3D立体視、3DCG、3D仮想空間、AR、3Dスキャン&プリントなどなど、「3D」を万遍なくまとめ、解説している本です。読み物としてだけでなく資料としても便利な一冊。また3Dの現状だけではなく、3Dがこれからどう発展していくか?という未来像まで視野を広げて書かれています。3Dの時代なんでも同書によれば、日本における3Dの歴史は幕末期(!)より始まったとのこと。幕末の写真家である江南信國氏が撮影したステレオ写真(立体視写真)が日本初の3Dコンテンツだそうで、氏は「T.Enami」の名前で日本国内よりも海外で有名とのこと。筆者的には、巻末部分「第7章 予測される課題」と「第8章 クロス3D」にある「3Dデータ資産」の活用についての記述が一番面白かったです。アニメや映画、ゲーム、アートと現在の日本で「3Dデータ」は意外と様々なところで利用されていますが、それがうまく”活用”されているかというとまだまだのようです。例えば、いつも3DCG作成ソフト「Shade」で作品製作している人がそのデータを3D仮想空間にインポートして”仮想アイテム化”して販売し、さらにその3Dデータを3Dプリンタで出力してリアルアイテム化する…といったリアル⇔ヴァーチャルなモノ作りも今ならやろうと思えば可能です(Shadeのデータを取り込むのは公式に3D仮想空間「Blue Mars」で可能)。また3D仮想空間やMMOの自分のアバターデータを3Dプリンタで出力して自分だけの「オリジナルフィギュア」を作る・・・といったビジネスは、日本ではまだメジャーではありませんが既に海外にはいくつか存在します。3Dスキャナと3Dプリンタを使いもっと「3Dデータ」が効率よく活用されるようになれば、モノ作りの手法や流通システムそのものが劇的に変わるのではないかと想像が膨らみました。