「Blueprint」廃止、ゲームプレイ開発は「Verse」へ―Unreal Engine 6が描くAI時代のゲーム開発と経済圏構想 | GameBusiness.jp

「Blueprint」廃止、ゲームプレイ開発は「Verse」へ―Unreal Engine 6が描くAI時代のゲーム開発と経済圏構想

ティム・スウィーニー氏へのインタビューも実施されました。

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「Blueprint」廃止、ゲームプレイ開発は「Verse」へ―Unreal Engine 6が描くAI時代のゲーム開発と経済圏構想
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2026年11月3日、東京・有明で開催された「Unreal Fest Tokyo 2026」の基調講演に、Epic GamesのCEOであるティム・スウィーニー氏が登壇しました。

講演では、次世代ゲームエンジン「Unreal Engine 6(UE6)」の構想を中心に、ゲームやプラットフォームの枠を超えたエコシステムの発展、AIによる開発効率の向上について説明。従来の開発環境を見直し、独自のプログラミング言語「Verse」への移行を進める方針も明らかにしました。

そして講演後にはメディア向けの囲み取材が行われ、UE6の相互運用性やAIを活用したゲーム開発についてより具体的な考えが語られました。本稿ではその様子もあわせて紹介していきます。

Unreal Engine 6が目指す相互運用性。一度の開発で複数プラットフォームへ

ティム・スウィーニー氏は講演の中でEpic Gamesが提供する開発・配信・運営を包括的に支えるエコシステムについて紹介。同社はUnreal EngineやMetaHuman、コンテンツマーケットプレイス「Fab」に加え、マッチメイキングやソーシャル機能を提供するEpic Online Servicesなどを展開しており、その中でも『フォートナイト』は、開発ツール「Unreal Editor for Fortnite(UEFN)」を通じて外部開発者が独自のコンテンツを制作・公開できるUGCプラットフォームへと発展しています。

ティム氏はUEFNにからめて、7人の開発チームが制作した『Steal the Brainrot』を事例として紹介。同作はライブイベントで最大110万人の同時接続プレイヤーを記録した一方、開発チーム自身が大規模なサーバーやデータセンターを運用する必要はなかったと説明。

さらに、「スター・ウォーズ」などの外部IPについて、所定の収益分配条件に同意することで、IPホルダーとの個別交渉を行わずにコンテンツへ取り入れられる仕組みも紹介しました。 こうした取り組みにより、少人数の開発チームであっても世界中に向けてコンテンツを展開し、収益を得られる環境を整えているとしています。

こうしたエコシステムをさらに発展させる技術基盤として、Epic Gamesが開発を進めているのが次世代ゲームエンジン「Unreal Engine 6(UE6)」です。

UE6では、既存のUE5の機能と『フォートナイト』の開発環境で培った技術を統合し、一度制作したゲームをPCや家庭用ゲーム機だけでなく、さまざまなライブエコシステムへ展開できるような環境を目指します。

その実現に向けて、3Dデータの標準フォーマットである「glTF」「USD」などを活用し、ゲームエンジンや制作ツール間でコンテンツを移動しやすくするようにしていくとのこと。また、既存の標準規格では対応できない領域についても、Epic Gamesが新たな規格を策定し、他社も採用できるよう公開していく方針です。

ティム氏はこの構想を、ゲーム産業の不安定さに対抗し特定の1社による支配を避けるための戦略として説明しました。

AI開発を前提にUE6を刷新、「Blueprint」から「Verse」「Scene Graph」への移行を加速

UE6では、ゲーム開発環境についても大きな変更が予定されています。Epic Gamesは、従来の「Blueprint」などを中心とした開発環境から、独自のプログラミング言語「Verse」とシーン構築基盤「Scene Graph」を中心とする構成へ移行する方針です。

背景には、AIを利用した開発ではテキストベースのコードの方が効率的に扱えるとの判断があります。ティム氏は開発者に謝罪の言葉を述べつつ、Blueprintを廃止する決断に至ったと説明しました。

Epic GamesではすでにAIを開発工程に導入しており、従来4日間かかっていた作業を1日で完了できるようになった事例もあるといいます。ティム氏はAIの活用がプログラミングだけでなくコンテンツ制作にも広がり、2027年半ばにはさまざまな分野で生産性が10倍に向上する可能性があるとの見通しを示しました。

さらに講演後の囲み取材では、AIを採用する企業と採用しない企業の間には競争力に大きな差が生じるとの認識も示しており、AIの活用を前提とした開発環境への転換を進める姿勢がうかがえます。

「UE5.9」のプレビュー公開を予告―Epic Games Japanは国内開発者の支援を強化

続いて登壇したEpic Games Japan代表の河﨑高之氏は、Unreal Engine 5.9のプレビュー版を翌週に公開する予定であると発表しました。

UE5.9ではAIを活用したワークフローの改善やWebプラットフォームへの対応、レンダリング・アニメーション機能の更新などを予定しています。また、日本の開発者に向けて、UE6への移行に必要な学習リソースや技術サポートを拡充する方針も示しました。

インタビューで語られたUE6の具体像

続いては、メディア向けに行われた質疑応答の様子をお届けしていきます。登壇したのは、ティム・スウィーニー氏と河﨑高之氏。ティム氏は質疑応答に先立ち、AIを採用する企業と採用しない企業では競争力に大きな差が生まれるとの認識を示しました。

韓国や中国でもAIの導入が進んでおり、今後この流れを止めることは難しいと説明しつつ、欧米では開発費の高騰によってゲームの投資回収が難しくなり、開発会社の人員削減につながっていることにも言及。Epic GamesではAIや開発ツールの改善を通じて、こうした課題に対処していく考えを示しました。

UE6でもC++は使えるのか

質疑では、UE6でのC++の扱いについて質問が寄せられました。

ティム氏は、レンダリングや物理演算などのエンジン基盤では引き続きC++を使用する一方、ゲームプレイの開発環境はVerseへ移行する方針だと説明しました。

さらに、当初UE6のアーリーアクセス段階では残すとされていたActorやBlueprintなどがいつ廃止されるかについても質問が行われました。

これに対し同氏は、方針を変更しアーリーアクセス開始時点から廃止する考えを明らかに。既存プロジェクトの移行に伴う負担を認めつつも、BlueprintやC++のゲームプレイコードからVerseへの変換について、AIによる支援を提供する予定だと説明しました。

ハードウェア価格の上昇にどう対応するか―開発者に求められる最適化

半導体などの部品価格の高騰が今後のゲーム市場、とりわけ日本が強みとするコンソール市場にどのような影響を与えるのかという質問も寄せられました。

ティム氏は、今後2~3年にわたり部品価格の高騰によってハイエンドPCや家庭用ゲーム機の価格が上昇する可能性を指摘。一方、スマートフォンでは価格が上がらずに性能が抑えられ、ローエンド端末が増える可能性もあるとの見方を示しました。

こうした状況に対処するためには、PCや家庭用ゲーム機だけでなく、低性能なモバイル端末も含めて幅広いデバイスに対応し、できる限り多くのプレイヤーにゲームを届けることが重要だと説明しました。

UE6の相互運用性―ゲーム間でのアイテム共有

UE6では、異なるゲーム間でキャラクターやアイテムを共有できるようになるのかという質問に対し、ティム氏は技術的な移植性とゲーム間の相互運用性という2つの側面から説明しました。

技術面では、ゲームエンジンや制作ツール間でコンテンツを移動しやすくすることを目指しており、3Dモデルだけでなく、動作や振る舞いを持つオブジェクトの移植も課題になるとしています。

一方、ゲーム間の相互運用性については、開発会社同士の合意によって、一方のゲームで購入したアイテムを別のゲームでも利用できる仕組みを構想しています。

具体例としてディズニーとの提携や『Rocket League』との連携に言及。購入したアイテムをほかのゲームでも使えるという安心感が、プレイヤーの消費を後押しし、ゲーム経済圏全体の成長にもつながるとの考えを示しました。

日本のスマホ新法をどう評価するのか―Appleとの対立にも言及

AppleやGoogleとの対立についても質問が寄せられ、ティム氏は日本におけるスマートフォン市場の競争環境の変化について言及しました。

日本がアジアで初めてiPhone上で競合アプリストアを利用できる国になったと評価し、「日本の皆さん、おめでとう」と祝意を示しました。中国や韓国などにはまだ同様の自由がないとして、日本の開発者や消費者が新たな選択肢を得られるようになったことを歓迎しました。

一方で、Appleとの対立はなお続いており、競合ストアや外部決済をめぐる制約の解消が必要だとの考えも示しました。Appleとの訴訟については、2027年末までに何らかの決着がつくとの見通しを語っています。


今回、UE6を単なるゲームエンジンの刷新にとどめず、ゲームの開発手法から流通、経済圏までを変える基盤として位置づけるEpic Gamesの構想が示された形になります。

一方で、Verseへの移行に伴う開発者の負担や、異なるゲーム間でのコンテンツ共有に向けた企業間の連携など、実現には課題も残されています。AIによる開発効率の向上とプラットフォームの枠を超えたエコシステムの構築が今後どのように具体化していくのか、そしてゲーム開発者はどのように対応していくのか、考えていく必要があるでしょう。

《GameBusiness.jp》

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