【レポート】人と関わってモノを作る。その手段としてアートがある~DeNAのアートディレクター2名が語った仕事の内容とは | GameBusiness.jp

【レポート】人と関わってモノを作る。その手段としてアートがある~DeNAのアートディレクター2名が語った仕事の内容とは

ディー・エヌ・エーが主催する「Game Developer’s Meeting~デザイナー向け勉強会Vol.3」で7月21日、「『インタビュー・ウィズ・アートディレクター』アートディレクションについてみんなで話してみよう」と題したセミナーが行われました。

ゲーム開発 プロデュース
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ディー・エヌ・エーが主催する「Game Developer’s Meeting~デザイナー向け勉強会Vol.3」で7月21日、「『インタビュー・ウィズ・アートディレクター』アートディレクションについてみんなで話してみよう」と題したセミナーが行われました。ゲスト講師として同社の高木正文氏と政尾翼氏が登壇し、勉強会の旗振り役を務める片岡力氏の司会で、アートディレクションに関する様々なディスカッションが行われました。



◆方向性が異なる2つのグループリーダー


セッションは高木氏と政尾氏の自己紹介から開始。第5グループのグループリーダーをつとめる高木氏はスクウェア・エニックス、イルカを経てディー・エヌ・エーに入社。現在はアートグループのマネージャをつとめつつ、自身でもイラストを描いたり、ディレクション業務を担当したりしています。これまで『ドラッグオンドラグーン3』、『ファイナルファンタジー零式』、『エルシャダイ』などの制作に参加。なお、第5グループは外部パートナー企業と協力してクリエイティブを強めているチームとなります。


高木正文氏

政尾氏がグループリーダーをつとめる第6グループは内製中心のチームで、アートチームのマネジメントを行いつつ、新作タイトルの開発に従事中です。グラムス、コナミデジタルエンタテインメント、スクウェア・エニックスを経てディー・エヌ・エーに入社。ファンタジーやミリタリー、SFなど多数のタイトルのアートに関わってきました。ディー・エヌ・エーではアニメ『RS計画 -Rebirth Storage-』のキャラクターデザインも担当しています。


政尾翼氏

事前に参加者から寄せられた内容をもとに、片岡氏から両名に質問を投げかけるスタイルでセッションは進行しました。はじめの質問は「コンシューマ時代とスマホ時代の違い」について。政尾氏は「コンシューマは基本的に横長画面だが、スマホでは縦画面が多いため、構図の取り方が異なる」と回答。スマホはコンシューマと違って画面が小さいので、キャラクターの頭身が低く、デフォルメタッチになりがちだとしました。絵の流行の移り変わりが早く、作り手側が振り回されているところもあるとも補足。もっとも、全体的な絵作りという点においては、コンソールもスマホも大きな違いはないとしました。

これに対して高木氏は「コンシューマではゲーム内容や物語性で売れるが、スマホゲームはガチャが遊びの一部に組み込まれているため、キャラクターも『派手なほうが希少価値が高い』という共通認識がある」とコメント。見た目が地味だけど味わい深いキャラクターが作りにくくなっている部分もあるといいます。もっとも端末性能の向上でゲームもリッチ化が進んでおり、コンソールとスマホでアートの差が縮まってきていると補足しました。

◆チームメンバーにどのように接するか?



コンシューマとスマホで働き方の違いについての質問もありました。高木氏は「スマホゲームになってパートナー企業とアライアンスを組む例が増えた」として、求められる物量が圧倒的に異なってきたといいます。一方で政尾氏はスマホゲームになってチームの平均年齢が一気に下がったとして、現場に勢いが感じられると語りました。

続いての質問は「チームメンバーとの関わり方や業務の棲み分けのコツ」に移りました。高木氏はプロジェクトや人によって異なるとしつつも、「プロデューサーやディレクターの役割はビジョンを掲げること。アートディレクターの役割は絵の専門家として、そのビジョンに対してビジュアル面から肉付けをしていくことにある」と説明。ビジュアル面で説得力のある提案を続けることで、安心して業務を任せてもらえるようになると答えました。

また作業分担のコツについて、高木氏はプロジェクトのはじめに「チームメンバー全体に対して自分の作業領分を明言している」と回答しました。これは特定の作業しかやらないということではなく、自分の作業領分を明確にすることで、それ以外のオーダーが来た時に対応や相談がしやすくなるからとのこと。一方でチームメンバーに対しては、「自分と同じ目線に立って仕事をしてもらいたくて、比較的自由にさせている。『丸投げ』ととられることもあるが、このやり方でモチベーションがすごく上がる人もいる」と答えました。

政尾氏は「僕は自分のセンスにあまり自信がないタイプ」と前置きし、周囲のメンバーをあまり萎縮させないように、雰囲気作りに気をつけていると語りました。「若いスタッフに『コナンっておもしろいの?自分は未来少年の方しか知らないけど』などと話題を振るようにしている」(政尾氏)。また現状維持では成長が止まってしまうので、メンバーには常に課題を決めて仕事をしてもらい、どんどん上を目指してもらうように心がけているとのことです。

もっとも内製中心の第6グループと、協業中心の第5グループでは成長の方向性も異なります。高木氏は「自分で絵を描くのと違い、ディレクションは成長が感じられにくい職種」だと言います。そのためグループ内でもよく「我々の業務は自分で絵を描くのではなく、ディレクションを通してクリエイトする仕事。それによって物量をはじめ、自分一人ではできないことが可能になる」と話していると語りました。また、他社のクリエイターといえども、「同じ釜の飯を食べている仲間」として接するなど、リスペクトを絶やさないようにしていると続けました。

◆企画に対してビジュアルで付加価値をつける



「ゲームコンセプトからアートをどのように生み出すか?」という質問もありました。これに対して政尾氏は「プロデューサーやディレクターなどの発注者にヒアリングして、一番大事にしている部分をつかむ」ところから始めると回答しました。ただしヒアリングを重ねすぎると、その内容に縛られてしまうため、比較的早い段階からイメージ画を描き始めるそうです。その内容を発注者に見せて、キャッチボールを重ねつつ、ブラッシュアップしていくとのことでした。

一方で高木氏は「以前、少しだけ企画をしていたこともある」と明かし、発注者と一緒になって企画を詰めていき、その上で絵を描き始めると語りました。また「敵キャラクターが決まると、うまくいく」と補足しました。「敵キャラクター、すなわちゲームの中でプレイヤーが達成すべき課題が決まると、そこから世界観やゲームシステム、プレイヤーキャラクターなどが連鎖的に見えてくる」(高木氏)。これには政尾氏も「自分もキャラクターから決めていくタイプ」と同意していました。

ここで片岡氏から「やりにくい発注者のタイプは?」という質問が飛びました。高木氏は「企画側が信念をもって詳細な準備をしているにもかかわらず、時代性を外しているなど、ヒットが望めなさそうな時」と明かしました。こうした時は発注どおりに絵を描く一方で、代替案も用意しておき、次第に内容を寄せていくというやり方をとるそうです。政尾氏も「強そうだけど弱そうなキャラクター」などの矛盾する発注や、モンスターのデザインで「映画『エイリアン』級のデザインをあげてほしい」などと発注されると弱ってしまうとコメントしました。

「アートディレクターに求められるスキル」という質問もありました。高木氏は「どんなジャンルや作品でも好きになること」といいます。実際に多数のタイトルに携わった経験から「萌えから熱血、そしてファンタジーまで、なんでも好きになることが求められるし、好きになれないと勉強しても頭に入ってこない。また、いいアートが描けない」と明かしました。政尾氏は「企画に対してビジュアル面で付加価値をつけていくことが自分たちの仕事」として、どうやったら、より魅力的に見せられるかについて考える力が必要と語りました。

◆アートディレクターは起爆剤



「先輩のアートディレクターですごいと思ったこと」という質問に対して、政尾氏は『伝説のオウガバトル』、『タクティクスオウガ』などを手がけた吉田明彦氏と『メタルギアソリッド』シリーズの新川洋司氏をあげました。「いずれも自分の世界をもっていて、そこでコンスタントに仕事ができている」(政尾氏)。また小島秀夫監督の名前もあがりました。「初代『メタルギア』のころはドット絵も描くなど、絵心のあるゲームデザイナー。ゲーム作りの考え方について、大きな影響を受けている」といいます。

高木氏は『ファイナルファンタジー零式』を開発していた当時、直属の上司から受けたダメだしが忘れられないと答えました。若い頃はデッサン力が弱かったという高木氏。そんな高木氏に対して「キャラクターのデッサンが狂っている」ではなく、「キャラクターがおもしろくなっている」と添えて返されたと言います。「不思議に腹が立たず、すんなり聞くことができました」(高木氏)。また『ニーア・オートマタ』などを手がけたヨコオタロウ氏の仕事ぶりに対して「ここまでは自分、ここから先は他人と、仕事の分担がしっかりしていて、全部自分で抱えない」点に驚かされたと語りました。

最後は「ずばり、アートディレクターとは?」という質問。高木氏は「アートディレクターはプロジェクトの起爆剤の一人。そのためには絵がうまいだけではなく、爆発しやすい環境を整える必要がある」とコメント。政尾氏は「プロジェクトを俯瞰で見る視点が必要で、時には憎まれ役になるかもしれないけれど、現場にどっぷり浸かっていると見えてこないものを指摘することも必要」と補足しました。

もっとも日々の業務は「メンバーのケアや資料づくりなどの雑務が大半で、その合間に自分で絵を描いているのが実情」(政尾氏)だともいいます。その上で政尾氏は「それがチームでゲームを作るおもしろさにつながる。それが楽しめるかどうか」と続けました。それを受けて片岡氏は「人と係わってモノを作るのがゲーム作り。その手段としてビジュアルアートがあり、それをどう楽しめるか。それがアートディレクターの仕事」だと整理しセッションを締めくくりました。
《小野憲史》

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