【DEVELOPER'S TALK】最新技術で温故知新・・・開発者の思い入れが詰まった「ハルヒ」の集大成『涼宮ハルヒの追想』 | GameBusiness.jp

【DEVELOPER'S TALK】最新技術で温故知新・・・開発者の思い入れが詰まった「ハルヒ」の集大成『涼宮ハルヒの追想』

映画版最新作「涼宮ハルヒの消失」から始まるもう一つのストーリー『涼宮ハルヒの追想』。ゲーム内容もさることながら、PS3版とPSP版で同時に発売され、セーブデータなどを共有して遊べる、などの点でも話題を集めたタイトルです。

その他 その他
映画版最新作「涼宮ハルヒの消失」から始まるもう一つのストーリー『涼宮ハルヒの追想』。ゲーム内容もさることながら、PS3版とPSP版で同時に発売され、セーブデータなどを共有して遊べる、などの点でも話題を集めたタイトルです。
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映画版最新作「涼宮ハルヒの消失」から始まるもう一つのストーリー『涼宮ハルヒの追想』。ゲーム内容もさることながら、PS3版とPSP版で同時に発売され、セーブデータなどを共有して遊べる、などの点でも話題を集めたタイトルです。

開発を担当したのは、過去にPSPで『涼宮ハルヒの約束』『とらドラ・ポータブル!』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル』を手がけたガイズウェア。過去作品でもミドルウェアを積極導入し効率的な開発を行っています。同社としても初めてのPS3挑戦となった本作の開発舞台裏について、CRI・ミドルウェアと共に伺いました。

■参加者

・二見鷹介 バンダイナムコゲームス。本作ではプロデューサーを勤める。
・亀谷恒治 ガイズウェア代表取締役社長。
・小林信行 ガイズウェア・ディレクター。本作でもディレクションを担当。
・澤坂智之 ガイズウェア・プログラマ。PSPからPS3への移植作業などを担当。

聞き手 
・土本学 イード インサイド編集長
・CRI・ミドルウェア



■温故知新アドベンチャーゲーム

―――はじめに本作の簡単な概要紹介をお願いします。

プロデューサーの二見氏
二見:はい。本作は昨年2月に公開された映画『涼宮ハルヒの消失』の後日談というか、映画が終了した直後からはじまる、もう一つの「ifストーリー」です。映画の内容は・・・実際に原作や映画を見て楽しんでいただくとして、ゲーム版は同じ世界観で開催される北高祭を、実際にキョンとして体験しながら、ストーリーを進めていくというものです。

『ハルヒ』が題材のゲームは、他社様も含めて本作で6作目となり、これまでの集大成的な内容となっています。PS3とPSPで基本的に同じ内容のものがリリースされていて、セーブデータやトロフィーなども共有できます。家ではPS3版で遊びながら、外出中はPSP版で続きを遊ぶなど、立体的な遊び方が楽しめるんです。これ以外にも、いろんなチャレンジをしたり、新しい技術を盛り込みました。

小林:構想自体は『とらドラ・ポータブル!』(以下「とらドラ」)の立ち上げの頃から温めていました。その後、ちょうど映画も公開されるということで、良いタイミングでお仕事をさせていただけることになりました。

もっとも、原作ストーリーをオリジナル要素でかなり膨らませた企画だったので、本当に許可が下りるか心配でしたね。実ははじめに角川書店様に企画提案に伺ったとき、「もっと原作に即した内容で作ることもできますよ」とお伺いを立てたくらいです。

ところが、角川書店の編集部の方々から「キョンが実際に北高祭の中を歩きながら、自分でSOS団を作っていく過程を、ゲームで見てみたい」と逆提案をいただけたんです。そこから本格的な開発が始まりました。

舞台は北高祭


―――幾層ものパラレルワールドをさまよいながら進めていくスタイルが新鮮ですね。分岐システムなどは最初から考えられていましたか?

小林氏
小林:はい。ストーリー構成をしっかり作っておかないと、破綻することが目に見えていたので、最初にフローチャートをガッチリと固めました。普通は原作付きゲームというと、一社からしか発売されないことが多いのに、「ハルヒ」の場合は複数の企業から発売されるじゃないですか。そのため、思わず力が入りましたね。

二見:あまりにシナリオの分岐やフローチャートが複雑で、開発中に「仕様書が東大の赤本みたい」なんて冗談も出ていたくらいなんですよ。完成したら面白いものになるという確信はありましたが、開発段階では不安な部分もありました。何度も「小林さんの頭の中を、直接のぞいてみたい」と思ったくらいです。

小林:今回、非常に幸運だったのは、開発中のバージョンを猿楽庁(※)さんでチューニングいただく機会があったことです。その際にゲームのレスポンスや、UI(ユーザインタフェース)のデザイン、ヒントの見せ方などで数多くのご意見をいただきまして、徹底的にチューニングできました。

※ゲームソフトのQA(品質管理)やチューニングなどを専門に行う会社。

二見:僕もガイズウェアさんとゲームを作ったのは今回が初めてでしたが、開発バージョンを遊んでみて「おもしろいけど、かなり歯ごたえがあるな」と感じました。そこで、どうやってプレイヤーのモチベーションを保たせるか。いかにプレイヤーの行動を先回りして、さりげなくヒントを配置していくか。そうした議論を、猿楽庁さんも含めて、何度も繰り返しました。アドベンチャーゲームにおける最適な難易度設計みたいなことを、みんなで熱く語り合っていましたね。

―――本編以外の要素も充実していますね。

二見:「ブロック崩し」「エンドレスファイト」「トイクロック 有希の365んち」という3つのミニゲームが入っています。「ブロック崩し」はハルヒ、長門、みくるのイラストが背景の「着せ替えブロック崩し」で、「エンドレスファイト」はファミコンテイストなリアルタイムストラテジー、「トイクロック 有希の365んち」は3Dグラフィックスで描かれた長門を眺めて楽しむ、一風変わった時計アプリです。

―――中でも「エンドレスファイト」は、キャラクターゲームでリアルタイムストラテジーという点に驚きました。

澤坂氏
小林:ふつうは考えませんよね。実はプログラムは外部の方にお願いしたんです。初めてその会社さんとお会いしたとき「リアルタイムストラテジーが作りたい」と言われて、「じゃあ、やっちゃいますか」と、ミニゲームにしてしまいました。そうしたら、あれよあれよという間に、ものすごいクオリティになってしまいまして。ドット絵の方もノリノリで作業をしていただけました。

二見:何も考えなくても遊べるんだけど、考えないとやられるという、絶妙なゲームバランスになっています。ファミコンのようにパッと遊べる感覚と、スーパーファミコンのグラフィックの融合といった感じでしょうか。ちなみにエンドレスファイトにはエンディングもあります。もっとも、時間がかかりすぎるのと、条件が厳しすぎるので、実際には長門くらいしかクリアできないかもしれませんが・・・(笑)。

澤坂:実は「トイクロック」は意外と容量を使っています。ゲームの画像データのうち、5分の2がクロック関係です。シーンが130パターンくらいあるんですよ。時計機能に連動して、さまざまなイベントがあるので、チェックが大変でした。

小林:こんな風に、いろんなやりこみ要素を詰め込んでいます。ゲーム内でもスタンプラリーがありますが、120個くらい集められるんです。これも「どうやったら文化祭らしくなるかなあ」と思って、実際に大学の文化祭に行ってみたら、そこでスタンプラリーをやっていたんですよ。それで「これだ!」と。さすがに120個もスタンプを用意したのは、やりすぎました(笑)。

ドット絵が特徴的な「エンドレスファイト」は本格的なゲームに


―――かなりハマれそうです。

小林:実は今回は最新鋭の技術を使って、温故知新をやったようなところがあるんです。アドベンチャーゲームって、最近ではストーリーだけを楽しむようなものが主流ですが、あえて攻略性を高めてみました。ゲームデザインはレトロだけど、プレイヤーの誘導や、UIの作り込みなどで、今風にリファインしてみました、という。

―――なるほど。

小林:そのうえで、ユーザーに「自分でクリアする楽しみ」を再提案してみたかったんです。今は情報の流れがすごく速いので、ネットの情報などを見れば、すぐにクリアできるじゃないですか。「祭りに参加する」という意味では、それで正しいのかもしれないけれど、やっぱりゲームですからね。攻略性の高いアドベンチャーゲームの話題で盛り上がっているコミュニティも、ネットで見受けられたので、ちょっとは刺激になったんじゃないかと。いろんなアドベンチャーゲームがあって、いいと思うんです。

■フルHDでの開発に思わぬ問題が頻発

―――開発のスタートはいつくらいですか?

二見:2009年の冬くらいですね。映画の公開よりも前で、最初は映画の資料もありませんでした。そこから準備を始めて、2010年の1月から実作業に入った感じです。

―――PS3とPSPで同時開発された狙いは何でしたか?

一番を目指したという二見氏
二見:自分の中では『ハルヒ』は必ず一番じゃなければいけない、という思いがあるんです。これまでオリジナルの美少女ゲームではPS3タイトルがありましたが、ライトノベル原作のキャラクターゲームでPS3タイトルというのは、『ハルヒ』でなければ企画として成立が難しいと思うんです。

その上で、さらに新しいことをやりたかったので、PS3とPSPの同時展開をして、セーブデータも共有できて、どちらを遊んでも楽しい環境を提供したいなと考えました。そうすることが、『涼宮ハルヒ』というキャラクターに対する礼儀だと思ったんです。

小林:僕等もそれまでPSPタイトルが多かったので、もしPS3で作るなら、こんなことをやりたいというアイディアを、ずっと持っていたんですよ。たとえばフォントやUIデザインなども、開発室に40インチ以上の大画面テレビを持ち込んで、その画面を見ながら作り込んでいきました。

澤坂:もともとPS3とPSPで同じゲームを作るというのがコンセプトで、開発もほぼ並行作業となりました。ソースコードも完全に共有しています。もっとも作り方としては、実績があるぶん、まずPSPで作ってから、PS3向けに磨くという感じでしょうか。

小林:とはいえ、PS3とPSPでは内部データの持ち方などが違いますから、微妙なところで大変でしたね。

―――具体的にPS3、PSPの同時開発で苦労したのはどのような点ですか?

小林:PS3での開発が初めてだったことに加えて、フルHDの画面で作ったところが、とても大変でした。2Dのゲームは簡単そうに思えるかもしれませんが、実はグラフィックは背景も含めて3Dで持っており、さらにフルHDでデータサイズも膨大だったので取り回しにも苦労しました。

―――フルHDだと元の絵も重要になりそうですね。

小林氏
小林:画面が大きいだけに、しっかり作らないと、見栄えの悪さが目立ちますからね。もっとも、ゲーム屋さんもさることながら、アニメ屋さんの環境でも720Pが主流で、フルHDでの映像制作は、まだまだ少ないんです。そこにうっかり足を突っ込んでしまったので(笑)、あらゆる面で大変でした。

まずアニメ屋さんと、どう環境を設定するか苦労しましたね。線の太さや色の塗り方なども重要でした。また遊ばれた方はわかると思いますが、ゲームの途中で文芸部の展示が変わってくるんです。ここの管理も非常に大変でした。

澤坂:キャラクターのまばたき、口パクなどのアニメーションも、パーツを手動で行うとずれてしまうので、専用のスクリプトを組んだり、ツールで行ったりしたのですが、フルHDサイズのデータだと、下手をすれば1キャラ分の処理をすませるのに、1日くらいかかってしまったんです。それを90キャラ分だなんて、とても間に合わない。そこで急遽、64ビットの開発PCを導入することになりました。

―――ボイスの収録も大変ではありませんでしたか?

澤坂:ボイスファイルは全部で約18000ファイルになりました。

小林:マスターの録音データから、PSP用とPS3用で2つの音声ファイルを作成しました。PS3版はブルーレイの大容量を活かして、かなりマスターに近い、声優さんの息吹まで感じられるものになりました。PSP版は容量の関係で圧縮をかけています。

―――ブルーレイ版のディスクの中身の内訳はどうなりましたか?

澤坂氏
澤坂:3.5GBがスクリプトと画像関係で、実際はほとんど画像データです。そのうち5分の2が、先ほども言ったようにトイクロック関連のデータなんですが。サウンドは音楽とボイスをあわせて1GBくらい。のこり4.5GBから5GBが特典用ムービーです。オープニングとエンディングは、あわせて500MBくらいでしょうか。特典用ムービーが圧倒的ですね。

二見:本当は1時間くらいのCGムービーを作りたかったんです。さすがに予算的に難しく、10分くらいになってしまいました。そのかわり、声優さんのインタビュー映像を収録しました。いずれもフルHDのムービーになっています。特にCGムービーは、あれだけのクオリティのものがフルHDで収録されているという点で、貴重ではないかと思います。

小林:はじめて見た時は、すごすぎて唖然としたくらいですよ。逆にオープニングとエンディングは、あえて720Pで収録しています。ぜひフルHDの特典ムービーを見て、クオリティに驚いて欲しいですね。

―――ガイズウェアさん開発のキャラクターゲームは、画面上でキャラクターがなめらかにアニメーションされるのが特徴ですが、本作ではさらに磨きがかかっていますよね。

小林:はい。そうした演出は独自ミドルウェア「S.O.S.II(※)」の賜物です。本作ではこれをさらに発展させて、最大3人まで画面にキャラクターを表示し、アニメーションさせる、といったことに取り組みました。キャラクターの気持ちを、表情だけでなく、動きやシルエットで、より深く表したかったのです。それもPS3だけでなく、PSPでも行いたいと。こうして作ったのが「S.O.S.II」です。そのため余計に安定して動くミドルウェアで脇を固めたいと思っていました。

※S.O.S.II…「シームレス・オペレーション・システム2」の略称。ガイズウェアが開発したキャラクターアニメーションシステムのミドルウェアで、頂点モーフィングと加算モーション技術を用い、1枚の平面画像を3Dモデルとして、表情変化を含めリアルタイムアニメーションさせることができる。

■音声ミドルウェアは開発にどのように役立ったか?

―――今回はPS3、PSP版でCRIのサウンド用ミドルウェア「CRI ADX2」、PS3版でムービー用ミドルウェア「CRI Sofdec2」をご採用いただいていますね。(CRI)

小林:もともと「ADX」は過去のPSPタイトルで使っていて、慣れていましたし、今回はPS3での開発が初めてで、さらに新しいチャレンジに取り組みたかったので、できるだけ不安材料を減らしたいと思っていました。実は自分でも過去に音声ミドルウェアを作って、かなりトラブルに遭遇した経験があったので、使わない理由がない。そこで、せっかくだから「ADX2」にしようと。

―――実は「ADX2」の開発段階から「次のゲームで使いたい」とお声がけをいただいた経緯がありましたね。それで開発チームの意気が改めて上がった部分がありました。(CRI)

小林:フェードイン・フェードアウトや、ボイスハイライト機能の「リアクト」(※)など、こちらの要望を受け入れて、必要な機能を先に実装していただけたりもしましたね。おかげで助かりました。ただし、実際の活用では音を途切れずに、綺麗な音質で鳴らすなど、基本的な機能に留まってしまいました。「2」にはいろいろ、おもしろい機能が実装されているのに、使い切ることができなかったんですよ。次回はぜひ挑戦してみたいですね。

※リアクト・・・ADX2に搭載されている機能で、BGMの再生中にセリフを再生すると、BGMの音量が自動的に下がる機能。ゲーム中では、オプションの「BGM音量調整」でON/OFFを切り替えることができる。

―――ADX2のどういった部分を魅力的と感じましたか?(CRI)

小林:いろいろありますが、リアルタイムミキサーは可能性がありますね。音楽家さんもおもしろがっていました。ただし、あの機能を使いこなすには、サウンドパートとの協力が必要になります。ただ今作ではPS3版とPSP版との間で仕様面での互換性を重要視しましたので、歩調を合わせる意味でも挑戦しませんでしたが、今後は考えていきたいですね。

―――「ADX2」では新たに「HCA」という高圧縮の独自コーデックが追加されたのですが、ご活用いただけましたか?(CRI)

澤坂:はい、圧縮率がとても高いので助かりました。音声ファイルでは44.1kHzで録音したマスターデータを、いちどモノラル、22kHz、16ビットのwavファイルに変換して、そこから実機用データに変換しています。いろいろ検証した結果、今回はその仕様が最適となりました。

小林:そういえば常々、アドベンチャーゲームのボイス表現で要望があるんですが、よろしいでしょうか?

―――どうぞどうぞ、ぜひお聴かせください。(CRI)

小林:アドベンチャーゲームで、プレイヤーがボイス付きメッセージをスキップできる機能がありますね。あれがなんだか味気なくて。2周目以降では良いのですが、1周目では音声をカセットテープのようにキュルキュル早送りして聞ける、くらいが良いと思うんです。最近ではHDDレコーダーなどで、そうした機能がある製品もありますよね。音声が1.5倍から2倍くらいで早送りできれば、いいんじゃないかなあと。

―――「ADX2」にも、似たような機能がありますが、セリフのピッチを変えず、かつ聞き取れる速度で早送りするには、1.3〜1.5倍程度が限界になってきますね。(CRI)

小林:そこはぜひ今後の改良に期待したいです。また欲を言えば、普通にボタンを押していると、キュルキュルと早送りされて。ぐーっと押していると、ひゅーんひゅーんと早送りが早くなって。ボタンを放すと、パッと元に戻るとか。アドベンチャーゲームも、そうしたユーザビリティを、もっと追求した方がいいと思うんです。もちろんゲームはリアルタイムで素材を読み込んでいるので、けっこう大変だというのは分かるんですが。

―――そうですね。単純に音声を2倍速で再生することはできますが、そうすると声優さんの持ち味も失われてしまいますからね。今後研究していきたいと思います。(CRI)

小林:余談ですが、今回UIまわりで、トルネが参考になりました。実際、本作のユーザーはトルネの所有率が高いと思うんです。実は開発バージョンを家に持ち帰って、ちゃんとバックグラウンドでトルネを動かしながら遊べるか、チェックしたりもしました。

―――なるほど。言われてみれば、その通りですね。

小林:他にも、たとえばPS3版ではゲームを初めて起動すると、画面が一枚出てきて、どんな大きさで画面を表示するか設定できるなどは、まさにトルネと同じですね。最初にSCEさんに「トルネのようなUIを作りたい」お伺いを立てたとき「理想ですが、けっこう大変ですよ」と言われて、逆に腹をくくりました。

澤坂:ほとんどのHDテレビでは、画面の大きさが85%くらいに初期設定されているんです。そのためはじめからフル画面を想定してゲームを作ると、周囲が見切れてしまうことがあるんです。

小林:そこで多くの企業では、画面を85%くらいにして、外枠もデザインするんですよ。ただ、それだと間が抜けた感じになるんですよね。テレビの設定を「ドットバイドット」にしてもらうと、そうしたゲームが多いことがわかると思います。逆にPSPのゲームだと、モニタいっぱいに表示させられます。本作はPS3版とPSP版で同じように遊べることが重要だったので、PS3版の表示をトルネのように、ユーザーが調節できるようにしました。

■映像面では「Sofdec2」でフルHDムービーを圧縮

―――話が映像面に移ってきたところで、映像関係のミドルウェアについても伺います。PS3版では「Sofdec2」をご採用いただきましたが、採用の理由は何だったのでしょう?(CRI)

小林:「Sofdec」には以前から馴染みがありましたし、「Sofdec2」も良い評判を聞いていました。また、PS3での開発は本作が初めてだということがありました。特にサウンドと違って、グラフィックはパッと見ただけで違いがわかりますからね。しかも本作ではゲーム機ではまだ珍しいフルHDでの開発です。そこで「Sofdec2」を採用することになりました。ところで「Sofdec2」は「Sofdec」とどのような違いがあるのでしょうか?

―――「Sofdec」と「Sofdec2」では、基本のコーデックはが同じですが、エンコーダの仕組みが変わったり、データフォーマットなどが変わったり、ビットレートのコントロールシステムが加わったりと、ひとつひとつの機能により磨きがかかっており、基礎体力が増しました。(CRI)

小林:また、本作では10分以上のフルHDムービーを収録しています。非常に高いビットレートで再生しているんですが、映像の乱れや音途切れが無かったので助かりました。CGだけでなく、声優インタビューのムービーも、非常に綺麗でしたね。

―――CRIでは有償でエンコードサービスも提供していますが、今回は自社でエンコードを行っていただきましたね。

小林:エンコードはバンダイナムコゲームスさんにお願いしたんですが、あまりにサクッとできちゃったんですよ。あとはムービーファイルを送ってもらって再生してみたら、あっさり再生できちゃいました。

澤坂:実際には、そこからのROM焼き作業が大変でしたね。ソースをもらってから、マスターディスクに焼いて、実機でテストするまで、6時間かかりましたから。しかも通常版、限定版、デバック版など、あわせて6種類必要で、これがテストごとに必要でした。

小林:とりあえずプログラマにマシンは2台ずつ必要ですね。こんな風に、開発の終盤にさしかかると、軍隊で言う補給や兵站(へいたん:活動支援)の重要性が骨身にしみました。ホントに良い経験をさせてもらいましたね。フルHDってこんなに大変なんだと言うことが、やってみて初めて分かりました。

二見:だから皆さん、フルHDでのゲーム開発には手を出されないんだろうなあと(笑)。実は僕もPS3での開発が初めてだったので、よく分かってなかったところがありました。なので勢いで「やっちゃおう!」と(笑)。

小林:途中で「720Pにしていいですか?」って聞きましたよね。

二見:残念ながら、その提案をいただいたときは、もう引き返せない状態になっていたので「ダメです」と(笑)。

澤坂:PS3とPSPでのセーブデータ共有など、純粋にPS3に収まらない話が多かったのも、大変さに輪をかけましたね。

ガイズウェアの面々


■ゲーム業界をみんなで盛り上げていきましょう

―――今後の展開については?

二見:マニュアルにもあるとおり、DLC(ダウンロードコンテンツ)を準備しています。まず「ブロック崩し」の追加ステージですね。いろんなキャラクターの着せ替えが楽しめます。次に「エンドレスファイト強化バージョン」といって、鶴屋さんや、妹ちゃんや、朝倉さんが使えるようになります。最強部隊が編成できるようになりますよ。それから「トイクロック」では、新たに「長門の部屋」が開放されます。学校から帰った長門が何をしているのか。意外な来客もあったりするので、期待してください。

―――気が早いかもしれませんが、次回作については?

二見:これについては、良い意味で僕等もガイズウェアさんも、やりきった感が強いので、お答えすることが出来ませんが、キャラクターベースのアドベンチャーゲームという意味では、さまざまな挑戦をしていきたいですね。決まった枠に縛られることなく、常に新鮮で驚きのあるゲームを提供していきたいです。

―――それでは、皆さんで挑戦したいゲームや、技術トピックなどがあれば教えてください。

亀谷氏
二見:ジャンルに縛られないゲームを作りたいですね。おこがましいかもしれませんが、新しいジャンルを生み出すようなゲームを作ってみたいです。もともとキャラクターゲームが好きなんですよ。その原作の魅力や世界観を十分に楽しめるような、これまでにないゲームを作っていきたいなあと思います。

亀谷:開発会社の経営者として、ここしばらく二見さんとご一緒しています。これまでやってきたことを引き継ぎながら、違う楽しみ方ができるようなゲームを考えたいなと思っています。

小林:技術面では、本作のようなノンフォトリアルな表現は日本の強みだと思うので、これからも同じような表現で、世界観が楽しめるようなゲームを作っていきたいですね。たとえば本作では「北高祭」という世界を、どのように表現するか、考えながら作ったんです。それをもっと融合させて、世界を手のひらで操作するような遊びを作ってみたいですね。ARG(Alternative Reality Game:現実世界を使ったゲーム)などにも興味があります。

またテーマ的には、プレイヤーが主人公となって、世界を変えられるようなものに挑戦したいです。こんな時代だからこそ、意志決定が重要だと思うんですよ。プレイヤーが意志を持って選択すれば、世界を変えられる。そんなメッセージをゲームに織り込んで、中学生や高校生のプレイヤーに届けていきたいです。

澤坂:自分はゼロからモノを作るのではなくて、1を10にする方が得意なんです。そのときに重要なのが、遊んで面白いかどうか。そこで欠かせないのがユーザビリティです。人間のおもしろさの感覚はシンプルだと思っています。まずストレスを与えること。そして、それを解放させること。そのループの過程でマイナス面を消して、プラス面をどうやったら伸ばしていけるか。そこを重視しながらゲームを作っていければと思います。

―――では最後に、開発者に向けてのメッセージと、ユーザーに向けてのメッセージを、それぞれお願いします。

二見:開発者の方にですか? 難しいですね・・・。あえて「美少女ゲーム」と呼びますが、こうした美少女が出てくるゲームこそ、真摯に作るべきだと思っています。美少女ゲームのプレイヤーには、ゲーム好きの方が多いと思っているからです。そうしたユーザーに対して、キャラクターやシナリオなどをきちんと配慮して、クオリティの高いゲームを作ることで、全体が繁栄していくのではないでしょうか。みなさんと一緒に頑張っていければと思います。ユーザーの皆さんには、長門が可愛いので、ぜひ遊んでください(笑)。

亀谷:うーん・・・。僕等は毎日ゲームを作っているので、ゲームに麻痺している部分があるんです。開発者の皆さんには、そんな僕等ですら、これ新しいねとか、すごいねと唸らせるようなゲームを作って欲しいですね。もちろん僕等も頑張ります。それからユーザーさんは、ぜひゲームを買ってください。よろしくお願いします(笑)。

小林:日本のゲーム業界全体が、欧米との技術格差に対して、びびっているところがあると思うんです。でも、ハリウッドが「ベン・ハー」のような歴史的超大作を作っていたころ、日本では黒澤明が「七人の侍」を作っていました。おもしろさは規模でも予算でもなく、工夫次第なんです。
そのためには目の前の題材と技術を最大限に活用すること。つまり、さんざん頭を使って考えることが重要なんです。海外のゲーム業界をうらやむ人がいるかもしれませんが、彼らはよく日本のゲームはエレガントだ、「禅」だ、といいます。つまり個々のゲームが独自の世界観を持っているというんです。その世界をどうやって作るかを考えて、世界で勝負しましょう。そのときにはじめて、日本人の良さが出ると思います。みんなでがんばって、業界を盛り上げていきましょう。

それから個人的には「キャラゲーはクソゲー」だという人の意識を変えていきたいですね。まずはゲームを遊んでから評価をしてほしい、と常々思っています。、

ユーザーさんには、買ってみて、手にとって遊んでみてください。何か思うことがあればアンケートに書いて送ってください。僕等は全部読んでいますし、そこからいろんなヒントをもらっています。僕等を育てられるのは、皆さんしかいないので、お願いします。

澤坂:ゲームを遊ぶ時に、コンセプトや設計方法について考えを巡らせながら遊ぶことが、ことプログラマだと多い気がします。でも、それは間違っていると思うんですよ。ゲームを遊ぶ時は、何も考えないで、ユーザーのつもりで遊んで、ただただ楽しむ。その気持ちを忘れると、いざ自分が作り手になった時に、何が面白かったのか、わからなくなるんです。

その後、実際に作る時になって、改めて自分が遊んだゲームを思い出して、なぜおもしろいのか、はじめて考えれば良いんですよ。そんな風にして作っていかないと、おもしろさは失われていくんじゃないかと思います。ユーザーさんに言いたいことは、快適に遊べるように作ったつもりなので、ぜひ買ってみてください。

どうもありがとうございました


株式会社CRI・ミドルウェア
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●記事に登場するミドルウェア「CRIWARE」についてのお問い合せ
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TEL: 03-6418-7081

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《小野憲史》

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