あらゆるものが"ゲーム化"する未来を考える・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第6回 | GameBusiness.jp

あらゆるものが"ゲーム化"する未来を考える・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第6回

私はこの連載を「悲観論よ、さようなら」と宣言することからはじめました。

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私はこの連載を「悲観論よ、さようなら」と宣言することからはじめました。

ゲームデザインとは「を・にする」の道を歩んできました。

「テニスをゲームにする」「レースをゲームにする」「射撃をゲームにする」「犯人探しをゲームにする」「野球をゲームにする」「剣と魔法の戦いをゲームにする」「都市計画をゲームにする」。この道を歩んで発展してきたのが、ゲーム産業です。

ステージは変わりました。

未来は「が・になる」の時代がやってくると予測しています。すでにはじまりかけていることとしては、書籍が、放送が、WEBデザインが、電話が。さらなる未来には、広告が、放送が、映画が、住宅がゲームのようになっていくことが考えられます。

私は世の中のいろいろなことが、ゲーム的になっていく状態をGameficationと呼ぶことにしています。

そんな前提があり、前回記事「就職活動をする学生へ」で私は「空想家であれ」と書きました。

では、未来のゲームビジネスはどんなことが起きるのだろう?今回は私が空想したニュースやコラムをご紹介します。Gamefication=ゲーム化されていく未来のヒントにしていただければ幸いです。

以下、書きましたことは私の空想です。

本来ならば、「登場する企業名や人物はすべてフィクションです」とお断りをし、すべて空想名にするのが穏当な記事づくりというものでしょう。ミステリー小説に出てくる「毎朝新聞」のように。

でも、それではつまらなくありません?

実名を使わせていただいても、ご迷惑にならない。お読みになる方のイメージがわきやすい。と、判断した箇所は、あえて実名を使わせていただいております。関連企業の皆さま、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

では、はじめます。

ゲームの未来を空想すれば、こんな記事が配信されるのかな?


空想企業ニュース
−世界初、3Dお茶漬け発売決定−
2011年X月


永谷園はニンテンドー3DSに対応した、「3Dお茶漬け」を発売すると発表した。ニンテンドー3DSには、外側のカメラでカードを写し、ARゲームを楽しむ機能が初期設定されている。同梱された6枚のARカードのように、永谷園は自社のお茶漬けの裏面にニンテンドー3DSで読み込める信号を印刷。日本初の遊べるお茶漬けを発売する。カードをカメラで写すと、白いご飯とお茶漬けの素がかかった映像が上部スクリーンに現れる。ニンテンドー3DS本体を傾けて、お茶を注ぐなどのミニゲームが用意されている。スロットに挿し込むソフトは「永谷園特製、36袋パック for ニンテンドー3DS」を通信販売で申込むと無料でもらえる。なお、この企画は「見る広告から遊べる広告へ」をスローガンにして急成長した、アメリカの広告会社、プレイフル・アドバタイジング社が立案した。以下は同社、ハリー・ティーストン社長のコメント。「本企画は、新しい試みに理解のあるクライアントと任天堂関係者の皆さまの協力によって実現でき。お茶漬けの売上増、ニンテンドー3DSの新しい使い方の提案、そしてお客様の皆さまが、楽しみながらお茶漬けを食べるという、新しいエンタテインメントを供給できることに、私たちは喜びを感じ、これからも尽力していきます」。

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空想企業ニュース
―スポーツで発電、アミューズメント施設でお得―
2011年X月


コナミスポーツ&ライフは同社が運営する、コナミスポーツクラブの会員に「もっと健康を、もっとエコロジーを、もっとエンタテインメントを」の“もっともっともっとキャンペーン”を来月から実施する。コナミは独自の技術を使って、スポーツクラブに設置してある機器、サイクルマシン、ウォーキングマシンの動作から発電を行うシステムを開発。利用者の運動によって発電された電力によって施設運営の節電をはかる。多く運動し、多く発電した会員には、コナミが発売するソフトの割引購入チケットや、アミューズメント施設で提供しているICカード「e-AMUSEMENT PASS」に特典を付与するサービスを行う。ただし、同キャンペーンは、健康維持を目的とした施設で行うために、運動をしすぎないようインストラクターの指導が参加条件となっている。

空想企業ニュース
―やはり人気だった加入が楽しい生命保険―
2012年X月


日本生命保険協会の発表によると、昨年度、新規契約者数を最も伸ばしたのは「ソニー生命」であることがわかった。同社はプレイステーション3とプレイステーション・ムーブを応用したシステムを開発。カメラとボイスチャットを使って問診。加入者の健康状態に関する設問にも、手振りで答えられる。面倒な書類記入をゲーム感覚で行える。この「あそ棒で入ろう生涯設計らくらく安心プラン」が若者向けのヒット商品に。さらに、同プランは友達を紹介すると保険料が安くなることから、加入者はPSNを通じて他のユーザーにも波及し、利用者は急増した。生命保険業界に詳しく、『生保業界危機一髪』の著者でもある加瀬木杉子氏は、「従来の縁故型、訪問型の営業は、生保業界では通用しなくなってきている。30歳代の新規顧客を狙うには画期的なアイデア。他社がまったく考えもしなかった生保とゲーム機との融合はヒットして当然」と語っている。

空想企業ニュース
―どんな映画でもパイを投げられる快感を―
2012年X月


米・マイクロソフトは、Xbox360を使った動画配信とキネクトを融合させたインターラクティブ・シネマのコンテンツ開発に、初年度だけで5億ドルの投資を行うことを発表した。一般劇場公開用映画を、Xbox360上で鑑賞する。すると場面に応じて、インターラクティブモードに切り替わる。そこで視聴者=プレイヤーは、「抱きしめる」「殴る」などの行為ができる。なかでもコンピュータ・グラフィックスの特殊効果を使った「パイ投げ」機能は特徴的で、映画の登場人物の顔に向かってクリームパイを投げつけることができる。アメリカン・コメディの定番とも言える機能だ。シアトルで行われた発表会では、来場者全員にクリームパイが配られた。米紙『エンタテインメント・トゥデイ』のキル・フェボン記者は「キネクトは、Wiiリモコンやプレイステーション・ムーブと異なり、素手で遊べるのが最大の特徴。Xbox360はこの画期的なシステムにより、他社とは比較にならないほどの優位性を示すことになるだろう」と語っている。

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空想企業ニュース
―デジタル教材開発にゲームソフト会社が相次いで参入―
2012年X月


コクヨとシャープは共同で、液晶ディスプレイ埋め込み型の教育机『デスクDEトップ』を開発した。文部科学省が推進する教科書のデジタル化に対応する機器で、まずは東京都杉並区、文京区の一部の中学校で実験導入。その後に導入成果などの検証を行ったうえで、全国導入するかどうかの検討に入る方針だという。大手ゲームソフト会社のほとんどが教材制作に積極的で、日本デジタル教科書推進連合会(略称・日デ推)に加盟申請をしている。実験導入の段階では、バンダイナムコゲームスの『太鼓の達人』が音楽学習のソフトとして収録されている。三重教育大学の亀山四郎教授は「デジタル教科書の普及は歴史的な必然。だが、日進月歩の技術革新にハード・ソフトがどう対応していくのかが最大の課題。単年度の予算で『機器』を買うのではなく、長期的なシステム導入を視野に入れることも必要」と語っている。

空想コラム
―Wii2はどうやら周辺機器が多いらしい―
2011年X月


海外事情通のコラムニスト、曽都尾ミルヲです。昨日、暖かい台湾から帰ってきました。台湾ではWii2の情報が日本以上に流れていて、驚き桃の木でした。台湾は、いまや世界のコンピュータ、家電品の生産拠点となっていることは、皆さん知ってますよね。任天堂製品の一部も台湾でつくられています。んなわけで、工場で働く人たちが情報源となって、噂が流れまくってます。決死の台湾取材でわかったこと。Wii2のインターフェイスが数えきれないくらいに開発されているということです。中国の昔の詩で「白髪三千丈」という大げさ表現があるんですが、それをもじって「周辺機器三千個」という新語も台湾では使われていましたよ。つまり、Wii2ではソフトを操作するために、バランスWiiボード、Wiiハンドルのような、リモコン以外のデバイスが多数開発されている模様ってことが言いたいのでした。実際に蹴ることができるWii2シューズ(サッカーや格闘技に使うのでしょうか)、Wii2ブック(ページをめくる装置かな)、Wii2マグカップ(本当に飲めるようです)を見たという証言があります。特に印象深かったのは、Wii2レンズ。聞くところによると、視線の動きでゲームを操作する実験もしているのだとか。未来風なヘルメットをかぶって脳波を測定。頭脳が考えたことで、キャラクターを操作できるゲームを開発中、との情報もあります。Wii2はソフトだけを考えるのではなく、デバイスと一緒に遊びを考えるマシンになるのではないか。台湾からの帰国便でそんなことを考えていました。それにしても日本は寒い。風邪をひかないように。あ、そうそう風邪で思い出しました。Wii2体温計も実験的につくっているそうです。ではまた、再見!

空想ソフトレビュー
―電子書籍ではない。電子読書だ―
2011年X月


まず、苦言を呈したい。発売元はどうして「電子書籍とゲームの合体」なんて陳腐なキャッチフレーズをつけたのだろう。開発スタッフが目指したのは、文学の新しい道だ。参加しながら、のめりこんでいくインターラクティブな読書だ。ロボット対戦ゲームではないのだから「合体」は作品の雰囲気になじまない。さて、PSP2用ソフトとして開発された『太宰治・人間失格』だが、従来のゲームとはまったく異なる主人公が登場する。通常のゲームでは死を恐れて戦う。戦いながら成長する。だが、この物語の主人公は、死に憧れてしまう心を持っている。成長を望んでもいない。堕落することを望んでいる。この非ゲーム的ともいえる主人公設定を逆手にとって、新しい読書体験をプレイヤーに与えようとしたのが『太宰治・人間失格』だ。オープニングメッセージは「生まれてすみません」。プレイヤーは主人公が自殺をしないように、「精神の報奨」を与えていかなくてはいけない。報奨は「恋」「酒」「友」「書」「金」の5種類がある。これら漢字一文字のアイテムを使い、主人公に生きる意味を与えていく。そしてこの行為を通じて、プレイヤー自身が生きる意味を知る、という構造になっている。つまり、ペーパーレスになった電子書籍はさらに進み、人類が未体験だった電子読書が体験できるのだ。作者は、太宰治の師匠だった井伏鱒二が訳した『ドリトル先生』を、「読みにくい」と嘆き、自ら現代風に訳した麻野一哉氏だ。『弟切草』『かまいたちの夜』のディレクターでもある氏の、文学のゲーム的発展を願ってやまない姿勢が作品の随所ににじみ出ている。

空想会社案内
―私たちは「電話の娯楽化」カンパニーです―
2011年X月


これまでソーシャルアプリをつくってきた当社は、2011年に大きな転換点を迎えました。今までのいわゆるガラケー市場を対象にしたコンテンツ制作から、スマートフォンを対象にしたコンテンツ制作に切り換えが避けられない状況となりました。他社がこの転換点でさまざまな試みをするなか、おかげさまで当社の「声ゲー・シリーズ」をご利用のお客様が170万アカウントに到達し、順調に業績を伸ばしております。われわれは、携帯電話のフォーマットにしばられることなく、電話の原点である通話をゲーム化いたしました。当社作成のシナリオに沿ってユーザー様に電話がかかり、テロを計画する犯人を突き止める『ストップ・ザ・テロ』、英語学習アプリと連動した『テレフォン・ヒヤリング』、恋愛シミュレーションゲーム『あなたの声が聞きたくてVOL1』などのヒット作を開発しております。今後ともお客様のご要望にこたえし、クオリティの高いコンテンツ制作を行ってまいります。どうかご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。(株式会社ヴォイス38・代表取締役兼CEO/細井太)

おわりに
―自白―
2010年11月


この原稿は、「多くの国民に知ってほしかった」という動機から、神戸のインターネット・カフェより平林久和がGameBusiness.jpに投稿いたしました。

未来を牽引するゲーム業界にたずさわる皆さん、空想を楽しみましょう。

あれは、もう14年まえのことでした。私は世界初のゲーム会社、ATARIを創業したノラン・ブッシュネル氏とお会いしました。彼の名刺の肩書きは、フューチャーリスト(未来の人)と書かれていました。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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