『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】 | GameBusiness.jp

『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】

ゲーム開発に限らない、作業現場の効率化等のマネジメントで役に立つ講演となりました。

ゲーム開発 ゲームエンジン
『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】
  • 『プラグマタ』開発現場は山積みの課題をどうクリアした? 実例で学ぶプロジェクトマネジメントのノウハウ【ゲームメーカーズスクランブル2026】

カプコンが2026年4月17日にリリースした『プラグマタ』は、近未来の月面を舞台に、人間の主人公「ヒュー・ウィリアムズ」がアンドロイドの少女「ディアナ」とともに謎を解きながら地球帰還を目指す新感覚のSFアクションアドベンチャーです。

ヒューを操作するだけでなく、背負ったディアナと連携して道を切り拓いていくなど、同社の人気シリーズ『バイオハザード』などとは異なる新感覚のプレイ体験が楽しめる本作。一方で、新規IPということもあり、開発現場ではさまざまな問題が発生しました。それらの解決が後回しになったことで、ついに開発期間は約6年という長期に及ぶことになります。そこでは一体、どのような問題が発生しどのように解決していったのでしょうか?

2026年8月30日に東京・TOC有明で開催された講演イベント「ゲームメーカーズスクランブル2026」では、「『プラグマタ』の開発におけるプロジェクトマネジメント業務の実態」のセッションタイトルで講演を実施。

本開発の時期にチームに合流したという株式会社カプコン プロジェクトマネージャーの松中敬志氏が登壇し、合流した時のようすとそれらの課題をどう解消したのかを語ってくれました。

▲PRAGMATA - Main Trailer

◆明確なゴールを設定し意思統一を図る

『プラグマタ』が目指したコンセプトは「一見の価値があるゲーム」です。ただのSFアクションアドベンチャーではありません。新奇性あるゲームシステムでプレイヤーを魅了するべく、長い間、開発が進められました。その期間はなんと6年。試作開発期間が約3年、本開発が約3年、それからデバッグ期間を挟み、ついにリリースへと至りました。

松中氏がチームに合流したのは、ちょうど本開発がスタートしたあたりのこと。その頃からすでに問題が山積みになっており、たとえば新規IPならではの、共通イメージがなく個々のイメージがバラバラ、コミュニケーション不足、経験不足などがありました。それらをプロジェクトマネージャーの立場で整理し、解決への道筋を作り、正常化したのです。

▲開発期間のおもな流れと合流時の状況。
▲松中氏がチームに合流した時に発生していた問題点の一例。

各問題を解決へと導く具体的なポイントは以下の3つ。

  • ゴールに向かう意思決定

  • コミュニケーションマネジメント

  • 経験をカバーするチーム運営

それではこれら要素をひとつずつ解き明かしていきましょう。まずは「ゴールに向かう意思決定」です。

松中氏が合流した当時、各スタッフは「SFなら世界観が大事である」「ゲーム性を重視したい」「ディアナがかわいくなければいけない」と、それぞれが別々の方向を向いていたといいます。

そのため明確なゴールが設定されておらず、優先事項が異なることから齟齬が生じ、結果として「実際に作ってみたけど何か違う」と作業のやりなおしが頻発していました。そこで松中氏は開発ビジョンの明文化と周知を徹底することにしました。

▲コンセプトを明確化し、さらにそのコンセプトを要素ごと分解することで意思統一を図りました。

100人以上が作業に取り組む大所帯ですから、それぞれが同じ方向を向いていなければ再び空中分解してしまいます。そこで改めて「コンセプトはなにか」「ジャンルはなにか」「どのような遊びを提供するのか」「どのような世界観なのか」といった基本情報をあえて資料化して、会議のたびに改めて周知することにしました。

資料化することでつねに意識できますし、新しいスタッフが入って来ても問題ありません。

またゴールを決めた後は、やること・やらないことの取捨選択も行ったと言います。プロトタイプのように目に見える成果が生まれると、どうしても触りたくなりますし、そこから刺激を得てどんどんと磨きたくなります。しかしそれではプロトタイプ以外のパートがまったく進みません。そこでやらないことを設定しつつ、今やるべきことを明確化して優先順位を決めました。

▲「やらないこと」を設定したうえで「やること」をはっきりさせました。

◆無駄な会議を削減する

続くポイントは「コミュニケーションマネジメント」です。

「コミュニケーションマネジメント」とは、コミュニケーションの齟齬による問題点の解決方法のこと。たとえば会議を実施したとして、何を話し合うのか、誰が決めるのか、目的が迷走して結局何も決まらずに会議を終えることが何度もありました。また「会議で話せばいいか」と依存することとなり、会議待ちになったり、会議自体が形骸化したりして、作業が進まなくなることもあったそうです。

それは口頭指示についても同様でした。たとえば「ボス戦をもっといい感じにして」と曖昧な指示をしたことで、あるスタッフは難易度を上げようとし、あるスタッフは演出に力を入れるなど、統率の取れない作業で無駄が生じてしまいました。そのほか異なる担当者からそれぞれ別々の指示が来て混乱することもあったそうです。

そこでまずは会議の目的とゴールを設定。事前に資料などを共有することで参加スタッフもアイデアを持ち寄ることができ、無駄な会議を削減することにつながりました。

また指示系統を整理することも重要でした。松中氏がプロジェクトに参加した頃は仕様書がなく口頭で指示することが一般的だったこともあり、それが混乱のもととなっていました。そこでまず主要メンバーで方向性を提示し、それを中核メンバーが揉むことで仕様を形にして、きちんと文書として形にして残すことを徹底しました。

曖昧な部分を極力排除し、目的や意図などを明確にして確認しやすいよう残すこと。このような改革をおこなうことで指示の円滑化も図りました。

▲指示系統の整理では、いったん上流のメンバーで方針を決め、仕様書をしっかり作ってから具体的な指示を各制作ラインに降ろすような流れを作りました。
▲仕様書の作成でも曖昧な表現を使わず、開発スタッフにどうしてほしいのか明確化しました。

◆マイルストーンの設定と全員でのテストプレイ

『プラグマタ』は若手スタッフ主体のチームということで、各スタッフの成長も課題となりました。しかも本作は新規IPです。未知の領域でゼロから作品を作り上げるという難しさもありました。

具体的には、長期の開発スケジュールを一定期間で区切り、焦点を絞って集中的に開発するマイルストーンの設定です。

▲各マイルストーンではさらなる短期目標として「スプリント」を設定し、それを積み重ねることで目標達成を容易にしました。

ひとつのマイルストーンでは「プレイヤーにゲーム性を理解させる」「プレイヤーに遊びのポイントを理解させる」など、エンディングまでの流れを小分けにしました。各マイルストーンでは目標以外の作業はやりません。「ゲーム性を理解させる」ではまさにチュートリアルを含むゲームサイクルを理解させるためのステージを集中的に開発し、次のマイルストーンに含まれるような要素には一切、手を付けないようにしました。

またひとつのマイルストーンをさらに「スプリント」と呼ばれる区分で分割し、定期的にその成果を評価する機会を設けました。そうすることで、短期で経験を積める環境を構築し、若手スタッフの成長機会も確保したのです。

そのほか定期的に、形になったゲームをテストプレイする機会も設けました。各スタッフは分業制により自分の担当領域しか把握していないため、プレイしないと全体の解像度が下がってしまいます。そのため、自分たちの作品が今どうなっているかを把握するために、形になっている部分を毎回最後までプレイする時間を作りました。

もちろんその間は作業が止まりますし、スケジュール終盤ともなれば2日間、テストプレイに時間を持っていかれることもあります。しかしそれでも全員で現在地を確認することは重要ということで最後まで継続しました。

▲スプリントごと、評価とフィードバックで磨き上げていきます。

このように3つのポイントでマネジメントし、問題点をひとつずつクリアにしながら完成へとつなげた本作。プロジェクトを通し、松中氏は“見える化”がいかに重要か痛感したと解説しました。

スタッフはそれぞれ考えていることが違いますし、認識のすれ違いが大事故につながる危険性もあります。それを“見える化”することで情報共有や軌道修正をおこない、事前にトラブルを回避するわけです。松中氏は最後に改めて“見える化”の重要性を強調し、セッションを締めくくりました。

《気賀沢 昌志》

この記事の感想は?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

関連ニュース

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら