“五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く | GameBusiness.jp

“五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く

本体はゲーム空間と現実をつなげるゲート、コントローラーはそれを開ける鍵。

ゲーム開発 その他
“五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く
  • “五次元”から現れた存在―PS5本体デザインに込められた想いをデザイナーに訊く

PS5シニアアートディレクター・森澤有人氏


いよいよ発売を迎えるPlayStation 5(以下、PS5)。性能やDualSense ワイヤレスコントローラーについてなど、ゲーム体験面での話が多くの注目を集めている昨今ですが、ここでは本体デザインについて目を向けてみます。


2020年6月のお披露目の際、そのデザインに驚かれた方も多いと思います。曲線を多用した白と黒のツートーン。従来のPSハードの中でもかなり独特で、特徴的なデザインが施された本体は、現に多くの反響を得ていました。果たして、このデザインはどのように描かれていったのでしょうか。


今回は、PS5本体やDualSense、周辺機器のデザインを監督された、シニアアートディレクターの森澤有人氏へインタビューを実施。PS5本体デザインに込められたコンセプトや、デザイン思想を伺いました。


――森澤さんは、PS5開発にあたって、どのような作業を担当されていたのでしょうか。


森澤有人氏(以下、森澤)私は、シニアアートディレクターとして、PS5の本体や周辺機器のデザイン作業全体を見ています。また、PS5本体のデザインも私が担当しました。


――2020年の6月に初めて披露されたとき、かなりの反響があったかと思います。


森澤前夜祭からすごく緊張しながら発表を見ていましたね(笑)。いい評価も多く頂いているので、大変嬉しく思っています。


――PS5は非常に特徴的なデザインですよね。私も初めてみたときは驚きました。このデザインにたどり着くまで、どのくらいの時間をかけられているのでしょうか。


森澤デザインを考え始めたのが、2年ほど前ですね。私は以前、ソニーの他製品のデザインを担当しており、プレイステーションに携わるのは今回が初めてでしたが、デザインにもこんなに時間を掛けるのかと、驚きましたね。


初期の頃は様々なデザインを考えて、プロトタイプも結構な数を作りましたね。具体的な数は言えませんが、ひとつのコンセプトを決めてから、それに対するデザインをいくつもいくつも出していきます。




――今、コンセプトのお話が出ましたが、今回の本体デザインにはどのような想いが込められているのでしょうか。


森澤「プレイステーションとはどういう形であるべきか」を考えていく中で、まず「プレイステーションとはなんだろう」という部分から考え始めました。私自身もプレイヤーなので、プレイステーションの世界や経験、エネルギーといったものを形作れたら良いものになるのではないかと。


自分がそう考えた時に、例えばロードの速さなど、様々な機能をもってしてPS5が「次元をまたいでいる」ように感じられました。現実とゲームが繋がる。そのイメージから、今回は「五次元」という言葉をコンセプトにしました。別次元の世界から現れたモノを、人と繋げていく。本体はゲーム空間と現実をつなげるゲート、コントローラーはそれを開ける鍵。そのような想いがデザインに込められています。


――白と黒のツートーンを採用したのも、やはりそのコンセプトによるものなのでしょうか。


森澤そうですね。PS5が五次元と三次元を繋げる物体であると考えた時に、人と世界を繋ぐエネルギーが形になっているような想像をしていました。ひとつの塊としてではなく、いくつかの面が宙に浮いていて、それがなんとか形を保っているようなイメージです。


本体中心の黒い部分は、五次元の無限の可能性を持つ強大なエネルギーそのものであり、それを挟む白いパネルは、人と五次元の間にあり、なんとか人とコミュニケーションを取るために形作られたものというイメージです。それを表現するために、今回は白と黒のツートーンを採用しました。




――なるほど。曲線を多用したデザインになったのもコンセプトからなのでしょうか。


森澤曲線に関しては、エンジニアの考える内部構造を強く意識しています。PS5は非常にパワーのあるコンソールであり、その分熱量も大きくなっています。となると、冷却のためのエアフローというのはとても大事になってきます。クロソイド曲線という、巻き貝のような空気の流路に沿って、箱型から余計な部分を削ぎ落としていった結果が、曲面を多用したデザインになります。内部構造の空気の流れが、外側に現れているんです。


例えば、本体前面の黒い部分は上部が丸くなっていますよね。あれは、ファンによって側面から入っていった空気の流れが外側に現れているものです。四角くすれば、デッドスペースとなる部分ですね。また、天板の羽部分も、伸ばしたわけではなく、削った結果現れたもので、空気の流れを考えた時に、あの部分は欠かせないものなんです。


デザインにおいて大事なのは、どれだけプレイヤーの体験を邪魔しないか、というところだと思います。今回、冷却用のファンは大きな物を使用していますが、本来であればより小さく薄くしてくれとデザイン側から言われる部分だと思います。ですが、私自身はいちプレイヤーとしてもそれで本体のパワーを活かせなくなるのは嫌なんです。大きなファンで多くの空気をゆっくり取り込んで静かに流すということには非常に共感しているので、それを表現でき、最大限活かせるデザインというのを考えました。



内部設計を軸に、幾何学を基本骨格として描かれたPS5のスケッチ


――背面の排気口も、過去のハードとは一線を画すデザインになっていますよね。パワーを感じさせるデザインと言うか。


森澤ここも、ハードの性能を邪魔しないことを意識しています。背面は全て排熱口というのは、ハードのパワーを活かし、表現するためのひとつのこだわりですね。最初は、開けすぎてエンジニアから「もう少し減らしてください」と言われるくらい開いてました(笑)。排熱口の角度も、ファンの回転方向が基準になっています。


PS5製品群をデザインする際、「スタイリングのためだけの線」は引かないようにしました。全ての線やデザインに機能的な理由をもたせているんです。やはり、デザインに説得力があると、にじみ出てくるかっこよさがあると思います。


3Dモデリングの際も、私は内部部品の数値をもとにワイヤーフレームから先に書き、すべての外形線を書いてから曲面を調整していくので3Dモデルを非表示にしてもアウトラインだけで立体が分るように作っています。今ではあまりやらない手法ですね。




――ハードの性能を最大限活かせるデザインになってるんですね。デザインするにあたり、他にどのようなものからインスピレーションを得ていたのでしょうか。


森澤基本的にはプレイヤー体験が第一になるので、他にインスピレーションを受けた"モノ"というと、特にはないですね。ただ、私がディレクションする際は、コントローラーや周辺機器も同じ宇宙から生まれてきたものと感じさせたいと考えていました。少し生命感のあるデザインや、本体はゲートでコントローラーは鍵であるというコンセプトから形作っていき、本体からコントローラー、周辺機器と、人に近づくに連れて柔らかいデザインになるよう作っています。五次元から来た物体が、なんとか人と繋がろうとしているイメージですね。


――他に気になっているところとして、LEDの光が天板に淡く反射するように作られていますが、どのような意図があるのでしょうか。


森澤製品としてのLEDライトではなく、エネルギーが溢れているような表現をしたかったんです。また、プレイヤーとしても、前面で煌々と光っているよりかは、さりげなく光っている方が邪魔にならないのではと思い、デザインしました。正面や斜めなど、様々な角度から見てみると、それぞれ印象が変わるのも特徴ですね。




――LED部分にもデザイン性を感じられるのは、ゲーム機としては独特な体験でした。


森澤PS5は隅から隅までデザインの力を振り絞って作っていますね。PS5開発の全ての人が、次世代へ向かって一緒に冒険しているというのを感じていましたし、デザイナーとしてももっともっと先へ行かないという思いはありました。相応のプレッシャーも感じていましたが(笑)。


――スタンドも面白いデザインになっていますよね。


森澤スタンドも非常にこだわっていて、今回は1つで2つの役割をこなせるようになっています。通常であれば、シンプルに縦置き・横置きの2つ作れば終わりなのですが、その場合、使わなかったもうひとつはどうなるのかという話をしながら、1つのもので解決できるように制作を進めていました。


メカニカルな動きをし、縦置き時に使うネジを仕舞うスペースが有るなど、機能的にも凝っています。実際、機能を組み込むのは非常に大変で、もうギリギリまで作っていたのですが、エンジニアは楽しんでいましたね。


――天板の羽の部分や、スタンドを付ける際のガイド、コントローラーのエンボス加工などに「△○×□」が隠されていたりと遊び心も感じられますね。


森澤例えばスタンドのガイドには、文字を書いたり線を引いたりという手もあるのですが、急にプロダクト感が出てきてしまうんですよね。やはりゲーム機なので、遊び心は必要かなと。一応最初は隠していたのですが、発表会の直後に見つかってしまい驚きましたね(笑)。


五次元の存在というのに絡んで、「△○×□」にも、例えばプレイヤーの感情であったり、△○×□の形をしたマイクロマシンが積層してできているといったようにストーリーが込められています。


どんなに細かいところでも力を尽くしてデザインしなければならない、という気持ちで作業していて、「△○×□」テクスチャーに関してもデザイナーが手張りでひとつひとつデザインしています。周辺機器含め様々なところに散りばめられているので、探してみてください。











――本体デザインの話を聞く機会はあまりないので、今回非常に楽しかったです。本日はありがとうございました!

《Takuya Suenaga@Game*Spark》

関連ニュース

特集

人気ニュースランキングや特集をお届け…メルマガ会員はこちら