現状のモバイルゲームのマーケティングにまつわる嘘と現実。業界のベテランが市場の真実を見極め、マーケティングする方法を解説【CEDEC2026】 | GameBusiness.jp

現状のモバイルゲームのマーケティングにまつわる嘘と現実。業界のベテランが市場の真実を見極め、マーケティングする方法を解説【CEDEC2026】

モバイルゲームのリリースとマーケティングに20本以上携わってきた経験をもとに、専門用語を使わずにモバイルゲームが抱える問題と解決策を解説します。

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現状のモバイルゲームのマーケティングにまつわる嘘と現実。業界のベテランが市場の真実を見極め、マーケティングする方法を解説【CEDEC2026】
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現在もゲーム業界の主力であるモバイルゲーム。中国や韓国から強力なタイトルが次々と台頭する時代となり、アプリにも相当のクオリティが求められる市場になっています。

その一方で、依然として売り上げを出すためのマーケティング方法も模索され続けています。CEDEC 2026では講演「ゲーム開発者こそ聞いてほしい。『スマホゲームマーケの嘘』2026」が行われました。株式会社サイバーエージェント パブリッシングパートナー事業部の部長を務める家門真明氏が登壇し、モバイルゲームのマーケティングについてを解説しました。

家門氏はモバイルゲームのリリースやマーケティングに20本以上も携わってきた経験を持つベテラン。「マーケティングの嘘」と強気なタイトルを持つ本講演のテーマは、家門氏が以前から自身のnoteでも発信してきたものでもあります。今回は専門的なマーケティング用語を使わず、誰にでもわかる形でモバイルゲームが抱える問題とその解決策を語りました。

「事前登録は短く」「初日から広告全開」は本当か——リリース前をめぐる“嘘”

初めに取り上げられたのは「事前登録の期間」についてです。しばしばモバイルゲームのマーケティングで言われる「事前登録は短くやったほうがいい」、「早くリリースして広告を回した方がいい」という考え方は間違いだと家門氏は指摘します。

実際に自社が携わるタイトルの認知度を毎月調査したデータでは「どのタイトルも4ヶ月以内は認知度が伸び続ける傾向にあり、それ以降は伸び率が悪化していくことが分かっている」といいます。つまり4ヶ月以内であれば、短期間で切り上げてしまうことはむしろ機会損失になり得ると説明されました。

また同じ広告クリエイティブで配信金額を倍にした場合、広告表示コストが約25%悪化するというデータも紹介され、「だったら同じ金額を2ヶ月続けておいた方がユーザーは1.25倍取れた」と、短期集中よりも一定期間続けた方が効率的だと語られています。

ただしAndroidの場合は事前登録からダウンロードへの転換率が5割程度にとどまる一方、iOSは強制ダウンロードの仕組みにより9割前後が転換するため、直前に配信を寄せる工夫が必要だとし、「じわじわ長くやりながら、最後は短期集中で勝負する」のがもっとも理想的な形だと結論づけました。

事前登録が長い『原神』や『ブルーアーカイブ』のようなタイトルも、費用のかからないSNS投稿などから早期に認知施策を始めている好例として挙げられています。

続いて紹介されたのが、「事前登録の方がユーザー獲得単価が安い」という、多くのマーケターが信じている説です。家門氏はこれを「残念ながら誤りです」と否定します。

その理由は、事前登録の成果地点(ストアの登録数)とリリース後の成果地点(サードパーティー計測ツールのダウンロード数)が、そもそも異なる場所で計測されているためだといいます。

実際に計測方法をあえて統一したデータでは、事前登録終盤とリリース後の獲得単価はほとんど変わらなかったことが示され、「事前登録の方が安いと言っているのは、正しく比較できていないだけ」だと説明されました。

広告は“リリース初日に全力”ではない——打つべきタイミングの見極め方

またリリース当日に広告を大量投下すべきという話題についても、「嘘」だと述べています。ランキング上位に必要なダウンロード数は、事前登録を丁寧に行っていれば初日にすでに積み上がっているとし、コアファンの獲得も事前登録の段階でほぼ終えていると指摘。

むしろ「サーバー不安定やゲームの不具合が起きやすい発売直後に、大きなプロモーションを投下するのはリスクが高い」と家門氏は語っています。

そのうえで、iOSはランキングが急激に上がって急激に落ち、Androidは緩やかに上下するというストアのロジックの違いを踏まえたうえで、「ストアランキングが落ち始めるタイミングから広告を打つ」ことで、自然流入と広告効果を両方最大化できると解説。初日はまず事前登録ユーザーの動きや課金傾向、LTVを見極めることに専念すべきだと語られました。

「ネット広告は正確に計測できる」という思い込み

さらに家門氏は、「インターネット広告は計測しやすい」という認識も明確に否定しています。「インターネット広告は計測できません。現代技術では正確な計測を行うことは不可能です」と断言し、サードパーティー計測ツールが示すダウンロード数と、実際のストアのダウンロード数は「めちゃくちゃズレる」と述べました。

あるタイトルの実例では、計測ツールのダウンロードと実際のダウンロードの数値が、なんと3割ほどズレていたこともあるとのことです。

原因は、広告を一定秒数見ただけでクリック扱いになる仕組みや、ゲーム内で動画広告が急に流れてストアが立ち上がっただけでクリックとして計測されてしまう仕組みでした。家門氏はこうしたことが起きる背景には「感度が高く、他のゲームの情報もよく収集している人ほど、実は知らないうちに広告をクリックしたことになっている」と考察しています。

加えて、休眠ユーザーの復帰や端末変更が新規ユーザーとして誤認されるケースも指摘し、特に長期運用タイトルほどこのズレは大きくなるといい、「運用期間が長くなればなるほど当たり前にズレが大きくなる」と注意を促しています。

対策としては、外部ツールだけに頼らず、ストア側が公開している「検索・閲覧・参照元アプリ・参照元ウェブ」といった流入経路データを自らセルフチェックする重要性が強調されました。

誤解はなぜ広まるのか——“一次情報”を持つ開発現場へ

最後に家門氏は、こうした誤解が広まる背景として、ゲーム開発の長期化によりマーケティング担当者一人あたりの経験値、すなわちリリースに関わった回数そのものが減っていることを挙げました。そのため、代理店やメディアから伝わる「二次情報」が、いつの間にか正しい前提であるかのように扱われてしまう構造があると指摘。

「ゲーム会社に勤めている我々こそが一次情報を最も持っている」としたうえで、そうした情報を互いに出し合い、業界全体で正しい知見を積み上げていくことの大切さを訴えました。

質疑応答では、事前登録ユーザーとリリース後獲得ユーザーのその後の課金データを比較できないかという質問が寄せられました。家門氏は「それはできません」と率直に答え、事前登録時のユーザーがゲーム内でどのIDに紐づくかは技術的に追えないためだと説明。

ただしiOSであればリリース当日に集中して入ってくる事前登録ユーザーのLTVと、それ以降に広告経由で獲得したユーザーのLTVを比較することで、ある程度の傾向はつかめるとしています。こうしたやり取りも交えながら、家門氏は「手を取り合って、仲良くしていければ」という言葉で講演を締めくくりました。

《葛西 祝》

ジャンル複合ライティング 葛西 祝

ビデオゲームを中核に、映画やアニメーション、現代美術や格闘技などなどを横断したテキストをさまざまなメディアで企画・執筆。Game*SparkやInsideでは、シリアスなインタビューからIQを捨てたようなバカ企画まで横断した記事を制作している。

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