『SEKIRO: NO DEFEAT』沓名健一監督インタビュー。アニメーターが“映画監督”になるということ――剣戟と静寂に宿る作家性 | GameBusiness.jp

『SEKIRO: NO DEFEAT』沓名健一監督インタビュー。アニメーターが“映画監督”になるということ――剣戟と静寂に宿る作家性

戦国の世を舞台に、忍び・狼と竜胤の御子・九郎の運命を全編手描き2Dで描くアニメーション映画『SEKIRO: NO DEFEAT』が9月4日より3週間限定公開。長編初監督に挑んだ沓名健一監督に、原作のストイックな精神をいかに映像へ翻訳したのか、その制作の裏側を聞いた。

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©2019 FromSoftware, Inc. All rights reserved. ACTIVISION is a trademark of Activision Publishing, Inc. ©KADOKAWA/Sekiro: No Defeat PARTNERS
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  • 沓名健一監督
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株式会社フロム・ソフトウェアによるアクション・アドベンチャーゲーム『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』を原作とするアニメーション映画『SEKIRO: NO DEFEAT』が、2026年9月4日(金)より全国劇場にて3週間限定上映される。全編手描きによる2Dアニメーションで描かれるのは、戦国の世を舞台に、孤独な忍び・狼と、特別な血「竜胤」を宿す少年・九郎が辿る過酷な運命の物語だ。

監督を務めるのは、ウェブ系アニメーターの先駆的存在として知られる沓名健一氏。本作が長編初監督作となる沓名監督は、原作の持つストイックな精神をどのように映像へ落とし込み、剣戟、静寂、そして狼と九郎の関係性を描いたのか。その制作の裏側と“アニメーターが監督をすることについての考え”を聞いた。

沓名健一監督


原作の「難しさ」がストイックな作風につながった

――本作の監督を務めることになった経緯を教えてください。

沓名:本作のプロデュース会社であるARCHの平澤直さんにバーベキューにお誘いいただいた時、「チャンバラに興味ありますか?」と聞かれたんです。その時はまだ『SEKIRO』の企画だとは知りませんでしたが、「チャンバラ」と聞いてやりたいと答えて、そこから話が進んでいきました。

実際にプレイしてみて、自分の表現したいことと合致するものがあると思い、引き受けることにしました。

――実際、ゲームをプレイしてみて一番の魅力は何だと感じましたか。

沓名:「難しさ」ですね。最近はある程度クリアさせるために配慮するゲームって多いじゃないですか。これは「頑張ってクリアしてください」という姿勢で作られていて、それは内容に自信があるからできると思うし、そういうハードな姿勢が「死」という作品のテーマと上手くリンクしていると感じました。しかも、上達しないとゲームが進まない。『SEKIRO』を音ゲーだという人もいますけど、かなり身体性を求められるというか、戦いを進める上で、身体の反応が問われるのが面白かったですね。

――そういうストイックな作りのゲームだからこそ、この映画も説明過剰にせず、ストイックな作りにしようと思ったのでしょうか。

沓名:それはありますね。原作ゲームが多くを説明しないので、映画で勝手に説明するわけにもいきませんし。感情も状況もどんどんナレーションで説明するタイプの作品もありますけど、この原作はそういうタイプではない。自分としては、映画的なアプローチでやれる大きなチャンスだと思いました。

原作ものをやる場合、本当はやりたいけど心の奥に秘めておくようなことを、「今回は出しても大丈夫だ」と思えたのは、原作のストイックさがあったと思います。

――原作ゲームを長編映画にする時、どう取捨選択していきましたか。

沓名:全要素を詰め込んだら総集編のようになってしまうし、オミットしすぎてもよくないので、どうバランスをとろうか悩みました。

このゲームでは、プレイヤーは狼の視点で世界を体験するので、まずは狼の視点を大事にすると決めました。そうなると、やはり九郎との関係にフォーカスせざるを得ない。おそらく多くのプレイヤーの方々もそう思うはずと思い、迷いなく狼と九郎のドラマにフォーカスしようと判断しました。

――その2人の関係性で何を大切にしましたか。

沓名:「孤独な主従の物語」とゲームの公式サイトにも書かれているぐらいなので、主従関係を超えた、友情か親子関係に近いもの、ざっくり言えば愛情をどう表現するかを重視しました。

狼には父との関係と掟を守るというものがあり、それを乗り越えた先に九郎への愛情があるはず。九郎の方は、自分が死なないと世界を救えないという葛藤の先にどんな決断をするのか、そこに向かって、2人の愛情のドラマを積み上げていくという感じですね。

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アニメでチャンバラをリアルに描く

――本作は剣戟が大きな魅力ですが、刀のぶつかり合うSEがゲームそっくりですね。

沓名:効果音を作る段階で何度かテストしてもらい、映画にする時はもう少しリアル寄せにした方がいいかとも考えましたが、色々試行錯誤していった結果、ゲームと乖離させない方がいいと結論づけました。

自分もプレイした時、刀を振った時の音が一番耳に残ったので、この音は聞きたいだろうと思ったので。

――戦闘シーンの演出で工夫したことはなんでしょうか。

沓名:アニメのチャンバラシーンは、過剰に刺激的なものになりがちというか、速いテンポで超人的なアクションを繰り広げるみたいなものが多いですが、この作品では地に足のついたものにしたいと思っていました。刀の扱い方や人の身体の重さなど、ゲームの持つリアリティをどう表現すべきかを考え、実写の映画を参考にしたり、実際の武道をやっている方たちを取材して、「こういう状況ではこう動く」という意見をお聞きしてアクションシーンに反映しています。

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――背景も含めて、全編手描きであるのが、本作の特徴です。制作時、何が一番大変でしたか。

沓名:古い建物を描ける人がいないということですね。アニメーターが背景の元になる絵をまず描いてから背景美術が描いていくんですけど、現代と建築様式が異なるので、資料を見ながら描いてもらわないといけない。あと衣装でも着物の重なり方や、歩く時の所作も和服では大股で歩くと着崩れしてしまうとか、あらゆるものが現代と違います。それを逐一調べてアニメーターに説明していかないといけませんでした。

背景資料もたくさん集めましたし、実際のお城にロケハンに行ったりもしています。時代考証の先生にもご協力いただきながらの作業でした。

――実写映画も参考にされたとのことですが、具体的にどんな作品を参考にしたのですか。

沓名:大島渚監督の『御法度』。黒澤明監督の『乱』。あとは木村大作監督の『散り椿』。このあたりはかなり濃厚に参考にしています。

――『御法度』はやや意外な感じがします。

沓名:そうですね。『散り椿』と『乱』は王道の時代劇だと思うんですけど、『御法度』は自分にとって、チャンバラをリアルに描きたいと思う、動機付けになった作品なんです。

『御法度』の殺陣って、アクションの見栄えよりも形を大事にするもので、形式ばった所作というか。初めて見たのは高校生ぐらいの時でしたが、当時すごく痺れました。それ以来、自分がチャンバラやるなら、こういう武術の型を大事にしたいとずっと思っていたんです。

あともう一つ、戦闘シーンは「アクション」というより「暴力表現」として描きたいという思いもあり、北野武監督の映画も参考にしています。

ちなみに、アニメで参考にしたのは『獣兵衛忍風帖』と『もののけ姫』です。宮崎駿監督は明言していないですが、『もののけ姫』は色彩が『乱』に似ていると思うんですね。『乱』をアニメに落とし込むお手本として参考にしています。それから『SEKIRO』はジブリよりもダークな世界観なので、特に背景美術とレイアウトに関しては、『獣兵衛忍風帖』をすごく参考にさせてもらいました。今回、金子雄司さんに美術監督をお願いしたのは、『獣兵衛忍風帖』の美術を担当した小倉さんの会社出身だからというのもあります。

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“映画監督をやる”ということ

――スタッフで言えば、佐藤卓哉さんが脚本を務めておられます。どうして佐藤さんに依頼されたのですか。

沓名:佐藤さんは監督もされている方なので、自分が初監督ということもあって、悩みを相談できる大人が欲しかったというのはあります。

あと、キャラクターの感情を掘り下げる佐藤さんの作品が好きなんです。自分はアクションは作れるので、キャラクターの感情の機微について佐藤さんの力が必要だと思って、お願いしました。

狼って全然しゃべらないし、そもそも本音を素直に言うキャラクターがあんまりいない作品なんですよね。セリフに頼って感情を描けないことが最初からわかっていたので、佐藤さんの力を借りたかったんです。

――多くをセリフで語らず映像で見せていくというのは、沓名監督がそういうタイプの作家だということなのでしょうか。やりようにやっては、もっとゴリゴリにアクションで魅せていく作風にもできる原作だと思います。しかし、静かなシーンはとことん静かで、静寂もすごく効いていますし、情緒も感じられます。

沓名:そうなのかもしれません。ゲームをプレイしていても、移動中の静かな景色がいいなと思ったり、ボス戦に向かう時、崖の端から見える景色がキレイだなと思ったり。それもゲーム体験として重要な要素だと思ったので、そういう静寂な時間も入れているんですけど、そういうのが好きなんでしょうね。確かに、バリバリアクションがやりたい人だったら、息つく暇もないアクション大作みたいな方向に触れる人もいると思います。

感情のドラマに対して結論を出すということを心掛けました。自分のフィルムを作りたいという思いと同時に娯楽作品としてドラマはきちんと完結させたい、そういうイメージで臨みました。もっと想像の余地を残してふわっと終わらせることもできるんですけど、自分はそういう部分にきちんと結論を出したいタイプなので。

――沓名監督は元々アニメーターですが、監督することをキャリアの目標にしていたのでしょうか。

沓名:最初は、アニメーターとしてどこまでできるかを追及していたので、監督になることは元々は、目標にしていませんでした。

ただ、原画から作画監督もやり、キャラクターデザインもやり、色々な監督と出会い、宮崎駿監督の作品にも参加して、これは驕りなんですけど「満足感」もあったんです。

そういう心境になって、演出に転向する判断をしました。アニメーター出身の演出家は、必要な処理をするだけで、作品に対する哲学が足りないことがあるのは、良くない部分だと思っていて、ちゃんと作家としてやっていくのであれば、簡単に監督になるわけにはいかないと思っていました。

なので、ショート作品を何本かやりながら、マーザ・アニメーションプラネットに5年くらい所属していて、そこで『こねこのチー』という作品を作りながら、表には出なかったけど企画開発をずっとやっていたんです。

その時、大量に映画を見て、大量に読書して、様々なことを学びながら、こういうものが自分が作りたいものだというプレゼンをたくさんやる時間に恵まれました。その経験があったおかげで、きちんと自分の色が出ている作品を作れたのかなと思っています。

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【作品情報】

■タイトル:SEKIRO: NO DEFEAT

2026年9月4日(金)より3週間限定上映

■STAFF

原作︓SEKIRO︓ SHADOWS DIE TWICE(株式会社フロム・ソフトウェア)

監督︓沓名健一

脚本︓佐藤卓哉

キャラクターデザイン︓岸田隆宏

副監督︓福井俊介

総作画監督︓茂木海渡

アクション作画監督︓向田隆

美術監督︓金子雄司

色彩設計︓佐々木梓

撮影監督︓野澤圭輔

編集︓村上義典

リキッドアート︓ハラタアツシ

カラーグレーディング︓福本達也

音楽︓蓮沼執太

主題曲︓坂本龍一「Blu」(『The Best of ʻPlaying the Orchestra 2014ʼ』より)

音響監督︓名倉靖

音響効果︓川田清貴

プリプロダクションポストプロダクションプロデュース︓スタジオベタ

プロデュース︓ARCH

アニメーション制作︓Qzil.la

配給︓ANIMEC

【CAST】

狼︓浪川大輔

九郎︓佐藤みゆ希

葦名弦一郎︓津田健次郎

仏師︓浦山迅

エマ︓伊藤静

半兵衛︓高瀬右光

梟︓土師孝也

葦名一心︓金尾哲夫

【作品公式サイト&SNS】

公式サイト︓【アニメ】http://sekiro-anime.jp/【原作】http://sekiro.jp/

公式X︓@sekiro_nd_anime

公式Instagram︓@sekirond_official_studiobetta

《杉本穂高》

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