
現在のゲーム開発では、企画からアート、ローカライズに至るまで、開発の一部を外部の協力会社に委託することはもはや一般的です。
しかし、そうした外部パートナーとのやり取りが増えるほど、情報のキャッチボールに時間がかかり、プロジェクト全体のスピード感が落ちてしまうという悩みを抱えている現場のスタッフは少なくないのではないでしょうか。そんな課題解決に役立つサービスの候補に、Notionがあります。
Notion Labs Japan合同会社と株式会社バンダイナムコエンターテインメントによる講演「会社の壁をこえて、ひとつのチームへ ―バンダイナムコエンターテインメント×Notionのゲーム開発実践記」では、タイトル開発からローンチまでの現場で、社内外の垣根を越えたやり取りをどう設計し、情報を「使われる状態」にしていったかが紹介されました。
登壇したのは、Notion Labs Japan合同会社エンタープライズ営業部の今泉将矢氏、株式会社バンダイナムコエンターテインメントAE事業部プラットフォームプロダクション事業戦略課の坂田みほ子氏、そしてNotion Labs Japan合同会社ソリューションエンジニアの小島清久氏の3名です。本講演では、Notionの概要紹介に続き、バンダイナムコエンターテインメントによる外部パートナーとの連携事例、そしてタイトル開発における社内利用を想定したデモンストレーションという3部構成で進行しました。
コンテキストレイヤーとしてのNotion

まずNotionとは、サンフランシスコに本社を置くNotion Labsが提供するサービスで、2年前にユーザー数1億人を突破しました。スタートから約10年は個人メモや家族の連絡、サークルの情報共有基盤としての利用が中心でした。その間に情報を構造化し、裏側でベクトルデータベースにより意味を関連づける技術を磨いてきたといいます。
これは現在でいう「コンテキストレイヤー」にあたるとし、近年のLLMの発展にあわせて、Claude・Gemini・GPTを自由に切り替えて使える「Notion AI」も実装されました。AIのアウトプット精度は、このコンテキストレイヤーの精度に大きく依存するという考え方に賛同する法人顧客が、この1年で増えているといいます。

サービスの課題としては、リモートワークの広がりによりチャットやメールでの意思決定が埋もれてしまうこと、プロジェクトの情報の置き場所がフォルダ化してしまい見失われやすいこと、そして1社あたり100~200弱ともいわれるSaaSアプリの利用増加によって情報がツールごとに分断されてしまうことなどが挙げられました。
その他にはツール間をつなぐ技術自体は存在していても、単につなぐだけでは良いアウトプットは得られないという課題も指摘されています。
Notionは、フロー情報・ストック情報、プロジェクトやタスク、ワークフローなどをひとつにまとめつつ、他のSaaSアプリともコネクタやMCP、APIで連携することで、ハブとしてコンテキストレイヤーを統合し、社内外の関係者と共有しながら業務の生産性を高められる点が強みだといいます。
Notionの導入実績としては、Forbes・Fortuneなどの上位企業から、日本国内のゲーム関連企業、海外ではNexonなどでの活用事例が紹介されました。

外部の企業とのプロジェクトで直面した「4つのつまずき」とは
続いて、バンダイナムコエンターテインメントによるNotionの活用事例が紹介されました。導入当初は、情報を蓄積したものの読まれず活用されない状態が半年ほど続いたという率直な失敗談から始まり、特に外部の企業とのプロジェクトを進めているときに直面した4つのつまずきが整理されています。
1つ目は「情報が見つからない」ことで、議事録や資料、チャットの会話がさまざまな場所に散らばり、探す時間が発生していたといいます。2つ目は「共有できない」ことで、社内向けと外部向けの情報の境界が曖昧なため安全側に倒れ、本来共有すべき情報まで出しにくくなっていたとのことです。
3つ目は「理解できない」ことで、新しく参加したメンバーがプロジェクトの前提や用語、使用ツールの把握に時間を要していたといいます。4つ目は「実行できない」ことで、会議で決まったことがタスク化されず、誰が何をいつまでにやるのかが曖昧なまま流れてしまうという課題でした。

これらの根本原因は、Notionに情報を蓄積する仕組みはあっても、その情報を実際に使うまでの流れが設計されていなかったことにあると整理されています。この認識をもとに、Notionを「情報の置き場所」ではなく「情報を使う一連の流れ」として設計し直す形で、4つの対策が講じられました。
「見つからない」への対策としては、外部パートナーが最初に見るページを1つに集約し、資料・議事録・タスクなど一連の情報にたどり着けるようにした「入り口」の明確化です。「共有できない」への対策としては、社内向け情報は社内チームスペースに、外部パートナー向け情報は専用のトップページ配下に置くというシンプルなルールにより、権限設定だけに頼らずページ構成自体で共有範囲が一目で分かるようにしています。
「理解できない」への対策としては、略称やプロジェクト固有の用語を整理した用語集の整備です。これは新規メンバーだけでなくAIが同じ前提で理解するためにも重要であり、AI向けに用語を整えようとした結果、人間同士の認識合わせにも効果があったという気づきも語られました。
そして「実行できない」への対策として最も重視されたのが、会議後のアクションにつなげる運用フローです。会議の担当者を決めてAIによる議事録を作成し、会議終了後に担当者が必要なアクションをタスクとして登録するところまでを、Notionの運用として組み込んでいるといいます。
この4つの工夫により、会議前・会議中・会議後・新規参加時それぞれの場面でNotionを見る理由が自然に生まれ、定着につながったとまとめられました。

最後に、タイトル開発における社内利用を想定したデモンストレーションが行われました。
「ゲーム制作スタジオ」と題したウィキポータルでは、複数タイトルのプロジェクトを一覧できる入り口ページから、プロジェクト・ドキュメント・会議・意思決定・タスク・ローカライゼーションといった各データベースへリレーションでつながっており、プロジェクトに紐づく情報を横断的にたどれる構成になっていることが示されました。
会議機能では、発話内容をリアルタイムで文字起こしし、体裁の整った議事録として自動生成する「AIミーティングノート」が実演されました。
さらに、会議のステータスを「完了」に変更した瞬間、裏側で「会議フォローアップコーディネーター」というAIエージェントが起動し、その会議から生まれたタスクや意思決定、ナレッジを自動的に該当する各データベースへ登録する様子も紹介されています。

同様の仕組みはローカライゼーション管理にも応用されており、複数言語の翻訳項目をまとめて「レビュー中」のステータスに変更すると、「ローカライゼーションレビューコーディネーター」というエージェントが並列に起動し、各言語のローカライズ内容を一斉に用意する様子が実演されました。これらの実演を通じ、スタッフが会議や議論に集中している間に、AIエージェントによって会議中に生まれたタスクやナレッジが自動的にNotion上へ蓄積されていく仕組みが示されました。
このように外部の企業と開発を円滑に進めるための仕組み作りとして、Notionの活用方法がヒントとなる講演となりました。






