ARによって、物語を体験する可能性はどこまで掘り下げられるのか?『かいじゅうのすみか 体感エンターテイメント』の事例から解説【CEDEC2020】 | GameBusiness.jp

ARによって、物語を体験する可能性はどこまで掘り下げられるのか?『かいじゅうのすみか 体感エンターテイメント』の事例から解説【CEDEC2020】

ARを使ったゲームが再び注目を浴びつつありますが、今ではARのコンテンツがさまざまな所で使われており、目新しさは少ない現状でもあります。そこで「物語」を生かした体験がどうなるかが語られました。

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ARによって、物語を体験する可能性はどこまで掘り下げられるのか?『かいじゅうのすみか 体感エンターテイメント』の事例から解説【CEDEC2020】
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『ポケモンGO』などがヒットしたことで、ARを使ったゲームが再び注目を浴びつつあります。

ですが今では、スマートフォンを利用したような、ARのコンテンツがさまざまな所で使われており、目新しさは少ない現状でもあります。そこで今は、ARをどのようにユーザーの「体験」に結びつけ、印象付けていくか? という課題が残されていました。

ユーザーの体験として大きなもののひとつは「物語」でしょう。昨年2019年、東京ドームシティで行われた円谷プロダクションのイベント『かいじゅうのすみか 体感エンターテイメント』(以下、『かいじゅうのすみか』は、ARがいかに無理なく物語や謎解きの中に溶け込むかを意識して制作されたプロジェクトです。

今回のCEDEC 2020では、この『かいじゅうのすみか』の事例を元に、「ARによる物語体験への挑戦」についてのトークセッションが行われました。いかにARを、物語として昇華したか? について語られます。

ARゲームの現状についての説明



まず冒頭ではARゲームの概要と現状について、ゲームデザイナーの石川淳一氏が登壇。石川氏はPC98の『大戦略』シリーズから、30年以上の長きにわたりゲーム開発に携わるベテランです。

近年の石川氏はARやVRによる物語体験を追求していることで知られています。ARGのニュースをまとめたサイト「ARG情報局」の編集を務めているほか、IGDA日本のSIG-ARG正世話人なども行い、過去のCEDECでも数多くのARゲームや代替現実ゲームに関する講演を行っています。


さてARをゲームにする特徴とは何でしょうか。これは現実世界に、CGなどで作られた拡張現実を出すことが大きな魅力となったものです。うまく拡張現実をオーバーラップさせると、虚構の出来事なのにリアリティのある体験を作ることができるのです。一方で、現実世界が絡むため、虚構ならではの嘘が付きにくいという欠点もあるそうです


そんなARゲームには、現在どのような分類があるかを紹介。まず家庭用ゲーム機では比較的、早い段階から登場していたことが言及されます。2007年には『THE EYE OF JUDGMENT』シリーズが、カードゲームをカメラに取り込むことで、カードのクリーチャーが画面に現れるという仕掛けを行っていたといいます。

しかしゲームプレイが大掛かりになりやすいのもあり、以降にはあまりARゲームは出てきておらず、Nintendo3DSの内蔵ソフト『ARゲームズ』あたりが代表的なゲームとのことです。

ではもっと気軽に使いやすいプラットフォームはなにか? というと、スマートフォンでしょう。カメラを利用したアプリケーションが豊富なこともあり、有名なARゲームがいくつか登場しています。

ひとつは『セカイカメラ』によるARゲームが挙げられました。アプリ内にARゲームを追加したモードがあり、拡張現実を楽しむゲームをプレイすることができました。

ARゲームが一般的になったのは、ご存知大ヒット作『ポケモンGO』です。現実の街並みを歩いてポケモンを捕まえるゲームプレイの他、カメラを通してポケモンに触れあう機能も充実しており、まさしく代表的な作品と言えるでしょう。

またアトラクションやイベントなどで行われるものも紹介。そんな分類の中でも、石川氏は「いま、スマホでARを使われることが多い」と指摘。やはり拡張現実を体験するデバイスとして非常に強い模様です。


続いてARがどのようにゲームに使われているかを解説。まず「何かを再現する」使い方が代表的なひとつだといいます

例として、先の『THE EYE OF JUDGMENT』のようにカードゲームをカメラに映して画面内にモンスターを表示するものや、『ポケモンGO』のように現実のポケモンを登場させるという、フィクションのキャラを現実に再現するものが挙げられました。


つぎに「現実に非現実が入りこむ驚き」があります。たとえば『ARゲームズ』では3DSのカメラを通して、現実でミニゲームができる楽しさを提供。『セカイカメラ』内のゲーム『セカイユウシャ』では、オンラインRPGを現実世界で行う面白さを出していました。


また謎解きゲームでの使われ方も紹介。ARを使った謎解きは、スタンプラリーのコスト削減やリッチさを生み出すためといったもの、という使い方もしているそうです。


最後に、今回のセッションに関わる物語体験についてが語られました。先述の『セカイカメラ』内のゲームのひとつ『エアノベル#15a24』では、「謎の男が現れ、ARやSNSを使って調査する」とう物語体験ができると紹介。

石川氏はARゲームの課題として、「AR体験が増えてきたことで、現実空間に仮想物を映して楽しいだけの時代が終わったこと」を挙げました。

これからは「ARだからすごい」から「こんな体験だからすごい」ことへ転換することが重要であると述べ、現実空間に仮想現実を投影するがゆえに、ユーザーにそのプロダクトを納得してもらうことが必要だといいます。

“かいじゅう”の住む世界を物語として体験してもらうために


今回の『かいじゅうたちのすみか』は、そうした先行事例をもとに、ARでの物語体験を追求したプロジェクトです。続いてスターティアラボの吉上諒氏が登壇。いよいよ本格的に物語体験の作り方が語られます。


『かいじゅうのすみか』とは、マルチメディア展開を考えたプロジェクトであり、ARゲームもそのひとつでした。「もしも、ウルトラシリーズに登場する “かいじゅう”(※セッション時の正式表記)が共存共栄している世界があったとしたら?」という発想をもとに、体感エンターテインメントを制作。デジタルを取り入れながら、 “かいじゅう”たちが住む世界を再現したしていったそうです。


ARで実現したかったことは、 “かいじゅう”の住みかの強化のほか、リアルイベントで表現しきてない世界観の伝達です。ARを使うことで、それらの体験と物語を拡張することでした。

いろんな “かいじゅう”がどんなふうに共存共栄しているかの様子を見られる体験を作るために、まずは体験を増加させること、出会い方を変えることなどを考え直しました。イベント会場では、リアルでできないことを意識したそうです。 


そこでいろんな “かいじゅう ”が実際に登場したらどんなふうに出てくるかの演出が為されました。たとえば真後ろから地面を突き破って出てくるゴモラや、会場の奥から登場するキングジョー、そして人気怪獣のバルタン星人は、壁に映されている演出からARで登場するような、唐突な登場をするなど、現地での体験を強化していました。


続いてイベントの物語を拡張する手法として、世界観に合わせて物語体験を作っていくことを目指しました。まず『かいじゅうのすみか』のリアル体験で伝えられないテーマを洗い出します。それは「 “かいじゅう ”たちの争いのない土地」や「来訪者について危害を加えることがない」という穏やかな世界です。

そんなテーマを伝えるために、ユーザーにきっかけをつくるために必要な要素、考えるきっかけとなるシーンを体験してもらい、ストーリーの中へユーザーを誘うことを考えたそうです。

こうしてARにより物語体験をとして、日常空間と物語空間の交差を目指していきました。その課題を解決するために、どのように日常に物語を出現させるか いかに物語をスムーズにできるかに取り組んでいきました。

まずユーザー側がいかにプロジェクトの認知から物語体験までの一連の流れを体験していくかという、ユーザージャーニーを作成。どうやってユーザーの日常に登場させるかについてを分析。


その結果、まず取り組んだのはTwitterによって認知してもらう作戦でした。運営側は「ESPer隊」というアカウントを作成。「日本で起きている異変を発信する」という意図で、日常に “かいじゅう”の世界が侵食している事態が起こっているかのようなツイートを上げていきます。


そこから興味を持ったユーザーには専用のスマホアプリを用意。アプリからは「ESPer隊」が語っているような異変をユーザーが観測できるようになり、物語世界に引き込まれていく仕掛けです。


こうしてユーザーを『かいじゅうたちのすみか』の物語へと引き込み、山場へと導くのが会場での施策です。これは「ESPer隊」からユーザーに依頼する形で、会場で大きな物語体験をしてもらうのです。


会場にてユーザーは探検家の手記を読んでいく体験をします。探検家の手記を追っていくと、手記と同じ体験が自身の目の前で起こり、会場を探検して 謎を解いていくかたちになります。

謎を解いていく最後には、会場である東京ドームシティと“かいじゅう”たちの世界が繋がってしまった原因にたどり着く体験を実現しました。これでユーザーはESPer隊からの依頼を達成し、探検家のたどり着かなかった真相にたどり着くことで、物語体験を完結させていくのです。

物語体験を深めるための工夫



ここまでの体験を深めるために、細やかな工夫もされていました。この物語体験を作るにあたっては、「文脈を徹底する」ことを強調しました。これは物語世界を本当のものだと思わせるということです。 “かいじゅう”の世界は文明がない安住の地。そのため文明的なものを徹底して排していったそうです。


物語体験を深めるために、いくつか課題を解決する必要もありました。たとえば「ユーザーが “かいじゅう”や探検家の記憶を見るのに、なぜARカメラ越しでなければならなかったか?」という疑問が、現実の感覚からすれば浮かび上がるでしょう。


この疑問を解消させる手法として、会場でユーザーに配布されるタブレットを「異星人たちによる情報を読み取るための石板」と設定。タブレットも赤さびのようなデザインを施し、そうした雰囲気を作っていったとのことでした。


続いてARを出現させるためのカメラ起動位置にも課題があったことを紹介。会場内で決まった場所にARを出現させるために、その場で特定のARカメラを起動させなけらばならかったそうです。

会場では、 “かいじゅう”ARと物語ARのふたつが同時に進行しており、それぞれのカメラが起動位置を間違えないように認識させなければいけませんでした。解決策としては、ARの出現トリガーを、 “かいじゅう”ARと物語ARの色を別々にグルーピングするといった方法など対応したとのことです。


さらにARでの水平面検出についても課題が浮かび上がりました。というのも会場が薄暗く、さらに黒一点の床ではっきりとした水平面の検出がしにくかったからです。解決として会場の照明を邪魔しない程度にブラックライトを使い、光を反射した時に検出しやすい点を出しやすくする模様のマットを敷いたそうです。


会場でARを表示させるための位置調整にも課題がありました。まず平面地図から “かいじゅう”の出現する位置を決定し、その後、会場設営の3Dデータを取得。Unityに組み込んで疑似的にARを配置したあと、実際の現場でARの配置を確認、調整を行ったそうです。


ところが位置調整を行っても、さらなる課題にぶつかります。「ユーザーはカメラを動かしてくれない」ということでした。

単にタブレットを持たせただけでは、ARが出現する場所までカメラを向けてくれないのです。水平面検出をやってもらうためには、カメラを動かして貰わないことにはどうしようもありません。

そこで視線を誘導する対策を行いました。それは「モルフォ蝶」という仕掛けです。ユーザーが蝶を目で追うようにすることをイベント全体において重要と設定。蝶が飛んでいく先にでコンテンツが出現するようにしました。

拡張現実の物語体験の結果と今後



このように、『かいじゅうたちのすみか』では物語体験におけるARの役割を徹底することで、物語を映画やアニメのようなワンシーンではなく、自分の身に起こる出来事にできることが大きいと結論づけました。

ARの物語体験とは、現実の変数に大きく影響されるからこそ、うまくハマった時の効用も大きいと、非常に難しいバランスのなかで作り上げていく大きさがあるといいます。実際に、円谷プロダクションで製作総指揮を執った隠田氏も「ストーリーラインやIPと技術って担当者も異なるため、乖離しがちなものであり、それをブリッジでいたものを作るのは簡単ではないこと」と語り。『かいじゅうたちのすみか』では困難が予想されたプロジェクトが形になったことを評価していました。

今後の課題として、まず「ARだけでは完結できない」ことが挙げられました。ARによる「物語の出来事化」のみでストーリー全体を繋げることはできず、TwitterやWebページを利用するような、非AR部分との組み合わせが必要だったといいます。

またARで知られていると思っていた、そもそもの使い方について説明できなかった事も挙げられます。先の「カメラを動かしてくれない」にも、ARをあまり知らないユーザーならではの行動が見られたように、なぜ平面を検出するか、暗いとARを認識しづらいのかといったルールを多くの人はわかっていません。これを上手く伝えることができればと、セッションをまとめていました。
《葛西 祝》

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