ゲームメディア関係者が振り返る2012年のエンターテイメント・・・「黒川塾4〜エンタテインメントの未来を考える会」 | GameBusiness.jp

ゲームメディア関係者が振り返る2012年のエンターテイメント・・・「黒川塾4〜エンタテインメントの未来を考える会」

12月12日(水)、サイバーエージェント・ベースキャンプにて「黒川塾四」が行われました。黒川塾は音楽、映画、ゲームと数々の業界を経験した黒川文雄氏が開催するエンターテイメントの原点を見つめなおすイベント。毎回、豪華な業界関係者をお招きし、これからのエンタ

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12月12日(水)、サイバーエージェント・ベースキャンプにて「黒川塾四」が行われました。黒川塾は音楽、映画、ゲームと数々の業界を経験した黒川文雄氏が開催するエンターテイメントの原点を見つめなおすイベント。毎回、豪華な業界関係者をお招きし、これからのエンタ
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12月12日(水)、サイバーエージェント・ベースキャンプにて「黒川塾四」が行われました。黒川塾は音楽、映画、ゲームと数々の業界を経験した黒川文雄氏が開催するエンターテイメントの原点を見つめなおすイベント。毎回、豪華な業界関係者をお招きし、これからのエンターテイメントのあるべき姿を考える会です。

回数を重ねることで確実に認知度が高まってきた黒川塾ですが、今年最後となる第四回目は、2012年度を振り返り、ゲーム・エンタメ系メディア系編集長たちを一堂に招き、印象に残った今年のコンテンツについて語り合いました。

また開催前からFacebookなどのアンケートによりエントリーを募り、それも参考にしつつ2012年度の「エンタテインメントの未来を考える大賞」を選定するという流れになっています。当日もニコニコ生放送で中継され、オフラインのイベントにとどまらない広がりを見せたイベントになっております。

まずはオーガナイザーの黒川文雄氏から今回のゲスト紹介が行われました。朝日インタラクティブ株式会社の佐藤和也氏は、ゲームキャラクター雑誌や攻略本など紙媒体での編集をつとめた後、2008年よりGameSpot Japanの編集を担当、2010年より編集長を歴任。現在CNET Japan編集記者をつとめています。

当サイトINSIDE・GameBusiness.jpの編集長をつとめる土本学氏は、2000年に個人でゲーム情報サイトを立ち上げ、大学卒業後にサイトをIRIコマース&テクノロジー(現イード)に事業譲渡し編集長として加わりました。土本氏の来歴やゲームメディアについての考え方は先日おこなれたイベントの取材でも触れられています。

参考「いま"ゲーム"はどんなメディアを必要とするか?」 WIREDとGameBusiness.jpの編集長が対談

株式会社エンターブレインの目黒輔氏は、フリーライターを経て「週刊ファミ通」、「ファミ通.com」、の編集記者を経験後、2011年からファミ通Appの編集長をつとめています。ウェブサイト運営のほか、ムック本「ファミ通App iPhone&Android」や「なめこ栽培キット」や「パズル&ドラゴンズ」などのファンブックも手掛け、12月19日には「ファミ通App iPhone&Android NO.005」を発売予定です。

■2012年を振り返って――「パズドラ」、「なめこ」、「アイマス」

ゲスト紹介の後、黒川氏は2012年のエンターテイメント業界をおおまかに振り返ってみました。家庭用ゲーム機の低迷する中、ソーシャルゲームが躍進するも、5月に発生したコンプガチャ問題で一度業界側が冷静にエンターテイメント産業のあり方を考える流れができたといいます。そして、秋口からは家庭用ゲーム機を中心に良いコンテンツを作るという方向が積極的になり、またスマートフォンではガンホーの「パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)」の大ブレイクで、ソーシャル一辺倒であった業界を驚かせました。

一方、土本氏は、今年を振り返って一番大きかったのはNHNの無料音声通話・メッセンジャーアプリのLINEであったと言います。昨今ではゲームプラットフォームとして事業を拡大し、LINE POPが圧倒的な速さで1000万ダウンロードを達成。土本氏は個人的にもLINEスタンプのキャラクター「ブラウン」が大好き。会場にもわざわざグッズを持ちこみ、その思い入れの強さを語りました。またビジネス的観点でも「キャラクター」というものを強調。昨今のスマートフォンビジネスでは、アングリーバードなどの海外キャラクターが世界を席巻する一方、今後、LINEはそれに対するカウンターとなり得るのではないかと語りました。

次に目黒氏は、今年は「パズドラ」と「なめこ栽培キット(以下なめこ)」一色であったと振り返っております。「パズドラ」はリリースされたのは今年の2月でしたが、未だにスマートフォンのランキングでは一位。ここまでの人気、売行きを示すモンスター級のタイトルは今後もそう簡単に生まれないのではないかと述べました。

一方、「なめこ」は今だとシリーズ累計2500万ダウンロードという圧倒的な支持を基盤に、現在ではスマートフォンアプリの域を超えて展開しております。目黒氏が在住の埼玉のアミューズメント施設も今では「なめこ」一色になったといっております。また目黒氏が手がけた「なめこ」のファンブックは30万部という売り上げを記録。出版不況の中でこれだけの数字を上げるのはかなりのものです。

以上を総括し、目黒氏は2012年をスマートフォンアプリから新しいIP(知的財産)が花開いた年と述べました。「なめこ」はソーシャルゲーム全盛の中でも、まったく課金を必要としない無料アプリを貫き、結果としてキャラクターを育てることで人気を獲得したと目黒氏は主張しました。黒川氏もそれに応答し、エンターテイメント産業においては、キャラクターがアミューズメント施設のUFOキャッチャーなどのプライズ(景品)になったら一つのブレイクスルーを達成したと言って良いだろうと述べました。そして「なめこ」を開発したBEEWORKS GAMESはもともと編集プロダクションから出発しているため、そこでのノウハウが現在のマルチメディア展開に生きているのではないかと、主張しました。

佐藤氏は今年を振り返って、良くも悪くもモバイルゲームがクローズアップされた1年だったと述べました。家庭用ゲームだと盛り上がりを維持するのが難しい一方、ソーシャルゲームは常に更新することで熱量を維持できるところがポイントだと、佐藤氏は分析しています。もともと「アイドルマスター」の大ファンであった佐藤氏は、現在の「アイドルマスターシンデレラガールズ」の成功もそこにあるとにらんでいます。

■エンターテイメントの本質とは――LINEスタンプとコミュニケーション
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次に話は2012年の後半を賑わせた無料音声通話・メッセンジャーアプリのLINEに話が移りました。今回、「エンタテインメントの未来を考える大賞」を決定するのにあたり、登壇者一同で議論をしたところ「LINEはエンターテイメントなのか?」ということが話題になったといいます。確かにツールとしては非常に便利なものではありますが、エンターテイメントという枠組みで評価すべきポイントはどこであるのでしょうか?

黒川氏の考えによると、現在のLINEで指示を集めている「LINEスタンプ」には、携帯電話時代からあった絵文字やデコメといった感情を図像で伝えるという楽しみが集約されているといいます。人間にとって「他人とコミュニケーションを取る」ということは最大のエンターテイメントであるとするならば、感情をスタンプの形で円滑に伝えるツールであるLINEは携帯電話文化の先にある進化したエンターテイメントツールなのではないかと提起しました。

それに対してLINEの大ファンである土本氏は、現在のコミュニケーションのプラットフォームとしての普及率の凄さを改めて確認しました。ゲームプラットフォームとしてのLINEはmixiやFacebookなどのリアルグラフを中心としたソーシャルゲームとそれほど変わりません。しかし一方で、LINE POPで遊んでいると昔の同級生から「ハートをくれ」とか話しかけられる瞬間が非常に新鮮だと、土本氏は述べました。

また、土本氏はLINEを業務においてもたまに利用することがあるといいます。営業マンに「怒りのブラウン」を送信することは、下手な文章よりも多くを伝えることができるのではないかといいます。黒川氏もFacebookなどで長文を書くと、必要以上に厳しと取られるケースがあるのに対して、文字情報よりもスタンプのほうがソフトなニュアンスが伝わる点が良いと同意しました。

一方、そのLINEスタンプの発明に目黒氏は非常に感心したといいます。スタンプは特別なメッセージを発しなくても、会話のきっかけとなる点が使いやすく、新しいスタンプを購入して自慢するだけでも楽しいと述べました。

また現在、LINEの浸透に追随する形でDeNAがcommをリリース、さらに韓国で既に人気のあったカカオトークがYahooと提携する形で無料音声通話・メッセンジャーアプリにおいても戦国時代に突入しつつあります。今後のメッセンジャーツールとしては、どのアプリが覇権を握っていくことになるかについて議論がなされました。

登壇者たちはどのアプリが覇権を握るかについては、現在のところ予想はできないと述べましたがが、現状の普及率の高さからLINEが優位にあることについては一致していました。また目黒氏はテキストベースではLINE、音声はcommといった使い分けはなされる可能性を示唆しつつ、ゲームメディアとしてはリアルグラフのSNSでゲームがいかに拡散していくかに関心があると述べています。これまでのMobageやGREEはバーチャルグラフであるのに対し、リアルグラフが中心のLINEやcommがゲームプラットフォームとしてどのようなゲームをリリースしていくかが今後の注目点であるといいます。

それに対し、土本氏はユーザー層の違いに焦点を当てました。現在のMobageやGREEのユーザーは男性中心であるのに対して、LINEはかなりの女性が使用しています。今後、女性のスマートフォンユーザーが伸びていくのは必然であるため、女性向けのゲームが活躍していく可能性を土本氏は示唆しました。

また佐藤氏はCnetで掲載された記事から、初めての携帯電話がスマートフォンである高校生、いわば「スマホネイティヴ」が25%になっていることを指摘しました(参考)。そのため、そのようなスマホネイティヴ層がLINEやcommといったメッセンジャーアプリからゲームを始める可能性があるため、スマートフォンゲームの低年齢化が今後起こっていくだろうと述べました。

■今後のスマートフォンゲームの可能性

今後このようにゲームがスマートフォンプラットフォームで広まっていくことになる流れに対して、黒川氏から目黒氏に対して、「ファミ通」などの家庭用ゲーム機専門誌をフラッグシップとしたメディア展開を行なうエンターブレインはいかに立ちまわるか質問がなされました。

それに対して、目黒氏はスマートフォンゲームとコンシューマゲームは決してユーザー層を食い合わず共存していくことを強調しつつ、現在のスマートフォン市場では有料ゲームがほとんどビジネスとして成功していないことを述べました。その市場で戦っていくためには、宣伝力はもちろん、ゲーム序盤の導入や面白さをいかに伝えるかが勝負であると指摘しています。さらに、コンシューマのゲーム以上に運営の重要性が強く、全体として予算や人員面での体力がないと厳しくなるだろうと予想しております。

一方で土本氏は、ユーザーの嗜好の変化は非常に激しいため、まだまだ小規模な開発による新規タイトルがヒットする可能性も高いと見込んでいます。黒川氏もそれに同意しつつ、『アングリーバード』ほどとは言わないまでも、まだまだ小規模開発者による大ヒットという夢を見たいと述べています。

さらに佐藤氏は、単純な宣伝力よりもやはり面白さをユーザーは期待している点を強調しました。「パズドラ」の大ヒットも業界がソーシャルゲーム一辺倒になっていたところに対するカウンターの側面が大きかったとも思われます。「ソーシャル・アプリ・プロバイダー」と呼ばれる「SAP」の多くは、自らのサービスをゲームというよりもサービスとして捉えていると、佐藤氏は言います。しかしながら、そこからどうやって新たなサービスを開拓するかは未知数であり、特にスマートフォン独自のリッチな表現を生かしたものはまだ登場していないと述べています。

黒川氏はこの話の流れを受けて、自身がインディーゲームの開発活動を行なっていることを紹介しました。実際に黒川氏は国内の同人ゲーム・インディーゲーム開発者たちのイベントである今年の「東京ゲームロケテショウ」に参加するなど、異例の活動を行なっています。エンターテイメント業界のプロとして働きながらも、ビジネスから一端距離を置いて、自由に表現できる場所が今後はもっと広がっていくだろうと黒川氏は展望を述べています。

■いよいよ発表「エンターテイメント大賞」
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イベントは佳境に入り、いよいよ「エンターテイメント大賞」を決定する時間になりました。まず3名のゲストたちに今年の注目コンテンツをそれぞれ3つ上げてもらうことになりました。

まず、自他共認める「任天堂信者」であるという土本氏は、ちょうど今月上旬発売されたWiiUを取り上げました。フリーズやリロードが遅いといったハードウェアとしての問題は多いとはいえ、ゲーム機の思想としては非常に面白い試みであると土本氏は実際のゲーム機を触った印象を述べました。

さらにゲームをもう一度、リビングに取り戻すという発想を高く評価しております。かつてのファミコンはその名前のとおり、家族が集うお茶の間のゲーム機でありました。しかしながら、テレビの普及やハードウェアの進化の結果、ゲームはどんどんプライベートな娯楽になっていったと、土本氏は振り返っています。しかしながら、WiiUはリビングのテレビを利用しながらも、「お母さんの邪魔にならず」ゲームを遊べるというところが非常に面白いと土本氏は分析しています。また、リビングで遊びつつも、ゲームパッドだけでもベッドやソファに持ち込むというスタイルも魅力的だといいます。

このようなWiiUの特徴を分析して、土本氏はゲームをリビングに取り戻すという方向性に可能性を見出しています。この流れに対して、黒川氏は外食産業が低迷し、テイクアウトで家の中で食事を取るという「中食」というスタイルが定着しつつあることとの関連を述べました。土本氏は、何かと人恋しくなる時代、個のデバイスであるモバイルに対して、WiiUが家族や家庭の良さを見直すきっかけになれば良いのではないかと述べています。

土本氏はさらにLINEとそのキャラクターを一押しとして選んでいます。特にそのゆるく、あまり主張がない感じが魅力だと述べています。さらに、スタンプだけではなく、LINEのヘルプ画面などにも登場し、独特のゆるい世界観を演出している点を高く評価しております。

最後に土本氏は、エールを込めつつ、日本のゲーム産業の海外展開を挙げました。スマートフォンによって産業がよりグローバル化した結果、日本の産業の一つとしてエンターテイメントが将来を支えるくらいのものに成長して欲しいと展望を述べています。現在は北米市場を中心に、ソーシャルゲームなどが展開を進めていますが、今後はアジア圏などでも活躍を期待しているといいます。

それに対して、目黒氏は海外のゲーム会社のクオリティへのこだわりの高さを指摘しました。実際にInfinity Bladeの開発者にインタビューした際に、彼らはスマートフォンゲームでもAAAタイトルしか作らないという高い目標を立てているといいます。日本の開発者もそういった高い目標を掲げて頑張って欲しいと目黒氏はエールをおくりました。

次に佐藤氏が2012年の注目コンテンツ3つを挙げる番になりました。事前にお題を与えられ、当然、大賞として入るべきものとして「パズドラ」があるのではないかと佐藤氏は即座に思いついたといいます。「パズドラ」の素晴らしい点は、ソーシャルゲームがKPIなどの数値的目標によって、ゲームのデザインを変化させる流れに対して、強烈なアンチテーゼを立てたところにあります。

次に注目すべき観点としては、ソーシャルゲームの流行の中で、新しいIP展開という点を佐藤氏は指摘しました。コンテンツを生かしたキャラクター展開という事例では、グリーが「グリーエンターテインメントプロダクツ」という子会社を設立し、『ドリランド』などの人気ソーシャルゲームのアニメ化をはかったり、コナミが『戦国コレクション』のアニメ化を行ったりといういくつかの流れがあります。

そのような新たなIP戦略の中でも、佐藤氏が注目するのはアイドルマスターシリーズのソーシャルゲームである『アイドルマスターシンデレラガールズ(以下シンデレラガールズ)』です。もともとアイドルマスターはシリーズ作を含めると一つのIPだけで、8年という長い歴史を培ってきました。そんな中で「シンデレラガールズ」は既存のIPを利用しながらも、新規IPを創りだしたという点で大きく評価できると佐藤氏は述べています。

実際に、「シンデレラガールズ」では人気のあるキャラクターのCDまで発売され、ソーシャルゲームにとどまらない盛り上がりを見せています。現在ではボイスを入れたソーシャルゲームという試みは珍しいものではなくなりつつありますが、キャラクターにボイスが付くということの影響は大きく、IPとしての魅力が高くなったと佐藤氏は分析しております。

さらに、CDの盛り上がりは単なる実験的な試みとしてではなく、オリコンのトップ5を独占するほどの支持を集めたことも大きいといいます。同一のアニメやゲームのキャラクターソングがオリコンのトップを独占するというのは、オリコン史上初であり、実際にアイドルマスターシリーズの楽曲のクオリティも高く、CEDEC AWARD 2012ではサウンド部門の最優秀賞に選ばれるほどです。

以上をまとめて、佐藤氏はソーシャルゲームが単なるゲームの領域を超えたエンターテイメントとして進化したものとして「シンデレラガールズ」を高く評価しています。そして、これからのゲームはゲームの外にも広がりを持たせた方がエンターテイメントとしての未来があるのではないかと展望を述べました。

佐藤氏が最後に取りあげた「探偵オペラミルキィホームズ(以下ミルキーホームズ)」も、このようなゲームの超えたエンターテイメントの将来を見せてくれたものだといいます。個人的に佐藤氏は「ミルキーホームズ」のキャラクターたちによる武道館ライブが今年、最も感動したイベントであると述べています。「ミルキーホームズ」はもともと黒川氏がブシロードに在籍していたときに立ち上がったメディアミックスコンテンツであり、当初はゲームとしてリリースされ、その後のアニメ化により認知度が高まり、ついに武道館でライブを行えるほどの人気を獲得したといいます。

佐藤氏はもともとGameSpot Japanにおいても、こういったイベントを積極的に取材しており、当初から「ミルキーホームズ」にも注目していたそうです。最初の有明でのライブはガラガラであったのに対し、武道館のライブはお客様で埋まっており、その成長の過程を味わえたことが大きかったといいます。そして、ファンがキャラクターを成長させていくというのがエンターテイメントの一つの形ではないかと提起しました。

黒川氏も武道館ライブにはゲストとして招待され、その熱気には圧倒されたと告白しました。当時、プロジェクトの立ち上げには関わりつつも、途中でブシロードを退社することになったそうですが、あの時、漠然としていたキャラクターたちが生き生きとしているのに感動したといいます。またファンたちもみんな「ミルキーホームズ」のTシャツを着るまでに成長しており、「ある種のダイナミズムを見た」と述べています。

最後にファミ通Appの編集長である目黒氏から今年注目のコンテンツ3つが挙げられました。まずは大方の予想どおり「パズドラ」を一番に挙げました。目黒氏にとって、カードバトル系ソーシャルゲーム全盛期の中に登場した「パズドラ」のインパクトは非常に大きかったそうです。カードバトル系とは対照的に非常にゲームらしいものでありながらも、ビジネスとして成功させることが可能だと気づかせてくれたことの大きさは偉大だと、振り返りました。

これに対し、黒川氏は昨今、そのようなゲームらしいスマートフォンゲームが増えてきたことを指摘しました。「パズドラフォロワー」とでも呼べるその現象は、どちらかと言うとこれまでSAP中心で回っていたモバイルゲーム市場において、コンシューマゲーム会社が本格的に参入してきたことを示しているのではないかと指摘しています。

目黒氏は、「パズドラ」の生みの親である山本大介氏が、今後はRPGにおける成長要素をいかにスマートフォンの中に落としこむかが重要な鍵になってくると述べていたことを報告しています。つまり、カード形式であれ、パズル形式であれ、RPGでプレイヤーキャラクターが成長するというシステムを実装することで、ゲームの継続率を上げることが大切だといいます。そこで、無課金でも遊べるというゲームバランスは継続率を高めるための重要なポイントであり、そのバランスが適正であれば、口コミにおいてゲームは自然と拡散するそうです。

実際に目黒氏が手がけた「パズドラ」のファンブックは無課金でプレイした日記をメインとして書かれているそうです。通常ならば、そのような体裁はメーカー側から嫌がられるかもしれませんが、「パズドラ」を作ったガンホーはそれを許してくれる懐の大きさが魅力だと、目黒氏は述べています。また、ファミ通Appでの攻略記事に本家「パズドラ」のアプリからリンクを付けるという新しい試みをフットワーク軽く実行してくれるところもガンホーの独自性だといいます。

目黒氏は他にもLINEや「なめこ」を注目コンテンツとして挙げていましたが、話はここで「パズドラ」を開発したガンホー・オンライン・エンターテイメントに移りました。事実、今年のガンホーは「パズドラ」の大ヒットだけにとどまらず、「ケリ姫クエスト」や「クレイジータワー」などスマートフォン市場で数々のヒットゲームをリリースしてきました。それらはどれもオリジナリティが高く、ゲームとしての面白さを追求しており、それらのこだわりにおいて、「ガンホー」という会社自体を目黒氏は高く評価しています。

黒川氏も、前回の黒川塾で招いたガンホーの取締役社長の森下一喜や「パズドラ」のプロデューサーの山本大介氏のゲーム開発への真摯な姿勢を高く評価しました。ガンホーでは、良いものを作るためには数ヶ月かけたプロジェクトでも破棄することは珍しくないといいます。そのような妥協のないゲーム開発姿勢を高く買い、「ガンホー自体にエンターテイメント大賞を与えるのはどうだろうか?」と会場に問いかけました。

さてゲスト3名からの提案を受け、いよいよ「エンターテイメント大賞」の発表に至りました。その前に、事前のFacebookでのアンケートの順位を黒川氏は読み上げました。一番人気はLINE、二番手は日本未来科学館の展示「アナグラのうた」、三番手は「パズドラ」とFacebookのアンケートは並んでいます。そして、以上の議論のすえ、2012年度の「エンターテイメント大賞」は「パズドラ」ではなく、あえてそれを開発した「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」に与えることが会場で決定しました。

黒川氏は会場からの意見も取り入れつつも、ゲーム開発やエンターテイメント産業に対する取り組む姿勢を評価して、ガンホー・オンライン・エンターテイメントにエンターテイメント大賞を送ると告知し、今回の黒川塾四を終えました。最後に、黒川氏は今年いっぱいでNHNを退社することを報告し、今後ともエンターテイメント産業を盛り上げるために活躍していきたいと豊富を述べました。

トークショーの後は、毎度恒例の交流会が開かれ、参加者はピザなどを食べつつ、交流を深めました。非営利目的ながらも毎回豪華なゲストを招く黒川塾は、黒川文雄氏のエンターテイメント産業への情熱によって成り立っている素晴らしいイベントです。記者として黒川塾に毎度参加させていただいた私にとっては、「エンターテイメント大賞」に輝いたガンホーと同じくらい黒川氏の情熱と姿勢には心打たれた素晴らしいイベントでした。
《今井晋》

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