NDCを続ける理由と、ゲーム開発にかける想い―ネクソンCEO・オーウェン氏インタビュー | GameBusiness.jp

NDCを続ける理由と、ゲーム開発にかける想い―ネクソンCEO・オーウェン氏インタビュー

ネクソン代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを実施。オーウェン氏、そしてネクソンが常に意識している「業界にイノベーションをもたらす」という目標。そのうえで、NDCというイベントはどの様に機能しているのか、ネクソンのトップに直接伺います。

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4月に韓国で実施された「Nexon Developers Conference 2018(以下、NDC)」。技術者や学生向けのカンファレンスイベントとして、今年で12年目を迎えました。年々規模を増しているNDCですが、ネクソンはなぜこのイベントを続けているのでしょうか。

弊誌では、同イベントにてネクソン代表取締役社長オーウェン・マホニー氏にインタビューを実施。オーウェン氏、そしてネクソンが常に意識している「業界にイノベーションをもたらす」という目標。そのうえで、NDCというイベントはどの様に機能しているのか、ネクソンのトップに直接伺います。

また、「NDCを開催する理由」だけではなく、業界の現状や日本市場への意識も伺いましたが、その最中に垣間見えた「ゲームはアート」「パーティーはそこではなく、ここで起きている」といったオーウェン氏独特のゲーム観。その裏には、ゲーム開発やプレイヤーたちへの熱い想いが隠れていました。




――NDCは今年で12年目を迎えましたね。

オーウェン氏:NDCは12年間開催していますが、近年では開発者の方々が韓国だけではなく、日本・中国・ヨーロッパ・アメリカからたくさんの方におこしいただいています。彼らの興味は、オンラインゲームをどうやって上手く運営していくかに集中しています。今年も2万人の方々が来場したNDCですが、アイディアを共有しノウハウをお互いにシェアするのがとても価値があるとコメントをいただいています。

NDCの価値とある部分というのは、新しいことへ挑戦する意志をお互いに尊重しあい、応援しあいながら前に進んでいくという所です。ユーザーに愛されるゲームは他とは差別化されたゲームだと思います。そのようなゲームを作るためには、クリエイティビティが必要なのはもちろん、リスクも考えなければなりません。浴びせられる批判を耐え抜かなければならないのです。イノベーションを起こしていくにあたって、そのリスクを少しでも減らすために、2万人が集まって励まし合うことは大事だと思います。

――メディアからの反応はいかがですか?

オーウェン氏:オンラインゲームに関しては世界初のグラフィックMMORPG『風の王国』など1990年代から親しみがありますし、F2Pを始めたのも我々なので馴染みがあります。一方、日本で流行っているストーリーテリング型のゲームは知識が浅いとのお話をいただきます。ただ、韓国でもストーリーテリングに関して、近年では学んでおり、良いものを生み出そうとしているので、日本のメディアにとっても興味深いと思いますよ。

また、モバイルは多くの人が持っているデバイスになっていて、iPhoneXはPS3と同じレベルのGPUが入っています。そして、何千人、何万人の方々と同時に通信ができるという点では、モバイルデバイスによってマルチプレイヤーゲームが日本でさらに流行っていくのではないかと思います。そういったトレンドから、日本の業界の方々はマルチプレイヤーのゲームを無視できなくなっており、ニーズも増えていることからNDCも日本のメディアの方々も興味関心が高いのではないかと思います。

――ネクソンのワールドワイドでの立ち位置や経営状況についてお話ください。

オーウェン氏:韓国はもちろん、最近では中国マーケットの成長に伴って売上の貢献度が高くなってきています。一方、本社を置く日本においては、昨年は調子があまりよくなかったのですが、今年は多くの新作タイトルが控えていいます。北米についても、直近の四半期においてはピクセルベリー・スタジオズ」の買収もあり、大きく貢献しています。ヨーロッパでは日本と同じようなトレンドが起こると思いますので、全体的に希望を持っています。

私にとって、日本の市場は常に一番エキサイティングな市場だと思っています。元々、日本はコンソールゲームを中心にシングルプレイヤーのゲームが主流でしたが、デバイスの進化に伴いゲームも進化しています。日本のカスタマーは他国に比べても非常に洗練されたセンスを持っていて、要求もとても高い。そしてこの要求がマルチプレイヤーデバイスとコラボした時に、大きなことが生まれると考えているからです。


――韓国・中国で成功している要因は何だとお考えですか?

オーウェン氏:ネクソン最大の強みは、時が経つにつれてゲームを育てていける長期運用(ロンジェビティ)の部分です。例えば『FIFA ONLINE』シリーズや『アラド戦記』、『メイプルストーリー』などは小さな規模でスタートしましたが、今はかなり大きくなりました。これはライブ運用・開発の強みです。ゲーム業界では最新のグラフィックなどにトレンドがいきがちですが、こういったコアな強みが我々の成長の基盤となっています。

もうひとつ、遊び心のある実験(プレイフルエクスペリメンテーション)ができる所は強みだと思います。例えば韓国で配信している『風の王国』や『クイズクイズ』では、挑戦的な試みをしてきました。内部から出てくるアイディアはCEOの戦略よりも価値があり、成長に貢献していると思います。

ゲーム業界は近年ファッション業界に似たような所があります。強豪と張り合うようなことに集中してしまったり、VRやe-Sportsなど新しいものに注意がいきがちです。しかし、ただ競っているだけでは失敗を恐れてしまいイノベーションは起こらないと思います。それは成長を止めることになりかねないので、私たちは常に開発者の自主性を尊重して、失敗してもチャレンジだと思えるような環境を醸成していきたいですね。

――日本ではスマートフォン向けのタイトルを主にリリースされていますが、現状の成果について教えてください。

オーウェン氏:『GIGANT SHOCK』や、韓国でローンチしている『DURANGO:Wild Lands』、『OVERHIT』などがローンチを控えており、プレイヤーの興味の度合いも高いので、日本でのパフォーマンスに貢献すると期待しています。

――今後、日本市場をどのように攻略していく予定ですか?

オーウェン氏:大人数のマルチプレイヤーオンラインゲームに注力したいと思っています。こうしたゲームはプレイヤーにとって引きが強く、一度始めると抜けられない魅力がありますが、日本ではコンソール市場が中心だったことからトレンドとしては盛り上がりませんでした。ただ、今後は必ず伸びてくると思いますので、『DURANGO:Wild Lands』などを日本で成長させていきます。

今のゲーム業界では先を見ることが大事で、消費者の欲求はすぐに変化します。新しいゲームプレイが入ってくると興味を持ちますが、数年後にはまったく違うデバイスやプレイスタイルが流行っている可能性があり、こうした流れを上手く作っているのは任天堂さんだと思います。市場に対応していくためにもイノベーションを止めてはいけないと思っていますし、その中においては失敗の方が多いですが、それを経てでもきちんと進化していく必要があると考えています。

――日本の市場は読みづらいですよね。

オーウェン氏:1年先どうなるか分からないので、そこが面白い所ですね。ネクソンタイトルの狙いとしては、プレイをして楽しい所があり、差別化されたゲームであるほど成功のチャンスが増えると思っています。

――私自身は『DURANGO:Wild Lands』に期待をしています。

オーウェン氏:『DURANGO:Wild Lands』は本物のMMORPGです。開発はとても面白く、何千人規模のテストを繰り返しましたが、プレイスタイルがまったく変わってきますね。経済・政治も変化するため、どうなるかは分かりませんが色々なことにチャレンジしてみたいと思います。


――日本市場ではgloopsの今後も気になるところですが、どのような展開をしていくのでしょう。

オーウェン氏:gloopsはスタジオ制に移行し、2018年もいくつかのタイトルが控えています。とても期待していますね。gloopsには非常に才能のある方々がいるのですが、彼らのコアはブラウザゲームにありました。時代に合わせて、組織全体をモバイルへ向けて移行したかったのですが、今までそれができていませんでした。

今後は市場に対応できるようなスタイルに移し、才能のある方々の自主性を尊重して一緒に仕事をしたいですね。そして、ネクソンが持っているオンラインの技術やノウハウをシェアしながら進化していきたいと思います。

――今後、日本ファーストでネクソンからゲームをリリースする予定はありますか?

オーウェン氏:それはgloopsで実現しようと考えており、そのためにリソースを割いている所です。日本の市場は特殊なので意識高く捉える必要があると思っており、日本でローンチが成功すれば世界で展開していくことも考えていきたいですね。また、才能がある開発者を勇気づけ力を与えることが重要なので、私が流行るかもしれないものを押し付けるのではなく、彼らに任せて面白いと思うものをチャレンジしていける環境を醸成したいですね。

――日本では、PS4やニンテンドースイッチの好調もあり、コンソールゲームが盛り返してきている印象です。そちらへの意識はありますか?

オーウェン氏:コンソールゲームがPCのプレイヤーを獲得しているという認識はないので、将来的にはプレイヤーの動向に合わせていくしかないと思っています。

――以前、「デバイスにはこだわっていない」というお話をされていましたが、そのお考えは今でも同じでしょうか?

オーウェン氏:デバイスにこだわらないというより、デバイス側の境界線がなくなってきていると考えています。プラットフォームに関わる議論はありますが、ゲーム開発者にとってはどのプラットフォームであれ、とにかくいいゲームを作ることに注力していくことが重要だと思います。

――ネクソンがタイトル開発において重視しているポイントは何でしょうか?

オーウェン氏:ゲームはアートです。プレイヤーによって内容や楽しみ方が進化していくものだと思います。いいゲームについての話し合いをする際に、トレンドや秘訣にフォーカスがいきがちですがそれは間違っています。一番大切なのは、“そもそもゲームとは何か”という議論に立ち戻ることです。やはりゲームの中心はプレイ体験にあります。体験を届けるためにまずシステムを作り、次にルールを作ります。最終的にプレイヤーに選択をしてもらいたいと思っており、選択をすることが体験に繋がると考えています。

同じエンターテインメントでも映画は監督が作ったストーリーを受け身で観るものです。ゲームが決定的に違うのは、選択によって自分の物語を描いていけるという魅力にあります。ゲームは選択をして参加するもので、時にプレイヤーは1分間に100個もの選択をしながら自分のストーリーを進めていきます。想像性がありユニーク、それがゲームの素晴らしい所だと思っています。


――最後に、すべてのゲーマーにメッセージをお願いします。

オーウェン氏:ひとつめは私の強い信念なのですが、「パーティーはそこではなく、ここで起きているぜ」というものです。エンタメ業界の中で、ゲームは常に二番手でした。しかし、今ではディズニーやワーナーなどトップランナーがゲームに注目し、業界を見渡してもDropboxの創設者やTesla、Amazonのクリエイターも『シヴィライゼーション』や『StarCraft』などのゲーマーでした。ゲームはもはや二番手ではありません。ゲーマーの方々には、あなたたちが熱中しているモノは世界で一番注目を浴びているエンターテイメントであることをお伝えしたいです。

この業界は成長のポテンシャルがとても高い業界だと思っています。私は20年ほど業界にいますが、他業界のIT系企業に努めている人に意見を聞くと、うらやましがられます。それは、クリエイティビティとイノベーションを行っているからで、ビックリ驚くようなクレイジーなアイディアがあるからだと思います。

ただ、最近のゲーム業界はそうしたアイディアを実現するよりも、真似をすることにフォーカスがいきがちです。開発者、もしくはそれを目指す方々には、自分からクレイジーなアイディアを生み出すことを楽しんで欲しいと思っています。ネクソンでは人とは違ったアイディアを持っている方々を採用しています。そして、身内だけではなく業界全体で、差別化されたゲームを想像する人々に力や声を与えていきたいと考え、NDCを開催しているのです。

――ありがとうございました。ネクソン、そしてgloopsがこれからどの様なゲームを生み出していくのか、期待しています。



取材協力:Nexon
《編集部》

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