アリババクラウドが日本ゲーム企業へのサポートプログラムを発表―中小デベロッパーにも手厚く | GameBusiness.jp

アリババクラウドが日本ゲーム企業へのサポートプログラムを発表―中小デベロッパーにも手厚く

中国最大規模のクラウドサービスプロパイダー・アリババクラウドが日本の中小ゲーム企業に向けたサポートプログラムを発表。同社開催のセミナーで、その狙いの発表と日本ゲーム市場の現状分析が行われました。

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2019年7月23日、中国・アリババグループのクラウド事業における日本法人であるアリババクラウド・ジャパンサービスが、日本のゲーム業界に向けた取り組みを発表するプレス向けセミナーを開催しました。

アリババクラウドは、世界20の地域・58か所にデータセンターを設置している中国最大規模のパブリッククラウドサービスプロバイダーです。同社のカントリーマネージャーであるユニーク・ソン氏は、日本のゲーム市場を「もっとも重要な市場のひとつ」と位置付けており、日本国内の中小ゲーム企業に向けたサポートプログラム「Japan SME Gaming Support(以下「JSGS」)」を提供すると発表しました。

アリババクラウド・ジャパンサービスのカントリーマネージャー、ユニーク・ソン氏

「JSGS」では、ゲームの開発のみならず、コンサルティング、マーケットリサーチ、プラットフォーム開発、ローカライゼーション、オンラインイベントの企画など、企画、開発、運用を包括的にサポート。アリババクラウドのリソースとパートナー企業各社のリソースを合わせることで、ユーザーの多彩なニーズに応えるエコシステムを構築するのが狙いです。さらに1対1の多言語カスタマーサポートも用意し、英語、中国語、日本語に対応。現時点ですでに日本のゲーム企業50社と協業を検討しており、2019年中に200社以上のゲーム企業とパートナーシップを結ぶことを目標にしているとのこと。


ソン氏は「日本の皆さんに最新のクラウド技術とソリューションを提供することで、新たなビジネスチャンスをともに作っていければと思います。これからも、ゲーム市場に特化したプロダクトやソリューションを日本国内で展開していき、日中両国のビジネスの架け橋になれればと思っています」と意気込みを語りました。

次に登壇したジェミニエンタテインメント 代表取締役の黒川文雄氏は、日本のゲーム市場の現状について講演しました。黒川氏は、1994年に発売されたPlayStationから始まったソニーのビデオゲーム事業が、今では同社を支える屋台骨のひとつとなっていることを「ゲームビジネスの持つダイナミズムがよく表れている」としながらも、今の日本のゲーム市場は「停滞しています」とバッサリ。その一番の理由として挙げられたのが開発費の高騰です。

ジェミニエンタテインメント 代表取締役の黒川文雄氏

「カプコンが売り上げの約8割を海外市場で出しているように、今は海外での売り上げを視野に入れなければいけませんが、海外の名だたるAAAタイトルと戦うのは容易なことではありません。アプリゲーム市場は、今ではもう開発費が最低5億からという世界。新規タイトルはほとんどが出てもすぐに消えていき、レッドオーシャンどころか乾ききった"ドライオーシャン"ともいえる状態です。日本のゲーム市場が世界をリードしたのは、もう昔の話です」。

黒川氏が例として挙げた海外メーカーによるAAAタイトル(写真左)と、国内大手メーカーによるヒット作

そんな黒川氏が注目しているのが、人とのつながりによるコミュニティ・ビジネスであるそうです。「音楽市場も年々右肩下がりですが、実は、ライブ・エンタテインメント市場は逆に右肩上がりを続けています。音楽ファンたちにとっての「あのライブ、行った?」というような盛り上がり・つながりを、いかにゲーム業界でも作っていくかがカギになるのではないかと語る黒川氏は、そうしたつながりを作りうるものとして、e-Sports、5G、クラウドゲーミング、サブスクリプションサービス、コミュニティ・ビジネス、XR(VR、AR、MRなど)をこれからのキーワードとして挙げ、講演をまとめました。

SQOOL代表取締役の加藤賢治氏は日本のモバイルゲーム市場についての現状を紹介。ゲームのダウンロード数はピークアウトして減少しているものの売り上げは上がっていることから「いわゆるコアゲーマーたちが、大型タイトルをじっくり遊んで課金している。それにともなって開発コストも上昇しているので、今から成功を収めるのは難しい状況にある」と黒川氏の講演を補足しました。

SQOOL代表取締役の加藤賢治氏

その一方で、近年の傾向としては「PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS) Mobile」のように、以前よりも海外タイトルが受け入れられるようになってきたとも分析しました。その中には、「陰陽師」や「荒野行動」など中国のタイトルも見られます。加藤氏は「髪を染めて学校に行ったら先生に怒られた」というネタ(話題)は欧米には通じないが、中国には通じる」と語り、日本と中国の作品は比較的親和性が高いとしました。


さらに加藤氏は、個人のデベロッパーによる小規模なカジュアルゲームもランキングに顔を見せるようになるなど、カジュアルゲーム、ハイパーカジュアルゲームの波も来ていると分析。「今、日本のカジュアルゲームを中国に持っていこうという動きも出始めています。カジュアルゲームならまだ開発コストも低いので、ビジネスチャンスです。そんなときに、アリババクラウドさんのようなプラットフォームの力を借りて中国市場にチャレンジできるのはいい契機になるのではと思います」と語りました。

また、アリババクラウドとの提携事例として、ピタヤゲームスの代表取締役COOの劉俊(ハンソン・リュウ)氏も登壇しました。同社はスマートフォンゲームの制作・運営に加え、中国市場へのローカライズ/パブリッシング、中国市場からのローカライズ/パブリッシングも積極的に行っています。

ピタヤゲームスの代表取締役COOの劉俊(ハンソン・リュウ)氏

ピタヤゲームスは中国で成功しているスマートフォンゲームを積極的に日本市場に誘致しており、これまでにも日本国内での「戯画三国志」、「魔女兵器」、「三国ブレイズ」、「Epic Orders」などのパブリッシングを担当しています。このうち、「戯画三国志」と「魔女兵器」はアリババクラウドとの提携事例でもあるそうです。


中国のスマートフォンゲーム市場では、日本のひと昔前のIPを活用してゲーム化する流れが近年よく見られますが、最近では著名な作家などを起用し、当初からクロスメディア展開を視野に入れたオリジナルIPの創出も増えてきているとのことです。その一例として、漫画家の種村有菜氏をキャラクター原案に起用したPC/スマートフォン用ゲーム「Alice Closet(アリスクローゼット)」が紹介されました。同作は2019年7月現在事前登録を受付中で、今夏リリース予定となっています。

その後は、登壇者4名によるパネルディスカッションが行われました。黒川氏は日本のゲーム市場の今後について「コンソール機に関しては、国内海外を隔てないボーダレスな企画で、海外のAAAタイトルに匹敵するものを作るしかない」と分析。スマートフォンゲームに関しては「アリババの資本をバックに(アリババクラウドと提携して)作るのもありだと思う」としました。

加藤氏は日本国内ゲーム市場のさらなる可能性に言及。「まだ日本市場にも開拓の余地はあると思います。かつてスマートフォンが普及しはじめたときにスマートフォン用ゲームが一気に隆盛したように、5GやVR、AIなどを用いたゲームで新たな波がくる可能性もある」と予測しました。


俊氏はアリババクラウドとの提携に関して「運営をアリババクラウドに任せて、開発に専念できるのは大きいです。また、サーバーを増減を柔軟に行えるのも大きいです。これも、提携するまではできなかったことです」と語りました。

ソン氏は「常にチャレンジしようという開拓者精神を持つ中小企業のみなさんを積極的にサポートしていきたい。まずはパーティーを開催して交流を持ち、コミュニティを作るところから始めます」と語り、セミナーは幕を閉じました。
《蚩尤》

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