TGSで出会った3つの「間」・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第2回 | GameBusiness.jp

TGSで出会った3つの「間」・・・平林久和「ゲームの未来を語る」第2回

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ヒットするゲームコンテンツには共通項があります。それを私は「3つの『間』」と呼んでいます。語呂合わせをすれば、3間=サンマです。
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ヒットするゲームコンテンツには共通項があります。それを私は「3つの『間』」と呼んでいます。語呂合わせをすれば、3間=サンマです。

「3つの『間』」は、現在のヒット作のトレンドであるばかりではなく、ゲームの未来の主要な構成要素となるでしょう。

第一の「間」は、「人間」の「間」です。

1983年に発売されたファミリーコンピュータにコントローラが2個接続されていたことが示すように、対戦する、協力プレイをするゲームは昔からありました。

ところが、インターネット、携帯電話の普及と技術的な進化によって、「人間の遊び」のバリエーションは一気に広がることになります。多人数が同時参加する。自分のゲームの成果を日記に書きとめ、参加者たちに読んでもらう。グループを募って、見知らぬ人と出会う。集団対集団で戦ううちに、連帯感が高まっていく。人間と人間がつながると、ゲームのおもしろさは増幅されます。

そうです。いわゆるソーシャル・アプリが流行したのは、「人間の遊び」の要素がぎっしりと詰まっていたからです。

第二の「間」は、「時間」の「間」です。

これも、多くのソーシャル・アプリが採用しています。ゲームは実時間に沿って進行していきます。そのため、熱中したプレイヤーは、日に何度もゲームを操作することになります。裏を返した言い方をすると、プレイヤーは時間に拘束されることによって、ゲームから離れられなくなるのです。ここだけの話、私はあるソーシャル・アプリに熱中して、朝の4時に目覚まし時計をかけて遊んだことがあります。

ソーシャル・アプリの話ばかりをしましたが、家庭用ゲームソフトでも同様のことがいえます。有名なシリーズ作品ではないのに、口コミで評判となりベストセラー&ロングセラーになったゲームがあります。たとえば、ニンテンドーDS用ソフト『トモダチコレクション』などは好例でしょう。自分や友人や家族……身近な人たちを島に住まわせる。そこで起きる人間関係を観察しているだけで楽しい。このゴールのない異色とも言えるゲームは、人間と時間を遊びの要素に取り入れています。『ラブプラス』にも時間の要素が入っています。

第三の「間」は、「空間」の「間」です。

これはおもに携帯端末の位置情報を使った遊びをイメージしています。(株)コロプラが運営する「コロニーな生活☆PLUS」の登録会員数は、10年4月に100万人を突破しました。移動距離に応じてポイントが獲得できるこの遊びは、日常生活の通勤や通学をゲーム化した、といえます。また、iPhoneのアプリとして人気が出た『セカイカメラ』や、Twitterとの連携機能でユーザー数を増やした『forsquare』といったサービスも、利用者たちはゲーム感覚で楽しんでいます。

日本には、「借景」という造園技法があります。

自前で巨費を投じて広大な庭園をつくるのではなく、敷地外の山などを背景として、景観を形成する手法です。

クリエイターが開発したコンテンツをユーザーに提供するばかりではない。ゲームソフトウェア版の「借景」。最新のゲームソフトは、自前で開発したコンテンツと「3つの『間』」をどのように融合させているのか。その動向を探り当てることが、東京ゲームショウ2010の最大の注目点でした。
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無から有をつくることは尊いことです。一本のパッケージソフトの中に、絵と言葉と演算を駆使して、独自の世界を形成することは最高級の総合芸術です。

東京ゲームショウの通路を歩いていて、「ああ、よくあるタイプのガンシューティングゲームだな」と思い、通りすぎようとするソフトがあったとします。ですが、そのソフトに描かれている建物を、夜も眠らずに、食事の時間も惜しんで……それこそ、命を削るようにして、つくっている人がいます。

ゲームショウの晴れ舞台に立てるならば、まだ恵まれています。残念ながら出展されなかったソフト、開発途中でプロジェクトが中止になったソフト、好企画なのに会社の都合で着手さえできないでいるソフト。幕張メッセにやってくることができなかった、苦労や無念が、この国のあちらこちらに、うず高く積もっています。

しかし、私は心を鬼にして言わなくてはいけません。今、日本でつくられている多くのパッケージソフトは、過剰開発されています。

これは日本のゲーム業界の特徴なのですが、適正開発という概念が浸透していません。開発費用と顧客満足を、勘案しながら、最適な労力をかけてものをつくる。これが適正開発の原則です。

そんな計算など度外視して、とにかく徹底的に良いものをつくる。良いものをつくることが何よりも最優先となる。これは、行き過ぎた開発=過剰開発につながります。

今年に限ったことではありません。東京ゲームショウの各社のイベントステージでは、ゲームクリエイターが自作を語るトークショーが行われます。

壇上では「開発に何年間かかった」、「何度もつくり直しをした」と、一本のゲームソフトが誕生するまでの苦労話が披露されています。来場者のユーザーにとっては、めったに聞くことができない、ワクワクする秘話です。しかし、「ゲームの未来を語る」……私にとっては、危うい過剰開発の自慢大会に聞こえてなりません。

今回の東京ゲームショウが、過剰開発ソフトの展示会になりませんように。
ソフトだけで完結しない、現実世界の「3つの『間』」とつながっているのは、どの作品だろう? そんなソフトに出会いたいと思っていました。

ありました。
それは意外な作品でした。『グランツーリスモ5』です。
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私は誤解をしていました。グランツーリスモは、シリーズを重ねるごとにプロジェクトは肥大化してきています。収録するサーキットや実車の数は増えていき、CGはクルマのボディのみならず、タイヤが空転したときのスモークまで美麗に描かれるようになりました。「楽しいゲーム」というよりも、緻密なシミュレーターとしてのストイシズムが漂っているようでした。

過去にプレイステーション3、プレイステーション・ポータブルの主力タイトルとして発表されても、発売が延期されることもありました。しかも、今作は3D映像に対応します。グランツーリスモシリーズは、過剰開発されたソフトの典型であるように思っていたのです。

しかし、東京ゲームショウで行われた、山内一典氏(ポリフォニー・デジタル/代表取締役)のプレス向け説明会を聞いて、背筋に電流が走るほどの衝撃を受けました。

クルマ好きのためのシミュレーターというのは、私の誤った解釈でした。『グランツーリスモ5』は、私が求めていた「3つの『間』」がそなわったものになっていたのです。

『グランツーリスモ5』は、PSN(プレイステーション・ネットワーク)とは別に、インターネットブラウザでも遊ぶことができます。チーム監督として指示を出す「B-Spec」モードでのオンライン・レースが可能になりました。外出先で、PCやスマートフォンを使って操作した結果が、プレイステーション3の『グランツーリスモ5』に反映されます。

プレイヤーのプロファイルが閲覧でき、掲示板、メール、ギフトの交換などのコミュニティ機能があります。言うならば『グランツーリスモ5』が、いつの間にかSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)に似た機能を持つようになったのです。

山内氏は「おそらく、家庭用ゲームソフトとしてははじめて、ブラウザゲームとの融合を試みました」と言明しました。

いつでも、どこでも『グランツーリスモ5』を楽しめる環境のことを、山内氏は「Anywhere」というキーワードを使ってプレゼンテーションを行いました。

説明会の席上、たまたまSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)の幹部の方が近くに座っていました。私は小声で尋ねました。「これって、グランツーリスモがプレイステーションの外に出てしまうっていうことですよね。社内でもめなかったのですか?」。

問いに対してのお答えはこうでした。「もめなかった」という意味で首を横に振りながら、「山内が、ずっと『やりたい』って言っていたから、やったんだよ」。口調はあっさりとしていましたが、重みあるお返事でした。

以下は私の推論です。

もう、5〜6年ほどまえのことになりますが、山内氏は「ゲーム離れと同時に若者のクルマ離れが起きている」ことを危惧していました。

確かにこの数年間で自動車雑誌の数は激減しています。

『「嫌消費」世代の研究』(著・松田久一)という書籍があります。09年11月に発売されました。この本の帯のコピーは鮮烈でした。「クルマ買うなんてバカじゃないの」。

同書は、「地下鉄があるのにローンを組んでまで買うなんて考えられない」と考える20歳代の価値観を紹介しています。

(社)日本自動車販売協会連合会のデータによると、01年の上半期(1月から6月まで)に輸入車は、139,849台売れていました。ところが、今年の上半期は97,282台に減っています。クルマの所有者でも「外車に憧れる」層が減ってきていることを示しています。

日本国内において、今のマーケットはグランツーリスモにとって逆風が吹いている、といえます。しかし、そんな困難があったからこそ、「Anywhere」という大きな発想の転換ができたのでしょう。ピンチをチャンスに変えようとする挑戦が始まろうとしています。

秋の目玉タイトルは『グランツーリスモ5』だった。そんなピンポイントのレポートを、私はしたいのではありません。

今年の東京ゲームショウには、裏テーマがありました。

ユーザー数、開発タイトル数、企業業績、テレビCMの出稿量……どの指標を見ても、ソーシャル・アプリが勢いづいているさなか、家庭用ゲームソフトはどこに向かうのか? 指針を発信するイベントでなくてはいけなかった。

そのひとつの答えとして、「Anywhere」に出会えたことは、未来のための収穫であったということを、思慮深き読者の皆さまと、共有をしたかったのです。

■著者紹介
平林久和(ひらばやし・ひさかず)
株式会社インターラクト(代表取締役/ゲームアナリスト)
1962年・神奈川県生まれ。青山学院大学卒。85年・出版社(現・宝島社)入社後、ゲーム専門誌の創刊編集者となる。91年に独立、現在にいたる。著書・共著に『ゲームの大學』『ゲーム業界就職読本』『ゲームの時事問題』など。現在、本連載と連動して「ゲームの未来」について分析・予測する本を執筆中。詳しくは公式ブログもご参照ください。Twitterアカウントは@HisakazuHです。
《平林久和》

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