【CEDEC2012】ゲームを作るのに、ゲームなんてやらなくてもいい ― 「もしドラ」作者岩崎夏海氏講演レポート | GameBusiness.jp

【CEDEC2012】ゲームを作るのに、ゲームなんてやらなくてもいい ― 「もしドラ」作者岩崎夏海氏講演レポート

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CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
  • CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
  • CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
  • CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
  • CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
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  • CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。
CEDEC2012の3日目、ベストセラーとなった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(もしドラ)の作者、岩崎夏海氏による講演が行われました。

一見、ゲーム業界とは関係ないと思われる岩崎氏ですが、「ネット上では叩かれるが、僕ほどゲームが好きな人間はいないと思う」というほどのゲーム好き。ディスクシステムで発売されたマリオゴルフで、小学生を唖然とさせた話や、実は「もしドラ」のヒントが『ファイナルファンタジーXI』をゲーム時間で200日近くプレイしたことで生まれたことなどが披露されました。放送作家、小説家として、長くエンタメ業界に携わる氏の「ヒットコンテンツ制作の極意」とはどのようなものなのでしょうか。

■自分が信じた作品を作れ
まずはじめに、「もしドラ」が生まれるまでの経緯を詳しく解説されました。自称「作者オタ」の岩崎氏は、いかにして名作と呼ばれるすばらしい作品が生まれたかを調べるのが好きだそうです。自身の興味によって、多くの作者を調べていくと共通点が有ることに気づきました。ありきたりですが、多くの作者は、はじめの段階では笑われたり、馬鹿にされたりするが、自分の信念を貫いて名作を生み出しているということです。ここで例示されたのが『Wii Fit』を開発した任天堂の宮本茂氏です。まさか体重計をゲームにし、それが世界中で大ヒットするなどと考えた人がどれたけいたでしょうか。岩崎氏はヒット作を生み出すには「心構えが大事」だと気づいたということでした。そして氏は「200万部を売る本を作る」ということを目標に設定し、本のネタを探し始めました。

■売れる公式を導き出す
「200万部を売る本を作る」という目標は決めましたが、実際にどのような設定で書いていくかはまだ決まっていませんでした。構想当時ベストセラーになっていたのは「夢を叶えるゾウ」「ホームレス中学生」でした。「脳トレ」ブームなど、社会が知識欲に飢えていた時代でもあり、まさに夢を叶えるゾウはそういった層に訴求する力が強かったと分析しています。また、作家としては無名の方がヒットを生みやすいというのも同時に気づいたということでした。「無名の作家×知識欲を満たす」という公式にエンタメが融合すれば、例の2作が200万部近く売り上げていたことから、目標を達成するのは難しくないと考えたそうです。

■日本の男はロリコン!? ― 17才の少女が主人公の理由
氏が「コンテンツで最も重要」なキャラの属性は、始めから「17才の少女」に決まっていたと言います。「18才ではおばさんだし、それ以下では、社会的にロリコン扱いされてしまう。17才という年齢が最適だ」としながらも「日本人の男は9割9分が13才が好き」と断言していました。とにかくどんなコンテンツを売り出すにしても、最も重要なのはキャラの属性であり、最強の属性は17才の少女以外にはないということでした。

■FFを通してドラッガーの『マネジメント』に出会う。
作品がヒットした後、よく「なぜ「マネジメント」なんて難しいタイトルを選んだんですか?」という質問をうけたそうです。ところが、ここまでの話でも分かるとおり、そもそもマネジメントを題材にした作品にしようとしたわけでなく、200万部を超える作品を作るための枠組み作りからスタートし最後に知識欲を満たす作品にするべく題材を決めたということです。ちなみに、マネジメントに出会ったきっかけは『FFXI』でした。構想時、「準廃人」のようにプレイしていたという氏はリンクシェルコミュニティ(ゲーム内グループ)のリーダーを務めていたそうです。ただ、なかなか組織を上手くまとめられず悩んでいたところ、他プレーヤーのブログで「俺はドラッガーのマネジメントを読んでLSをまとめている」という記事を読み、初めて同書を手に取ったそうです。実際に読んでみて、これでいこうと決めたということでした。

■物語のプロットは「がんばれベアーズ」
最後に本のプロットですが、こちらは「がんばれベアーズ」をもとにしているとのこと。これは劇作家・映画監督の三谷幸喜氏が「常に同作を原型として物語を組み立ている」からという話を知人から聞いたからだそうです。この時点で、「もしドラ」のストーリーは、ほぼ構成済で、主人公が高校野球のマネージャーという設定になったのは、「マネジメントの中で、繰り返しマネージャーという言葉があって、マネージャーといえば高校野球のマネージャーだと思い浮かんだから」だということです。

ここまでの「もしドラ」が誕生するまでの話から、岩崎氏は「自分で作り上げた公式に当てはめて」作品を制作していくといいとまとめました。

■100万本売るにはユーザーを「猿」にさせろ
次に、岩崎氏は「100万本売りたいと思ってゲームを作っているのか?」と会場に問いかけました。もちろん、それだけで、ヒットする作品は作れないから、客を「猿」にさせる作品を作るべきとしました。ここで言う猿とは、氏の経験によれば、パチンコで見境もなくお金をつぎ込んだり、1日の殆どをゲームに費やして「学校に行かなきゃ行けないのに、と思いながらも続けてしまう」ような状況をさします。先日規制された「コンプガチャ」もこの一例だと指摘しました。「ゲームでいえば、宮本氏の言うようにやってる奴が楽しんでいる」状態、猿の状態にさせれば、バイラルでいくらでも広がっていくと述べました。この好例がAKBであり、「友人がおすすめする女の子がかわいいでもなく、歌唱力があるわけでもないのに、サルの状態で話している」ことで無意識に興味をもってしまうのだといいます。

■笑わせたら負け、面白いと思わせたら負け
続いて、岩崎氏はディズニーランドの例を示しました。「ディズニーランドに行って、遊びに来ている客の顔を眺めるのが好き」だという氏は、そこでもある共通点を発見します。まず若い女性だけのグループは、一様にみんなが笑顔で、口々に「楽しい」「また来たい」と騒いでいるといいます。一方で幼児は、「ミッキーマウスと一緒に写真をとってもニコリとも笑わない。ただミッキーマウスをひたすら凝視している」そうで、帰りしなに「また行きたい」と言うことはあるかもしれないが、園内ではそんなことは一切言わないそうです。

これはつまりどういうことなのか、岩崎氏の分析では「若い女性は本当は楽しくない。せっかくなら彼氏と来たかったとか考えている。しょうがないので無理矢理盛り上げている」と指摘、対して幼児は「人間が本当に面白い、熱中している状態になれば、笑顔を見せない」というまさに猿の状態になっているとしています。猿になれば、笑ったり、面白いとも思わなくなる、その状態にさせるという目標設定をするべきだとしました。

■合法な範囲でサブリミナル(潜在意識)に訴えかける
では実際に、270万部を売る際の戦略はどのようなものだったのでしょう。まずは表紙です。こちらは当時から人気のあった「ライトノベルを意識」したということです。当初は背景は白地で、キャラだけが描かれていたそうですが、何か物足りないと感じた岩崎氏は背景もいれることにしました。そこで、あの「夏+川」爽やかな背景が生まれたのですが、なぜでしょう。

当時、恋愛の研究もしていたという岩崎氏。「かっこよくない男のにモテる男は声が良い」という一つの結論があったそうです。というのも、表層意識ではルックスが今ひとつであれば女性は何とも思わないのですが、声が良いと、深層心理では本能的に気になってしまうそう。そうすることで、自分の意識と深層心理の間にジレンマが生まれ、葛藤することでその気持ちが燃え上がるということです。

そこから、岩崎氏は「認知されない効果で売上は変わる」という一つのヒントを得ました。すなわち「合法な範囲でサブリミナルに訴えかけるようにすれば良い」としました。なお、「もしドラ」の背景は、日本人が好みそう風景を選んだ結果、決まったということです。ヒット後、雨後の筍にように同様の本が発売されましたが、岩崎氏曰く「どれも背景がダサい」そうで、「もしドラは背景がよかったのも売れた要因の一つ」だとしていました。

■真の顧客を問え
宣伝費が少なかったという「もしドラ」ですが、岩崎氏が目をつけたのはバイラル(口コミ)でした。「マネジメント」には「真の顧客を問え」という一説が登場します。「もしドラ」は高校生向けに書いたということですが、果たして真の顧客は高校生なのでしょうか。実際に購買する層は、収入のない高校生ではなくその親の層だということで、そちらに狙いを絞りました。自身の経験からも、「プレゼントを贈る側は喜ぶ顔が見たい」という気持ちが沸くのは当然で、もし喜んでもらえればバイラル効果は確実に見込めます。特に高校生の親であれば、横のつながりなどで一気に広がっていたといいます。ゲームに置き換えれば、子供向けのゲームを作った時に、その親や祖父母が購買したくなるような作品にしなければならないと指摘しました。

■ゲームを作るのに、ゲームなんてやらなくてもいい
先ほども「猿」にさせるという話が出ましたが、実際にそのようなゲームはどうしたら作れるのかということについて話がありました。「まず、猿にさせるには猿にならなければならない」とし、「今の制作者はそういった経験がないのでは?」と疑問を投げかけました。岩崎氏も「普段は本はそんなに読まないが、他のことは一生懸命やっていた」ということで、そういった経験や得た知識を一つ一つ解きほぐしていくことで、「もしドラ」を完成させることができたといいます。そこで、「ゲームを作るために、ゲームなんかしなくても良いから、他のことで一日中猿になるような経験をしたほうがいい」と会場にアドバイスを送りました。

■大変な時期こそチャンス
最後に、ゲーム業界が「今は大変な時期」とした岩崎氏。様々なプラットフォームが増え、どこから出せば良いか、どのプラットフォームが最良なのか、なかなか判断がつきにくいと考えています。しかし、今スマホ向けのアプリが流行っているから、そこで出そうというような安易な考えはしない方がいいのではないかという提案をしました。「昔のようにプラットフォームが固定され、金さえかければある程度の利益が見込めるわけではない」とし、「今こそ逆に、自分たちで魅力的で新しいプラットフォームを提供すれば、いくらでもチャンスある」と述べました。

「かつて初代の『ポケモン』が発売されたときの初週販売数は20万本だったそう。それで制作者は首をつろうと思ったというのだから、もう一度そういうのを目指してみればいい」と最後まで岩崎氏らしい表現で講演は終了しました。
《宮崎紘輔》

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