日本の人はあまりレビューを書かない
――既に正式版になった『魔女の庭』や早期アクセスを開始している『Cinderia』は、どの国のユーザーが多いですか?
キム:全体的には、東アジアの人たちが一番多いですね。正式版発売後は、アメリカのほうから思った以上に反応があって、ありがたく思っています。
小雨:『Cinderia』は中国が半分で、アジア全体で7割。残りは欧米などですね。
おもしろいと思ったのが、さっきチェックしたんですけど、『魔女の庭』は今、日本の比率が高いんですよ。日本のレビュー数が韓国と同じくらいで。しかも、日本語のレビューが300を超えている。日本の人って、あまりレビューを書かないんです。『Cinderia』は日本のユーザーが2番目に多いのに、日本語のレビューはやっと100を超えたくらいで……。中国だとだいたい50本に1件レビューが付くんですが、日本だと100本を超えてやっと1件、という感覚です。
キム:数字については、僕はプログラマーなので正確な統計はわからないんですが、日本のユーザーが思った以上に多い、とは聞いていました。実は……チームのみんなはもちろんレビューを全部チェックしているんですが、僕個人は、悪いレビューを見るとすごく傷ついてしまうので、あまりレビューを見られていないんです。だから本当に知りませんでした。
――作り手としては、どうしても気になるところですよね。『クライムライト』のウィッシュリストは、言える範囲でどんな状況ですか?
礒部:4割くらいがアジアで、次に多いのが北米、そして欧州ですね。言語で言うと、日本語の次に多いのが英語です。もともと「クライ」シリーズには『CRYSTAR -クライスタ-』という始まりの作品があって、それが北米や欧州にユーザーさんが多かったことも、たぶん関係していると思います。「クライ」の名前が付いている新作だ、というところで興味を持ってくださっているんじゃないかなと。
小雨:すみません、具体的な数値も聞いていいですか?
礒部:ウィッシュリストは、今7万(当時)くらいですね。課題は、これから中国の方にどれだけ知っていただけるか。最近のタイトルは、発売後は常に日本が1位なんですが、ユーザー数でいうと圧倒的に中国のほうが多いので。
小雨:開発スタッフは、どのくらいいるんですか?
礒部:何人くらいだろう……。大きい会社というわけではないんですが、会社としてやっているので、「会社が小規模なチームを持っている」という感じですね。やっているのはメインで直接僕がやり取りしているのは、たぶん20人いないくらいかなと。
――『Cinderia』は何人くらいで作っているんですか?
小雨:作り始めたときは5、6人くらいですね。今は10人を超えています。ほかのプロジェクトとかけ持ちしているスタッフもいますが。
キム:『魔女の庭』のプロジェクトだけで言うと、いまは9人ほどで開発しています。もともと大学生のチームとして始まったので、主要メンバーとして動いているのは4、5人くらいで、『魔女の庭』が大きなプロジェクトになっていくなかで、周りのいろいろな方が加わって助けてくださるようになりました。次のプロジェクトがどうなるかは、僕たちにもまだわかりません。
やっぱり、ふるさとの人に遊んでほしい
――今後、「この地域でもっと人気が出てほしい」というところはありますか?
キム:正直……どこでも(笑)。
チームの画風やアートスタイルは、どうしても東アジア圏で好まれやすいところがあると思います。ただ、これはチームではなく僕個人の考えですが、ローグライトというジャンル自体は、先ほどお話しした『The Binding of Isaac』や『Hades』のように西洋圏から始まっていますし、最近だと『Cult of the Lamb』も、アートスタイル的に僕たちと少し似た面がありますよね。なので、西洋圏でももう少しアピールできたらいいなと、個人的には思っています。
小雨:両方の面がありますね。まず、『Cinderia』はもうちょっと欧米の人にウケてほしいんです。僕の考えですが、こういうアニメ的なキャラクターだと、欧米の人は一見して「これはおもしろくなさそうだ」と普通に想定するんですよ。この絵柄が、逆に欠点になる。できればどんどん宣伝して、ゲームをおもしろくして、そういう偏見――偏見というほどでもないですが――を直していきたい、という感覚です。
そのうえで最終的には、やっぱり中国の人に受けてほしいですね。ゲーマーの数も圧倒的に多いですし、それに……やっぱり、ふるさとの人に受けてほしいですよ。
――そのためにやっていこうと思っていることはありますか?
小雨:最近はいろいろなゲームショウやカンファレンスに行ったんですが、飛行機で16時間かかったりもして……。今は、もうちょっと時間をゲーム作りに使おうと考えています。ゲーム自体がおもしろくなれば、売上も何もかも、全部が良くなると思うんですよね。まあ、それでも頑張ってプロモーションしていきますけど。
礒部:日本ではもちろん受けてほしいというのがありつつ、うちは実装言語がそんなに多くないので、まずは物理的に言語を増やしていきたいです。ただ、予算が……(笑)『クライムライト』は専門用語が多くて、AI翻訳だとどうしてもクオリティが担保できません。なので主要な言語で発売しつつ、ゆくゆくは対応言語を追加できればいいなと思っています。
もし3タイトルでコラボするなら―「取り込んで、泣いてもらう」
――せっかく3タイトルが集まったので、空想で構いません。もしコラボレーションができるとしたら、どんなことをやってみたいですか?
キム:プログラマーとして現実的な答えをすると、スキンあたりが無難でしょうね。ただ、僕はアクションや戦闘のテンポを担当して開発してきたので、まず思い浮かぶのは、ボスがお互いのゲームに登場する、というものです。そうなったらおもしろいんじゃないでしょうか。
小雨:『魔女の庭』とは、バンドルをやりたいです。
『クライムライト』はこれからリリースですし、何ができるか具体的なアイデアはまだないのですが、シナリオへの熱量をすごく感じました。どうやったらこんなシナリオが書けるのか教えてほしいです。(笑)
礒部:おっしゃるとおりで、(お二人の作品は)「アクション、アクション!」という感じですよね。うちはやっぱりシナリオも大切にしているので、同じローグライクでも少し異なるかな、という印象はあります。ユーザーさんも「お話を見たい」という方が多いので、そこも重視しているんです。なので、コラボするなら……それぞれのキャラクターに、出てきてもらって罪を懺悔してもらいたいですね。
小雨:取り込んで。
礒部:取り込んで。きっと涙なしでは語れないはずです(笑)
ここで、同席していた『Cinderia』チームのスタッフからも提案が飛び出しました。「ゲームの外でも協力できることがあると思うんです。以前、上海のイベントに大きなブースを出したのですが、同じタイプのゲームと組んで、ブースをもっとうまく活用できないかとずっと考えていました。コストが高くて、単独では負担しきれない面もありますから。3作品はユーザー層が近いと思うので、今後、合同ブースのような形で協力できないでしょうか」。ゲームの中だけでなく、外でも手を組めるのでは、というわけです。
さらにTeam Tapasからは、うれしいサプライズも。この日の座談会のために、チームのアーティストが3作品のキャラクターを“Team Tapas風”に描き下ろしたイラストを用意してくれていました。参加者からは「かわいい」「うれしい」と声が上がりました。コラボレーションは、すでに始まっているのかもしれません。

「みんなと友達になれたら、うれしいです」
――最後に、今後の展開と、読者へのメッセージをお願いします。
キム:まず、『魔女の庭』をプレイしてくださった皆さんに、本当に感謝しています。正式リリースを迎えたところではありますが、これからチャレンジモードなど、いろいろなモードを追加していく計画があります。アップデートの際にはまたよろしくお願いします。そしてこれからも、Team Tapasの新作にご期待ください!
礒部:うちのタイトルはお二人と違ってまだ発売前なので、配信中の体験版などでいただいているフィードバックやコメントを前向きに反映しながら、皆さんと一緒により良いものを作って、発売日に皆さんと一緒に遊べればと思っています。ぜひウィッシュリストに登録していただきたいのと、そこからまた「クライ」シリーズが盛り上がっていけばいいなと思っているので、よろしくお願いします。
小雨:えーと……やっぱり、日本のプレイヤーともっとコミュニケーションを取りたいんですよね。日本の人は、本当にレビューを書いてくれないので。
今日はいろいろ変なことを言いすぎて、ちょっと後悔しています。とにかく、もっとみんなと友達になりたいんです。日本の人と、日本のプレイヤーと。みんなと友達になれたら、うれしいです。
――本日は長時間、ありがとうございました。

「なぜローグライクを作るのか」という問いに「本当のことを言うと、コスト」と言い切る小雨氏、アクションの手応えからジャンルを選んだキム氏、物語のために“やり直し”の構造を必要とした礒部氏。出発点は三者三様でも、プレイヤーの声を拾いながら調整を重ねる姿勢は共通しています。小雨氏とキム氏がそろって「プレイヤーは作り手が思うより少し不器用だ」という前提で数字を決めていたのも印象的でした。
なかでも心に残ったのは、母語ではない日本語で最後まで語りきった小雨氏です。途中で何度も「これは危険な話です」と前置きしながら本音をぶつけ、最後に口にしたのは宣伝文句ではなく、「日本のプレイヤーと友達になりたい」という一言でした。日本のプレイヤーはあまりレビューを書かない――そう繰り返していた彼にとって、Steamのレビュー欄に書かれる日本語の一言は、何よりの“友達申請”になるのかもしれません。遊んでおもしろかったら、ぜひレビューで感想を届けてみてください。
『クライムライト/CRYMELIGHT』はPC(Steam)/ニンテンドースイッチ2/PS5向けに2026年11月5日(木)発売予定で、Steamでは第1章ラストまで遊べる体験版が配信されています。『Cinderia』はPC(Steam)にて早期アクセス配信中、『魔女の庭』はPC(Steam)にて配信中です。







