ゲーミフィケーションの実際:怪盗ロワイヤルの課金アイテム・・・「世界を面白くするGamification」第14回 | GameBusiness.jp

ゲーミフィケーションの実際:怪盗ロワイヤルの課金アイテム・・・「世界を面白くするGamification」第14回

ゲーミフィケーションの実際:怪盗ロワイヤルのソーシャルアクション

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ゲーミフィケーションの実際:怪盗ロワイヤルのソーシャルアクション

に引き続き、怪ロワでの課金アイテムにも目を向けてみよう。上記エントリーで見てきたように、怪ロワは基本的にユーザ同士の対戦ということにゲーム性が集約されており、逆に言えばそれ以外のソーシャルアクションというものは基本的に用意されていない。これは、課金アイテムについてはどうなっているだろうか。怪ロワで用意されている課金アイテムは以下の通りである。

・武器
・防具
・乗り物
・その他

それぞれ、ゲーム内ポイントである「$」で買えるものと、課金通貨である「コイン」で買える2種類が存在する。武器、防具、乗り物、はそれぞれ攻撃・防御というパラメータを向上させるためのものであり、金額によって向上するパラメータが異なる。ゲームを進行させるとゲーム内ポイント「$」で買えるアイテムがより強力になっていく。

ただ、怪ロワは攻略wikiサイトが充実しているのでそちらを参考にすると、どうやら300コイン以上で買えるアイテム以上に強力なアイテムはゲーム内ポイントでは用意されていないようだ。このゲームでは、自身の手下も含めて一人一つの武器・防具・乗り物を持つことが出来、その合計値が自身の強さとなる。そのため、手下一人当たりの持つアイテムの強力さがゲーム内での強さにダイレクトに影響する。つまり、自身の周囲のユーザが課金アイテムを持ち始めるレベルに至った場合には、それ以上勝ち続けようとすると必然的に課金アイテムを買わざるを得なくなる。

また、その他で用意されているアイテムは下記の通りである。

・ダブルワナ
・全手下回復ツール
・イベント専用アイテム

これらは全て課金専用のアイテムとなっている。このゲームのデザインとして、「あるシリーズのお宝をコンプリートすると、そのお宝は奪われることはない」というものがある。このため、1シリーズをコンプリートするのは出来るだけ短い期間に一気にやってしまった方がよい。そうした心理を考えると、集める時には集中的に回復ツールを使って回復させたり、ワナをしかけて奪われないようにしたり、といったことにお金を使いたくなる状況が見えてくる。特にお宝には場合によって「レア度」という概念があり、なかなか入手できないものもある。ユーザとしてはせっかくそれを手に入れたのに奪われてしまいかねないという状況では、ワナを購入するのにお金を使おうという気にもなるだろう。

このように見てみると、やはりこのあたりの心理はオークションや在庫限定商品を買うための競争心理と根本が似通っている。こうした心理をうまく利用したサービスとしては、招待制のプライベートセールサイトであるギルトが挙げられる。こちらでも、販売されている商品の在庫及び販売期間が限定されているため同様の心理が働きやすいデザインになっている。Amazonに1.1億ドルで買収されたという1Day1Deal(1日1取引)型のECサイト、Wootも類似するデザインだ。こちらはある商品はそれが販売されるその日にのみ購入することが出来、また在庫がなくなり次第販売終了となる。在庫数は表示されていないためユーザはいつ販売終了になるかわからない。

「競争心をあおる」型のサービスの種類はそれほど多くあるわけではないが、通常のサービスにもこうした要素は盛り込めないわけではない。何か特別の権利を用意し、それを獲得できるユーザ数が限定されているというような状況は様々に想定することが出来る。やり過ぎるとかえってユーザロイヤリティにマイナスに働く結果になる恐れはあるが、イベントごとのお楽しみの1つとして用意するなど、問題なく機能させるやり方は考えられるだろう。ECサイトでよくある「年始の福袋」イベントなどはこちらに該当する要素と言える。怪ロワのような、アイテムコンプやその奪い合いといった複雑な要素まで盛り込んだサービスはゲーム以外の領域ではまだ見かけたことはないが、アイデア次第ではそうしたことも考えられそうだ。

こうしてみてみると意外に有用な知見を得ることが出来た、というのが率直な感想である。ユーザ間に競争をもたらすためには、それなりに強いインセンティブのある何かを用意する必要があるが、それが準備できるサービスであれば競争の要素は活用する余地があるだろう。「キラー」も活躍出来るような仕掛けが用意できれば、非常に幅広いユーザ層をゲーミフィケーションに巻き込むことが出来そうだ。単純な発想としてはチーム同士の対戦に「奪う」要素を付け加えることなどが考えられる。実際にうまく機能させるためには微妙なチューニングが色々と必要になるが、こうした例も探してみたい。

■著者紹介

深田浩嗣(ふかだこうじ)
株式会社ゆめみ(代表取締役 社長)。1976年京都生まれ。京都大学大学院情報学研究科在学中2000年1月に株式会社ゆめみを設立。高い技術力を駆使し、モバイルEC、メール配信、大規模CRMの開発やソーシャルゲームプロバイダなど「モバイルを戦略的に使うためのコンシェルジュ」として、モバイルインターネットサービスの企画・開発・運営を手がける。ゲーミフィケーションの詳細はコチラ公式ブログほか、Twitterはコチラ。facebookはコチラです。
《深田浩嗣》

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