【インタビュー】VESTAが目指す“ゲームの専門家”のスキルを生かした多様な事業展開 | GameBusiness.jp

【インタビュー】VESTAが目指す“ゲームの専門家”のスキルを生かした多様な事業展開

「一芸は道に通ずる」というスタンスでゲーム/サーバー/コンサル事業を展開するVESTA株式会社にインタビュー。

ゲーム開発 その他
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VESTA株式会社の公式サイトには「一芸は道に通ずる」の記載があり、自社のスタンスをこのことわざで表しています。同社の主な事業は、オンラインゲームの新規開発や運営の移管の受託を行うこと。そして自らを「ゲームの専門家が集まる会社」であると説明しています。

“ゲームの専門家”が開発会社に集まる……一見すると当たり前のように思えるでしょう。しかし、さまざまなゲームに関わるスキルを、サーバー事業やコンサル事業などに展開するなど多様な方向に生かす事業に広げているVESTAにとって、その言葉の中には更に奥深い意味合いが込められています。

GameBusiness.jpは、そんな独特のスタンスで事業を展開するVESTAにインタビューを敢行。取締役兼CTOの保泉氏と、執行役員事業本部長を務める佐藤氏にお話を伺いました。

多くの経験から「クリエイティブとビジネスを両立する企業」が生まれた


——VESTA株式会社のおおまかな事業内容を教えてください。

佐藤:簡単に説明すると、ゲーム開発とセカンダリの運営業務です。あとはゲーム関係のコンサルティングなどすべてを統括して、ゲーム事業として取り扱っています。

——保泉さま、佐藤さまの現在のポジションについてお聞かせください。

取締役兼CTO・保泉氏

保泉:取締役兼CTOをしている保泉といいます。現在のポジションでは、会社全体のエンジニアの技術責任を持っています。その他、ゲーム開発も引き続き担当しています。

執行役員事業本部長・佐藤氏

佐藤:僕は執行役員事業本部長というポジションです。基本的には事業全体を統括する立ち位置で、外部さんとのやりとりを直接行ったり、各プロジェクトから報告を受けて方針を決めたりする業務を担当しています。あとは、現在うちで開発しているプロジェクトの責任者も兼ねており、プロデューサー・ディレクターとして現場でも動いております。

——どのような経緯でVESTA株式会社を立ち上げることになったのでしょうか。

保泉:もともと自分はシステムエンジニアとして開発業務に関わっており、官公庁向けの端末管理システムなどを開発していました。でも、そうして働きながらも「ゲームを作りたい!」という強い想いを持っていたのです。当時、有名なオンラインゲームに没頭して遊んでいたこともあり、「自分もオンラインゲームを作りたい」という気持ちからオンラインゲームを開発している会社に転職しました。そのころ、日本にはオンラインゲームを開発している会社は少なかったのですが。

その後は、ずっとオンラインゲームに関わる開発と運営を行っています。特に長いところだと、会社の設立から携わらせていただき、いろんな経験をさせていただきました。そうしたキャリアを経て、自分の中では結果を出せたと感じたので自分で起業し、オンラインゲームの開発と運営をしていきたい、オンラインゲームを開発できる人を増やしたいと思い、VESTAを立ち上げました。

幸いなことに、オンラインゲームの開発と運営に強いメンバーが集まってくれたので、様々なタイトルに携わらせていただいています。その他にも自身も含めメンバーの経験を活かした新規開発の依頼もいただいております。

佐藤:僕は、最初に入ったゲーム開発会社で新規タイトルのコンセプトを決めていたフェーズから関わり、そこからリリース、運営までひと通り関わりました。ゲーム内容自体はユーザーさんからもかなり高い評価をいただけており、好評だったと思います。

ただ、そのゲームの運営コストが高すぎて赤字になってしまい、リリース後のプロジェクト状態は好調とは言えませんでした。その結果、他にも要因はあるのですが、ほぼ会社ごと別の会社に買収されてしまったんです。そのときにとても悔しい思いをしたんですよね。

ゲームが買収されたとき、「なんとか見返してやりたいな」という思いがあって、買収されてからは僕がプロジェクトの責任者になり、そこからガバッと方針を転換しました。ゲームの面白さをなるべく変えずに、再設計して黒字化まで持っていったのです。ゲームの面白さには僕も当時の開発メンバー達にも自信があったので、絶対に達成してやろうと思っていました。

そうした経験を経て、その後は移管を検討されている会社の方と直接お話をしたり、再設計のアイディアをお話ししたりといった業務を担当していました。

ただ、その会社の方針ではゲーム作りをほぼ行っていなく、「ゲームの運用に特化して数字を作る」という業務のほうがメインになっていました。そういったスタンスでは、クリエイターとしての未来に憧れを持って働いている部下や若い子たちに、良い経験をさせてあげられないのではないか……と感じてきてしまって。

——開発者としてモチベーションやキャリア、スキルアップなどに影響がありそうですね。

佐藤:かなり影響していると思います。ある新人の子が言ったんです。「この会社にいたら、自分のスキルは全然伸びない」と。それを聞いて、ある程度は仕方ないよねと思ったところがあって。

なので、ゲーム作りとビジネスが両立した会社って作れないのかなと普段から考えるようになっていたんです。そんなときに、仲川(現VESTA代表取締役社長 )に「同じことを考えている」と声をかけられ、「じゃあ一緒に会社をやっちゃいましょうよ」と起業時点から参画する事にしたんです。

——VESTAは「ゲームの専門家が集まる会社」と説明されています。具体的にどのようなスタッフが会社に集まっているか、お聞かせください。

佐藤:ゲーム作りをしつつ、ビジネス面でも優れた結果を出したいと思っているメンバーに来てもらっています。数字も見るし、ゲーム作りもちゃんとやる。その両方を主軸にしているスタッフが集まっています。

保泉:エンジニアスタッフの経歴でいうと、コンシューマーの開発経験があるスタッフもいますが、多くはオンラインゲームの開発を初期から担当し、リリース・運営まで携わっているスタッフが集まっています。

——かなり経験値の高いメンバーが集まっているんですね。

保泉:そうですね。特にリリース前って負荷試験だったり、サーバーのチューニングを行う必要があるんですよ。そういったことを経験しているスタッフが多いのも、VESTAの特徴かなと思います。

——VESTAには、既存のオンラインゲーム開発・運営企業のビジネスを重視した方針とは差別化したい思いがあるように感じられます。公式サイトでも同様に「ゲームの専門家が集まる会社」と打ち出されていますね。

佐藤:なかなか難しい話で、オンラインゲームの開発・運営企業が数字を重視する事業方針って別に間違ってはいないんです。ビジネス上は正しい。かたやゲームの開発会社って真逆に振り切っているところもあって、数字や予算をまったく見ないで本当に作りたいものを作るという職人気質な企業さんもいらっしゃいます。

——そちらもよく聞くお話です。

佐藤:僕はゲームの取り扱いにおいて、その両極端を経験してきたんです。最初の会社では振り切って面白いゲームを作ろうとしてみたものの、運営が上手くいかなくて買収されてしまって、次の会社ではビジネスサイドの感覚が強すぎ、「ゲームを面白く作る」ということはあまり重視されなくなっていた。そこで「“開発重視”と“ビジネス重視”の中間って狙えないのかな?」と思いまして。

保泉:ゲーム運営は「ビジネス」だと思うんですが、そのコンテンツがどう育つか、どう遊んでもらえるかがすごく重要です。やはり、作り手が面白さを感じないまま作っていたら、ユーザーも遊んでくれない。それにプラスして、遊んでいるユーザーさんが好意的にゲームへお金を払ってくれることも大事ですよね。そういう考え方のもとで、VESTAでは「コンテンツを大事にする」ということを主に置いています。

——ゲーム作りの「クリエイティブ」と「ビジネス」を両立させるバランスについて、どのように考えていますか。

保泉:コンテンツを大切に扱い、良いものにしてお金にするところまでを、ディレクションしていきたいと思っています。失敗するのはいつもディレクションなので。VESTAのスタッフはゲームのディレクションに強みを持っているので、ゲームをディレクションすることに特化していると思っています。

——コンテンツを大事にするためには、開発だけでなく普段からゲーマーとしてどれくらい遊ばれているかも、重要となってきそうです。おふたりともポジション的にお忙しいと思われますが、さまざまなゲームに触れられているのでしょうか。

佐藤:一般的な方と比べたらめちゃめちゃ遊んでるとは思います(笑)。

保泉:スマホのゲームにしても新作が出たら触りますし、コンシューマーの話題作も遊びます。触れる時間は多くなく「土日にどれだけ遊べるか」って問題もあるんですが(笑)。ゲームが好きなので、いろんな作品に触れるようにしていますね。

佐藤:僕は最低週40時間くらいは遊んでますね。尊敬する先輩方が、とにかくゲームに触る人達だったので、いまでも真似て意識はしています。

——それはなかなか遊ばれていますね(笑)。

保泉:ふつうに一週間のノルマとしてね(笑)。

佐藤:仕事しながらの身で言うと、それなりにやっているほうじゃないですかね。

あらかじめ開発で起きやすいリスクをすべて織り込み、事業計画を進めるスタイル

——受託して行う「ゲームの新規開発」では、どのような業務を行うのでしょうか。

佐藤:新規開発に関しては、セカンダリの仕事も一緒なのですけど、基本的に顧客との目線合わせから入ります。要は、どこをゴールとして進めたいのかをちゃんと先に決めるという形です。

大抵の企業さんでももちろんゴールは決めているとは思うんですけど、ゲームの新規開発って、後から問題が起こることも現場レベルではよくあるもので、頻繁に発生するのが予算の増大。あとはリリース時期の延期。どのタイトルでもほぼ確実に起きると言ってもいい。それって、会社にとっても大きなリスクですよね。

顧客がVESTAに開発を依頼する場合でも、あるいはVESTAでオリジナルタイトルを作る場合でも同じで、それって大きなリスクになり得るんです。そういうことであれば、最初からリスクを見込んで計画を立てて、隠さず見えるようにしておくと、お互い不安がない状態でスタートできます。

——最初に顧客と開発プロセスに付き物のリスクを共有することから始めるんですね。

佐藤:はい。リリースの延期が起きたり作り直しが発生したりするリスクを、あらかじめ予測するんです。そこを包み隠さず伝える事から始めています。

また、僕らは、運営に失敗した状態のタイトルを複数扱ってきたので、何がダメで失敗したのかという理由をよく知っているんです。それは逆に言えば、「何をすれば失敗を回避出来るのか」というのもよくわかっている、と言えます。ゲームがリリースされてから起き得ることの想定ができるんですよね。

——先に佐藤さんがお話されたような経験によって、リスクが見えることは大きいですね。

佐藤:そうですね。たとえばリリース後のアップデート計画も全部取り込んだ状態から開発をスタートさせるので、「巻き戻り」がほぼ出ないんですよ。そうなってくると全体で見たときに費用がかなり安くなったり、スケジュールが遅延する事も減ってきます。

現場が最も困るのは、いままで作ってきたものを全部ドーン! ってひっくり返されてしまうことです。いろんな現場でしょっちゅう起きちゃうので、極力出ないように「ここがゴールで、こういうところまで機能が入り、リリースされたあとにこういう機能が実装される」という計画を緻密に引きます。

通常はそれでだいたい終わるんですが、うちの場合は「こうなったら、このゲームは運営終了になるだろう」ところまで計画を引くんですよ。「何年運営して、このタイミングでこういうことが起きてサービスが終わる」ところまで、良くないパターンとして計画で置くようにしています。

そうすると全体のリスクボリュームが見えるので、使って良い時間とお金、必要なパフォーマンスがすべて可視化されます。見えない不安が無くなったのであれば、あとは「みんなで楽しいものを作ろうよ!」と一気に開発していくという流れです。

——あらかじめ事業計画をガッチリ引いているから、先ほどお話されたクリエイティブとビジネスの両立を可能としているのかと感じました。

佐藤:はい。ただ、顧客の意向が途中で変わることもあるんですよ。それも起こり得るものだという感覚があるので、更にその分のバッファを取っていたり、そのタイミングで打ち合わせをもう一度行うことも先の段階に入れていたりします。一応、途中で仕様変更して欲しいという意見やお願いを聞ける体制にしているというような感じです。もちろん、使わなかった予算は不要でしたと正直にお伝えして、無駄は完全に省きます。

保泉:新規開発における全体計画は、佐藤がやってくれています。エンジニアリングの計画部分でいうと、ローンチ時に「サーバーが落ちないようにしたい」とか、様々なリクエストがある中で、負荷試験や、KPIツールなどを計画に盛り込むようにしています。

——新規開発においては、どのようなクライアントとの取引が多いのでしょうか。

佐藤:うちはジャンルにこだわりがあるわけではないので、いろいろな顧客がいます。普段遊ぶゲームも、特にジャンルに制限なく触るように心がけています。ただ、オンラインゲームを最も得意としているので、マルチ要素が強いゲームは強みを発揮できる分野です。ギルドバトルがあったり、マルチプレイがメインのゲームなど。ちょうど現在開発中のタイトルも、マルチプレイのあるタイトルですね。

保泉:セカンダリも新規開発も、ほぼマルチプレイのタイトルですね。

——そうしたオンラインゲーム開発を中心とした強みが、さまざまなクライアントが安心してご依頼できるポイントになっているのでしょうか。

佐藤:オンラインゲームのマルチプレイで大きい要素って、やはり「コミュニケーション」じゃないですか。それって数字化しにくいんですよ。つまり、「人と人が繋がっていると、どういう効果がある」っていうところは明確にできていないんです。

どちらかというと、今まで見てきた感覚というのが重要になる所だと思うんですね。どういうことが起きるとユーザー同士のコミュニケーションが起きるのか、それを知っているのと知らないとでは全然違ってきます。そういう意味で、オンラインを主体としたゲームの取り扱い経験が多いので、VESTAは一歩秀でているのかなと思います。

——そうした経験による開発・運営の感覚は大きいですね。

佐藤:弊社のメンバーは、いわゆるMMORPGなどが大好きな人たちで揃っているというのもあります。有名MMORPGは当たり前にプレイしていますし、オンラインゲームの楽しい部分をよく知っています。

保泉:エンジニアには「オンラインゲームを作れる人になってほしい」とお願いしています(笑)。オンラインゲームを作れるエンジニアって多くないんですよね。「オンラインゲームがどういうものか説明してよ」と聞いたとき、返答できない人も多いんですよね。

——それは少し意外な印象もあります。

保泉:コンシューマーとオンラインゲームの違いがあまりわかっていない人も多くて。結局、コンシューマーといってもニンテンドースイッチのゲームにだってオンライン要素は「ある」じゃないですか。他のプレイヤーにあいさつしたりする、簡単なコミュニケーション要素を持つゲームであっても「コンシューマー」と言われていて。確かにゲームの遊び方は「コンシューマー」かもしれないけど、ゲーム中「オンライン」で友達と遊ぶ機会ってあるじゃないですか。そういうところは全部「オンラインゲーム」なんだよって説明していました。

——たしかにコンシューマーの有名タイトルでも、人気の作品は大なり小なりオンラインの要素が入っていますね。

保泉:あとは、開発に入ったら「オンラインゲームに必要な要素とは、こういうものだ」と理解しているメンバーが多いので、それを自分たちで提案して能動的に作っていくようにしていますね。

——ゲームのセカンダリ事業に関しては、どのような業務を行うのでしょうか。

佐藤:これも、新規開発とほとんど変わらないですね。「運営だけをやる」という感覚はなくて、セカンダリ事業の中でも、ちゃんと開発しなくちゃいけないものは開発するし、再設計しなくちゃいけないものは一から作り直すことをやったりもします。だから、新規開発とあまり差はありません。

——セカンダリ事業の業務フローも、先ほど語られたクライアントとリスク確認してから進めるかたちは変わらないと。

佐藤:そうですね。そこまで変わらないです。セカンダリ事業であっても、お受けするときに全期間のスケジュールや費用の使い方を見てもらったうえで進めるので。

ただ、顧客にとって「ゲームを預けるとき」って不安を感じるものなんですよ。僕が移管される側の経験者だという事もありますが、「この会社にお願いして、本当にちゃんとやってくれるのかな?」って不安を感じてしまうんですよね。

その不安をなるべく取り払いたいと思っているので、たとえばリードクラスのメンバーを1名だけ顧客の会社に先行させて、運用している人たちの気持ちや考え方をちゃんと聞き込み、理解させてから、他のVESTAのメンバーを徐々に入れていく……なんて移管フローを、僕らは推奨しています。

一気にメンバーを変えてガーン! とやってしまうと、そのゲームが持っている大事な部分が引き継がれないかもしれません。意味や意図が分からないまま移管が進んでしまうのは、頼む側も受け取る側もお互い不安ですよね。なので「このゲームのいいところ、大事にしているところを理解してから、少しずつメンバーを入れ替えていきましょう」と提案させていただいています。

——おふたりの経験から、昨今のオンラインゲーム市場においてどのような開発・運営が求められていると感じていますか。

保泉:僕が感じているのは「オンラインゲームの作り方は難しい」と捉えている方が、わりと現場に多いということですね。どう作ったら面白いかとか、どう作ったらゲームが不具合を起こさないかとか、そういったいろいろなポイントがある中で「面白さ」と「安定性」をわかって作っている人が市場から求められているんじゃないかな、と僕は思っています。

やはり、オンラインゲームは安定することが必須だと思っています。安定した状態でリリースできて、初動の結果もしっかり出して、その上でユーザーさんが沢山ついてきて……というのが、オンラインゲームの理想形だと思うんですね。

リリース直後の最初のタイミングでサーバーが落ちちゃって、そのままユーザーが入ってこないようなタイトルも多かったので、そういった事故を起こさない開発力が求められていると感じています。

佐藤:スマホゲームの開発・運営は年々コストが上がってきています。単純にグラフィック品質もよくなっていますよね。当然、以前よりも品質の高いゲームでないとユーザーさんからの興味もひけませんので、どんどん良いものを作ることになっていきます。そうなると、費用もエスカレートしますよね。

しかし、ユーザーさんのお財布事情が大きく変わるわけではないので、費用と合わせて値段を上げればいいってものでもない。そうなってくると「費やした開発コストをどのように回収し、どのように赤字ならないよう保つか」という問題に、企業として対応する必要が出てきます。

そういうときには「じゃあどこまでやればユーザーさんに満足してもらえるんだろう?」 と考えないといけません。この機能が無いと不安になるかもとか、そういったものをあらかじめ知っておく必要がある。

——開発にコストをかけるポイントを理解しておくという事ですね。

佐藤:はい。ユーザーさんが求めていないところに沢山のコストをかけても、しょうがないんですよね。作ってる側のエゴで「こんなビジュアルにしたいからお金をかけるんだ!」なんてアクションを起こしたところで、ユーザーさんに喜んでもらえなかったら意味がありません。「ユーザーさんが目を向けるものって、なんなんでしょう」という部分を、時代に合わせて知っておくことがすごく重要だと思います。

僕らは一度失敗したタイトルで大小様々な再設計をチャレンジしてきたので、ユーザーさんがどこで満足するかのラインがある程度的確に判断出来るのが強みです。通常の運営をしていたら怖くて踏み切れない物なんですが、再設計をチャレンジし続けた中で、「ここまでやれば満足してくれて、これ以上のものは別に求めていない」と理解できるようになっています。

ゲームって、拘って作ろうとすると天井がないので、お金をかけようと思えば何百億円でもかけられます。だけど、そうなると回収できないですし、会社が保たない。そうならないように必要なものと必要ないものをちゃんと切り分けていくことが、必要だと思います。

ゲーム開発のスキルをさまざまな事業に広げる

——VESTAの公式サイトには「一芸は道に通ずる」と書かれています。ゲーム事業の他にサーバー事業を展開するなど、ゲームエンジニアのスキルを他の事業にも広げていくスタンスはどのように出来上がったのでしょうか。

保泉:オンラインゲームで使われている技術や仕組みっていうのは、もともとオンラインゲームのために用意されたものじゃないんですよね。「ゲーム以外にも、その技術は通用するよね」ということを仲川と僕で考えていました。その技術をいろんなことに提供できればいいねという話から、他の事業にも視線を向けました。

たとえばサーバー事業はゲームという目線で見たとき、先程話したような負荷試験などに繋がります。どういうサーバー構成にしたら負荷が減って、安定したサービスを提供できるかを提案するといった形です。また、オンラインゲームは運営が長くなればランニングコストがどんどん嵩んでいくじゃないですか。そのランニングコストを適切にしていくのが、事業のひとつと考えているんですよね。

オンラインゲームに限らず、サーバーを使ったいろんなコンテンツビジネスなら「ここのコストを下げられるよね」とか「このサーバー構成であれば、この部分のサーバーのスペックをもう少し下げられますよね」などの解決策を提案できます。いまのメインはゲーム事業ですけれど、ゲームに限らず様々な分野にサービスを提供したいと思っています。

——その他に、コンサル事業なども行われていますね。

保泉:ゲームの方面で言うと「このゲームをローンチしたいんですが、どうしたらいいか分からない」とお悩みのチームが結構多いんですよね。というのも……開発を2~3年続けてきたんだけど、実際にローンチに至るまでに何の作業が必要か、他にも継続してチームで開発・運営できるかどうかなど、いろんな悩みを抱えている企業さんが沢山いらっしゃるんです。

そのときに、僕らが第三者として入って、第三者の目線から「このチームのここで問題が起きているから、このように改善していきましょう」といった提案をしています。僕らも失敗を重ねてきたからこそ、失敗した経験をベースとして提案できるんです。

——そのほかに、ゲームエンジニアのスキルで広げられる事業のアイディアはございますか。

佐藤:そういう意味では「わりと全部」です。これはエンジニアに限った話ではないんですけど、企画して、計画して、ものを作って出す。出した結果、新たなニーズが生まれて、そのニーズに合ったものを作っての繰り返しで、世の中すべて成り立っているなと。それは自動車事業や携帯電話事業も一緒なんじゃないかと思います。

「サービス」と呼ばれているものは、すべてそうであると思ってます。特に今の世の中はいろんなものが電子化してきている状態なので、それこそITエンジニアなどはどんな場所でも活躍できますよね。

保泉:僕らの主となる事業はゲーム関連ですけど、「オンライン」であればVESTAの技術はなんにでも転用できるんじゃないかと思っています。たとえば、市町村がアンケートのWebサイトを作ったとき「大勢のユーザーが同時に接続したためにサイトが落ちてしまう」という問題が起きるとしますよね。

僕らならその問題を事前に防ぐことができるんですよ。オンラインゲームの技術を使って、負荷を分散できますから。そういった、ゲームと直接関わりがない事業においてもVESTAとしてお手伝いできたらいいなと考えています。

——そうした業界にも事業を広げていくのは面白いですね。

保泉:ゲーム業界だから「ゲームの技術なんでしょ?」って、みんな考えると思うんですよ。そうじゃなくて、その技術を使えば実際に不評だったところって全部改善できると思うんですよね。だって、ゲームで出来てるんですから。

例えばアンケートのWebサイトを手掛けるとして、質問形式で構築すればすぐ終わるのか、チェックすべき場所はどこなのか……そういったポイントを考えるときにも、ゲーム関連事業で得たノウハウを活かせます。オンラインゲームで培った技術で改善すれば、実際に使ったときに気持ちいいと感じられるものが出来上がるかもしれませんよね。また、参加率の低いアーケードのものでも「じゃあビジュアル的にこうしたら参加率が高くなりますよね」など、提案できると思います。そういうところに自分たちのスキルを応用できればいいなと考えています。

佐藤:逆もまたしかりで、システム開発ですごく優秀な方だったらゲームを作れるはずなんです。考え方の基本は同じなので。

保泉:そういうスタッフもうちにいますね。いままでWeb系の業務システムを作っていた子がいて、うちに入社するときに「同じことをやるんだよ」って説明したり(笑)。

——最後に今後の展望や、事業を通してチャレンジしていきたいものについてお聞かせください。

保泉:僕らは、VESTA設立のときから「この仕事、やってよかったな」とスタッフのみんなに言ってほしいと思っているんですね。もちろん今はゲーム事業も多いので、みんなゲームを作る仕事をやってよかったなって思ってもらえるように一生懸命取り組んでいますし、これはずっと続けていきたいと思っています。

あとはみんながオンラインコンテンツを作れて、技術的にも秀でているスタッフであってほしいということです。今後も、オンラインに関わるものに携わっていければいいなと思っています。

佐藤:目標としては「うちに関わっているすべての人の価値が高くなる」ということを目指しています。価値を上げてもらうには、顧客に満足してもらう必要があるし、ユーザーさんにも満足してもらう必要があります。

個人が幸せである状態って、プライベートなどいろいろあると思うんですけど、会社から提供できるものは「社会的地位」と「お金」と「経験」、この三つに限られるかなと思っています。それらがちゃんと満たされ、個人の価値を高い状態にするのが、いまの目標です。

僕も含め、うちで働いているみんなが「ああ、この会社で働いていて幸せだったな」って最後に言ってくれればそれで満足なんです。役員も従業員も、全員が「よかったね、うちの会社」と言って、ゲーム人としての人生を終われる状態にしたい。その未来に向けて、ずっとチャレンジしています。

——本日はありがとうございました。

VESTA株式会社 公式サイト
《葛西 祝 / 写真撮影:乃木章》

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