拡大を続ける中国ゲーム業界…その強みとアラブ、東南アジア戦略を専門家が徹底解説 | GameBusiness.jp

拡大を続ける中国ゲーム業界…その強みとアラブ、東南アジア戦略を専門家が徹底解説

快進撃を続ける中国ゲーム業界。その拡大の理由とは何でしょうか? また、今後どうのような展開が予測されるのでしょうか? 専門家が集まり、中国の現状について解説します。

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拡大を続ける中国ゲーム業界…その強みとアラブ、東南アジア戦略を専門家が徹底解説
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近年、拡大を続ける中国のゲーム業界。いまや世界最大のゲーム会社としてテンセントが君臨しており、人気モバイルタイトル『PUBG MOBILE』の展開をはじめ、1月7日にはプラチナゲームズと資本提携が発表されるなど、国内でも影響の大きさを感じさせるニュースが続いています。

中国のゲーム業界は、いかにその強さを発揮するに至ったのでしょうか? そしてこれからどんな展開がありえるのでしょうか?

アリババクラウドジャパンは2020年1月27日、ゲーム産業に特化したイベント「THE GAME GUILD」を初開催。第一回には変化を続ける中国の状況をテーマに、 専門家による講演を行いました。

中国ゲーム業界、最大の強み



さて中国のゲーム業界の強みとはなんでしょうか? この状況について、崑崙日本の副社長を務める、北阪幹生氏がセッションを行いました。

北阪氏は16年に渡り、さまざまな中国の企業に所属することで状況を見てきました。その経験をもとに、近年の中国が大きく変化したことに、2018年ごろから海外展開を強く意識していることを挙げます。

中国の国内に限っても、かなりのユーザー数が見込めると思われるなか、なぜ海外展開を始めたのでしょうか? 理由は中国政府のゲーム規制が進んでいること中国国内でモバイルゲームの成長鈍化が見られたためです。中国国内市場の環境変化の観点から海外に活路を求めたのです。

そうした状況を踏まえ、 “海外展開のなにが成功のカギなのか?”を北阪氏は説明。まず結論として「開発力の高さ」を挙げました。


さて何を持って開発力が高いと言えるのでしょうか? まず「コアゲームをモバイルで展開したこと」が挙げられます。これまで、PCやコンソールといったプラットフォームでプレイするのが普通だと考えられていたMMORPGからバトルロイヤル、MOBAなどのコア向けなゲームをスマートフォン向けに開発したことが大きいと北阪氏は指摘しました。


さらに「作れるジャンルの幅広さ」も大きいといいます。『崩壊3rd』のような、ミッドコアのアクションゲームから、女性向けゲームやカジュアルゲームまで開発。そして『アズールレーン』をはじめとする2次元の美少女・萌え系タイトルから、日本の人気漫画『ONE PIECE』をはじめとするIPを使ったゲームもモバイルで展開するなど多様なのです。

「とにかく作れるジャンルが多い。そこが中国ゲームのいちばんすごいところです」と北阪氏はまとめます。中国でモバイルが活況となったのは、2013年から2014年にかけてモバイルの市場が確立し、各社がPC向けの開発をやめ、モバイルゲームに移行したことが大きいのだそうです。


なぜ中国の企業がモバイルにコアゲームを展開し、多様なジャンルのタイトルを開発できるのでしょうか? 北阪氏はシンプルに「でかい・多い・速い」ことだと断言します。つまりユーザーや開発者、そして会社や資金の規模の大きさ、展開の速さが並外れているということです。

その言葉通り、タイトルと会社の数は膨大です。現在、中国では年に1500~2000タイトルがリリースされ、運営会社はなんと700社にも上ります。

日本では一般的に、あるタイトルをリリースするのにパブリッシャーがデベロッパーに依頼して制作していく形ですが、中国では事情が異なります。向こうでは資本力をバックに、デベロッパーが作ったものをパブリッシャーに売る “プロダクトアウト型スキーム”で進んでいるのです。

さらにゲームの市場も大きく、ユーザーも寛容なことが挙げられます。膨大なタイトルとの激しい競争があり、開発者も2、3年での転職も多いそうで、技術交流も活発なのだそう。

ゲームのリリースと運営も非常にスピーディで、60%ほど開発すればリリースし、ユーザーとのレスポンスからゲームを改修していき、100%に仕上げていきます。開発者が作りたいものを作って、リリースしてユーザーとのやりとりで修正することで、開発者は市場を肌感覚でわかるようになっていく強みがあるのです。

リリース時から完成度の高さが求められる日本からすると、考えにくい環境なのは確かです。中国ユーザーの寛容さが、膨大なタイトルのリリースと、それに伴う競争に影響しているのでしょう。

「競争が激しくなることで、中国のゲームは圧倒的な進化を遂げました」と北阪氏は解説。結果、新ジャンルがどんどん出てくる流れが生まれました。カジュアルから『アーチャー伝説』といったタイトルや、そしてオートチェスといったジャンルをはじめ、既存のジャンルも掘り下げて開発されるほか、他のジャンルとの掛け合わせが見られるタイトルなど、この1年で目に見える進化が見られるそうです。


続いて各社の海外展開の成功モデルについて説明。中国では主にゲームを開発、運営、そしてマーケティングを国内で行っているそうです。その理由には本社と子会社のコミュニケーションのロスを無くすことでノウハウを蓄積しやすいことや、デジタルマーケットで展開するスキルの高さがあるためだと説明しました。

マーケティングは初速を重視しており、大型の予算をかけて行われます。その理由には、ゲームの設計上、一定以上のDAU(※Daily Active User:1日にサービスを利用したユーザーの数)が必要であり、IPのない新規タイトルが主であり、初速で一定数のユーザーを確保する以外に打ち手が少ないためです。クローズドベータテストを経て、資金回収の目途を立てていく方針だといいます。

なお、美少女・萌えの2次元系は日本拠点を中心に展開されるそうです。これは日本へのリスペクトもあるほか、ジャンルの特性上、運営の比重が重いことが関係しているとのことです。まさに展開されるジャンルからお国柄が出ていると言えるでしょう。


開発タイトルを展開するプロセスにもついても解説。まず中国や台湾で全世界テスト配信し、最後に日本でテストが行われる順で展開されていきます。

まず中国でクローズドベータテストを3回前後実施したのちに、成功する可能性を高めて正式サービスするのが一般的。サービスは中国から台湾、東南アジアの順にプレイヤーとの親和性が高く、中国、台湾、東南アジアと順次リリースし、東南アジアでも受け入れられたタイトルならば他の地域でも通用するとのことです。

一方、日本は市場の変化が遅いのですが、獲得できる単価は高いため、長期の運用に適していると評価。中国としては慎重に獲得したい市場だといいます。そのため各地域の最後にアプローチされるのです。

北阪氏は最後に、今年2020年に中国ゲーム業界はどうなるかの展望を語りました。中国ゲーム市場の延長線として競争が激化していく結果、差別化するポイントとしてサービスが向上するのではないかと予想。今後、ゲームの運営の質が上がっていく可能性があるそうです。

また短期ビジネスが多いため、ここから長期的なビジネス展開になるのではないかとも語られました。いまはスマートフォンの時代ですが、その次の “ポストスマホ時代 ”には既存IPではなく、オリジナルのIPを運用していく時代になるのではないかと予想しました。

つまり『荒野行動』や『アズールレーン』などを推す、IPホルダーとして展開する可能性があり、中国ゲームがより盤石な体制になる未来があるとのことです。

まとめとして、2000年代から現在2020年までの中国ゲーム業界は、日本や韓国、そして中東や南米への進出や融合の時代であり、次の2020年から2040年までの未来には、開発やIP、プラットフォームとして業界の中心になるのではないか? という可能性があるといいます。後の時代になったとき、現在の中国が海外展開していく歴史的な意味が振り返られるのではないか、とセッションを終えました。

次のページ:中東市場を開拓する中国
《葛西 祝》

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