日本のモバイルゲームは中国市場に参入できるのか?第一線のマーケターが語る中国モバイルゲーム市場の光と闇 | GameBusiness.jp

日本のモバイルゲームは中国市場に参入できるのか?第一線のマーケターが語る中国モバイルゲーム市場の光と闇

日本のモバイルゲームは中国市場に参入できるのか?AppLovinが主催したセミナー「中国市場を制する者はモバイル市場を制す! ~Droidhang、NetEaseに聞く中国市場の意味~」の聴講レポートをお届けします。

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日本のモバイルゲームは中国市場に参入できるのか?第一線のマーケターが語る中国モバイルゲーム市場の光と闇
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11月2日、モバイルアプリ広告のプラットフォームAppLovinがセミナー「中国市場を制する者はモバイル市場を制す! ~Droidhang、NetEaseに聞く中国市場の意味~」を開催。AppLovin中国オフィスでセールスマネージャーを務めるJason Cao氏、中国で成功を収めているDroidhangのプロダクトオーナーPanlong Xiong氏、NetEaseのマーケティングゼネラルマネージャーXinxin Wu氏が登壇し、それぞれの見地から中国モバイルゲーム市場の今とこれからを語りました。

◆急速に拡大し続ける中国モバイルゲーム市場


最初のプログラム「Key facts about the chinese gaming market」では、AppLovin中国オフィスのJason Cao氏が登壇しました。中国のゲーム市場は2013年から今日にいたるまで急速に成長し続けており、多くのユーザが1日のうち5時間以上をゲームに費し、そのうち92%はモバイルゲームであるとのこと。中国においてモバイルゲームは、インタラクティブエンターテイメントとして非常に重要な要素となっているそうです。また、スマートフォンユーザーの約54%が何らかのモバイルゲームで遊んでいるという調査結果も出ており、この数値は、モバイルゲームアプリの増加とともにさらに大きくなっていくと考えられています。


その急速な市場の拡大のおかげで、iOS端末市場における広告収益は日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位とのこと。ただし、中国にはGoogle Playがなく、かつ中国独自のAndroidプラットフォームは200以上も乱立しているとのことで、こちらの市場での規模を計測するのは難しいそうです。

中国モバイルゲーム市場で大きな地位を占めるジャンルはMMORPG。RPGやカードゲーム、シミュレーションゲームがそれに続きます。Cao氏はカードゲームが一定の需要を得ている理由については「中国人は元来トランプを好む人が多いから」と補足しました。また、カジュアルゲームもライトユーザーを中心に急激な伸びを見せているとのことで、数カ月後に集計し直したら、大きな比率を占めるかもしれないと語りました。

ユーザー層で一番多きな比重を占めるのは24歳以下。もっとも、ゲームに費やす金額が一番大きい層は、安定した職で高収入を得ている人が多い31~35歳の層だとか。年齢別ではなく消費額別にユーザーを見ると「きわめて少ない人数が、人数としては多い少額から中程度の課金をするユーザー層の総額よりも大きな額をつぎ込んでいるだろう」と分析。一人のユーザーがゲームに数十万元を使う例もあるそうで、こうした構図は日本とあまり変わりないようです。


AppLovinはモバイルゲームのパブリッシング事業も手がけており、NetEaseの『陰陽師』やDroidhangの『アイドルヒーローズ』のパブリッシングも担当。『陰陽師』では1日あたり平均8000ユーザーを獲得してiOSランキングで首位を獲得。『アイドルヒーローズ』も、課金ユーザーにむけたボーナスつきビデオ広告を提供するなどして、ROI(投資収益率)を200%にまで上げたそうです。いくらボーナスを得るために課金をしてくれるとはいえ、ビデオ広告の視聴を何度もさせてはゲーム体験が損なわれるとの理由から、見られる回数は制限がかかっているとのことです。

最後に、海外のメーカーが中国市場に参入する際のアドバイスを求められると「海外ではそうでなくとも、中国市場においては非常にユーザーが少ないジャンルがあったりする。どのような層に向けて、どのようなジャンルや作風で勝負をかけるか、事前にしっかりと見極める必要がある」と答えました。

◆一般的な中国ユーザーと日本ユーザーの違いを知る


続いてのプログラムは「Droidhangが見る中国のアプリマーケット」。登壇したDroidhangのPanlong Xiong氏は、まず中国のモバイルゲーム市場の規模について言及。第三者機関の調査によると、見込まれるユーザー数は6億人で、そこから生まれる利益は37億9000万ドル。モバイルゲーム市場としては、世界一の規模を誇ります。

Xiong氏が語ったのは、日本のユーザーと中国のユーザーの持つ性質や嗜好、ゲームに対する接し方の違いについて。中国のユーザーは課金によって何らかの特権やロイヤリティを得ることに満足感を抱くことが多いらしく、『アイドルヒーローズ』は課金額に応じてVIPレベルが上昇し、それに応じてもられるボーナスが増えていくとのこと。そうした理由から、ホーム画面でも課金と関係している機能が前面に押し出されるUIになっているとのことです。


モバイルゲームの貴重な収入源となるのが、ゲーム内通貨などの見返りを得られるボーナスパックや会員カードです。Xiong氏いわく「日本のユーザーはそれがどのようなゲームなのか分かってから課金する人が多いと思うが、中国はその限りではありません」とのことで、初回の購入のみ2倍、3倍といったボーナスを付加するなど、プレイ開始直後から購入欲を強く刺激するのが一般的のようです。

また、中国のユーザーが好む課金アイテムに「スピーカー」というものがあるそうです。購入することで自分の発言や考え、主張をサーバーにアップロードできるアイテムのようで、中国ユーザーはそれによって優越感や達成感を得ているとのこと。Xiong氏は「日本のユーザーはヒマつぶしとしてゲームを遊ぶ人も多いだろうが、中国は違います。実生活で失望したり、満足を得られなかったときに、ゲームを通じて存在感を得ることでバランスを取っているんです。このように、ゲームとの向き合い方が異なるからこそ、ときに多額のお金を使ってでも優位性を得ようとする傾向があるのです」と補足しました。


次の話題は、中国モバイルゲームのAndroid市場に参入する際の注意点について。AppLovin中国オフィスのCao氏も言及した通り、Google Playは中国には展開していません。その代わりに、Huawei、Xiaomi、OPPOなどのスマートフォンメーカーや、Tencent、bilibil、TapTapなどのプラットフォーマーがそれぞれ独自にストアを展開。そうした多数のストアに分散してしまっているユーザーたちに広く訴求するため、ライブ配信プラットフォームを活用してプロモーションしていく手法が勧められました。とはいえ、中国にはYouTubeやTwitchも展開しておらず、ライブ配信プラットフォームも分散してしまっているとのこと。数百万~数千万ビューを叩き出す、YouTuberのような人気配信者も大勢いるとのことで、彼らの力も借りながら、日本のゲームがどの程度受け入れてもらえそうかのフィードバックを得れば、それだけリスクは少なくなるとしました。


◆中国市場に蔓延する不正問題に対処するには


最後に登壇したNetEaseのXinxin Wu氏は「NetEaseの中国ユーザー獲得戦略講座」というテーマで講義をされました。まずは、中国モバイルゲーム市場の現状について。同市場で現在リリースされているタイトルは約2.5万本。そのうち、積極的なユーザー獲得に乗り出しているタイトルは5000本以上。Wu氏は「完全なレッドオーシャンです」と市場の厳しさを語ります。


さらに、政府の意向で2018年に入ってから半年以上新作の許可番号が出ていない(新作の制作・配信許可が下りない)こともあり、ユーザー獲得のためのコストは急上昇。競争激化の煽りで、ここ3~4年だけで20倍以上に膨れ上がっているそうです。それだけに、初期のプロモーションが文字通りにそのゲームの生死を決めます。

ユーザーを獲得しやすいタイトルの傾向や特徴についても言及されました。まずは、それがゲームのIPであるかどうか。ブラウザゲーム、家庭用ゲーム機、アーケードゲームなど、何らかの形で結果を出しているゲームIPは非常に価値が高いとのことです。次に問題となるのは容量。1GB以下であればよく、それを上回ってしまうとユーザー獲得難度が途端に高くなるそうです。さらに、AppLovin中国オフィスのCao氏と言を同じくして、こうした条件を満たすコンパクトなゲームが今度大きな市場に発展するかもしれない、と見通しを語りました。


ユーザーを獲得するためのメディアは、大別してニュースメディア、ショート動画メディア、SNSメディア、動画サイト、ゲーム内広告に大別されるとのこと。それぞれにユーザーの性質や、支払い能力の平均的な高さなどに差や傾向があるようで、これもなかなか一筋縄ではいかなさそうです。また、広告の見せ方としては、4GとWi-Fiの普及で静止画広告よりも動画広告の方が効果的になったとのことです。

Wu氏が最後に強調して語ってくれたのが、不正問題への対策です。中国モバイルゲーム市場では残念ながら不正や詐欺が蔓延しており、海外のメーカーが中国市場に参入する際に一番の障壁となるであろうとのこと。常に市場の中に身を置いてどのような手法による不正が流行っているのかを認識しておくのは当然のこととして、さらに氏が"三権分立"と名付けた秘訣を伝授してくれました。これは、社内に以下の三部門を備えることで、不正や詐欺の被害を未然に防ぐというものです。
  • 決定権:何に対してどの程度の予算を投じるかを決定する部門
  • 決裁権:決定権で決められた内容を精査し、承認する部門
  • 実行権:決定権、決裁権を経た予算を実際に運用する部門



Wu氏は、三つの権限はそれぞれ別々の部門に与えること、先払いは絶対にしてはならないことを強調しつつ「多くの海外企業は、こうした体制を整えていないがために、本来得られる対価を得られていないという現象が起きています。NetEaseは多数のエージェントを抱えています。弊社のように、なるべく大きなブランドを持っているところと協力体制を取ってください」と語り、セミナーを締めくくりました。
《蚩尤》

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