ゲーミフィケーションとは、利用者を楽しませることで自分から喜んでそのサービスを使うような、そういう環境をつくるための手法である。単にバッジやポイントを導入すればいいというようなそういう単純なものではなく、「サービスが楽しんで使われているという状態こそ、本来のロイヤリティでありエンゲージメントのあり方である」という考え方が根本にはある。そういうことを考えていくと、人はどういうことを自分から進んでやろうとするのか、楽しんでやろうとするのか、という問いがわきおこってくる。人間の内からおこってくる欲求にはどんなものがあるのだろうか、ということが気になってくる。そういうことを調べているうちに、スティーブン・リースという心理学者が「人間には16の基本的な欲求がある」と主張しているのを見つけた。日本語訳されている彼の著書としては本当に欲しいものを知りなさい―究極の自分探しができる16の欲求プロフィールというものがある。リースによれば、数千人に及ぶリサーチの結果、人間の欲求を分類していくと最終的に16の基本的な欲求に収斂されるとのことだ。その16の欲求とは以下のようである。・力:他人を支配したいという欲求・独立:人に頼らず自力でやりたいという欲求・好奇心:知識を得たいという欲求・承認:人に認められたいという欲求・秩序:ものごとをきちんとしたいという欲求・貯蔵:ものを集めたいという欲求・誇り:人としての誇りを求める欲求・理想:社会正義を追求したいという欲求・交流:人と触れあいたいという欲求・家族:自分の子供を育てたいという欲求・地位:名声を得たいという欲求・競争:競争したい、仕返ししたいという欲求・ロマンス:セックスや美しいものを求める欲求・食:ものを食べたいという欲求・運動:体を動かしたいという欲求・安心:心穏やかでいたいという欲求ソーシャルゲーム内でよく見かけなというものがいくつか含まれているのは非常に興味深い。例えば「コンプ」になぜあれだけ人がハマってしまうのかということはそれ単体で考えるととてもわかりにくい現象だったのだが、心理学的に「それは人間の基本的欲求のうちの1つに”貯蔵”というものがあるからだ」と言われるとそれはそれで納得してしまう。「いいね!」と言われるのは承認欲求が満たされるので嬉しいんだな、育成ゲームのポイントは家族欲求を満たすということにあるんだな、ひょっとするとアバターを着飾るというのはロマンス欲求に結びついているのかもしれない、などといった関連性に気付く。また一方で、秩序欲求、誇り欲求、理想欲求、といった欲求を満たすようなソーシャルゲームはまだそれほど見当たらない。誇り欲求はひょっとするとあるゲームを極めていってランキング上位に位置するようなことをめざすプレイヤーの欲求を満たしているのかもしれないが、ただそれ以上の活用の仕方もありそうである。秩序や理想の欲求についてはむしろゲームの領域というよりはゲーム以外の領域のほうが活用しやすいのかもしれない。ゲーミフィケーションを考える上で、心理学の知見は有用であることが多い。この16の基本的な欲求を使えば、あるサービスが人間のどの欲求を満たすことにつながっているのかということを考えていくことができる。そうすると、その欲求を満たすための目標の作り方やソーシャルアクションの設定の仕方のヒントは既存のソーシャルゲームを見ればたくさんヒントがあることがわかる。以前にも・gamificationの理論的背景:フロー理論・gamificationの理論的背景:自己決定理論でも触れたことがあったが、こうしたことを踏まえておくと実際にゲーミフィケーションの活用を考える上でも成功しやすくなるだろう。■著者紹介深田浩嗣(ふかだこうじ)株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ。公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。
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