ツッコミビリティが大事・・・「ソーシャル、日本の挑戦者たち」第26回 ONE-UP後編 | GameBusiness.jp

ツッコミビリティが大事・・・「ソーシャル、日本の挑戦者たち」第26回 ONE-UP後編

「ソーシャル、日本の挑戦者たち」最新号ではONE-UPに焦点を当てます。応えてくれたのは東京開発グループ マネージャーの小林俊仁氏です。

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「ソーシャル、日本の挑戦者たち」最新号ではONE-UPに焦点を当てます。応えてくれたのは東京開発グループ マネージャーの小林俊仁氏です。



―――御社って聞いてる感じだと、かなり真面目にやってそうな気がするんですけど

真面目にやってますよ(笑)。

―――真剣な空気が流れてそうな気が

相当楽しく真面目にやってます。

―――楽しそうなところをちょっと教えて頂きたいんですけど。

開発のテンションは本当に高くて、もうほんと毎日笑いながら作ってますね。

オンラインゲームの開発って、企画者やプログラマやグラフィッカーが何か少し作ってはその反応を見て反省点を取り込んで、また何か作ってというイテレーションを可能な限り早く繰り返すんですね。この迅速さを作り出す一つの要員として、突っ込みやすい空気を作る、というのがあると思うんです。開発者に対して、有無を言わさずお前これやれっていう風に上から降りてくるような組織ってあるじゃないですか。あれやった時点で、もうオンラインゲームの開発としては負けだと思ってます。企画も技術も、一人の人が隅々まで見るのはもう不可能で、これを認めた上でチームを作らないといけないんですね。なので、みんなが見てりゃ、誰かが間違ってるとか面白くないとか気づいてくれると思うのですが、この時誰かが持った問題点を顕在化させるのは、組織的な取り組みだと思うんです。どうせ俺が何を言っても変わらないから、みたいな諦観みたいなものが極力出ないようにしなきゃいけない。「ツッコミビリティ」の低い組織からはいいオンラインゲームは生まれないんですね。

創造性とか改善意欲も発揮されないですし、だからそういう意味でも、この点は重視してます。何しろみんながこれ俺が作ったって言えると楽しいですしね。

で、ツッコミビリティを高めるためのノウハウって結構色々あって、例えばメールで「お世話になっております。〜です」とかやった時点でアウトだと思ってるんですよ。「お前それ違うやん」って、上司に対しても外部の人にも軽く言えないと、組織としての判断が遅くなる。なので、僕らは Skype チャットでひたすら友達のようにやりあってます。あと、プログラマででトリッキーなコードを書きたがる人っているんですよ。俺こんなに短く書けるぜみたいな。だけど、そういうのは他の人が見て理解できなくなってしまうので、結果的にチームのスケーラビリティや迅速性を下げてしまうんですね。なので、とにかく猿でもわかるようなコードを書くとか。あと、コメントちゃんと書くとか。

―――色々あるんですね。

そうですね。あとは、CI、コンティニュアス・インテグレーションって言うのをやっていて、これも開発の迅速性を高めるものと捉えています。寝てる間に絶対ビルドが走るようにしておいて、次の日にどこかミスっていたら、メールが飛んできてわかる、みたいなやつですね。

―――それはプログラムに対してテストをしてる、みたいなのですか?

そうです。それを初期段階から継続的にやるってことですね。いっぱい作ってあとでがっちゃんこせずに、常に遊べる状態を保つというか。問題に気づくのが遅くなれば遅くなるほど、イテレーションを回すのに時間がかかるようになってしまうんですよ。数えればきりがないですけど、そういう細かいことの積み重ねが、組織の足の速さに繋がっていって、それがそのままビジネス上の価値になっていくと思うんですよね。


―――主にはメンバー的には MMORPG の方が多いという状況ですけど、今後欲しい人材というのは?

もう既に組織としては、WEBも、コンソールゲーも、ネットワークも、インフラもみたいな感じでやっているんですね。さっきの例でもありましたが、5言語とか使って1つのゲームを作る場合もあるので、既にこの言語使える人、みたいな形の採用はあまり意味が無いと思ってるんですね。最低限複数言語を使える人を採りたいです。

採用のときも結構強調しているポイントなんですけど、うちはいろんな人がいて超面白いですよ。WEB な会社だと PHP な人がいっぱいて、ゲーム会社だと C++ 書ける人はいっぱいいる、みたいになっちゃってるじゃないですか。日本のそんな状況の中で、ソーシャルゲーム、オンラインゲームに必要な、本当に様々なスキルを揃えられてるってのは、うちの強みとしてあると思うんですよ。

一つの言語にものすごく秀でた人も欲しいんですが、やっぱ本当に優秀な人っていろいろ少しずつかじって違いを分かった上で一つのことをやってると思うので、T 型のスキルというか、食わず嫌いせずに色々なものをやってみる、みたいなところは重視しています。

企画者もそうなんですけど、あらゆるものにひたすら手をだしてって見識を広げつつ、最善の選択をするのが重要だと思っていて、そういうモチベーション自体が、会社の次のステップ、伸びを作ると思うんですよね。なので、例えば Kinect で何か作れないかなって話があったら、もうあいつが何か作ってたよ、みたいな感じ(笑)。なるべく、経営判断で、この分野に参入とか決めた後に調査から始めるんじゃなくしたいです。エンジニアの好奇心って、そのまま組織の迅速性っていう価値になっていくと思うんですね。

―――かなり濃い人でも大丈夫なんでしょうか(笑)?

濃い人超大丈夫!ってかもう、やばいっすよ(笑)うちの人のバックグランド見てると。ぶっとんじゃってる人大好きですね。このアプリ作っててハマりすぎて引きこもって中退しちゃいました、とか超いいですね。ひとつのことに打ち込んでました、的な人はとにかく大好きです。例えばバンドやってましたとか。うち、音楽やってる人多いんですよね。なんでなんでしょうね。逆に、資格いっぱい取っちゃってる人とかは心配になっちゃいますね(笑)

―――ギークハウスってご存知ですか?いろんな人が混ざってるんですけど、エンジニア同士で、みんなコタツかこんで、コミュニケーションはチャット、10人くらいでずっと無言でチャット、たまににやりと笑うみたいなコミュニケーション。そういうマニアックなんだけどひたすらはまり込んでる、このデジタルな中で色んなものを追いかけ続けてる風の人たちで、DeNAとかサイバーエージェントとかだと採用しづらいので、そういう人たちで、はまる人がいるかもしれないです。

なるほど。

―――やっぱり最近はコンシュマーの人で元気なくなってる人が多いのが気になりますね

そうなんですよ。そこって叩いてぶっ壊すべきところじゃなくて、せっかく日本が培ってきたものなんだから、WEBとかの新しい風を入れて、成長してみんなでハッピーになるべきところだと思うんですよ。

――― 今コンシュマーの人が、いきなりSAP専業企業いくとかいっても、もうカルチャー違うだろっていうか

そうそう。ほんとにそれはあって、実際合わなかったりすることも多いです。コンシューマーの開発って、やっぱり方向性を決める人が強くないと回らないので、そのカルチャーが逆にアダになってしまうんでしょうかね。むしろ、オンラインやソーシャルは、ユーザーに出して帰ってきた反応をもって自分たちを変えるみたいな、謙虚さや柔軟性が要求されるので。

―――そういう人だったら、全然戦力で採れますよね。スマホにいったら、ガラケーの表現しかやってなかったWEBの人たちって、どうなるんですかね?

どうなるんでしょうね。Web 的な表現のものを、Web 的な言語で簡単に作れる SDK とかもありますけど、やっぱりそれって携帯で最適だったものを持ってきただけで、スマフォではスマフォに最適な表現を追求しなきゃいけないと思うんですね。言語や、ゲームエンジンや、プラットフォームと心中するような戦略は避けなきゃいけない。まあ今スタートラインが一緒って意味では僕らもがんばらなきゃいけないんですけどね。

―――その他何か面白い取り組みなどされていますでしょうか?

エンジニア勉強会というのは面白いですよ。例えば、GDC 行ってきたよとか CEDEC 行ってきたよとかの発表はもちろん、 MongoDB の勉強会行ってきたよとか、 Web系フレームワークの話もありますし、ゲームエンジンとか 3D とか描画系の話もありますし、インフラでハマった問題点の発表とかもあります。今後エンジニアって、ひとつの技術にのっかってそれと心中してしまうのはダメだと思うんですよ。視野の広さはこれからの時代いろんな会社がエンジニアに対して要求してくると思うので、そういうことをしたい人には向いてるんじゃないですかね。

―――日本だけですもんね。未だにこんなにPHPばかりなのは。

何でなんでしょうね。モノにもよりますが、僕は自分でウェブアプリ書くなら Rails で書きたいんですが。

―――まぁ受託案件が少ないんじゃないですか?運用できないですからですよね。

結局、ネットワーク外部性みたいな側面があって、Python や Ruby に比べて PHP のエンジニアは見つけやすいから、 PHPを選択することに一定の意義はあるんですよね。

―――ONE-UPさんはなんでもできる会社、なんでもできるエンジニアという感じですね。

そうですね。なんでもできるといいますか、うちとしては、WEBとゲームの両輪を持っている数少ない会社というアピールができればありがたいですけども。結局どの会社も今後そうなっていかざるを得ない気がしてるのですが、ゲームの開発チーム作るのって、相当な労力がいると思うんですよ。今は3ヶ月くらいのプロジェクトで携帯のゲームを作って一山当てたりできる時代ですけど、2年も3年もしたらもうそんな時代でもなくなってくるでしょうし、ゲームはリッチになるわいろんなプラットフォームに出さなきゃだわで開発も肥大化していって、投資も大きなものになっていって、なかなか小さい会社が自己資金で一発当てるのは難しくなっていくと思うんですね。その中で、うちはゲームも Webも両方あって、プラットフォームや国や言語やデバイスも垣根無くやってるので、ちょっとだけリードしてそうって思ってもらえたらありがたいです(笑)。

―――御社なら、自分たち自身の方向性や答えを形作れそうな力強さ、空気を感じました。ありがとうございました。

■著者紹介

株式会社HatchUp 八反田智和
1980年鹿児島県生まれ。慶応義塾大学卒。楽天リサーチ、外資広告代理店でのインタラクティブプロデューサーを経験した後、2009年より、ソーシャルゲーム業界に入る。WEB系人材会社営業(ソーシャル担当)を経て、2010年よりソーシャル企業支援会社HatchUpを設立、現在に至る。ソーシャル系イベント【STR】およびブログ(http://socialtoprunners.jp/)を運営している。
《八反田智和》

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