10月29日の発売を控える、S-GAMEのアクションRPG『Phantom Blade Zero』。中国の「武侠」をベースに、スチームパンクや現代的なカルチャーを掛け合わせたことで生まれた独自の世界観「カンフーパンク」と、流れるような高速剣戟アクションを特徴とする注目作です。
今回、Game*Sparkでは本作の発売に先駆け、メディア向けに実施された約6時間の試遊会に参加。その後、北京にあるS-GAME本社を訪問しました。本稿では、S-GAME創設者/ゲームディレクターのSoulframe氏と、サウンドプロデューサーのBo Caisheng氏に実施したメディア合同インタビューの模様をお届けします。
■探索を促すRPGらしい設計と“人間らしい”高難度AIがプレイヤーの前に立ちはだかる
――最新ビルドをプレイさせていただきましたが、ボスごとにそれぞれ異なる攻略や遊びになっていることに驚きました。30種類近いボスが登場するとのことですが、バリエーションがある中で、作品としての統一感はどのように持たせているのでしょうか。
Soulframe:すごくいい質問ですね。本作には30体以上のボスが登場しています。加えて30種類のメイン武器、そして25種類もの特殊武装「Phantom Edge」が登場しています。
そうしたさまざまな要素を統一しているのが、本作のテーマである「カンフーパンク」です。ボスには大きな者も小さな者もいますし、盾を持つ者や馬に乗る者など、見た目も戦い方もさまざまです。
ただ、“根底には中国の伝統的な武侠”があり、そこへ“私たちなりの新しい要素”を加えました。それが全体を貫くひとつの軸になっています。
そのうえで、それぞれのボスに異なる攻略方法や体格、特徴を持たせることで違いを作っています。今回の試遊ではまだ登場していない、さらに個性的なボスもたくさんいます。
――2年ほど前にも本作を試遊しました。その頃は敵が復活し、フィールドの敵もかなり強く、さらに強力なボスが待っているという、今よりシビアなゲームという印象がありました。今回プレイするとかなり違う方向性になっているように感じたのですが、なぜこのような形に変化したのでしょうか。
Soulframe:これまでは主に本作の戦闘を皆さんにお見せしてきました。
映像や短時間の試遊で分かりやすく魅力を伝えようとすると、どうしても高速で刺激的な戦闘が目立ちます。そのため、「敵を次々に倒していくアクションゲーム」のような印象を持たれた方もいると思います。
ただ、本作は戦闘だけで構成されたゲームではありません。
大きく見ると、世界の探索、各エリアやステージの設計、そして高速で流れるようなカンフーアクションという、それぞれが連動した要素によって成り立っています。
その土台にはRPGとしての物語やマップ探索、サブストーリーがあります。そのうえにさまざまなレベルデザインがあり、さらに、これまで皆さんに多くお見せしてきたスピーディーな戦闘があります。
ですから、単純に以前から方向性を変更したというより、これまでは戦闘という、もっとも映像で魅力を伝えやすい部分を中心に見せてきたということです。

Soulframe:本作はRPGや探索、高速な剣戟アクションなど、異なる要素を有機的に組み合わせています。
これまで映像で見えていた戦闘は、いわば水面に見えている氷山の一角に過ぎません。その下にある部分を、今回の試遊ではより感じていただけたのではないかと思っています。
――その変化に関連してもう少し詳しくお聞かせください。以前は倒した敵が復活していたと思いますが、今回の試遊では一度倒した敵は復活しませんでした。この仕様変更の意図についてはどうでしょうか。
Soulframe:私たちは、プレイヤーがゲームの中で過ごす一分一分に価値を持たせたいと考えています。同じコンテンツを何度も繰り返すことに、多くの時間を使ってほしくありません。
それよりも先へ進んで、物語を楽しみ、この世界そのものを体験してほしいと考えました。
もちろん、ゲームによっては素材や資源を手に入れるために、同じ敵を繰り返し倒す設計もあります。ただ、私たちは今回用意しているコンテンツの量と品質に自信を持っています。そのため、できる限り新しい体験をし続けてもらいたいのです。
――ということは、武器をさらに強化したくなった場合も、同じ場所で敵を何度も倒すのではなく、まだ行っていない場所を探索することになるのでしょうか。
Soulframe:そうですね。私たちはそうした遊び方をプレイヤーに体験してほしいと考えています。
より強くなりたいのであれば、それまで訪れた場所で同じことを繰り返すのではなく、マップをさらに探索してほしい。これはひとつのゲームデザイン上の選択です。
その一方で、マップ上に配置されている資源は有限でもあります。ですから、探索そのものが武器やキャラクターを強くしていくうえで重要になっています。
――コアなアクションゲームのファンだけでなく、アクションをあまり得意としていないプレイヤーも遊ぶと思います。低難易度では、具体的にどのような難易度調整を行っているのでしょうか。
Soulframe:まず、本作のイージーモードは単純に数値だけを下げて簡単にしているわけではありません。
数値面にも多少の調整はありますが、それほど大きなものではなく、主に変えているのはAIの攻撃性や、プレイヤーの行動に対する反応です。例えば、敵が構えを取っていても、すぐに激しく攻め続けてくるわけではありません。また、相手の守りを崩すきっかけも作りやすくしています。

Soulframe:ただし、敵を一撃で簡単に倒せるようにしてしまうと、それはそれで退屈になってしまいます。
私たちが目指しているのは、難易度を下げても戦闘そのものの面白さや派手さを失わないことです。華麗なフィニッシュや、複数の敵を相手にしたときのアクションなど、本作らしい見栄えのする戦闘はきちんと体験できるようにしています。
簡単な操作でも、武侠映画の主人公になったような感覚を味わってもらいたい。誰もが「カンフーマスター」になったように感じられることを目指しています。
つまり、要求されるテクニックは抑えつつも、戦っているときの格好良さや達成感は残す。そのバランスを重視しています。
――では反対に高難度についても伺います。「66日」モードでは、敵がプレイヤーの行動やプレイスタイルに応じて戦い方を変えるとのことですが、どのような仕組みなのでしょうか。
Soulframe:まずひとつ訂正しておきたいのですが、通常の高難度モードと「66日」モードとで、敵AIそのものの難易度がさらに変わるわけではありません。AIとしてはどちらも同じ最高レベルのものを使用しています。
「66日」では、そこに“66回までの死亡回数”という残機の制約が加わるため、より難しい挑戦になるということです。
最高難度のAIを作るにあたって、私たちは「もし相手側を人間が操作していて、PvPのようにこちらと戦っていたら、どのように動くのか」と考えました。
例えばフェイントを使ってプレイヤーの行動を誘ったり、連続攻撃を途中で止めたりすることがあります。プレイヤーにある行動をさせて、それを見てから次の行動を選ぶ、といった駆け引きを取り入れています。
一般的なPvEのアクションゲームでは、難易度を上げると敵の体力や攻撃力などの数値を上昇させる方法がよく使われます。しかし熟練したプレイヤーにとって、それだけでは毎回同じ攻略になりやすいものです。
対戦ゲームや格闘ゲームは、同じキャラクター同士でも対戦するたびに展開が変わりますよね。そうした考え方を少しだけ取り入れ、「まるで人間を相手にしているような感覚」を作ろうと目指しました。

――ボスのアクションの作り方についても教えてください。ボスを作る際は、まず「こういうアクションをさせたい」と考えてからデザインを決めるのでしょうか。それとも先にボスのビジュアルを決めて、それを生かすアクションを考えていくのでしょうか。
Soulframe:本作には非常に多くのアクションがあります。そのすべてを従来の方法で、最初から「このボスにはこの技とこの技がある」と細かく決めてからモーションキャプチャーを行うのは、現実的ではありません。かといって、すべてを武術指導やアクターに任せているわけでもありません。
まず、最初に私たちからある程度ぼんやりとした要求を出します。
例えば今回登場した酒を飲むキャラクターなら、「酒を飲む動作を使った技があるだろう」「剣が飛び回るような動きがあるかもしれない」「遠距離攻撃や投げ技もあるかもしれない」といった、大まかなイメージです。
そしてそれを実際のモーションアクターや武術指導の方々に試してもらうのです。実演してもらったものを見ながら、ゲームに合っているものを選び、そこからさらに発展させていく流れですね。



Soulframe:ですから、「Aを決めて、そのままBを作る」という工程ではありません。
A1からB1へ進み、そこからA2、B2へ……というように、何度もやり取りしながら、曖昧だったものを徐々に具体化していくのです。
これはキャラクターのビジュアルについても同じです。
今回のメディア向け試遊会で登場したとあるボスキャラクターであれば、彼の狂気じみた性格や物語上の設定、そして中国の伝統的な装飾や、実際に戦ったときの動きなどを組み合わせながら外見を固めていきます。
つまり、アクションやデザインだけを別々に完成させるのではなく、それぞれを行き来させながら同時に制作しているわけです。
Soulframe:本作では、ドニー・イェン氏を招いて制作を進めています。
氏はハリウッド俳優でもあり、香港のアクション映画スターでもあるため、この双方の文化からアクションの制作にまつわるノウハウをご教示いただいています。
ハリウッドでは、アクションを撮影する前に細かな工程を決め、絵コンテやプリビズなどを作り、それを撮影現場で再現していくような体系的な制作方法です。一方、香港のアクション映画では、例えば「この2人がここで5分ほど戦い、最後はこちらが勝つ」といった大きな流れを決めたうえで、細かなアクションについては現場で試していくような手法が使われてきました。
実際にさまざまな動きを試しながら、「この動きは格好いい」「このカットがいい」と選び抜き、そこから最終的なアクションを組み立てていくのです。
今ではハリウッドがこの方法を取り入れるケースも増えてきており、私たちもゲーム制作において、その精神を受け継いでいると言えます。最初からすべてを固定するのではなく、実際に動かしながら、段階を踏んで完成形へ近づけていく。それが本作のアクションを作るうえで重要な方法になっています。










