E3 2019で話題となった『PSO2』開発の裏側ー北米展開を目指すMicrosoft Azure × セガゲームス『PSO2』の挑戦 | GameBusiness.jp

E3 2019で話題となった『PSO2』開発の裏側ー北米展開を目指すMicrosoft Azure × セガゲームス『PSO2』の挑戦

セガゲームス・瀬川隆哉氏と日本マイクロソフト・米倉規通氏に、『PSO2』北米展開に向けた協業のきっかけや開発コンセプトをお伺いしました。

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E3 2019で話題となった『PSO2』開発の裏側ー北米展開を目指すMicrosoft Azure × セガゲームス『PSO2』の挑戦
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今年7月にPC版の正式サービス開始から7周年を迎えた国内最大級のオンラインRPG『ファンタシースターオンライン2(以下PSO2)』。2019年6月9日に開催された「Xbox E3 Briefing 2019」で発表された通り、現在セガゲームスは同作のXbox One版を北米において2020年春にリリースすることを目指し、開発を進めています。

また、Microsoft Azureを軸としたゲームビジネス事業に積極的に取り組む日本マイクロソフト株式会社も、最上位のストレージ サービスであるAzure Ultra SSD (現名称: Ultra Disks) を早期に提供し高速なクラウド環境構築をサポートしたり、Xboxの開発においても様々な支援を行うことで『PSO2』に対し包括的なサポートを行っています。

今回は株式会社セガゲームス 執行役員クリエイティブオフィサー 瀬川 隆哉氏と日本マイクロソフト株式会社 ゲーム&エンターテイメント営業本部 本部長 米倉 規通氏に、『PSO2』北米展開に向けた協業のきっかけや開発コンセプトをお伺いしました。

株式会社セガゲームス 執行役員クリエイティブオフィサー 瀬川 隆哉氏

――まずは自己紹介をお願いします。

瀬川:セガゲームスの瀬川です。1992年にデザイナーとしてセガ(現・セガゲームス)に入社し、ディレクターやプロデューサー、『サカつく』や『野球つく』などスポーツゲーム関連の開発部長を経て、現在は『PSO2』などのIPオーナーとして事業責任者をしています。

米倉:マイクロソフトの米倉と申します。私は2001年にマイクロソフトに入社後、長年に渡ってXboxに関する事業を行って参りました。現在はXboxだけにとどまらず、ゲーム業界全体に力を入れて行きたいという会社としての意向もあり、去年からゲーム業界におけるAzureを用いたクラウドビジネスを担当しています。瀬川さんとはXbox時代からの長いお付き合いになります。

瀬川:『ジェットセットラジオフューチャー』や『パンツァードラグーン オルタ』などで、マイクロソフト様とは昔からお付き合いがありますね。当時から一緒に頑張っていこう、という感じで。

――早速ですが、今回のAzure採用タイトル『PSO2』について教えて下さい。

瀬川:『PSO2』は今年の7月で7周年を迎えた国内最大級のオンラインゲームです。もともとPCでスタートしたゲームですが、今はPlayStation Vita、PlayStation 4、さらにクラウドゲームとしてNintendo Switchでもプレイできるほか、スマートフォン向けアプリの『PSO2es』が本編に対するコンパニオンツールという形で連動しており、いつでもどこでも遊べるような工夫がされています。ゲームの内容としてはアクション性の高いMORPGで、SFの世界観を主としながら、EPISODEによっては地球や中世ファンタジーをイメージした世界が登場するなど、様々な世界観を楽しむことが可能なタイトルとなっています。



米倉:この映像がE3で現地で公開され、ファンの皆さんの盛り上がりを見た時は涙が出そうでしたね。ファンの盛り上がりも嬉しかったし、瀬川さんとこのプロジェクトを始めた当初から、E3で発表することも絵に描いていたので、それが実現したことが本当にうれしかったです。

瀬川:あれは感動しましたね、ホロッと来ました(笑)。「ファンタシースター」シリーズは以前から北米ユーザーからの人気も高く、当初から『PSO2』を アメリカへ展開しようという思惑はあったんです。大きな反響があったのは嬉しかったですね。

日本マイクロソフト株式会社 米倉 規通氏

――看板タイトルとも言える本作にAzureを採用したきっかけを教えてください。

瀬川:従来『PSO2』はオンプレミスで運用していましたが、北米版に関しては当初から自社運用ではなくクラウドサーバーに切り替えようと考えていました。一番大きな理由はスケーラビリティの問題です。北米はゲームプレイ人口も多いですし、どの程度人数が集まるかが読みづらい部分がありまして、「遊びたいのに遊べない」という機会ロスを避けるためにクラウドサーバーを採用することを決めました。その時点でAzureも候補の一つでした。

米倉:Azure導入のきっかけという意味では、マイクロソフト側からのアクションが最初でしたね。正直に言って、ゲーム業界ではAWS(Amazon Web Service)やGCP(Google Cloud Platform)が主流であり、Azureはクラウドサーバーとして挑戦者のポジションにいると認識しています。数年前は、Azureそのものがゲーム用途に特化したデザインになっていなかったことは否めませんが、今は十分に戦っていけると自負しています。ただ、業界内のブランドイメージが定着してしまっており、それを変えていくには、大型タイトルで Showcase を作る必要があると考えていました。それにより、業界の皆さまに安心感を与え、ブランドイメージを変えていかなくては、と。Gaming エグゼクティブ バイスプレジデントであるフィル・スペンサー(※)が来日した際に「『PSO2』をXboxで海外に出しましょう!」とアプローチさせていただいたのがきっかけで、私としては、「これだ!」と思い立ち、『PSO2』を用いた大型タイトルでのShowcaseという戦略を一気に加速させていきました。

(※フィル・スペンサー氏:マイクロソフトのGaming エグゼクティブ バイスプレジデント。同社のXbox事業における責任者を務める。)

――実際はAzureだけでなく他のクラウドサーバーも検討されたかと思います。Azure自体の決め手となったメリットはどういった部分でしたでしょうか。


瀬川:もちろん他社のサービスも検討はしましたが、マイクロソフト様からの提案が、サポート面やビジネス面などにおいて、ゲームとして総合的に一番良い提案だったことが理由です。

Azureは日本のゲーム業界では採用頻度が低いのが現状ですが、実は世界的に見ると、採用タイトルはすごく多いんですよ。海外企業の方からの口コミもそうですし、ベンチマークを見て、きちんと実績を積んでいることが分かっていたので、ほぼ一択でしたね。

とはいえ、一番肝心なポイントは「Azureを使って高速な環境が実現できるのか?オンプレミスのサーバー同等以上のパフォーマンスが出るのか?」というところなんですよ。北米は日本よりも広いので、遅延なく、レスポンスいい状態で遊べるかどうかは、かなり検証を重ねました。

米倉:セガゲームス様にしてみれば、あの時点でAzureでなければならなかった理由は無かったと思うんです。ただ、競合と比較した時、私達は長年ゲームプラットフォームとしてゲームサービスをやってきた経験もありますし、ゲームのバックエンドサーバーとしてのAzureだけの話ではなく、Visual Studioなどの開発環境であったり、Xboxであったり、もっと言うと、セガゲームス様の社内業務で使っていただいている弊社の様々な技術やサービスであったりと、会社対会社として、全方位的にサポートができるのは弊社だけであり、それが私たちの強みなんだ、と思っていました。そういう提案は弊社にしかできないものであり、競合他社と比較して、差別化を作れたのではないかなと思っています。そういうところを含めて、総合的にご判断いただけたのではないかと。

瀬川:そういった意味では、カルチャライズなども手伝って頂きましたね。『PSO2』は基本的にPlay to Winのゲームで、お金を払っていただいたからといってすぐに強くなれるゲームではありません。このシステムはPay to Winのオンラインゲームが主流な国では理解されず、むしろ「お金を払ったのになぜ強くなれないのか?」と反発を招くこともあります。私自身は「面白いものは万国共通だろう」と思っていたのですが、意外とそうでもないことがこれまでの経験から分かってきました。そのため、北米のユーザーがどういった遊び方をするかβテスト時点で徹底的に調査したいと思っていました。そこで、アメリカに拠点があり、ノウハウも豊富なマイクロソフト様にもご協力頂くことで、しっかりと現地の方へのユーザーテストを重ねることができました。あとは、ゲーム会社でもマイクロソフト様とだからこそできる様々な協業は、大きなメリットになっていますね。

また、ご提案いただいた際、フィル・スペンサー氏と私たちは「普通は相容れないものが同じ画面に映っていて、全て繋がっていったら面白いよね」という似た感性を持っていると感じました。デバイスの垣根を越えるというコンセプトにすごく共感できたんです。

米倉:そういう意味では、弊社も元々のゲームビジネスはXboxを中心にユーザーを囲い込むというコンソールセントリックな考えを持っていましたが、今はデバイスに固執するのではなく、ユーザーが遊びたい時に好きなデバイスで遊べる環境作りを心掛けています。ユーザーセントリックなコンセプトが合致したのかも知れません。

――ゲーム企業ならではの包括的なメリットがあったということですね。実際のサーバー移行についてですが、Azure導入はスムーズに進んだのでしょうか?

瀬川:そうですね。特にトラブルもなく、2,3日くらいで検証して「問題ありませんでした」と報告を受けました。そこからすぐに見積もりに入りましたよ(笑)。

米倉:セガゲームス様の技術力もあると思いますが、オンプレミスからの移行は特に問題がなかったはずです。うちのトップクラスのエンジニアを用意して、更には本社のAzure開発チームも巻き込んでサポートさせていただきました。あの頃は、まだUltraSSDはプレビュー段階だったのですが、世界で『PSO2』が初めてのゲームでの導入事例だったんです。

瀬川:セガゲームスの開発者はみんな新しもの好きなので、現場からも好意的に受け入れられたと思っています。まだテスト段階ではありますが、スピードも申し分ないですね。

米倉:ディスクあたり最大160KのIOPSをサポートし、1ミリ秒以下の低レイテンシーを実現する「Ultra SSD」、これは競合と比べてもクラス最高水準のスペックですので、『PSO2』でもかなりのパフォーマンスを発揮してくれました。

瀬川:Ultra SSD、本当に高スペックでした!まだサービスインしていないので実際のところは分かりませんが、テスト段階ではめちゃくちゃ速くて、「これはいけるな」と。一般車からスポーツカーに乗り換えたような感覚でしたね。


――サービスイン後の反応も楽しみです。最後に、Azureの導入を検討されている方にメッセージをお願いします。

米倉:冒頭から申し上げている通り、Azureは国内のゲームマーケットにおいてはチャレンジャーという立ち位置です。だからこそ、ひとつひとつの企業様と真摯に向き合い、クラウドサーバーとしての点だけの話ではなく、我々の持つ技術、製品、サービスを組み合わせ、“マイクロソフトだからこその全方位型のサービス” を提供して行きたいと考えています。今後もコンソールだけでなく、PC,モバイルと様々なタイトルでShowcaseを作っていきたいと思っていますので、少しでも興味のある方は、ぜひご連絡を頂ければ幸いです。

瀬川:僕自身も海外のオンラインゲーム開発会社の代表と会って話す機会が多いのですが、最近はAzure採用タイトルが増えている印象を持っています。マイクロソフト様自身が「Azureは良いですよ!」とおっしゃるのはビジネスなので当たり前なのですが、そうではなく導入側の開発会社の評判が本当に良いんですよ。『PSO2』北米版はまだサービスが始まっていないので、自分なりの答えはまだ出せていないのですが、まずはAzureを導入する『PSO2』北米展開の成功に向けて、マイクロソフト様と取り組んでいきたいと思っています。

《神山大輝》

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