CEATEC 2025開幕 AWARDはドコモ『痛み共有基盤』・村田製作所『マスク装着マイク』・シャープ『LEO衛星通信端末』が大臣賞―講評と余談 | GameBusiness.jp

CEATEC 2025開幕 AWARDはドコモ『痛み共有基盤』・村田製作所『マスク装着マイク』・シャープ『LEO衛星通信端末』が大臣賞―講評と余談

日本最大のデジタルイノベーション総合展、CEATEC 2025が幕張メッセで始まります。会期は10月14日(火)~17日(金)まで。

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日本最大のデジタルイノベーション総合展、CEATEC 2025が幕張メッセで始まります。会期は10月14日(火)~17日(金)まで。

CEATEC 2025(シーテック)Innovation for All 公式サイト

JEITA(電子情報技術産業協会)が主催、各省庁や産業団体が後援するCEATECは、1958年のテレビ・ラジオパーツショー、1964年からのエレクトロニクスショーを前身にした総合展。

2000年からはCEATEC JAPANとして、家電メーカーや通信キャリア、情報技術やあらゆる部品・ソリューションの企業が新製品や新技術を披露し華を競う展示会として知られてきました。

2019年からはJAPANがとれて『CEATEC』として開催しています。

CEATEC AWARDはその一環として「特にイノベーション性が高く、優れていると評価された出展製品・技術・サービス」に授与される賞。

開催に先立ち、出展者からの応募を関係学会と専門メディアからなる審査委員会が審査し、総務大臣賞・経済産業大臣賞・デジタル大臣賞および各部門賞を決定・発表します。

ここではCEATEC 2025開催にあたり、大臣賞を受賞したドコモ・シャープ・村田製作所の製品・技術について紹介します。



(筆者はCEATEC AWARDの審査員を拝命しておりますが、記事内容およびコメントは執筆者個人のものであり、審査委員会を代表するものではありません。また審査委員としての評点を反映するものでもありません)

経済産業大臣賞:NTTドコモ「“痛み”の共有による相互理解の深化を実現するプラットフォーム」

出展ブース:1H007

言語化が難しい「痛み」の共有・相互理解を可能にするとうたう技術基盤。

痛みは言うまでもなく医学分野でも根幹的なテーマであり、たとえば診察や治療の一環として患者の痛みを理解するため、聞き取りに基づく痛みの分類や強さの推定など、従来から広く研究されてきました。

ドコモは「通信が神経伝達速度を追い越す」6G時代に向けて、脳や身体をネットワークに接続し五感や感情、動作、技能等を共有・拡張する「人間拡張基盤」を従来から提唱してきました。

今回の「痛みの共有」も、すでに発表済みの味覚共有や触覚共有に続く、人間拡張基盤の応用にあたります。

具体的には、脳波から痛みの感覚を計測するセンシングデバイス、変換・相互接続を担う人間拡張基盤、痛覚を再現する「アクチュエーションデバイス」の三要素からなる技術。

現状ではコンセプト実証に近く、痛み計測・共有デバイスやサービスが具体的な商品として実用化される段階ではありませんが、脳波を測りながら熱ストレスを与えて主観的な痛みを計測するといった手法を用います。

痛みの数値化と再現(痛めつけ装置??)だけではないポイントは、「人間共有基盤」により、個々人の痛みへの感受性までを計測・変換できること

ドコモの表現によれば

『「Aさんにとっての“50の痛み”が、Bさんにとってはどの程度に相当するのか」や、「Aさんが平常時と比較して、現在どれほどの痛みを感じているのか」といった情報を受け取り側が体感・理解することができます。』

適用分野としては、

『医療における診断サポートや福祉分野でのリハビリ支援のほか、XR・ゲームなどのエンターテインメント分野でのさらなる没入型体験、さらにはカスタマーハラスメントやSNS上での誹謗中傷など、心理的ダメージが可視化されにくい領域における対策が可能になることが期待されます。』

世界初!痛みを脳波から測定する技術と「人間拡張基盤」を連携し、相手の感じ方に合わせて痛覚を共有する技術を開発 | お知らせ | NTTドコモ

講評と余談

応募タイトルを見た瞬間に「やべえの来たな」。例として「カスタマーハラスメントやSNS上での誹謗中傷など」まで含むのを確認した際は「マジやべえな」。

痛みの共有といえば、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に登場する(そして『ブレードランナー』ではスルーの)、殉教者の苦痛を追体験し、信徒たちが苦しみを分かち合うための装置「共感ボックス」を思わせます。

ヒトを含む脊椎動物が苦痛と快楽のシグナルで最適化サイクルを回し進化してきたこと、あるいは苦痛を獲得することで生き残った結果が我々であることを思えば、痛みはいうまでもなく人類の根源的な要素、課題です。

痛みという重要な信号の理解が進むことは、診察・治療・リハビリ・介護等を含めた医学的なQoL改善はもちろん、社会全体の様々な苦痛と理解に対しても技術が前向きに介在し得る端緒という意味で、ドコモの「痛みの共有プラットフォーム」は非常に意義のある研究と理解しました。

それはそうと、「個々人の痛み感受性の数値化」とその応用は、強力な技術の例に漏れず、迂闊に進めればいくらでも課題や悲喜劇が発生しうるのも確か。たとえば裁判等において、被害者が受けた苦痛を「数値的に証明」して評価するためには何が必要なのか?「痛み」と「苦しみ」はどこまで重なるのか?

「痛みの耐性が高い」とされた人間には、同じ被害に遭っても感受性が高い人間よりも補償を減らすのは「公正」か?主観的に多大な苦痛に対して「この人は特に痛み感受性が高いためそう感じているだけで、「客観的な」指標では大したことがない」と判断することは?等々。

「相互理解の深化」、数値化して理解できてしまうゆえの顛末は、異種族間の意思疎通の壁を取り払った万能翻訳生物バベル魚が、相互理解を実現したため却って陰惨な抗争を多発させた、という小話を連想します(『銀河ヒッチハイク・ガイド』)。

恣意を廃して客観的な判断ができると期待されたAIが、選考や人事評価において不公正な偏見を再生してしまった例のように、たとえば「カスハラ耐性」「パワハラ耐性」が高ければ被雇用者の安全確保費用を削減できると期待して、痛み感受性を採用指標に加えたがる企業もありそうです。

(特に関係ないゲームのスクリーンショット)

そうした意味では、「カスタマーハラスメントやSNS上での誹謗中傷など、心理的ダメージが可視化されにくい領域における対策」の部分は、あくまで将来的な可能性として記されているものの、「痛み」と「苦痛」「苦しみ」はどう区別するのか、心理的ダメージへの感受性の計測方法は?相互変換はできるのか?など、社会実装にあたっての課題を想像させます。

いずれにせよ、苦痛の回避と同じく感覚の拡張や物理障壁の無化が人間の根源的な欲望であるすれば、視聴覚のみならず体験をより克明に記録・伝達・共有する技術が発展してゆくことは明らかで、その感覚に触覚と並んで痛覚も加わるのは自然な流れ。「貴方が受けたパワハラは何点です」まで、今後の進展が楽しみな技術です。

総務大臣賞:シャープ『電子制御式フェーズドアレイアンテナ搭載 小型・軽量LEO衛星向けユーザー端末試作機』

出展ブース:3H223

シャープが受賞したのは、LEO衛星向けの5G NTN通信に対応したユーザーターミナル。「スマートフォンの開発で培った通信技術や小型・軽量化技術を応用」した試作機です。CEATECのフロアでは実機を展示予定。

シャープ株式会社 | 出展者詳細

講評と余談:

コンセプト実証的なドコモとはうって変わって、シャープは通信端末の試作機で受賞。最近はスマートフォンも限定的ながら対応して身近になりつつあるLEO(低軌道)衛星向けの端末です。

各社が参入するLEO通信は今後さらに普及が見込まれており、端末の高性能化・小型化はドローンへの搭載などダイレクトに用途の拡大につながります。

アピール点として「日本企業が作る安心・安全」を強調することについては、審査員一同「日本企業だけど台湾の鴻海の子会社では……?」と若干思うところがないでもなかったものの、ネットワーク機器に製造元の選択肢があること、選択肢として残るだけの魅力がある製品であることは、様々な側面から重要であることは言うまでもありません。

どこでも高速なセルラー通信につながる日本の都市部ではあまりピンときませんが、産業用途はもちろん、海外や地方でオフラインになったことに気づいた瞬間のヒヤッとする感覚を思い出しつつ、今後の製品化に期待です。

デジタル大臣賞:村田製作所『AI時代の信頼できる音声入力を実現するマスク装着型デバイスmask voice clip』

出展ブース:2H325

村田製作所による概要は

『大規模言語モデル(LLM)の進化により、自然言語での操作や記録・入力業務を行う未来が現実味を帯びる中、本デバイスはその前提となる「信頼できる音声入力」を構造面から実現します。マスク表面の微細な振動を圧電フィルムセンサで検出することで、騒音下や複数話者が同時に発話する環境でも、話者本人の音声のみをリアルタイムかつ高精度に抽出。医療・製造・保守点検など、多様な現場でのAI 活用を後押しする技術です。』

要は声をマスクの振動から検出するマイク。一般的なマイクと違い、マスクに声がこもって聞き取りづらい / 誤認識しやすいこともなく、マスクをした本人の声だけを拾うことができ、周囲の騒音や他の話者と取り違えることも少ないのが利点とされています。

圧電フィルムセンサを主とした単純な構造で、専用のマスクに組み込む必要もなく、従来の使い捨てマスク等にクリップオンして使えます。

CEATEC 2025 | 展示会情報 | 村田製作所

講評と余談:

大規模言語モデルLLMベースのAIなど、機械の自然言語理解が向上し音声入力や会話インターフェースの重要性も増すなかで、特に医療・製造・保守点検など、マスクが必須かつ手がふさがりがちな環境で力を発揮する技術。

分かりやすい例として医療や産業向け、たとえば手術中の医者を挙げていますが、もちろん個人がただの通話に使うことも、スマートフォンの音声アシスタントに指示する際にも使える点に期待しました。

音声入力大好き勢としては、AirPods やスマートウォッチ、Metaスマートグラスなどに四六時中あたり構わず話しかけていますが、特に日本で会話インターフェースの普及率が有意に低い理由は、やはり「気恥ずかしいから」が大きな障壁となっているのも事実。

音声インターフェースは恥ずかしいから使わないと聞けば「はああ?いい大人が何が恥ずかしいだよ自意識アニマルですかぁ??スマホ取り出して手を占有して注視してポチポチとか石器時代?大丈夫?」と反射的に煽りがちな私でさえ、往来で好きなアーティスト名を宣言するのは気恥ずかしいため中身が分からないプレイリスト名で発音しています(自意識アニマル)。

また恥ずかしい以前に、通話も返信内容もAIとの会話も、プライバシーや情報保全の観点から人に聞かれては困るという、より深刻な問題もあります。ムラタのmask voice clip はマスクが声を籠もらせる効果から、外に聞こえない程度の小声でも入力でき、「マスクしがち」「周囲に聞かれたくない」が揃った層にはまさにゲームチェンジャーになり得ます。

(ただし、マスクを震わせるためにはある程度の声で発生する必要がある(無声のささやき声では拾うことが難しい)とのことで、一般的なマスクを使う限り、静かな環境で隣の人に何も聞こえないほど静音にはなりません)

声を漏らさず通話や入力には意外と先行例や商品化例があり、キヤノンのPrivacy Talk はプライバシーが確保しづらい環境での音声・ビデオ会議向け、シフトールのMutalkは主にVRChatで人に聞かれたら社会的に終わる会話をするため (※個人差があります)。





どちらも声を漏らさないことに重点を置いており、ただのマスクに装着する(ために遮音性はマスク依存)の mask voice clip とはまた方向性が異なりますが、後者は専用のマスクを必要としない点が大きな魅力です。

審査時のプレゼンでは有線型の試作マイクでしたが、いずれ商品化するにあたっては、特にコンシューマー向け製品に採用されるならば無線化とバッテリーやアンテナをクリアしつつ、薄手のマスクにクリップして快適な形態と重さに収める課題がありそうです。

あくまでマイク技術、むしろセンサ活用案の本出展からはややスコープが離れますが、スマートグラスやAirPodsのような日用品になるには、「音声インターフェースを使うために手を動かして操作する」本末転倒を避けるため、いわゆるウェイクワード待ち受けや常時起動も必要になり、接続先のプラットフォームにも関わる話になります。

良いから早く出せ、金持ってけ案件として、村田製作所や各社からの商品化に激しく期待です。

各部門賞

CEATEC AWARDには総務大臣賞・経済産業大臣賞・デジタル大臣賞に加えて、「イノベーション部門」「ネクストジェネレーション部門」「コ・クリエイション(共創)部門」「モビリティ部門」「グローバル部門」の各賞もあります。

受賞一覧と出展者詳細ページへのリンクはこちら

CEATEC AWARD | CEATEC 2025 公式サイト

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《Ittousai》

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