AIの機械学習の進歩は、いかにゲーム開発や体験にインパクトを与えるか?その現状と未来の展望【CEDEC 2019】 | GameBusiness.jp

AIの機械学習の進歩は、いかにゲーム開発や体験にインパクトを与えるか?その現状と未来の展望【CEDEC 2019】

近年ではAIの機械学習が非常に進捗しており、ビデオゲームにおいても様々な用途で活用された事例があります。それに伴い、AIの機械学習が今後のゲーム開発や体験にどれだけの影響を与えるのかが討論されました。

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AIの機械学習の進歩は、いかにゲーム開発や体験にインパクトを与えるか?その現状と未来の展望【CEDEC 2019】
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近年ではAIの機械学習が非常に進歩しており、ビデオゲームにおいても様々な活用事例があります。それに伴い、機械学習の技術が今後のゲーム開発や体験にどれだけの影響を与えるのか、またどのように活用されることを目指していくべきかといった議論も注目されています。

2019年9月6日、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2019」では、「ゲームと機械学習の最前線 ~現状と未来を正しく捉えるために~」のセッションが行われました。現時点で把握されている機械学習の活用事例や、何ができて、何ができないのか、今後はどんな展望が考えられるかが語られました。

AI活用の現在



セッションでは株式会社ディー・エヌ・エーのAI研究開発エンジニアである奥村エルネスト純氏を司会に、ゲームと機械学習の最前線についての討論が行われました。

「まず現在の状況として、AIの産業への応用は続いている」と指摘。「この一年では比べ物にならないくらいの変化がありました。ゲーム業界でも例外ではなく、実際にAIを導入しており、事業価値が変わりました。より実践的な価値が見られています」と続けます。


今回のセッションではAIの機械学習全般である入力とモデル、そして出力を取り上げます。強化学習とは機械学習の一種で、「ある状況からある情報、報酬を貰えるということから、より好ましい行動をとるように学習してもらうもの」だと解説。

また意思決定とは、将棋や囲碁で人間以上に賢くプレイできるAIを指しています。それらは、将棋の電王戦のようにゲームで人間とAIを対戦させたり、プレイヤーの補助の役割をさせたり、あるいは格闘ゲームなどの練習モードなどに応用されるそうです。

大変な労力のかかるQAで応用する例も紹介されました。ゲームが正しく動作するかの自動テストを行ったり、ゲームバランスの評価などに利用したりします。

AIによるQAがどれくらいの結果を出しているかというと、たとえばスマートフォンのパズルゲームなどでゲームバランスを取るとき、新しいステージを追加したときのテストで、人間だと1週間かかるところを数分でできるようになったそうです


一方で、株式会社スクウェア・エニックスでリードAIリサーチャーを務める三宅陽一郎氏は、AIのゲームテスト利用について「今の複雑なコンテキストを持つゲームでは難しい」と慎重な発言をします。株式会社バンダイナムコスタジオの長谷洋平氏も同意する形で「(先に挙げた用途で)機械学習をやろうとすると、上手く行かないことが多い」と補足しました。


というのも、テストにおいてデザイナー側がコントロールしていい部分と、AIが担当できる部分は違うため、AIの機械学習にまかせた部分を他のゲームに応用できるかというと、「タイトルによって求めているものが違うので、共通できるかは疑問」だとのことでした。

長谷氏は「複雑なゲームになると、ルールでは網羅できないものがあって、一部機械学習を入れる必要があります。ゲームごとに、どんな機械学習をいれるか検討するべきでしょう」とまとめました。

また、格闘ゲームにおけるCPU戦への機械学習の利用も取り上げました。eSportsが盛り上がっている中、CPUがより人らしく戦えるようになれば、大会などに向けた対人戦のスキルアップ練習へ活用できるのではと語られました。

三宅氏は、ゲームAI には多様性、拡張性、カスタマイズ性という3つの条件があると言います。また今のAIの課題は、AIが対象の意味を抽出しきれないというフレームの問題によって、限定的な問題にしか対応できないことだと指摘します。そのため、デザイナーがAIに不満を持った場合は、ルールベースで対応することを推奨していました。

奥村氏からの「AIのエージェントはどのくらいコントロールすべきか?」と質問に対し、三宅氏は「すべてのAI技術がそうだが、AI自体をデバッグできない問題がある」と指摘。
パスが無限にあるため検索もできず、機械学習も全部デバッグできないそうです。

長谷氏はAIが機械学習を完璧にできないとき、どうしてもやめてほしい行動をルールベースで抑えることで対応しているそうです。

AIはゲーム開発で必須になる時代


続いて三宅氏は近年のゲーム開発にはAIが必要不可欠になったと語ります。その理由として「ビデオゲームが大規模化し、人間ではデバッグできない規模まで来てしまいました。人間がAIと一緒にデバッグしないと現実的ではない」という状況を指摘しました。


ゲーム開発において、AIはQAで活用されていくと言います。事例として『バトルフィールドV』の機械学習を示しました。また『バトルフィールド1』でも大規模なマルチプレイヤーでの戦闘についてラーニングが行われたといいます。奥村氏は「事例が毎月のように出ている」と説明しました。

三宅氏は「現世代のゲームが、ギリギリ人間がデバッグできる量。次の世代からAI抜きでは無理です」と強調します。更に「ゲーム自体が持つ面白さのデバッグはできない」とも付け加え、「戦闘時間が長いとか、アイテムを全然使っていないなどの問題を検証すること」などにおいては、AIが活躍できると言います。

長谷氏は面白さを調整するAIとして「メタAI」を挙げます。『Left 4 Dead』シリーズなどに実装されている機能であり、ゲームプレイの緊張度のパラメーターから推論して抽出し、敵を生成したりします。

とはいえ長谷氏は「そもそもの緊張度というものが、(ゲームプレイを判定するのに)本当に正しいかどうか」と疑問も持っています。「面白さはもっと抽象度が高いもので、データから導き出すのが難しい」とも語りました。

奥村氏もその意見を広げる形で、「面白さをエンハンスするよりも、面白くないところを潰していくのにAIが役立っている」と解説しました。

三宅氏も「最初のQAはクリエイター自身が面白さを見るために行い、2、3回目からはAIにやらせる」そうです。「ビデオゲームはアートなので、面白くなければ変える」とのことでした。

「異常検知」や「コンテンツ生成」への用途



またマルチプレイヤー型ゲームにおけるチート対策にもAIを活用している例を示しました。チーターの存在がゲームを大きく毀損するほか、人間の手でチーター対策をしようにも大規模化と高度化が進んでおり、AIを導入することによる自動化が必要になったといいます。


事例として、『サドンアタック』にて壁を透視するチートや、『カウンターストライク』でエイムを自動化するチートなどでAIが活躍したケースを挙げます。チーターの排除率は、人間の手では15%程度であるのに対し、AIを利用すると80%にまで向上するなど、チート発見に高い効果を上げているそうです。

また現在はeSportsの問題もあり、競技の透明性を上げるためにも各社がコストをかけていると言います。


AIが、ゲーム内などにどのようにコンテンツを生成できるかについても言及。画像の自動生成写真の学習からフェイク画像を作りだすような、画像の自動生成を例に、「これをどうゲームに組み込むか?」が討論されました。


3Dアニメーションや背景の生成など、各技術の研究が進むとともに、コンテンツの自動生成に対するゲーム業界のニーズも高まっているといいます。

そのひとつとして「レベルを自動生成する」ことが例にあがり、ユーザーのゲームプレイ習熟度に合わせてマップを生成するなどの、従来はレベルデザイナーがやっていたことをAIにさせられるのでは、との展望も語られました。

一方でコンテンツ生成のQAはどうするのか?という論点についても討論されました。三宅氏は『No Man's Sky』がプロシージャルでまずいものを生成してしまい、開発も少しの間放置してしまったことが原因で、ユーザーの間で問題になったことを取り上げます。「QAって意味では、作った後もう一回解析していくこと」などが必要といいます。

規模が大きくなったビデオゲーム開発において、プロジェクトの精度を高めるために、今後AIが必須になっていくことがわかるセッションとなりました。
《葛西 祝》

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