VRChat×ピクシブはなぜ連携を深めるのか―TGS初出展で見えたゲーム業界との接点【TGS2026】 | GameBusiness.jp
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VRChat×ピクシブはなぜ連携を深めるのか―TGS初出展で見えたゲーム業界との接点【TGS2026】

「VRChat」を運営するVRChat Inc.と、「pixiv」「BOOTH」を運営するピクシブは、2026年9月に出資を伴う資本業務提携を発表しました。TGS2026で両社にインタビューし、提携の背景や日本で広がる3Dアバター市場、BOOTHを中心としたクリエイター経済圏、VRChatとゲーム業界・ゲームIPとの今後の連携について聞きました。

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VRChat×ピクシブはなぜ連携を深めるのか―TGS初出展で見えたゲーム業界との接点【TGS2026】
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2026年9月、「VRChat」を運営するVRChat Inc.と、「pixiv」「BOOTH」を運営するピクシブは、出資を伴う資本業務提携を発表しました。両社は3Dアバター文化を支えるクリエイターエコシステムの発展を目指し、今後さらに連携を深めていくとしています。

同時に、東京ゲームショウ2026(以下、TGS2026)にてVRChat Inc.がブースを出展し、ピクシブとの協働も展開されました。3Dアバターを巡って広がる経済圏と、ゲーム業界との距離が縮まりつつあることを感じさせます。

もっとも、両社の関係は今回始まったものではありません。今回の発表以前からBOOTHとVRChatを軸にした取り組みを重ねており、その先に今回の提携があります。しかし、資本業務提携によって両社がこれまで以上に歩調を合わせていくことの意味は小さくありません。3Dアバター経済圏とゲーム業界はどこまで重なっていくのでしょうか。

GameBusiness.jpではさっそく協働の背景と3Dアバター文化のこれから、そしてゲーム業界との接点について聞いてきました。

「創作・流通・体験」をつなぐVRChat×ピクシブ―3Dアバター文化をさらに広げるために

――まず、VRChatが今回TGSへ出展した理由から教えてください。

北庄司氏: VRChatはこれまで多くのクリエイターの方に支えられてきて、すでにたくさんのユーザーさんがいます。そのうえでもっと新しいユーザーさん、特にゲーマーの方々にもVRChatを知ってほしいと思い、出展を決めました。

ゲーミングPCを持っている方であれば、すでにVRChatを遊べる環境があります。一方で、VRChatはVRヘッドセットがなければ利用できないと思っている方もまだかなり多いのですが、実際にはスマートフォンなど、VRヘッドセット以外のデバイスからも利用できます。

今回TGSに出た理由のひとつは、まず「VRChatってヘッドセットがなくても遊べるんだ」と知ってもらうことでした。

――ピクシブとVRChatは、ユーザー側から見ると以前から近い関係にありました。今回さらに深く組むことになった明確な転機はあったのでしょうか。

古賀氏: 「ここが転機だった」と言うのは難しいですね。両社の連携そのものは以前から始まっていて、2022年にはVRChatとBOOTHが提携を発表しています。ここで、BOOTH上でVRChat向けの商品を見つけやすくする取り組みや、VRChat上でのワールド展開、イベントなども一緒にやってきました。

なので、「明日から突然組みます」という関係ではなかったわけです。数年間一緒に取り組んできたバックボーンがあり、その先に今回の発表があります。

北庄司氏: その通りです。3年、4年ほど前から業務上の連携は続いていました。今回の協働は、その関係をもう少しコアなものにしていこうという流れです。

――市場、経済圏として見た時、両社の役割分担は比較的はっきりしていますね。

古賀氏: 3Dアバターの市場を広げるには、いくつか必要なものがあります。僕ら、ピクシブはツールを通じて「創作(作る)」することや、BOOTHのような場所で「流通」させることが得意です。

ただ、自らゲームを作ったり、VR上に強い体験の場を作ったりすることは、僕ら自身が担う領域ではないと考えていました。そこにはすでにVRChatという大きな場所がありますから。

だったら、その領域はVRChatさんにお任せできないか、と。それぞれが得意なところを担当する。“互いにコンフリクトしない形で広げていく”という考え方ですね。

北庄司氏: 一方で、VRChatは「場所」を提供するプラットフォームです。

そこで使われるアバターは、無償で提供されるものもあれば、私たちのマーケットプレイスで販売されるものもあります。そしてもちろん、BOOTHのようなサードパーティーから入手できるものもあります。

どこから来たアバターであっても、それを使ってバーチャルな世界を楽しめる場所を作り続ける。それが僕らの「場所」としての立ち位置です。

――世界中の人々に遊ばれているVRChatの中で、日本市場はどのような位置付けなのでしょうか。

北庄司氏: 日本は、VRChatにとって2番目に大きなマーケットです。加えて特徴を言うと、ほかの国と比べてもユーザーの中に占めるクリエイターの割合が高い。

アバターのファッションや、いわゆる「改変」の文化も非常に発達しています。そういう意味ではかなり特徴的な市場ですし、僕らとしても注力している国のひとつです。

――そうした日本市場には、BOOTHが存在していることも大きかったのでしょうか。

北庄司氏: そうですね。VRChatはグローバルなプラットフォームですが、それぞれの地域にユーザーの動きや経済圏があります。

日本では、ピクシブさんのBOOTHを中心としたアバター市場が非常に活発です。僕らが日本でのビジネスを考えたとき、ピクシブさんとさらに取り組んでいくのは、かなり自然な判断だったと思います。

「アバター」は“もうひとつの自分”―作品を「見る」から「一緒に過ごす」へ

――一方で、まだ3Dアバター文化に触れていない人も多くいます。参加へのハードルをどう下げていきますか。

古賀氏: ピクシブ側でできるのは、「創作(作る)」、そして「流通(売る・買う)」という側面からのアプローチですね。

例えば、アバターをいちから作ったことがない人でも参入しやすくする。すでにアバターを持っている人が、アイテムを買って着飾ることをもっと簡単にする。そういう部分で下げられるハードルは、まだまだあると思っています。もちろん、ハードウェアなど僕らだけでは解決できない問題もあります。

加えて、僕らが想定している潜在的なユーザーは今よりも、もっともっとずっと多く、幅広いと考えています。その観点で見ると、今はまだ「始まってすらいない」「超えるべきハードルだらけ」と言ってもいいくらいだと思いますね。

北庄司氏: 僕は、そもそも「アバター」を3Dモデリングされたものだけとして捉える必要があるのか、とも思っています。

僕らだって、家にいるときの自分と仕事をしているときの自分では違うじゃないですか。ある意味では、それもアバターだと思うんです。だから、「もうひとつの自分が作れたら、それでいい」と思える世界でいいんじゃないのでしょうか。

年齢もあまり関係なくて、試せる機会があってそこで「面白い」と思えば、ぜひ触ってもらいたいですね。

――日常生活でも使い分けている“自分”の延長線上に、VRChatでの自分もあるということですね。

北庄司氏: そうですね。僕らはVRChatを「居場所」と言っています。自分の居場所なのであれば、自分の好きな格好でそこにいればいいじゃないか、という思想です。

――3Dアバターが普及したことで、クリエイター文化そのものにも変化はありましたか。

古賀氏: 大きいのは、作品を「見てもらう」だけでなく、「作品と一緒に過ごす」という楽しみ方が加わったことだと思います。

例えばイラストであれば、完成した作品を見せ合ったり、イラストをグッズ化した商品を売買したりする楽しみ方が主軸だったと考えています。一方で3Dになると作ったキャラクターを実際に動かしたり、着替えたりできる。誰かと会話したり、別の世界へ遊びに行ったりと「作品と一緒に行動する」ことができるのです。

つまり作品であると同時に、自分自身の分身になり、コミュニケーションの入り口にもなる。作品そのものの「使われ方」が変わってきていると感じます。3Dという表現手段は、これからさらに一般化していくと思いますし、そうなってほしいですね。

――VRChat側から見て、ユーザーやクリエイターの文化にはどのような変化がありますか。

北庄司氏: VRChatに限らず、VTuberなどを含めた、いわゆる「V文化」に触れる機会そのものが増えています。特に若い世代では、そういったものへの興味や関心がかなり高まっているでしょう。

VRを題材にした作品が話題になるなど、昔からフィクションの中には存在していた世界が、今では「実際に自分の身近にある」と感じられるようになってきました。そこから「自分もやってみたい」と思う人の層も広がっていると思います。

協働の先に見据える3Dアバター文化のこれから

――今回の協働が「成功した」と言えるのは、どのような状態になったときでしょうか。

古賀氏: あまりフェーズを区切ってはいません。分けてしまうと、少し野暮な気もするんですよね。

市場が広がる中でユーザーに届くものが増えて、新しいユーザーが入ってきて、それが既存のユーザーにとってもうれしいものになっている。そういう「既存ユーザーの満足度を高めながら、新規層に触れてもらう機会を増やす」ことを継続的に目指していくのが大切だと思っています。

今回の発表も、長く一緒に取り組んできた結果としてひとつの形になっただけです。「ここまで来たら成功」と決めるよりも、毎年毎年、ユーザーにとって楽しいことを続けていきたいですね。

北庄司氏: 僕も同じですね。

――では今後も、オンライン、オフラインを問わずさまざまな取り組みが考えられると。

北庄司氏: そうですね。実際に共同でリリースするVRChatワールドも作っていますし、タイミングを見ながらいろいろなことをやっていくと思います。

古賀氏: そもそも両社の目的がかなり近いんです。3Dクリエイターを増やすこと、3Dアバター文化を広げること。その目的に向かうのであれば、オンラインでもオフラインでも、国内でも海外でもいい。そうしたものは全部「手段」だと思っています。

――今後3Dアバター市場がさらに拡大していく中で、技術の進歩や権利処理、決済や価格形成など、両社を取り巻く環境も変わっていくと思います。そうした変化や課題をどのように捉えていますか。

古賀氏: 私たちの企業ミッションは「創作活動を、もっと楽しくする。」です。3Dクリエイターを増やし、3Dアバター文化を育てることも、そのミッションに基づいた目的のひとつです。

これから市場や環境、トレンドはさらに変化していくと思いますが、僕らの目的そのものは変わりません。ユーザーの声を拾いながら課題を整理し、一つ一つ具体的に対応していく。その結果として、3Dアバター文化の発展を支えられればと考えています。

技術もすべて「手段」だと思っています。未来には、もっとSFのようなことが起こるかもしれません。ただ、主軸にあるのは3Dアバターをより多くの人にとって使いやすくすることです。

――クリエイターの自主性を尊重しながら、プラットフォームとして文化を支えていくことについては、どのように考えていますか。

古賀氏: 意識しているのは、プラットフォームはただ場を提供して終わりではなく、そこで活動する方々の作品を長くお預かりする立場でもあるということです。

だからこそ「自由に創作できること」と「安心して活動できること」、この2つをどう両立して守っていくのか。ユーザーの皆さんの声に耳を傾けながら、そのバランスを考え続けることがプラットフォームの責任だと思っています。

――最後に、ゲーム業界とは今後どのような形で関わっていきたいと考えていますか。

古賀氏: ピクシブには「VRoid」というサービスがあります。簡単にキャラクターを作ることができ、それをゲームなどでも利用できる仕組みを提供しています。また、「BOOTH」で法人・企業の方もショップ開設されてる事例も多くなってきました。まずはそれらのサービスをいろいろな方に使っていただきたいですね。

もうひとつ、ゲーム業界には本当に多くのクリエイターの方がいます。3Dを扱うことが今より難しかった時代から技術を磨き、それと向き合ってきた、非常に知識・経験レベルの高い方々がたくさんいる。そうした方々がこの領域に入ってきて、楽しさや魅力に気づいてくれるのは、僕らとしてはすごくうれしいことです。

北庄司氏: すでにゲームユーザーの方がVRChatを利用していることは僕らも理解しており、VRChat公式でもさまざまなIPとのコラボレーションが始まっています。例えば初音ミクさんとの取り組みなどもあります。

そこから、今後さらにゲーム会社さんのIPが公式としてVRChatの中に入ってくることで、ユーザーとの親和性も高まりますし相乗効果も生まれます。ゲーム業界とVRChatは、かなり相性がいいのではないでしょうか?

――例えばBOOTHでゲームIPに関連する公式アバターやアイテムを展開し、VRChatではゲーム会社がワールドや体験を仕掛ける。そうした形も考えられそうですね。

古賀氏: むしろ、ゲーム業界の方からそういうお話をいただけるのはありがたいです。ゲーム業界は、僕らにとっても門外漢の部分は多くあります。だからこそ、ユーザーの方だけでなく、企業の方からもいろいろなお話を聞きながら進めていきたいと思っています。

――今回は、ありがとうございました。

《高村 響》

ゲームライター(難易度カジュアル) 高村 響

最近、ゲームをしながら「なんか近頃ゲームしてないな」と思うようになってきた。文学研究で博士課程まで進んだものの諸事情(ゲームのしすぎなど)でドロップアウト。中島らもとか安部公房を調べていた。近頃は「かしこそうな記事書かせてください!」と知性ない発言をよくしている。しかしアホであることは賢いことの次に良い状態かもしれない……。

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