【CEDEC 2015】海外のスタジオは日本と何が違う?世界を股にかけて活躍するのに必要なこと | GameBusiness.jp

【CEDEC 2015】海外のスタジオは日本と何が違う?世界を股にかけて活躍するのに必要なこと

8月26日、CEDEC2015初日にて、国内外で活躍してきたCGクリエイター・北田栄二氏によるセッションが行われました。

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8月26日、CEDEC2015初日にて、国内外で活躍してきたCGクリエイター・北田栄二氏によるセッションが行われました。「帰国して感じたこと、、、これからのデジタルアーティストに求められるスキルセットとは?そして将来は?」と題し、CG業界の現状や国内と海外におけるワークフローの違いなどが解説されました。

セッションはまず自己紹介からはじまりました。北田栄二氏は、スクウェア・エニックス ヴィジュアルワークスにてモデラー/テクスチャーアーティストとして勤務後、2010年よりフリーランスとして国内外で活動を開始。2015年よりModelingCafe福岡支社代表に就任しました。ハリウッド映画への参加も多く、『ハンガー・ゲーム』や『GODZILLA 』など主にフォトリアル系の作品を手がけられてきました。

北田氏によると、日本は海外のCGスタジオに比べると、10年ほど遅れがあると言います。クリエイター個々人のスキルはさほど変わらないものの、スタジオ単位で見ると、ワークフローやマネジメントで遅れをとっていると語りました。

北田氏が海外スタジオで仕事をしてまず驚いたことは、3Dペインターが主流だったこと。国内はアニメーション文化の影響もあり2Dペインターのイメージが強いと言います。しかし、今後、解像度が4K、8Kと上がっていくにつれて、Photoshopなど2Dでテクスチャーを描くことは、選択肢として外れていくと予測しました。

また国内と海外のスタジオでは、「テクノロジーの理解度」に大きな差があると言います。とくに国内の制作チームは、テクノロジーの理解度が乏しい傾向があり、ワークフローの混乱の原因になっていると指摘。スタッフ全員が理解する必要はないが、現状のままでは海外のプロダクションに追いつくのは厳しいとコメントしました。

また海外スタジオの特徴として、チームにおける「ジェネラリスト」の存在を挙げました。「モデリング」「テクスチャー」「ライティング」など分業制のワークフローは国内と変わりませんが、近年ではどの工程もまんべんなくこなせる「ジェネラリスト」の存在が重宝されつつあるそうです。一方、ひとつの分野に特化した「スペシャリスト」の比率は減りつつあると話しました。

さらに国内スタジオが海外に見習うべき点として、「洗練されたマネージメント」を挙げました。海外では、クリエイター10人に対し1人のコーディネーターがつき、デイリーでタスク管理を行い制作のコンセンサスをとっているそうです。この役職は国内では「制作進行」と呼ばれていますが、連絡係りや庶務として扱われがちで、立ち位置が決定的に違うと言います。そのうえでプロダクションにおける制作進行の重要性を見直すべきだと説きました。

今後のデジタルアーティストに求められるものは?



セッション後半では、今後のデジタルアーティストに求められるものが語られました。

まずは、クリエイターとして今後目指す方向をしっかりと決める必要があるとアドバイス。「ゲーム」「実写」「アニメ」などメディアごとに必要な技術は違うため、目標を意識してスキルアップを図るべきだと話しました。

また、ひとつの能力に特化した「スペシャリスト」になるのか、広範囲の技術を持った「ジェネラリスト」になるのか、明確に意識すべきだと語りました。スペシャリストの場合、ジャンルやメディアが変わっても制作フローに大きな変化はないためさほど苦労はないそうです。一方、ジェネラリストの場合、メディアごとに制作フローが大きく異なるため、スタジオを移るときには苦労があると説明しました。

北田氏は自身を「完全にスペシャリスト」と分析したうえで、ひとつの技能に特化することで活躍の場を広げることができたと振り返りました。しかし、今後はスペシャリストであっても、得意分野がひとつだけでは厳しいと言います。少なくとも、ワークフローにおいて隣接したスキルぐらいは身につけておくべきだとアドバイス。とくに日本人は言葉のハンデがあるため、海外をフィールドとしたときCG全般の知識がないとアジア諸国に遅れを取る可能性があるとコメントしました。

一方、「ジェネラスト」は幅広い作業をそつなくこなせるため、簡単な作業など“便利屋さん”として扱われてしまう恐れがあると言います。それを避けるために、全体のスキルアップとはべつに、得意分野を見つけるべきだとアドバイスしました。

CG業界の今後については、テクノロジーの進歩は著しく「5年先はもう分からない」と前置きしたうえで、ソフトウェアの価格が安くなり、エントリーレベルが下がってくると予測しました。専門知識に乏しくても、Mayaを入手すれば誰でも手軽にCG制作を楽しめる時代が近づきつつあるそうです。

またソフトウェアの発展の一方で、プロダクションワークフローは複雑化していると現状分析しました。そのため今後はアーティストにもテクニカルな知識と技術が求められると言います。そこまで専門的な知識は求められないが、レンダリングやシェーダーの各工程でどのようなことが行われているのかなど基本的な知識は必要だと話しました。

最後に北田氏は、海外スタジオの優れたところを取り入れつつ、それぞれのスタジオに合ったプロダクション構築をしていって欲しいとエールを送り、セッションを締めくくりました。
《沖本 茂義》

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