ゲーミフィケーションサミットNY 1日目(7) エンタープライズ分野での活用・・・「世界を面白くするGamification」第37回 | GameBusiness.jp

ゲーミフィケーションサミットNY 1日目(7) エンタープライズ分野での活用・・・「世界を面白くするGamification」第37回

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ようやく、1日目のセッションも後半に差し掛かって来ました。こちらでは大手企業の事例や、スタートアップがいかにそれをサポートしたかという観点でのパネルディスカッションが行われました。登壇者は以下の方々です。

・モデレータ:Byron Reeves、スタンフォード大学コミュニケーション分野の教授
・Charlie Kim、ネクストジャンプ社
・Obie Fernandez、デュープロップス社
・Mario Herger、SAP社
・Kes Sampathar、シナジー社
・Maksim Ovsyannikov、リップル社

本セッションでは、企業の社内用途としてゲーミフィケーションの仕組みをどう取り入れるのが有効かという観点でメンバーが揃えられています。実際に社内に取り入れている企業と、社内ゲーミフィケーションを促進するサービスを提供している企業とがそれぞれメンバーにいます。スタートアップ企業でされるのは感覚的に理解できますが、SAP社のような大企業でもこうした取組がされているというのはとても面白いですね。

モデレータのByron Reeves氏はスタンフォード大学の教授で、本サミットの主催者の一人にもなっています。メディアがいかに人々の関心を引き付け、感情を掻き立て、心理学的な反応を呼び起こすのかということについての研究を行っている研究者です。また、ゲーミフィケーション分野での著作として知られる”Total Engagement”の共著者でもあります。個人的には、こうした学術系ど真ん中の専門家がゲーミフィケーションの分野に関心を持っていることはとても興味深いですし、同時にこの領域の面白さ・幅の広さを物語っているようにも感じます。

ネクストジャンプ社は、ゲーミフィケーションという観点では特にその従業員向けの健康・栄養や休暇、慈善事業への取組を支援する仕組みを用意していることで取り上げられています。社内にジムを設営しトレーニングコーチが常勤していたり、栄養食を提供したりと言ったことがなされています。このフィットネスプログラムの参加率を上げるために社内にゲーミフィケーションのコンセプトを取り入れたとのことでした。その結果、それ以前は週2回、50%の参加率だったのが週2回、80%の参加率に向上したとのことです。また、フィットネスプログラムに参加することでポイントが得られるようになっているのですが、特になにとも交換できない状態では男性の参加率が高く、交換出来る品物が出てくると女性の参加率が高まったそうです。

デュープロップス社は、従業員向けのパフォーマンス向上に心理学やゲームメカニクスの手法を応用したサービスを提供しています。SAP社Mario氏は、SAP社において「Gamification Initiative」のグローバルのヘッドを務めています(SAP社にはそんな組織があるんですね)。

シナジー社はテクノロジーエージェンシー、Web開発を受託する仕事を中心に行っている企業です。Kesはその中でメディア戦略チームとイノベーションラボのリーダーを務めています。彼はThinkCubeというビジネスマン向けのアイデアを生み出すためのヒントとなるツールを開発したこともあります。

リップル社は職場のゲーミフィケーションとも言うべきサービスを提供しています。チームでの仕事の生産性を向上させるためのサービスで、「Social Performance Management」と銘打たれています。facebook社でも採用されているようで、お互いの業務内容が可視化され、互いにフィードバックをし合うことが出来、目標を共有することが出来る、というようなサービスのようです。

このような自己紹介から始まり、まずは以下の質問から。

Q:社内利用で特に考えないといけない点は何か?

・Kes(シナジー社):ソーシャルの仕掛けはコンシューマ向けのサービスよりも大きいかもしれない。また、トレーニングプログラムなどを用意し簡単に素早く始められるようにしている。
・Charlie(ネクストジャンプ社):ゲーミフィケーションを取り入れるということは、失敗してもいい環境を用意するということでもある。マネージャ層がそれを理解していることが重要だ
・Obie(デュープロップス社):簡単に始められるようになっていることが重要だ
・Maskim(リップル社):企業が設定したゴールに向かっているかどうかを測定することだ

Q:専門家としてはどんな種類の人が必要か?特に、ビジネスの観点か、ゲームデザインの観点か。

・Obie(デュープロップス社):ゲームそのものが楽しくなければ社員はそれを使わない。デザインをする立場の人間が、内発的な動機づけと外発的な動機付けのバランスを取る必要がある。単に「いいものだから使え」といっても誰も使わないし、外発的な報酬も長期的に機能するようなものでなければいけない
・Maskim(リップル社):仕事自体をゲームのようにしていくことを考える上で、どのような遊ばせ方が適切なのかを理解する必要がある
・Kes(シナジー社):どんな人材を採用する必要があるかといえば、ゲームデザインを理解した上でビジネス戦略を考えられる人間だ。仕事でトレーニングするよりもゲーム内でトレーニングした方がはるかに簡単だということがわかっている。
・Charlie(ネクストジャンプ社):ゲーミフィケーションの背景にある考え方は1つで、ゲームだろうがリーダーシップだろうが要するに課題が何かを明確にすること、そしてそれを解決することに取り組むことだ。

Q:実際の業務に適用するなら?

・Mario(SAP社):社内での利用でも、トレーニングやマーケティング、チームビルディングや文化的な違いを克服することなど分野によってアプローチが異なる。
・Obie(デュープロップス社):仕事が遅い人間を解雇しようとしたことが一度あった。ただ、彼の仕事ぶりをよく観察してみると、実は自分の得にならないようなことでも多くの他の社員の手伝いをしており、感謝されていることがわかってきた。そういう人物なので、相談がたくさん集まって仕事が遅くなっていたのだ。彼を解雇してしまうと大きな損失になってしまうことがわかった。社員がどういう行動をとっているのかはしっかり追いかけられるような仕組みが必要だ
・Charlie(ネクストジャンプ社):報酬がどんなものであろうと、やる側からすれば意味のあるもので、かつ適切なものが用意されている必要がある。また、競争性も必要だ。社内のジムでもっとも熱心に取り組んだチームには賞金1000ドルを用意している。順位表を用意し、どのチームが上位にいるかがわかるようにした。ただそうすると、ジムの利用が減ってしまった。一番のチームが明らかになってしまい、競争する意欲が失われてしまったからだ。そこで、個々人にどの程度利用しているかということでランク付けを行い、それに基づいて平準化するようにチームメンバーを再編成することで、活性化の水準が元に戻った。

Q:何か気を付けないといけないことはあるか?

・Mario(SAP社):ドイツでは労働法が厳しい。社員の行動をデータ化しトラッキングしようとすると問題視される。会社を辞めたときにそうしたデータの取り扱いがどうすべきかは悩むところだ。
・Kes(シナジー社):社員がどのように反応しているかはしっかり観察する必要がある。ゲームが始まって、孤立していたり自分は重視されていないんだと感じたりすると、それを戻すのはとても難しい。健全な競争環境と、ネガティブな足の引っ張り合いとのバランスを取るのも難しい。

■著者紹介

深田浩嗣(ふかだこうじ)
株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。
《深田浩嗣》

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