ターゲットに「わかる」と言わせる広告を作る・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第8回 | GameBusiness.jp

ターゲットに「わかる」と言わせる広告を作る・・・小霜和也「ゲーム広告はこう作れ」第8回

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ゲーム業界の皆様、こんにちは。

自分、講演とかセミナーといったものを依頼されること多いのですが、今月は特に多く、数えたら5回もやっておりました。

「どっかで聞いた話だな」「それは前も聞いたな」とか思われるのがイヤなので、先方の課題に合わせて全て別テーマ、使い回しなし、ゼロからフルスクラッチでスライドを作りますのでマジ大変。ですが、当然と言いますか、その分終わった後の満足度評価もほぼ史上最高のスコアをいただきます。

その中で特に好評だったのが「クラスターマーケティング」セミナーでした。ゲーム広告の作り方に繋がる部分大なので、今回はちょっとそのあたりの話をしてみます。

「クラスター」とは、同じ趣味とか性向で繋がっている人々の集団のことです。

コアゲーマーもそうですし、鉄女(鉄道愛好家女子)もそうですし、いろんなレベルでいっぱい存在しますね。昨今、広告業界では「マスマーケティングからOne to Oneマーケティングへ」などと言われてますが、その前にクラスターマーケティングがあるんじゃないのと。

ゲームCMではないのですが、つい最近アニメファンをターゲットとしたdアニメストアのCMを企画制作しました(アニオタと呼ぶと怒られそうな気がするので「アニメファン」としますがファンと言うよりはもっと濃い人たち対象というか・・・そのニュアンスわかっていただけますよね?)。

これが、彼らに好評なんです。ネット上の声を少し抜粋させていただきますと、

・dアニメストアのCMがジワるwww
・居酒屋のやつめっちゃwwwwいるいるwwwwちょっと落ち着けよと
・もすごくよくわかる。オフ会で気が大きくなるのもわかる。
・dアニメストアのCMのカラオケを断る女子の格好、恐ろしくリアルだよな。
・「ネコがいるから」わろた

「ジワる」というのは「共感する」という意味だと思うのですが、僕はこのCMをアニオタ・・・じゃないアニメファンにとっての缶コーヒー的CMにしようと考えました。

会社員やってくのも大変だよ、というほんの少しの自嘲、そこへの「わかるわかる」という仲間感。それのアニメファン版。そう、クラスターマーケティングで重要なのはこの「仲間感」なのです。

僕は過去に数百本のゲームCMを企画制作してきましたが、ゲーマーから批判された記憶はあまりないです。基本的にはPlayStationでしたが、Xboxも1年だけやらせてもらったことがあります。「特命課」というシリーズで、これはこれでXboxファンから好評でした。

ゲーマーから好評のCMを僕が作れる理由はシンプルで、僕自身がゲーマーだからでしょう。「ターゲットの気持ちがわかる」んです。今回、僕はアニメにはさほど強くないし仲間とも言えないので、代わりに監督以下のスタッフをアニオタどころかキモオタまで行ってるような人々で揃えました。

たとえば、隠れアニメファン女子がカラオケを断る企画は僕が考えたんですが、最初は「犬がいるから」だったんですね。ところが監督が「小霜さんこれ、猫にしたいんですけど」って言うわけ。「オタクは犬を憎んでます。だいたい猫を飼ってます」と。なぜかはわからないけど、そういうことならそうしようかと。そしたら実際、ネットで「猫わかるわかる」って言われたりするんですよ。

CMの全てが、細かいディテールまで含めて、ターゲットから「そうそう!」となるようにできているんです。そうすると観る人の気持ちの中にするっと入ってくる。最近「ネイティブアド」という言葉がありますけど、こういうことを広義の「ネイティブ」と呼びます。

媒体について言えば、今後はますますクラスターが媒体を規定するようになっていくと思います。

アニメ番組枠というのも、アニメファンのために作られたようなものですよね。LINEは僕のような50過ぎのオッサンも使ってますけど、やはりアクティブユーザーは10代から20代の女子なんですね。だからカジュアルゲームのプロモーションはすごく効果が出るけど、RPGとかミドルコア以上のゲームはいまいちうまくいかないようです。そういう広告は彼女たちにとってはネイティブでなく、ノイジーなんでしょう。

クラスター媒体に広告を出すときに大事なのは、インフィード感覚。「お邪魔させてもらう」感覚ってことです。以前のマス広告感覚、バナー感覚でこれ見ろバーン、だと、「うるせーよ!」ってなっちゃう。dアニメストアのCMで言えば、ターゲットは商品カット、つまりいろんなアニメシーンがわらわら見えてるカットも楽しんじゃってるんですね。

・最後のところでストライク・ザ・ブラッドが出るのが最高にうれしい
・最後の1秒もない瞬間にSHOROBAKOを見つけ出すことができるくらいにはまだ情熱を失っていない
・CM初めて見たのに、即ルルーシュ見つけて自分がヤバい。
・初めて見て、弱ペダをすぐに見つけられた自分を褒めてあげたい

というように、アニメ番組を楽しんだ延長としてCMも楽しめる、というのが僕の言うところの「ネイティブ」ということです。

PS4などのコンソール系ゲーム、来年登場するVR系ゲームは言うに及ばず、ソーシャルゲーム、スマホゲームのユーザーもどんどんクラスター化が進んでいくでしょう。

『Crash of Clans』といったストラテジー系は日本ではどーんと1位になったりはしませんが、ランキング10位あたりでずっと安定しています。ストラテジーゲーマークラスターがしっかりできているということでしょう。じつは常に20位前後で安定しているのがBL系で、そういうクラスターもできていると思われます。そういったクラスターに対してコミュニケーションするときはこれまでのマス感覚ではうまくいかないので注意してください。

まとめると、彼らクラスターに対して広告するときは、仲間感、ネイティブ感、インフィード感覚、そして何より、彼らへのリスペクトを持っていることが重要なのではということです。

ちなみに僕は海外PCゲームの「Paradox」系ストラテジーゲームクラスター、『Skyrim』クラスターなどに属しています。「Steam」を開くといちいちバーンとバナーが出て来ますが、非常にノイジーです。海外のクラスター向け広告は少なくとも僕よりは遅れてるなあと思ったりします。

■著者紹介


小霜和也 (こしも かずや)
コピーライター、クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント。博報堂でコピーライターを務めた後、独立し現在は株式会社小霜オフィス、ノープロブレム合同会社代表。プレイステーション、KIRIN一番搾り、その他日本を代表する数々の広告キャンペーンを手掛けてきた。ゲーム関連での実績多数。近著「ここらで広告コピーの本当の話をします(宣伝会議)」が大ヒット中。
ノープロブレム合同会社 / 小霜オフィス
《小霜和也》

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