだよね。同じように、CEDEC2012でも「ユーザーに中二キャラクターとしての認知に成功したアニメーション・メソッド 〜ゴッドイーターから贈るフィジカル中二論〜」という講演があったんだけど、あの「中二病」に関する分析は、すごくおもしろかった。ああいった内容なら、DiGRA JAPANでも大歓迎だね。

■活動の「積み重ね」で見えてくるもの
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斎藤: 僕らがプロとしてDiGRA JAPANに期待しているのは、いつも仕事で作っている「ゲーム」を俯瞰して、違う観点から研究してくれるような内容なんです。たとえば僕らはどうしても近視眼的に、製品作りに没頭しがちなんだけど、それが世の中に与える影響にはどのようなものがあるか、どういう人たちが買うのか、そういった人たちは他にどういった消費行動をとるのか。そういった内容だとすごくおもしろいし、参考になります。

遠藤: そういった研究は、いっぱいありますよ。他にも文化史的にシューティングゲームの変化などを一生懸命まとめている人とか。まとめて何の意味があるのかと思われがちなんだけど、それをまとめて、ドキュメント化して、引用可能にして、積み重ねていくことに、学会としての価値があるわけで。

斎藤: 産業側としては、どうしても「今」と「未来」が重要なんですよ。「過去」のことは顧みている余裕がなかったりします。

遠藤: 逆に今の若い子達は昔のシューティングのことを知らなかったりするので、そこに資料的価値を提供するのがDiGRA JAPANの役目。CEDECはそうした資料をもとに、最新の技術をかけあわせて、未来のシューティングの姿や可能性を指し示してくれるようなところに、価値があるんだろうね。

―――先ほどDiGRA JAPANから「積み重ねる」という言葉が出ました。この「積み重ね」に相当するものは、CEDECではありますか?

斎藤: CEDECにはCEDiLというアーカイブ機能があります。これは毎年の講演資料と、講演ビデオのうち許可がとれたものを蓄積して、無料で公開しているサービスです。

遠藤: CEDiLで惜しむらくは、表に出しちゃいけない講演が多くて、全部ビデオなどで残せないんだよね。このあたりがCEDECのアキレス腱だし、学術研究とまったく違うところ。たとえば夏期研究発表大会では、講演内容が全てUstreamに録画されているし、予稿集もウェブ上にアップされているので、誰でも無料で参照できるんですよ。研究者にとっては、そうじゃないと自分の研究が引用されないので、困るんです。

斎藤: 確かにそうですね。CEDECでは皆さん最先端の技術発表をされるんですが、それがあまり記録に残りすぎると、みんな話す内容がどんどん丸められてしまって、おもしろくなくなっちゃうんですよ。そのバランスにはいつも苦心します。

―――「積み重ね」という点では、IGDA日本でもセミナーの資料などをSlideshareなどを利用して公開されていますよね。またトップページからたどれる各専門部会のブログの情報発信も盛んです。

小野: 確かにそうなんですが、それに加えて人と人とのつながりといった、目に見えない部分の「積み重ね」も大きいんじゃないかなあ。IGDA日本は「情報の共有」と共に「コミュニティの育成」を、より明確に目的として掲げているので。

斎藤: IGDA日本では各分野毎にセミナーを何度も開催しているので、人と人との結び付きがより密接じゃないですか。だからCEDECとはまた違った意味で、ノウハウの共有がなされている印象がありますね。

遠藤: あとはIGDA日本で特徴的なのが、学生に対する支援がしっかりしているところじゃないかなあ。

小野: ありがとうございます。去年からCEDECスカラーシップを開催しまして、今年はおかげさまで企業から協賛を受けて内容も充実して、TGSとCEDECの両方で開催できるようになりました。これも、もともとIGDA本体がGDCとE3向けに開催していたものを受けて、日本でも始めたものです。

■それぞれが感じる「作られたイメージ」に対する課題

―――CEDECはプロ向け、DiGRA JAPANは研究者向けですが、IGDA日本はプロと学生が一緒になっている感じですか?

小野: そこは日本と海外でも違うところで、海外、特にアメリカではイベントやセミナーを開催すると、学生の参加率が高すぎて、プロがはじき出されちゃうところがあるんですよ。アメリカでは日本のように新卒一括採用という習慣がないので、学生が就職活動の一環、すなわち「コネ作り」のために参加してくるんです。アメリカで学生むけ業界フェアなどを開催すると、基調講演で「コネ作り」の重要さが語られるほどですから。

これが日本では学生が萎縮してしまって、ほとんど参加しないんですね。そのため、学生が参加しやすい環境を作ることに苦心しています。今年の春には学生主体のGDC報告会も開催しました。

遠藤: それはCEDECでもDiGRA JAPANでも、できないなあ。就職しようとする大学生は「プロ」でも「研究者」でもないんだから。

斎藤: でもDiGRA JAPANでは学生の発表もあるんじゃないですか?

遠藤: それはあるんだけど、学会で研究者と呼べるのは大学院生から。学部生の発表は論文としての価値が低いんだよね。

小野: DiGRA JAPANでうらやましいのは学会なので、デフォルトで学生が参加することですね。先ほども言ったように、IGDA日本はデフォルトで学生が来ませんから。それから産学の幅広い分野で、発表や講演ができる受け皿になれるところです。昨年、立体視に関する「3DC安全ガイドラインに基づく、快適な立体視ゲームの作り方」というセミナーをお手伝いした時に、改めて感じました。 これはIGDA日本がめざすところでもありますが、まだまだ途上です。

このセミナーでは国立情報学研究所の後藤田先生と、バンダイナムコスタジオの石井源久さんに参加いただき、3DC安全ガイドラインという業界団体が策定したガイドラインをベースとした議論を行いました。こんなふうに講演者、参加者ともに、一番多様性が高いのがDiGRA JAPANではないでしょうか。

―――自分の団体が、本当は敷居はないのに、勝手に敷居を作られている、などと感じられることはありますか? 

小野: IGDA日本でいえば、先ほども説明したように、なぜか「プロのゲーム開発者だけの団体」と見られているところがありますね。

遠藤: 議論が「参加する側の敷居」になっちゃうけど、学生や若い研究者って、自分の師事する先生が主に活動されている学会を中心に物事を考えちゃうよね。逆に自分の研究がその学会で適していないとなると、それだけで勝手に敷居を作っちゃって、もう価値がないと思い込んじゃいがち。でも、他の学会では採択されなくても、DiGRA JAPANならすごく価値がある、といった研究はたくさんあるんですよ。特に社会科学系のゲーム研究は、ほぼそうです。そんなときにDiGRA JAPANは関係ないなんて思わずに、論文を投稿してきてほしいなあ。

小野: 同じようなことはCEDECでもいえそうですね。CEDECでは残念ながら公募をパスしなかったけど、DiGRA JAPANやIGDA日本では大歓迎といった内容のものも、数多くあります。

斎藤: ああ、それはありますね。そんな風に連携していけると良いですね。

―――CEDECで何か同じような「敷居」を感じることはありますか?

斎藤: ちょっと話がずれるかもしれませんが、CEDECは企業の看板を背負ってやっているカンファレンスとさっき説明しましたよね。それはそうなんだけど、会社に所属しつつも、個人として発表して欲しい、という気持ちが強くあります。

遠藤: それは大きいね。

斎藤: 会社と個人の関係は、僕の中では対等だと思っているんですよ。会社からみれば必要とされる個人であるべきだし、個人はそのためにスキルを常に持ち続けなくてはいけない。だからCEDECでも、会社員のAさんが発表するのではなくて、たまたま今、この会社に帰属しているAさんが発表するという意識をもって欲しいんです。

小野: 講演者には、よりプロ意識を持って欲しいということですね。

斎藤: またCEDECはプログラマー向けのカンファレンスというイメージがついていて、それが参加する上で敷居になっているところがありますね。実際はプログラム以外のセッションの方が、ずっと多いんですよ。ところが来場者の属性でいうと、プログラマーが一番多いんです。もっとゲームデザイナーやマネージャの方にも参加して欲しいんですね。そのあたりも外部から勝手に作られているイメージや敷居だったりするのかなと。

小野: 最近のCEDECの特徴として、基調講演や主要セッションでアニメや映像業界の方が登壇されるので、ゲーム業界以外のプレスが増えましたね。それによってCEDECがゲーム業界の外に認知され始めているところがあります。 映像業界にはCEDECのような作り手の情報共有の場はないですし、講演会などがあっても、ほとんど学生向けの内容なので、CEDECが非常に貴重な機会になっているんでしょうね。

斎藤: ああ、それは嬉しいですね。

小野: でも、参加者はゲーム関係者なんですよね。それはちょっと寂しいですね。

遠藤: 実際、アニメ業界の方はニュースサイトなどでCEDECの記事をすごく見ているよ。ただ、それでアニメ業界の方に来場してもらえるか、というのは別の話なんだけど。やるんだったら、「アニメデイ」とかいって、1トラック全部アニメ関係のセッションを集中させるくらいにしないとね。そうしたら参加しやすくなる。

■ゲームの周辺領域とのかかわりについて
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―――いまアニメ業界の話が出ましたが、三団体ではゲーム業界以外とのかかわりについて、どのように考えられていますか?

遠藤: CEDECでいえば、「コンピュータエンタテイメント」として、もっとマジメに映像業界にコミットメントしていくべきだよね。たとえばアニメも今はCGが多いし、コンピュータエンタテインメントといって良いと思う。

実写CGなどもそうだよね。ハリウッドの破壊系の技術などはゲーム業界に先行しているので。特に若いCGアーティストなどは、ゲームのリアルタイム処理についても興味があったりするから、あまり違和感なく参加できるんじゃないかなあ。

斎藤: ゲームと映像で産業は違っているけど、元になっている技術は同じですよね。一般参加者だけじゃなくて、講演者としても、もっともっと来て欲しい。

遠藤: 同じように、7号営業系(パチンコ・パチスロなど)のセッションも、どんどん実現させていきたいよね。開発会社の中には、これらのコンテンツを作っているところも多いわけだから。実はずっとアプローチはしているんだけど、なかなかね。

斎藤: たしかに、パチンコ・パチスロのゲームデザインって、面白そうですよね。最近はCGムービーなども、ふんだんに使われているわけだから。

―――IGDA日本ではどうですか?

小野: 今年のCEDECでもUXやUXDのセッションが増えましたよね。もともと彼らはゲーム開発のノウハウにすごく興味があって、でも接点がなかなかなかったんです。それが昨年、たまたま個人的にUX系の勉強会とつながりができました。自宅で小さな勉強会を開催しています。まだまだ小さいつながりですが、うまく育てて、他とのコラボレーションを活性化していきたいですね。

―――そんなふうに「広がり」を持って行きたいと。

小野: そうですね。もう一つはウェブ&ソーシャルゲームです。IGDA日本はもともとコンシューマゲームの開発者が中心で立ち上がったことと、ウェブ&ソーシャルゲームには昔からセミナーが多いので、あえてIGDA日本で主催する必然性がありませんでした。しかし昨今ではソーシャルゲームもリッチな表現ができるようになって、より企画力が必要になっているし、コンシューマゲームもソーシャルの要素をどんどん、取り込んでいくようになっています。そこでIGDA日本でもウェブ&ソーシャルゲームとの接点を、どんどん増やしていきたいと考えています。

遠藤: そこは今年のCEDECでモメンタムが変わったと思う。というのも『パズル&ドラゴンズ〜嫁と開発と私〜』というセッションの参加者アンケートが非常に高かったんだよ。しかもCEDEC AWARDSのゲームデザイン部門で、コンシューマゲームをおさえて最優秀賞を取った。ほんとに、来場者の投票も高かったんだから。

しかも発表されたときに「ニコ生」で「ゲームじゃないのに賞を取っちゃうのかよ」的な書き込みがばーっと流れた中で「でも『パズドラ』やってるし・・・」という書き込みもあったんだよね。セッションの採択時に「『パズドラ』がゲームデザインありきで開発されたことをが、うまく伝わるような内容にして欲しい」と注文をつけたんだけど、だからこそ、そこが来場者にも伝わったんじゃないかなと思う。

―――これは毎年思うんですが、CEDECには、その年のゲーム業界のムーブメントが、わずか3日間だけとはいえ、凝縮されている感じがします。

斎藤: 公募自体は半年前から始めているんですが、確かにCEDECに行けば、その年の流れが大まかにわかるようなセッション構成になっているかもしれないですね。CEDEC AWARDSはその象徴かもしれないけど、セッションの傾向や、セッションごとの集客を分析すれば、もっとそれが見えてくるかもしれない。

―――DiGRA JAPANは「広がり」について、どのように捉えていますか?

遠藤: DiGRA JAPANの場合はゲーム業界云々じゃなくて、もともと違う学部学科の中でゲームに関係する研究をしている人たちに、どうやって興味を持ってもらうかに苦心しているという感じかな。おかげさまで「ゲーム 学会」で検索してもらえれば、上の方にヒットされるようになっているよね。

また、できるだけ広い層に向けて発表の機会を提供することも重視している。たとえば学部生にも研究発表を認めているんだよ。前述したように学部生は研究者ではないので、たとえ学会で発表したとしても、学術的な評価にはつながらない。でもこれを契機に将来、研究者になることを期待して、そうした場を設けているんだよね。

■講演とキャリアアップの関係とは?

小野: DiGRA JAPANで昨年3月に開催された「若手発表会」で、当時慶応大学の学部生だった齋藤成紀君が「ゲームパブリッシングとイスラーム法」という発表をしたことがあるんですよ。この内容が非常に良かったので、IGDA日本のグローカリゼーション部会でも講演をしてもらったんですね。そうしたら、その年のCEDECでも齋藤君は同じテーマで、より掘り下げた発表を行ったんですよ。そして今年の春からゲーム会社にゲームデザイナーとして就職したんです。

遠藤: 「嚢中之錐」じゃないけど、場さえ与えてあげれば、目につく奴はちゃんと出てくるんだよね。同じようなことはCEDECで開催したペラコンでもいえて。信じられないことに、去年のペラコンで上位に入った学生が、すごい割合でゲーム業界に就職しているんだよ。去年準優勝だった学生も就活にのきなみ失敗して、あきらめていたけど、ペラコンで準優勝になったことを実績に再挑戦したら、就職できたって。

今年も大学を卒業してプータローしていたんだけど、エキスポパスだけ取ってペラコンに応募したら、事前投票ですごく伸びていたので、あわてて横浜まで駆けつけた子がいて。その時に去年準優勝だった子が「人生、絶対変わるよ」と力説していた。

―――そんな風に自分のキャリアアップのために各団体を使ってもらってもOKですか?

斎藤: それは、もちろんでしょう。

遠藤: CEDECの運営委員としての立場でいうと、インタラクティブセッションは学生にお勧めだと思うよ。良い発表をすれば絶対に光ると思う。ショートセッションで学生が講演するのは、かなりハードルが高いと思うけど、インタラクティブセッションは来場者と直接話せるから、あっちの方が良いという声も耳にします。

斎藤: 学生だけじゃなくて、プロのキャリアアップにもなるし。

―――IGDA日本はどうですか? 講演することがキャリアアップにつながりますか?

小野: 特にアメリカではそうですね。アメリカではレイオフが日常的なので、コミュニティ活動などに参加して、実績やネットワークを作っておくことが、次の仕事を見つける時に役立つ側面があるんです。「履歴書に空欄を作ってはいけない。ボランティアでもコミュニティ活動でも、何でも良いから埋めるようにしなさい。IGDAなどはオススメです」などと、海外のセミナーでも言われます。特にSNSがなかった時代はそうでしたね。

IGDA日本では、そこまで露骨ではありませんが、セミナーに参加したり、講演したことが転職のきっかけになった人もいますよ。もっとも、いわゆる「引き抜き」の温床になる恐れもあるので、セミナーで営業行為や人材勧誘は禁止しています。もし興味があるなら名刺交換だけして、後日直接コンタクトしてねと言っています。

遠藤: DiGRA JAPANは学会だから、そういうのはないね。研究者同士のつながりかな。大変面白かったから講演資料を送って欲しいとか、共同研究をしませんかとか、そういうのはあります。

■産学のギャップはどこから生まれてくる?
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―――研究者と開発者のコラボレーションはありますか?

遠藤: 現状だとちょっと難しいね。お互いに時間軸の感覚が共有できていない。開発者が1年かけてやるところを、研究者が3年かけてやったり。これがソーシャルゲームとかだと3ヶ月かな。

斎藤: 産学連携などをすると、痛感しますね。僕らはプロジェクトベースが基本なので、いま自分たちが作っているタイトルに向けた技術が欲しいわけですよ。ところが研究室で研究されている技術は、そこまで汎用性がなかったりします。そこで実装に合わせた修正をお願いすると、「1年かかります」とか。僕らとしては、多少ゴマカシでもいいから早く実装したいんだけど。

遠藤: 学会で発表するからには、その研究に裏打ちが必要じゃない? そこが一番の違いかなって。

斎藤: 一方で自分たちの研究成果が製品に応用されたら実績になるので、そこは研究者にとっても、関心が高いところだと思いますが・・・。

―――研究者と開発者のスケール感の違いが改めて浮き彫りになりましたが、今後両者がコラボレーションしていくコツなどはあるでしょうか?

遠藤: たとえば今なら「感覚間相互作用」(知覚のメカニズムを行動心理学の立場から究明していく学問)などの研究分野が、徐々にゲーム開発にも応用されつつあるよね。ああいった基礎研究はゲーム会社単独ではなかなかできないので、狙い目だと思う。

斎藤: そうなんですよね。学の方は産ではできないような、突飛な研究をいっぱいやってくれるので、そこは期待したいですよね。

遠藤: そうそう。ホントに突飛な研究分野から、ゲームに使えるものが突然出てきたりするので。よく研究者から「じゃあ、どんな研究が産業側で必要なのか、教えてください」と言われるし、それもあって「CESAゲーム開発技術ロードマップ」を毎年アップデートしているけど、本音を言えばそれ以外の、ホントに突飛なものを期待しているんだよ。

―――DiGRA JAPANでも、そうした研究の受け皿になっていくのですか?

遠藤: DiGRA JAPANに変な研究が、いっぱい集まってくるのは確かなので。その中から「ホントにこれはすごい」というような研究は、やっぱり応用されていくと思う。

―――CEDECにも学術系の方が参加されていますか?

斎藤: そうですね。聴講者だけでなく、講演者としても公募いただいています。特にインタラクティブセッションなどは、すごく多いですね。また「Co-Located Event」というイベントも開催しています。これはコンピュータエンタテインメント開発の周辺分野にある団体に一日、ワントラックお貸しして、いろいろ講演や発表を行ってもらうものです。そこでは研究者の方々もたくさん講演されています。

―――IGDA日本と学術というのは、どのように関係しているんですか?

小野: IGDA日本と学術系の結び付きは、人材育成が中心になっていますね。たとえばGlobalGameJam(GGJ)では古くから東京工科大学の三上浩司先生に会場から運営までお世話になっていますし、今年の福島GameJamでは高校生向けのワークショップで、実際に南相馬市の学校で集中講義をしていただきました。また実施には南相馬市の市役所や教育委員会の方々にご協力いただくなど、産官学連携が実現できました。このほかIGDA日本のコアメンバーで、青山学院大学の山根信二が福島GameJamをテーマに論文を書いて、国内外の学会で発表もしています。

遠藤: GameJamはおもしろい試みだよね。そして、CEDECやDiGRA JAPANでは、絶対にできないと思う。まずGameJamは研究ではないし、プロのゲーム開発者が直接、切磋琢磨する場所ではない思う。だけど、開発者の成長という要素を考えると、良いと思うんだよね。

小野: 今年のCEDECでも「GGJからプロが学んだこと」というセッションを開催しましたが、GGJはプログラムやゲームデザインといった個々のスキルではなくて、総体としてのゲーム開発体験が得られる点でユニークなんですよね。特にプロの開発者にとっては、リーダー研修などにも向いているかもしれません。

■GDCとCEDEC、DiGRAとDiGRA JAPAN、そしてIGDAとIGDA日本

―――自分がGGJに参加して思ったのは、すごく世界と繋がっている感じがしたことです。各団体とも海外との結び付きがありますが、日本と海外とのゲームシーンの違いなどを感じることはありますか?

斎藤: CEDECとGDCは外側から見るとよく似ているけど、参加している人の意識は違うように思うんですよ。情報共有やコミュニティとった要素は同じだけど、向こうの人たちは自分のアピールや転職といったことを考えながら参加しているかもしれない。CEDECの場合は、どちらかというとボランティア精神が強い感じがします。他の人にこの技術を学んで欲しいし、逆に自分たちも他の技術を学びたいし、もっとみんなでレベルを高めていきましょうよ、という。

―――どちらが良いというわけでもなく・・・

斎藤: うん、日本とアメリカの、開発者としての生き様だったり、会社と人の関係などの違いが、それぞれの性格を形作っている気がします。まあ、あくまで主観なんですが。

―――GDCとCEDECで連携はとられていますか?

斎藤: いちおう毎年契約を行っていて、相互に告知しあうなど、さまざまな協力を行っています。ただ国際化について、そこまで力を注げていないんですよ。もちろんインターナショナルなセッションもあるけど、海外に発信するのは、ほとんどできてないんです。また海外からの公募もほとんどありません。どちらかといと鎖国状態が続いています。

小野: 海外ではCEDECと言っても誰も知らないので、もう少し国際性が欲しいなと思います。

斎藤: 国際性って何でしょう? 講演を同時通訳することが国際性じゃないですよね?

遠藤: たとえば、CEDECでアンケートの結果が良かった講演を、GDCに持っていけばいいんじゃない? 逆にGDCで評価の高かった講演を招待するとか。

―――昔はそういう仕組みもあったんですが、最近はGDC側から見たときの、日本の講演クオリティが下がっていて、なかなか呼ばれないというのが実情ですよね。

斎藤: 確かに以前はありましたよね。そういう話をGDC側としたこともありますが、もっと継続的にやらないとだめですね。それをするとCEDECの宣伝にもなりますし。海外に向けた情報発信は重要だと思っています。

遠藤: 逆にCEDECの海外講演者のセッションで、すごい内容なのに、会場ががらがらだったりすることがあるんだよね。あれは寂しいし、もったいないと思う。

小野: 聴講者からすると、企業の代表で参加するので、直接業務に関係ないセッションに気軽に参加できない事情もあると思うんですよ。だからといって、そういうセッションをなくすのではなくて、そうしたセッションが想定している聴講者に、どんどん参加してもらって、聴講者の多様性を増していきたいですよね。

遠藤: そのあたり、せっかくCEDECは3日間あるんだから、うまいメリハリと見せ方が必要だと思うんだよね。たとえばビジネス系セッションだけで1トラックとって、サミット形式にするとか。今年は『GRAVITY DAYS』に関する複数セッションで1日1トラックとっていたけど、あれは「GRAVITY DAYSデイ」と打ち出しても良かったと思う。

で、話を戻すと国際化だよね。DiGRA JAPANにはDiGRAに対する日本での活動という意味合いもあるんだけど、2007年にDiGRAの東京大会を行ってからは、なかなか連携がとれていないのが実情で、そこはきちんと進めていかなくちゃいけない。また国内のゲームに関係する学会との連携も、海外から日本の研究シーンがどのように見られているのか、という点を意識しながら進めることが大事だよね。

―――本来であれば国内の論文も海外の論文も平等に扱わないといけませんね。

遠藤: その通り。でも世界では日本語で書かれた論文は、それだけで読まれないよね。逆に日本で研究発表大会を行うのに、英語で論文を書くのも・・・という話になる。またDiGRA JAPANでは2010年から年次大会を始めて、今年度は九州大学で開催することが決定しているんだけど、場所選びにも他学会との兼ね合いが必要な場合があったり・・・。そういうのじゃなくて、もっとオープンにしていきたよね。

小野: IGDA日本の国際化における最大の問題は、アメリカとそれ以外の地域で、さまざまな違いがあることですね。大前提として、国際NPO団体の法律って、あるようでないんです。だって国ごとに根底となるNPO法が、それぞれ違いますから。そのため国際的に活動しているNPO団体は、それぞれ法律とは別の内規を作って運用しています。IGDAでは、まだそこのレベルに達していないんですよ。

たとえばIGDAにはIGDAの会員権がありますが、日本でお金を払って会員になったとしても、日本支部に予算が下りてくるわけではありません。これは他の国でも同じ、もっといえばアメリカにある各支部でも同じで、基本的に支部は独立採算制で活動しています。一方でIGDA日本はNPO化を契機に、独自に会員システムを整備していくので、このすりあわせが課題になっていきます。

■意外と簡単な各団体への参加方法
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―――斎藤さんは今年度からCEDECの委員長になられましたし、小野さんもIGDA日本の代表になられて1年弱ですよね。今後こういう風にしていきたい、という思いはありますか?

斎藤: CEDECは前委員長の吉岡直人さんの時期に、大きく公募制に舵を切りまして、それでセッションの質が大きく向上した経緯があります。僕としてはバトンタッチを受けた身として、これから数年かけて、CEDECがちゃんと長続きしていくための組織固めを、しっかりやっていきたいですね。

遠藤: CEDECは運営委員の仕事が大変すぎるってのもあるよな。僕もペラコンを主催していたけど、その期間は全然仕事ができない。それに運営委員会になると、講演中もいろいろあって、講演がなかなか聴けなくなるし。100人以上ボランティアスタッフがいても、やっぱり大変なんだよ。

―――そこはDiGRA JAPANと違うところですね。

遠藤: そうだね。DiGRA JAPANは運営スタッフでも十分に楽しめる。もっとも、規模がそこまで大きくないというのもあるけど。それにCEDECと違ってイベントがないので、講演発表だけに集中できるし。IGDA日本は和気あいあいとして、一番楽しそうなんだけど、そのへんはどうなの?

小野: IGDA日本でもセミナーを行うときに、会場によってはビルの前などで誘導に経ってもらうことがあるんですが、あれは頭が下がりますね。またこれまでは新をはじめ、一部の運営スタッフのがんばりに負うところが大きかったんですが、NPO化を契機に組織化を進めて、より長続きする団体に脱皮しようと進めています。

遠藤: 長続きするってのは大事だよね。そういう意味ではDiGRA JAPANも昨年度の年次大会で規約を修正して、理事も新たに選挙制になったりと、組織が大きく変わったんだよね。もちろん、まだ足りていない部分もあるけど、そこは粛々と進めるということで。

―――それでは最後に、各団体への参加方法がまだまだ外部からはわかりにくいところがあるので、どのサイトを見て、どこに情報が集まっていて、講演するにはどうしたら・・・という話を、簡単にお願いします。

斎藤: まず「CEDEC」で検索してもらえれば、すぐに直近の「CEDEC2012」サイトがヒットすると思います。そこを見てもらえれば、どういうセッションがあるかわかります。また過去のセッションについては「CEDiL」があるので、それを見てもらえれば良いかなと。講演については、おそらく年内に来年度のスケジュールが発表されると思います。年明けから3月くらいでセッションの公募が始まります。そこではまずA41枚の申込用紙で、どんな話をするのか、出していただきます。その後、運営委員会で審査が始まって、夏前くらいには結果が戻ってきます。

―――審査をパスするうえで、企業名や過去の実績というのは・・・?

斎藤: まったく関係ないです。企業名や講演者名などは伏せて審査されるので、過去の実績や経歴に関係なく、うかる人は受かりますし、逆もまたしかりです。

遠藤: 審査するのもきついんだよ。量も多いし、いい加減に審査できないし。

―――DiGRA JAPANについてはどうでしょうか?

遠藤: 公式サイトもさることながら、学会なので、学会誌を見てもらうのが一番よくって。大きな図書館にも最近は収納されるようになってきたし、公式サイトでバックナンバーの通販も行っています。内容についても、いろんなところで紹介されたり、引用されているので、それらを見てもらえれば。

―――学会員になる必要はありますか?

遠藤: 参加するだけなら学会員になる必要はないです。逆に学会員になると、学会誌が送られてきますし、セミナーなどの参加費が安くなったり、免除されたりします。ただし学会誌で研究発表を行う場合は査読が必要で、これは学会員でなければ投稿できません。この「査読つき」というのが学会では重要なんだよね。これで論文の品質を担保しているわけで、ここで通れば研究者として実績になります。

また過去の資料についても、公式サイトを見てもらえれば、講演資料集などが載っています。特に夏期研究大会については、予稿集もすべて無料で閲覧できるようになっていたり、Ustreamで講演が残っていたりするので。

小野: やっぱり論文は引用されてナンボなので、DiGRA JAPANはいちばん内容がつまびらかになっていますよね。一見すると「学会」というイメージで敷居が高そうな気がしますが、一番オープンですよね。

遠藤: 夏期研究大会では「ゲーム開発者と出版」というパネルディスカッションを、僕とソフトバンク クリエイティブの品田洋介さんと、CEDEC AWARDSで著述賞をとられた中嶋謙互さんとで行ったんですよ。「ゲーム開発者よ、もっと本を書こう」という内容で、品田さんに部数や印税の状況など、なかなか普段聞けない話をいっぱいしてもらって、おもしろかった。

斎藤: 余談ですけど、この夏から秋にかけて、ゲーム開発者が書籍を出すのが流行ってませんか? 

遠藤: 良い傾向だよね。実際、DiGRA JAPANには今日司会をしてもらっている三宅さんをはじめ、これから書籍を出したり、過去に書籍を出したことのある著者が、いろいろかかわってくれている。そういう意識の高い人を追いかけてくれれば、いいんじゃないかな。学会という場をとおして今まで縁が遠かった編集者と開発者がつながれば、もっとそういった本も増えていくと思うし。

―――最後にIGDA日本に参加するには、どうでしょうか?

小野: 最近では毎月なんらかのセミナーやイベントなどを行っていますし、毎年1月にはGlobalGameJamも開催しています。自分の参加できそうなところから、足を運んでもらえれば。最新情報は公式ニュースサイトにアップされますし、主なものはGamebusiness.JPでも掲載されますので、ぜひチェックしてみてください。他にFacebookのIGDA JAPANグループページに登録してもらえれば、そこから世界のIGDAメンバーとつながることができます。

―――今日は長い時間ありがとうございました。おかげさまで三団体の内容や方向性が、だいぶ明らかになったのではないかと思います。ぜひ自分の興味の持てそうな団体をチェックして、活動にコミットメントしてもらえれば幸いです。よろしくお願いします。

一堂: ありがとうございました。
《小野憲史》

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