「いつの間にか狭くなってきたから、もっと広げたい」CEDEC2012の所信表明、そしてIGDA日本 | GameBusiness.jp

「いつの間にか狭くなってきたから、もっと広げたい」CEDEC2012の所信表明、そしてIGDA日本

ゲーム業界で情報共有をいかに進めて、業界全体のレベルアップをはかるか・・・。この命題に1999年から取り組んでいるのがCEDEC(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)です。今年は運営委員長の新任をはじめ、新しい節目の年となりま

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ゲーム業界で情報共有をいかに進めて、業界全体のレベルアップをはかるか・・・。この命題に1999年から取り組んでいるのがCEDEC(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)です。今年は運営委員長の新任をはじめ、新しい節目の年となりま
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ゲーム業界で情報共有をいかに進めて、業界全体のレベルアップをはかるか・・・。この命題に1999年から取り組んでいるのがCEDEC(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)です。今年は運営委員長の新任をはじめ、新しい節目の年となりました。

一方でゲーム開発者コミュニティの育成を通して、業界発展に寄与している団体がIGDA(国際ゲーム開発者協会)です。その日本支部の代表に昨秋から新任したのが、筆者こと小野憲史。IGDA日本はこれまでも、さまざまな形でCEDECに協力してきましたが、改めてどのような協力関係が築けるのか。3月19日の公募締め切りを前に、さまざまな角度で話を伺いました。

■三者三様ならぬ、四者四様の自己紹介

―――よろしくお願いします。IGDA日本代表でもある筆者がインタビュー形式で対談するという変則的な内容ですが、ざっくばらんに進めていきたいと思います。それではまず、新委員長から自己紹介からお願いします。

斎藤:はい、バンダイナムコゲームスの斎藤直宏です。昨年まで吉岡直人氏の下で運営委員会の副委員長を務めていて、今年から委員長に新任しました。CEDECが終わると、50歳になります。もともとJCGLというCGプロダクションに入社して、CGシステムの開発をしていました。JCGLは約3年で解散したのですが、旧ナムコと取引があった関係で、多くの仲間と共に、自分もナムコに移籍したんです。当時ナムコはポリゴナイザーという3Dゲーム基板を開発していて、3DCGができる人材を欲していたと思います。僕も最初はゲームではなく、CG映像を作る部署にいました。

―――最初にゲームの仕事をされたのはいつからですか?

斎藤:「国際花と緑の博覧会」(1990年)で出展された『ギャラクシアン3』の背景CG映像制作からです。その後も映像制作でゲームに関わっていましたが、次第に社内で映像プロジェクトが縮小するにつれて、ゲーム用のモデリングシステム開発をしたり、『鉄拳3』を家庭用に移植するためにモーション圧縮技術の開発をしたりと、ゲームプロジェクトへの技術支援を行ってきました。そのためゲームのプロジェクトに直接所属経験はありません。

―――CEDECにはいつから参加されているのですか?

斎藤:2002年くらいから受講者として参加していますね。東大でデジタルゲーム学会(Digra)の国際大会が開催された2007年にはパネルディスカッションに参加しました。運営委員会に入ったのが2008年からですね。

―――同じ質問を副委員長のお二方にもお願いします。

庄司:セガの庄司卓です。1987年に入社して、今年の3月末でセガ一筋25年になります。斎藤さんの一歳下で、今年で49歳になります。バブル前の大量入社の時代にプログラマーとして入社して、コンシューマの方に配属となり、主にセガ・マーク3、マスターシステムでゲームを作っていました。当時はZ80というCPU向けにアセンブラでコードを書いていて、ちょうど今のソーシャルゲームと同じように、数人のチームで、数ヶ月でゲームを作っていましたね。担当はキャラクター系のアクションゲームが多くて、メガドライブの『アイラブミッキーマウス ふしぎのお城大冒険』・・・。

―――名作アクションゲームですね!

庄司:いや、それをベースにマスターシステムで開発された海外向けタイトル『Castle of Illusion Starring Mickey Mouse』に携わりました。他にゲームギアで『Land of Illusion Starring Mickey Mouse』(日本語版:『ミッキーマウスの魔法のクリスタル』)を作ったり、欧州ではミッキーマウス並みに有名な、フランスの人気コミック「アステリックス」を用いたキャラクターゲーム『Asterix』を作ったり。海外ではメガドライブの影に隠れていましたが、マスターシステムも非常に良く売れていましたので。自分の主戦場も海外市場でした。

―――現在はどのようなセクションですか?

庄司:7年目でテクニカルサポートの側に回りまして、最初はセガサターン、次にドリームキャストで技術情報やSDKのリリース管理などを行いました。セガがプラットフォーム事業を終了した後も、バックエンドで技術支援を行っています。CEDECには2008年から運営委員として関わっています。

―――では最後にお願いします。

鶴谷:同じく副委員長の鶴谷武親です。ポリゴンマジックで経営者を務めています。46歳で、三人の中ではちょっとだけ若いですね。お二方が勤める企業とは違って、弊社はコンシューマやアーケードのディベロッパーとなります。もっとも最近ではスマートフォンやソーシャルゲームのパブリッシングも行っていますが。28歳で起業して、そこから経営畑を歩んできました。経営や人材育成などが専門になりますね。

―――御社が関わられたタイトルで一押しのモノは何ですか?

鶴谷:ちょっと古いんですが『とんでもクライシス』(PS1/徳間書店)です。カジュアルなリズムゲームの先駆けで、今遊んでも面白いと思います。CEDECの運営には2011年から携わりまして、庄司さんの下でビジネス&マネジメントのセッションプロデューサーを務めました。

―――庄司さん、鶴谷さんの仕事の切り分けは何ですか?

庄司:自分はセッションプログラムの責任者ですね。公募審査や時間割などです。

鶴谷:私はスポンサーセッションや広報などの対外的な分野になります。

なるほど、ありがとうございました。

斎藤:ちなみに、小野さんは自己紹介をされないんですか?

―――自分ですか? そうですね。今年41歳で、1994年に大学卒業後、マイクロマガジン社という出版社に入り、「ゲーム批評」という専門誌の編集者になりました。2000年に退社後はフリーランスでゲーム業界を中心に取材・執筆活動をしています。IGDA日本に直接関係するようになったきっかけは、2003年に前代表の新清士に誘われて、GDCに行ったことですね。そこで、こうしたカンファレンスが日本でも必要だ。ついてはCEDECを盛り上げていこう、という流れになりました。

斎藤:講師としても参加されていますね。

―――はい、IGDA日本がCEDECにラウンドテーブルの企画協力を行うようになって、僕もモデレータを2004年から行わせていただくようになりました。2009年にはグローカリゼーション部会の共同世話人となり、2011年の10月から代表に新任しています。もともと雑誌にもコミュニティ的な要素があるので、形は変わってもゲーム開発者コミュニティの育成と運営に関わり続けているという感じでしょうか。

■CEDECは企業的でIGDA日本は草の根的?

斎藤:一番大きく違うのは、IGDAは通年で活動されていますが、CEDECは年に1回ということですね。

―――そうですね。CEDECは年に1回の「お祭り」であり、日本最大のゲームカンファレンスです。それを中核に据えたときに、IGDA日本や他のゲーム開発者コミュニティが、どのように位置づけられていくのか。そんな話はこれまでもよく議論していました。

斎藤:まさにCEDECは「ハレの舞台」かもしれませんが、みなさんが普段活動している仕事の話や、技術の交流ができればいいと思っています。そこに参加することで、さまざまな刺激を受けたり、次のチャレンジに対して背中を押してくれる存在になったらいいなと。逆にIGDAはより日常に近いところで活動をしていますよね。だから個々のスキルを上げていこうとか、情報を共有しようとか、そうした目的意識はすごく似ていると思います。

―――一方でCEDECは業界団体のCESAが行っていることもあって、企業色が強いイメージがありますね。IGDAは開発者個人のコミュニティで、より草の根的です。同じ目的に向かって、両方からアプローチしている感じがあります。

斎藤:CESAが主催して、お金を出しているのは事実ですが、私は、あまりそうした意識はないんですよ。企業主催ではなく、開発者が主となるカンファレンスです。CEDECを作っているのは、スピーカーであり、参加者であるという認識なんです。

庄司:自分が運営委員会に入ったときは、横浜パシフィコでの開催が決まって、CEDECが急拡大している時期だったので、運営委員会には大手もいれば中小企業もいて、みな意識の高い人ばかりでしたから、それほど企業色が濃いとは思わなかったですね。ただ、自分も含めて、みんな企業を代表して来ているんですよ。そのため自分たちが何か行動をおこすことで、企業の側を動かせるという意識が、少なくとも自分にはあります。そのため自分もセガの社内で、公募を出せといつもハッパをかけているんですよ。またCESAの理事会を兼務している大手企業の経営陣も、CEDECの強化で一致しています。

―――なるほど、それは心強いですね。

庄司:ただ、そうなると大手企業の方が社員数が多いので、公募案件も採択数も、結果的に大手企業の割合が増えるんです。そのため、外から見ると大手企業中心の、企業色が強いカンファレンスに見えるかもしれません。もっとも、それは本意ではないんですよ。実際に「公募を出してください」と号令がかかったことで、はじめて公募に出して良かったのかと、安心した開発者も少なくなかったですし。

―――鶴谷さんは外部と内部でギャップはありましたか?

鶴谷:それほどなかったですね。ただ自分の立場としては、バランスや俯瞰性を常に意識しています。開発者は何かをミクロで掘り下げて良いと思うんです。でも、どこかに日本のゲーム産業とは、といったマクロな視点も必要だと思います。そのためセッションも、技術的なものからビジネス&マネジメントなどまで、幅広いジャンルに渡っています。この多様性がCEDECの持つ特徴の一つかなあと思っています。逆にIGDAさんなどは、より現場に近い、ミクロな視点の議論が多いのではないでしょうか。

―――運営委員会の平均年齢はどれくらいですか?

庄司:今年はメンバーが一部入れ替わって、平均年齢が下がったんですよ。ただ、それでも30代後半でしょうか。去年までは確実に40歳以上でしたが。

―――僕より少し下の世代ということは、いわゆる「ファミッ子」世代ですね。ファミコンに夢中になった子供たちが成長して、開発者になって、ついにCEDECで運営の中核を担うまでになってきた。つまりゲーム会社の中間管理職が中心になって運営しているカンファレンスというわけですね。

斎藤:まあ、そういう側面は確かにあると思います。現場のこともわかるし、経営者の話もわかるようになってきた。いろんな意味で幅の広いカンファレンスですね。

■CEDECなのにデジタルでなくてもいい?
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―――さて、そのCEDECも昨年までの吉岡委員長から、斎藤委員長にバトンタッチされて、新体勢ですよね。「斎藤CEDEC」という名称で良いんでしょうか?

斎藤:いや、その名前は使わないで欲しいんですよ。というのもCEDECは誰か一人が看板になるものではないと思うんです。先ほども言いましたが、CEDECはスピーカー、参加者、そして運営委員会が一緒になって、みんなで作り上げていくものですから。

―――そういはいっても、大きな方向性を決められるのは委員長の仕事ですよね。ご自身では過去のCEDECをどのように総括されていますか? そして、今年のCEDECをどのようにしていきたいという抱負をお持ちですか?

斎藤:そうですね。この数年でCEDECはどんどん面白くなってきていると思います。具体的には興味のある、聞きたくなるセッションが重なって、いけなくなることが増えてきていると思います。この傾向は2年前に公募制を本格スタートさせてから顕著になっています。それまでは運営側が講師をスカウトして、ご講演いただいていたので、運営側が見える範囲でセッション構成していました。それが最近はまったく予想外のところから、いろんな公募が集まるようになってきています。この傾向はどんどん加速させたい。だからこそCEDECを代表するのは委員長ではなくて、スピーカーであり、参加者であり、約40名の運営委員会なんです。

―――それはゲーム業界の成熟度の証明かもしれませんね。良くも悪くも、昔はスカウトしなければセッションが成立しなかったわけですから。

斎藤:そうかもしれませんね。ただ、一昨年に比べて昨年は公募数が落ちています。一昨年は初めての試みだったので、みんな盛り上がってくれましたが、去年は多少落ち着いてしまったかもしれません。この2年は毎年セッションの形式を少しずつ変えてきましたが、今年はCEDECのセッションの形はそのままにして定着を図り、みなさんからの公募数を増やしていきたいんです。公募がCEDECの根幹をなすわけですから。またご存じのように昨年から、タイトルに「ゲーム」という文字をなくしました(コンピュータ・エンターテインメント・デベロッパーズ・カンファレンス)。ゲームに限らず、ゲームの周辺にある、そして、コンピュータエンタテインメントなどのさまざまな分野の方々が、どんどん参加してきて欲しいなあと持っています。

庄司:今年は初めての試みとして、講演テーマ例を提案させていただきました。これが公募の多様性を締め付ける結果になったら本末転倒なんですが、我々もなるべく意識して、ショットガンのように広角で打ち出したつもりです。逆に似たような公募案が届いたときは、それらを混合させることで、良いセッションにしていきたいと思っています。

―――ゲームデザイン分野で、ボードゲームやARG(代替現実ゲーム)、遊園地のアトラクションなどの用語があったのに驚きました。

斎藤:メールといえば電子メールを意味するように、今ではゲームといえばテレビゲームのことを連想しますよね。でもゲームはもっと幅広い概念を指していました。それがテレビゲームが普及したことで、ゲームという言葉の概念が固定化したきらいがあります。ゲームを含むエンタテインメントについて議論するのがCEDECなら、テレビゲームに特化する必要はないし、技術レベルが高い・低いということも本質ではない。我々コンピュータエンタテインメントビジネスに携わっている立場で、刺激が受けられる、高められるものであれば、極論ですが、なんでもいい。「広く、濃い」という多様性があるのが、CEDECだと思います。

庄司:「広く、ときおり濃い」ですね。

斎藤:ええ、なんだか天気予報みたいですね。補足すると家庭用ゲーム関係の方が多いですが、業務用ゲーム機に携わっている方々にも、ぜひ公募して欲しいんです。よく業務用のリピートビジネスと、アイテム課金のビジネスモデルは似ているなどと言われますよね。そうした議論ができれば面白いのではないでしょうか。

■見た目以上に手間暇がかかっている公募審査の実態

―――なんどかCEDECに応募して感じるのは、その「濃さ」を公募用紙で表現する難しさです。A4の公募用紙1枚で書ける内容には限界があります。

鶴谷:全部のセッションが「濃い」必要はなくて、そこは意図してカテゴライズしている部分があります。対象が非常に限定されるけれど、専門性が高いセッションも必要だし、一方で教科書的だけれど、チュートリアル的なセッションとして位置づけようとか。いずれにせよ公募ペーパーは入り口だと考えてもらった方が良いかもしれませんね。実は昨年、自分も公募審査に初めて関わらせていただいて、あまりの手間に驚いたんですよ。こんなものだろうと軽い気持ちで審査していたら、庄司さんから「もっと公募者とやりとりをしてください。公募内容に不明な点があったら、ちゃんとメールで質問してください」と言われて、これは大変だぞと。

庄司:審査始めの段階で10-20件はすぐに決まるんですよ。ところが、そこから先が重くて。具体的な内容が理解できない場合、5回くらいメールで「あれがわからない、これがわからない」とやりとりをした例もあります。残念ながら最終的に不採択にする場合でも、その理由をきちんとつけて返す必要があります。でなければ、翌年また公募しようなんて思ってもらえませんよね。そういえば2010年に公募で落選して、2011年に同じテーマで公募された人がいました。内容もきちんと我々の意図をくみ取った内容に改善されていました。

―――差し支えなければ、何というセッションでしょう?

庄司:「データ活用で生産性UP!統計分析を伴うツール開発の舞台裏」(バンダイナムコゲームス・竹村伸太郎氏)ですね。あれは本当に感動しました。最終的にショートセッション「データを活用して生産性を上げる試み」として採択しました。

先ほどもありましたが、複数ジャンルの講演をショートセッションにまとめたり、パネルディスカッションの登壇者を調整されたりと、昨年はかなり審査に手間暇がかけられましたね。自分が関わったセッションでも「ショートセッション: 進化するローカライゼーション」や「魅力的で見やすい立体視(S3D)ゲームを作る上での課題について考える」などで、ご調整をいただきました。公募時には、それぞれCESAまで出向いて、運営委員の方とディスカッションすることになるとは、思いもしませんでした。

庄司:一昨年の公募スタートを受けて、昨年はよりセッションを充実させるために行いました。実際、昨年セッションの公開が遅れた理由の一つは、そうした審査体勢で進めていたからです。ただ、そんな風に我々が調整を入れたセッションが、全体的に評判が良かったんですよ。そのため、これは今年もやらない手はないなと。めんどくさいと感じる方もいらっしゃったかと思いますが、ぜひ今年もおつきあいください。

―――ちなみにCEDECの顔と言えば基調講演ですよね。昨年は初めて「純粋ゲーム系」の講演がなくなりましたが、今年はどうなりますか?

斎藤:これは前委員長の吉岡さんも言われていたかと思いますが、CEDECの基調講演は一貫して「外・中間・中」です。それぞれゲーム業界の外側の人、中間の人、内側の人という意味ですね。去年で言うと宇宙航空研究開発機構の國中均さんが外側、工業デザイナーの奥山清行さんが中間、チームラボの猪子寿之さんが内側です。何度も言いますが、コンピュータエンタテインメントですから。

―――非常にラジカルですね。もっとも個人的には、どれも意外性があって刺激的でした。ただゲーム開発経験が乏しい若手開発者には、カリスマゲームクリエイターの講演などの方が、わかりやすかったのではないでしょうか?

斎藤:それが、後で感想を聞いてみたところ、講演で刺激を受けた部分が、若手と中堅とベテランで、それぞれ違っていたんですよ。正直、驚きました。開発経験にあった聴き方をしてもらえたのではないでしょうか?

―――なるほど。ということは、業界年数の違いで刺激を受ける部分が異なるような、厚みをもった内容が基調講演には望ましいと言うことですね。今年もまた、そうした基調講演が期待できますか? 

斎藤:はい、期待してください。

―――楽しみですね。というのも、なかなかそういった講演は、IGDA日本のセミナーでは難しいんですよ。一方でそうした点がCEDECや、GDCならではのプレミアム感につながっていくと思いますし。

庄司:逆に我々もIGDA日本に対して、CEDEC向けに何か企画をお願いできればと期待しています。IGDA日本セレクションといった名称で何か実施できればな〜と考えてます。

―――嬉しい申し出ですが、なにをしましょうか?

斎藤:僕が期待したいのは、毎年TGSで行われている「センスオブワンダーナイト」に絡めた何かですね。あそこで紹介される作品は、どれもすごく新鮮です。CEDEC開催時期だと1年ほど時間が経ってしますが、開発者によるポストモータムなどもアリではないでしょうか。CEDECで話される内容は、商業ゲームに絡めたものが多いので、新機軸的な話は多くないんですよ。今のCEDECではあまり聞けない話が聞けそうです。

―――なるほど。他に「グローバルゲームジャムに見るプロジェクトマネジメント」なども良いかもしれませんね。48時間でゲームを作るイベントで、商用ゲーム開発で発生する問題点が凝縮して出てきます。今年の福岡会場では、参加したプロ開発者が中心になって、後日合同勉強会を開催されました。商用開発にも参考になる開発環境やプロジェクトマネジメントの知見が得られたので、これは共有したいと感じられたとか。また、個人的にも参加してみて、企画のできるエンジニアの重要性を改めて感じました。

斎藤:プログラマーの頭の中に適切なイメージが浮かばなければ、ゲームは作れないので、企画的なセンスは重要になります。また、限られた時間で制作するという制限で、何を切り捨てるか、という議論は興味深いですね。

■クロスボーダーはますます推進していく

―――これまで話してきただけで、今年のCEDECが例年にもまして自由な方向性を秘めていることが、改めて分かってきました。ただ、ちょっとゲーム業界から離れてみると、世の中的に勉強会ブームが花盛りで、中でもウェブ業界のエンジニア向け勉強会は、すさまじいものがあります。ゲーム業界が完全に負けている印象を受けます。

斎藤:何か具体的に感じられたことはありますか?

―――実は昨年「キネクト ハッカーズマニュアル」という書籍の製作をお手伝いした関係で、キネクトのプログラムコミュニティに何度か参加しました。しかし、どこもウェブ業界のエンジニアばかりで、ゲーム業界のプログラマーはほとんどいなかったんですね。もっとも、ウェブ業界でキネクトを用いた事例は、まだわずかです。そこで参加した理由を聞いてみたら「だって、おもしろそうじゃないですか」。この反応に、20年前くらいのゲーム業界を思い出しました。

鶴谷:ここで問題発言をしちゃいますが、ゲーム業界の人間は視野が狭いと思います。好きなゲームタイトルや、ジャンルが決まっているとか。仕事の内容も細分化されていますよね。業界構造的にもピラミッドになっていて、頂点に「次世代コンソール」がある、みたいな。一方でウェブ自体は道具にすぎないから、掲示板からビデオストリーミング、はたまた検索エンジンにウェブアプリと、非常に幅が広いんです。作る側も社会にインパクトを与えられるようなシステムやサービスを作りたいと思っていて。ハイエンド機向けに大作ゲームを作りたいといった狭さとは、対極にありますね。

斎藤:ゲームも昔はそれくらいラジカルだったんですよね。

鶴谷:そうなんですよ。それが細分化され、システム化され、マルチプラットフォームが当たり前になって、事実上プラットフォームが統一化されていく中で、だんだん視野が狭くなっていったんです。それは良くないことだと思っています。

斎藤:ゲームが産業として確立化されて、その中で売れることだけが目的になると、そうなります。ホントは売れるというのは、あくまで面白かったり、良いものができあがった結果であるはずなんですよ。

鶴谷:ゲーム業界って人を喜ばせるところからスタートした、いわば「お楽しみ業界」「おもてなし業界」なんですよね。それこそデパートの屋上にある木馬みたいなものから始まって、そこからだんだん周囲の要素を取り込んでいった。だからみんな周囲に目が向いていた。そういう意味では、今のウェブ業界とすごく近かったと思います。それが「コンソール業界」というくくりになったことで、中の人の視野が狭くなってしまった。そこが勢いで負けている理由で、僕らが反省すべき点でしょうね。

斎藤:僕はCEDECの運営委員会に入ったとき、開発者がもっと自律的に仕事をして、動けるようにしていきたかったんです。そのためにはCEDECがもっと魅力的になる必要があるし、そこに自発的に参加したいと思わせるようにしなくちゃいけない。そして公募したい、喋りたい、ネットワークを広げたい、というようになればいいなかと。ただ、鶴谷さんが言われたように、一方でゲーム自体が「狭い」産業になりつつあるのが問題です。そのためにはCEDEC自体の意味合いを広げて、参加者に新しい刺激を与えられる場にしていきたいんです。そんなふうにCEDECを広げてくれるものが、IGDA日本かもしれないし、ウェブ業界かもしれないし。

庄司:後付ですが、昨年テーマとして掲げた「クロスボーダー」も、そうした危機感の表れなんですよね。狭くなってきたから、もう一度広げようという。

斎藤:そうですね。クロスボーダーを止めるつもりはありません。もっと強調していきたいですね。

―――昨年はクロスボーダーの一環として、Co-located eventがありました。

斎藤:今年も基本的に開催する方向で進めています。今はどういった団体と、どういった関係が築けるか、検討しているところです。もっともCo-located eventは「アカデミズム」ではないので、技術的な内容である必要もありません。より幅広い分野に広げて行ければと思います。

―――僕は2011年までIGDA日本にグローカリゼーション部会という立場で参加していましたが、代表になってから原則としてすべての活動に参加するようになりました。そこで、まったく新しい分野の知見に触れて、たいへん刺激を受けました。CEDECでも同じように、まったく違う分野に参加して欲しいと思う一方で、仕事で来ているため自分の専門分野に集中したいという思いもあるでしょう。これはGDCなどでも同じで、そこにどのような折り合い付けるかが、開発者個人にとって求められます。

庄司:昨年からCEDiL(CEDEC Digital Library:http://cedil.cesa.or.jp/)という過去講演分のデータベースを作って公開しました。そこが予習・復習の場になれば良いですね。また途中退出はOKですから、講演者に気兼ねすることなく、どんどんセッションを移動してもらえればと思います。もちろん我々にとっても導線の確保が重要な課題になりますが。

―――さらなるご要望です。パーティなどで名刺効果をしても、それっきりになることが多いですよね。たとえばFacebookにCEDEC参加者グループページなどを作って、全員が登録できるようにしておく、などはどうでしょうか?

鶴谷:そのアイディアはおもしろいですね。実は運営委員会など内輪の議論では、すでにFacebookのグループページを活用しています。また一昨年からtwitterの活用が進んでいますが、今年は広報チームからFacebook上でリアルタイムに情報の発信をしていく、などのアイディアも出ています。このように運営側のFacebookに関する経験値が上がっているので、可能性はありますね。

―――他に何かCEDECとIGDA日本側で、こういう試みがあれば、というアイディアはありますでしょうか?

斎藤:今回は我々3人と小野さんとで、このような形で話をさせていただきましたが、まだまだIGDA日本について、理解が浅い部分もあります。近くて遠い部分を、お互いに感じているところがあるのではないでしょうか。CEDECにも約40名の運営委員会のメンバーがいますが、IGDA日本の他のメンバーの方と、何かディスカッションができる機会があれば良いですね。

―――一方でIGDA日本以外にも、さまざまなゲーム開発者コミュニティや、勉強会が誕生しています。我々としても、こうしたコミュニティと合同セミナーを行うなどの企画を進めています。そこでCEDECを筆頭に、セミナーやコミュニティ活動の循環構造を構築して、1年間の総合活動スケジュールのようなものを整備していけるといいですね。

斎藤:ああ、それはすごくいいですね。CEDECに参加するような人は、そうした活動にも関わっている人が多いはずですから。共存関係があるべきですよね。どういった形が望ましいのかわかりませんが、そうした活動を支援することも考えられます。

―――そこでぜひ議論を深めていきたいのが、NDA(機密保持契約)に関するマナーです。技術交流や共有は重要ですが、NDAの遵守も重要。これを無視してはコミュニティ活動が成立しません。その落としどころが重要だと思いますが、一朝一夕では身につかないので、常に意識してもらえるように、言い続けていく必要があります。

斎藤:これまでは会社の中でしか活動していなかったから、NDAを意識する機会も少なかったと思いますが、コミュニティがどんどん増えてきて、個人がいろんな機会で話す機会が増えているからこそ、それは重要ですよね。中には責任がとれない、判断がつかないからといって、公募しない人もいると思います。

庄司:セガでは外部講演チェックリストがあるんですよ。会社の機密情報は入っていないか、発売前のタイトルについては事前許諾を得ているか、海賊版につながるような技術情報は入っていないか、ゲーム攻略につながるような情報は入っていないか、などです。

鶴谷:企業内で定期的な勉強会をする必要がありますね。組織としては定期的に行う必要があって、一定以上の規模の企業なら、どこもやっています。

―――ただ、中小企業ではまだ少ないのではないでしょうか。「コミュニティ時代に必要な開発者の振るまい方」などのセッションがあっても良いかもしれません。その意味でも幅広なCEDECであればと思います。

斎藤:それはそうですね。セッションの正否は別として、重要な指摘だと思います。

―――それでは最後にCEDECの公募について、改めて呼びかけをお願いします。

斎藤:ベテランの方から若手まで、どんどん公募して欲しいですし、プログラマー中心のカンファレンスというイメージがついていますが、ビジュアルアーティストやサウンド、ゲームデザイン、さらにはビジネスをされている方まで、さまざまな方に参加していただきたいので、ぜひ公募をお待ちしています。最近はゲームを使った街おこしなどもありますが、もちろん自治体の方でも歓迎です。例年と同じく公募された方には、採択・非採択に限らず、基調講演に優先してご入場いただけますし、ステッカーも差し上げます。何度も言いますが、コンピュータエンタテインメントですから、「ゲーム業界」の外側にいると感じられている方からの公募も、ぜひお待ちしています。

庄司:斎藤さんの話に補足すると、ゲーム業界外の方々がこちら側に公募という形で歩み寄っていただけると、そこに対して我々の方が反応して、何かそこに価値を付け加えることもできると思います。たとえばゲーミフィケーションなどは、その一例です。我々は先程も話題に挙がりましたが、ちょっと視野が狭くなっているところがあって、周りのことを良く知らないんですね。たとえば組み込み機器メーカーの開発プロセスなども、もともとテレビゲーム自体が組み込み機器だったはずなのに、いつの間にかそこから分離してしまって、自身の立ち位置がわからなくなってしまっています。ぜひゲーム業界外の方々にお越しいただいて、我々のノウハウも積極的に盗んでいって欲しいと思うのと、我々自身も立ち位置の違いに気がついて進化できるのではないかと思っています。

―――お二方の尻馬に乗ってしまうと、昨年IGDA日本の関係者も公募にチャレンジして、採択されたものも、採択されなかったものもありました。もっとも非採択のアイディアも後日、独自にセミナーなどを行って、ある程度は生かすことができました。そんな風に非採択となったものでも、IGDA日本や他のゲーム開発者コミュニティにアクセスしていただければ、どんどん生かせる場を作っていけると思います。まずはCEDECを目標に、そこから視野も広げつつ、公募に挑んでいただければ幸いです。

斎藤:ええ、うまく共存関係を創り上げていきましょう。

―――ありがとうございました。
《小野憲史》

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