今なぜ?HTML5なのか…!【Re:エンタメ創世記】 | GameBusiness.jp

今なぜ?HTML5なのか…!【Re:エンタメ創世記】

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今なぜ?HTML5なのか…!【Re:エンタメ創世記】
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5月22日に更新したコラム「ゲーム会社が倒産する理由」は、おかげさまでたくさんのかたに読んでいただけたようです。なかにはディンゴ社が倒産したことすら知らなかったという声もあり、ゲームビジネス業界の移り変わりのスピードの速さや、ある種の無常観をそこかしこに感じます。

詳細な内容はコラムを参照いただきたいのですが…(https://www.gamebusiness.jp/article/2017/05/22/13135.html)。

すでに、アプリ・ゲームの開発費が高騰し、著名なIP(intellectual property=インテレクチュアルプロパティ=知的財産)、つまり有名なキャラクターなどの権利もあらかた大手に集約、獲得をされています。

また、仮にそれらが獲得できたとしても権利料がバカ高いため、まず中小規模のパブリッシャーでは獲得ができません。つまり、寡占化が促進されます。さらに、それらが仮に獲得できたとして、自身らが斬新なゲーム性と銘打ってアプリ・ゲーム市場で勝負するリスクは異常に高まったと言えます。今から3-5年ほど前には、アプリ市場で一獲千金を目指せたビジネスモデルが完全に崩壊しているからです。

■想定内の組み合わせ…

個人的に、現状、大きくふたつの意味でアプリ・ゲーム市場は閉塞感が漂っていると思います。ひとつは、前段に挙げたアプリ・ゲームの企画・開発という点です。そしてもうひとつはそれらのアプリ・ゲームを展開するポータルという課題です。つまり、どんなアプリ・ゲームであって、収益から30%の手数料を徴収するAppStoreとGooglePlayというポータルの存在です。

そして、それらに対抗するかのような発表が5月19日に行われた株式会社バンダイナムコエンターテインメント(以下BNG)と株式会社ドリコムの業務提携の発表と、合弁会社BXD(ビーエックスディー)を8月3日に設立すると発表しました。

■賭けるもの(×)欠けるもの=相乗効果 

今回の業務提携に至る伏線は以前からBNGとドリコムの間にありました。つまり想定できる組み合わせだったと言えます。

それはBNGグループが保有するIPを活用したアプリ・ゲームをドリコムが企画開発して運用していたことです。ここ数年、ドリコムは他社の保有するIPをうまく活用し、それを運用することを収益体質を強化してきました。いくつかの事例を挙げれば、2014年の時点から展開している「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストシューターズ」と「ONE PIECE トレジャークルーズ」があります。取り組みの詳細に関しては決算資料などからは、十分な把握ができませんでしたが、2作品とも国内外からの収益が好調に推移しているという内容の表記があります。おそらくBNGが代表する出資委員会から両方のゲーム用IPを借りてゲームの企画・開発・運用を行い、収益を自社と出資委員会に還元していると言っていいでしょう。

BNGにとっては、会社規模は大きいが、ソシャゲなどへの対応はやや弱い部分もあり、また、会社の前提としてオールジャンルでの展開を是としており、ドリコムのようなソシャゲ専門会社との取組は渡りに船だったのかもしれません。そして、ヒットIPが欲しかったドリコムにすればBNGは願ってもないパートナーであり、双方の欠けているものが補いあったものが今回の提携実現の経緯でしょう。

…とは言え、先に述べたように、すでに両社の間の関係性は良好であり、さらにそれを発展させた取り組みが今回のBXD社の発足であると言えると思います。

■もうひとつの欠けているものへの業務提携

こちらもすでに日本での事例があるので参考までに紹介しておきたいと思います。

去る、4月4日、楽天が主導するHTML5をベースで開発されたゲームとそのポータル・楽天ゲームズが導入されたことがそれにあたります。

楽天のゲームポータル構想自体は昨年の秋ごろから海外発信のニュースサイトで話題になっていたものです。しかし、うわさばかりが先行して、実態がまったくわからないものでした。しかし、4月の発表にともないその実態が明らかになりました。そのサイト「R Games(ラクテンゲームズ)」ですが、HTML5でのゲーム・プラットフォームで、スマートフォンやPC向けのゲームがラインナップされたものでした。

残念ながらコンテンツの魅力が十分なものではないため、現時点での「R Games」はやや盛り上がりに欠けます。今後の展開に期待をしています。

さて、その“R Games”と同じ目論見で展開するものが、今回発表があったBXDです。当日の発表された談話のなかにも

「今のネイティブアプリはリッチ化が進み、起動が遅く動きも重く感じることがある。ブラウザゲームなら誰でも手軽に遊ぶことができ、ダウンロード不要なので端末のストレージを圧迫することもない」(手塚晃司氏)

「最近のゲームは難しいものが増えてきたので、もっと裾野が広がるような手軽なゲームを提供したい。ブラウザゲームなら、URLを教えればすぐに友達同士で遊べる。ゲームから離れてしまっている人や、まだゲームをやったことがない人もカジュアルに楽しめるものを作りたい」と意欲を見せる。すでに3D表現や大規模なリアルタイム対戦なども実現できており、ネイティブアプリと比べても遜色のないでき」(ドリコム内藤裕紀社長)

■テクノロジーライフのブレイクスルーを目指すBXD

BXDの注目のラインナップは2018年の春をめどに「ドラゴンボールZ」、「ファミスタ」、「アイドルマスター」を準備しているとことです。私自身もかつてNHNJapanに在籍したときにBNGと「熱闘ファミスタ」をモバイル向けに展開したことがあり、それを考えるとIPのあるパブリッシャーはいつの時代も1歩強みがあり、リードしていることを感じます。

そして、もうひとつの目論みはドリコムによるHTML5コンテンツの開発展開です。こちらはもはや言うまでもなく、AppStoreやGooglePLAYへの独自の対抗軸と言っていいでしょう。WEBブラウザベースで展開することで、あらゆるフォーマットやデバイスに対応できる点にフォーカスしている点は重要です。

(※注意:ただし現状はスマホ対応のみという発表)

アプリ・ゲームのスマホ・シフトの際にゲーム開発ツールである「Unity」が注目されたことは皆さん良くご存じのことでしょう。
今回のHTML5でのアプリ・ゲームの展開は枯れた技術の水平展開とでも言うか、もしくは技術的な原点回帰と言えるのでないでしょうか。もっとわかり易く言えば「遅れてきたルーキー」のようなポジションかもしれません。

さらにはBNGグループ全体を通貫してコンテンツのメディア循環、グッズ販売、ユーザー体験などを行うという展開を想定しているといいます。

しかし、これにはデメリットがあり、あくまでもBNGとドリコム=BXDのみの展開になりかねないということで、他社の参入や参加への障壁になる可能性が高いと思います。

おそらく、それらも含んだうえでの業務提携と新会社設立の展開ですので、2社の循環で終始するという目論見でしょう。ちなみにBXDの命名の由来は“Breakthrough X Digital Life”の略で、「新しい未知なるテクノロジーライフにブレイクスルーする」という思いを込めている。バンダイ時代からバンダイネットワークを立ち上げ、さらには不採算事業化していたバンダイビジュアルを立て直し、晴れてBNGのトップに上り詰めた大下社長ならではの勝算がそこにあるに違いない。


「ザ・インタビューズ 大下聡氏と著者」

そしてドリコムは株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社である株式会社フォワードワークスが配信する予定の「みんゴル」のスマホ版の開発を準備中と言う、このパッションと創造性があふれる2社の展開に注目してみたいと思います。

■最後に笑う?!のは誰だ…

このコラムを書き終えようと思って前段の文章で終わるはずだったが、入稿の最終段階で、Yahoo!ゲームの新しいチャレンジの発表がなされました。

https://games.yahoo-net.jp/

それも、BXDの展開と同じく「HTML5ゲーム」の導入だが、こちらは、そこにと「クラウドゲーム」というサービス・プラットフォームにクラウドサーバーによる動画ストリーミング配信技術を導入するということです。

現段階ではβテストだが、PCやスマートフォン、タブレットのブラウザ上で、スマートフォンのネイティブアプリや家庭用ゲームと同水準の高品質なゲームが楽しめるという。(βテストは12日まで)

今回のβテストでは『ファイナルファンタジーXIII』、『ファイナルファンタジーXIII-2』(スクウェア・エニックス提供)という豪華なコンテンツがHTML5で完全再現となっています。

まだβテストの段階で改善や改良の余地はありますが、HTML5への注目はさらに高まるに違いありません。ただし、誤解の無いように書いておきたいが、Yahoo!ゲームは既に2015年に「かんたんゲーム」と言うHTML5ゲーム(広告モデル)のプラットフォームを立ち上げており、その延長が今回のプラットフォームになっていると思います。その意味でも、遅れてきたルーキー「HTML5」…最後にパブリッシャー、プレイヤー、みんなが笑える環境に昇華することを願ってやみません。本格導入を楽しみにしたいと思います。
了)

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■著者紹介
著者:黒川文雄(くろかわふみお)
プロフィール: 1960年、東京都生まれ。音楽ビジネス、ギャガにて映画・映像ビジネス、セガ、デジキューブ、コナミDE、にてゲームソフトビジネス、デックス、NHN Japanにてオンラインゲームコンテンツ、そしてブシロードにてカードゲームビジネスなどエンタテインメントビジネスとコンテンツの表と裏を知りつくすメディアコンテンツ研究家。コラム執筆家。アドバイザー・顧問。黒川メディアコンテンツ研究所・所長。コンテンツとエンタテインメントを研究する黒川塾を主宰。『ANA747 FOREVER』『ATARI GAME OVER』(映像作品)『アルテイル』『円環のパンデミカ』他コンテンツプロデュース作多数。

(C)2009,2010 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA
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《黒川文雄》

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